第62巻5号

研究論文

画像処理による農用車両の作物列追従制御(第2報)−自律走行トラクタによる圃場実験−

鳥居 徹、高見沢 暁、岡本嗣男、芋生憲司

キーワード:画像処理、自律走行、透視変換、作物列追従、作物列管理

本研究は、除草、害虫防除、除草剤散布などの作物列管理作業を行うための自律走行車両を画像処理によって誘導制御する研究である。車両は作物列の上を走行し、その画像から偏差と方位角を検出して操舵制御を行う。画像処理のアルゴリズムは、HSI変換による作物列と畝間との識別、最小2乗法による境界線検出、ならびに3次元透視変換による方位角と偏差の推定からなる。操舵角は、偏差、方位角、および現在の操舵角から決定した。走行結果は、作物列に許容範囲内の誤差でよく追従することが確認された。

メタン発酵システムによる生ごみスラリーのバイオガス変換(第1報) ―酸生成プロセス―

賈 俊業 ・ 北村 豊 ・ 藤浦建史 ・ C.L ハンセン

キーワード:メタン発酵,生ごみスラリー,酸生成プロセス,有機酸,動力学的評価

4基のベンチスケール完全混合型リアクタ(CSTR)を用いて,生ごみスラリーを原料とする酸生成プロセスの特性を実験的に明らかにした。4,6,8,10日の各滞留時間(HRT)において,リアクタ流入流出液のpH,有機酸濃度(VA)および固形物濃度(TS)を測定した結果,CSTRは生ごみスラリーを分解し,有機酸を生成する酸生成プロセスとして機能したことが分かった。またプロセスの動力学的評価により得られた速度パラメータを用いてHRTと菌体や有機酸濃度との関係をシミュレーションし,臨界HRT1.5日を求めた。また高濃度の有機酸を生成するためのプロセス改良が示唆された。

鳴声による肉用牛の個体識別および状態識別

石井洋平・池田善郎

キーワード:鳴声,個体判別,状態判別,空腹,離乳,周波数特性,線形予測次数,線形予測係数,判別分析,マハラノビスの汎距離

本研究は,動物の対外的な欲求表現のひとつである発声行動を利用し,家畜の精密自動管理を行うことを目的としている。本報では,雌の肉用牛7頭が空腹時と離乳時に発声した鳴声を用いて,家畜管理を行う際に重要となる個体判別および状態判別を試みた。牛が発した鳴声は自己回帰過程で生成され,線形予測係数を用いて鳴声の周波数特性が表現可能なものと仮定し,その線形予測係数を用いてマハラノビスの汎距離を判別基準として判別分析を行った。その結果,個体判別の正答率は個体によって23.4%から77.8%と大きく異なったが,判別正答率の平均値は59.8%であり,状態判別における判別正答率の平均値は92.3%であった。

インピーダンス特性による魚肉の鮮度判定(第2報)−高周波域の鮮度指標の変化と氷蔵時間の推定−

加藤宏郎・坂口守彦・大井 康之・丸尾 信・豊田 薫

キーワード: インピーダンススペクトロスコピー,魚肉,氷蔵時間,鮮度,高周波,Cole-Coleの円弧, 抵抗比, 抵抗差

魚肉の電気特性を用いた実用的鮮度指標として10kHz〜1MHzの高周波域から算出したCole-Coleの円弧半径、10kHzと1MHzにおける抵抗比と抵抗差に注目し、氷蔵期間中の経時変化を求めた。マダイ・コイ・ハマチの3魚種に対し、針状電極と接触電極を用いて測定し、これらの鮮度指標と氷蔵時間との相関関係を求め、鮮度指標による氷蔵時間の推定を試みた。その結果、個体・魚種・測定部位による鮮度指標値の差は見られたが、針状電極によるフィレー表皮側からの侵襲測定と接触電極によるフィレー肉側からの測定はともに有効で、各鮮度指標とも氷蔵時間との相関係数は高く、ハマチでは数時間での変化が検出できた。しかし、表皮側からの接触測定では、抵抗が大きく変化に乏しい皮膚の影響が強く、内部の変化が反映されにくいため、鮮度指標の変化が小さかった。

カーネーション切り花内の水に対する無極性ガスの影響

松嶋卯月・大下誠一・中西友子・松林政仁・瀬尾康久・川越義則

キーワード:カーネーション,無極性ガス,水,中性子イメージング,NMR,緩和時間

無極性ガスを利用した保存法のカーネーション切り花に対する適用性を検討するために、切り花の品質に関係深い内部の水に対して無極性ガスが与える影響を明らかにすることを目的とした。水の状態は、中性子イメージングによる水分量の分析と、1H-NMRによる縦緩和時間T1測定による水の動的状態から評価した。それらの結果から、無極性ガスであるキセノンによる処理は、切り花の吸水能力を維持することと同時に、切り花内部の水移動を妨げ、脱水を防ぐことが示唆された。特に、0.7MPaでのキセノン処理を行った切り花子房部の縦緩和時間は、処理後約24時間にわたり実験初期とほぼ同じレベルにあり、水の動的状態が保持された。

リアルタイム土中光スペクトロメータの開発

澁澤 栄・平子進一・大友 篤・酒井憲司・笹尾 彰・山崎喜造

キーワード: 光反射,反射スペクトル,土中センシング,リアルタイム計測,土壌パラメータ

トラクタ搭載型のリアルタイム土壌センサーの一つとして,土中光スペクトロメータを開発した。これは,土中にセンサープローブを貫入させ,土中の光反射スペクトルを連続的かつ安定して実時間計測するものである。同時に位置も計測できる。観測深さは15cm〜40cmである。光波長範囲は400〜1700nmの可視及び近赤外の領域であり,単波長相関解析の結果,土中水分,有機物含量,硝酸態窒素,EC,pHの推定可能性を得た。

技術論文

籾の薄層除湿乾燥に関する研究(第2報) - 除湿機を組み入れた開放通気系 -

M. J. C. レガラド・戸次英二

キーワード:薄層、除湿乾燥、籾、乾燥特性、乾減率、胴割れ、開放通気系

前報で閉鎖循環気系における籾の乾燥特性を明らかにしたが、本報では現在多くの穀物共同乾燥施設に取り入れられている開放通気系について、その基礎的な乾燥特性を温・湿度の組み合わせにより検討した。供試した温湿度供給装置の周囲温湿度に対する任意設定値への調整能力は、閉鎖循環気系にした時と比べて劣り、特に10℃のような低温設定において調整が困難であった。指数曲線状をなした水分の乾減経過で、その減率の様相が2段階に分けて見られた。第1段は初期水分から約20%までの間で籾粒の外側からの水分除去、第2段はそれより終期水分に至る間で粒内部からの水分除去である。経過全体の毎時平均乾減率は乾燥空気の温度上昇と湿度降下につれて高まった。この乾減率と胴割れ発生との関係は指数曲線で表わされ、前報の閉鎖循環気系で得られた傾向とほぼ同じであるが、発生粒数は少なかった。

レーザの雑草・害虫防除への応用に関する基礎研究 −イネの葉に対するレーザ照射の影響−

佐藤邦夫・梅崎輝尚・法貴 誠・高木滋樹

キーワード:物理防除,レーザ,稲作,YAG,反射率

物理的な除草・殺虫の方法としてレーザの使用を検討する研究の一環として、レーザのイネの葉に対する影響を調べた。その結果、緑色光レーザ(波長532 nm)による照射実験では、4回の照射に対し、56.6×4 GW/m2 と144×4 GW/m2 の中間の単位面積仕事率において、イネの葉に影響を与える閾値があることが分かった。また単位面積仕事率342 GW/m2 では1回の照射でも影響を与えることが分かった。次に、赤外レーザ(波長1064 nm)を単位面積仕事率83.8×4〜375×4 GW/m2 の範囲でイネの葉に照射したが、外観的な影響は一切確認されなかった。これらの結果を基に、稲作におけるレーザを用いる物理防除法について検討を行った。

生籾の低温乾燥特性

田中俊一郎・田中史彦・大久保孝雄・前田欣治・守田和夫・リチャード・ルーカス・ウラサ

キーワード:低温乾燥,低温,生籾,乾燥速度定数,平衡含水率

初期含水率23.5%d.b.の生籾(品種:ヒノヒカリ)の通風乾燥特性について研究を行った.実験は,5,10,15,20℃の4段階の温度条件に対し,6.31〜87.1%の範囲で7段階の相対湿度条件を設定して,籾薄層の低温空気通風下における乾燥特性を明らかにした.その結果,以下の知見を得たので報告する.1)生籾の乾燥は減率乾燥第2段の乾燥速度式により律速される,2)生籾の薄層における乾燥モデル式として球モデルの適合性が高い,3)球モデルを仮定することによって決定した乾燥速度定数は温湿度に依存する,4)生籾の平衡含水率はChen-Clayton式を当てはめることにより温湿度の関数として整理される,5)生籾に含まれる水分の蒸発潜熱が熱力学的に算出された.以上の成果は,生籾の常温以下での乾燥を行う上で基礎となる.

生籾の冷却乾燥シミュレーション

大久保孝雄・田中俊一郎・田中史彦・辻 聡・守田和夫・リチャード・ルーカス・ウラサ

キーワード:低温乾燥,低温,生籾,熱・物質移動,シミュレーション

生籾の低温乾燥では品質の劣化を促進する化学反応が抑制されるため,高品質米の生産が可能であることが示唆されている1).本研究では生籾の充填層および多段式乾燥装置における乾燥解析モデルを構築し,生籾の冷却乾燥過程における籾水分を予測した.その結果,実験値と計算値はよく一致し,モデルの妥当性が実験的に検証された.また,冷却乾燥では水分むらの少ない均一乾燥が達成されることが明らかになった.

速報

50 Hz交流電圧印加処理が懸濁液中のキュウリつる割れ病菌の生存率に及ぼす影響

谷野章・山田龍太郎・富士原和宏・飯本光雄・田川彰男

キーワード: 交流電圧,生存率,キュウリつる割れ病菌,養液栽培

家畜ふんのコンポスト化反応に及ぼす供給ガス酸素濃度の影響

中野芳雄・岩渕和則

キーワード:コンポスト化, 供給ガス酸素濃度,酸素消費速度

自動走行車両による局所可変散布

帖佐直・小林恭・大嶺政朗

キーワード:可変散布,局所管理,自動走行,精密農法