第62巻4号

研究論文

バウンジングトラクタの非線形力学とカオスに関する実験的解析

酒井憲司・笹尾 彰・澁澤 栄・アティラ ブクタ

キーワード:バウンジング,分岐,非線形力学,非線形共振,カオス

バウンジングトラクタは潜在的にカオスを発生しうる非線形力学系であることが,酒井による理論解析において明らかになった.そこでは,数値実験によって,周期振動→準周期振動/倍周期振動→カオス振動という分岐構造の存在が明瞭に予測された.本報告では,バウンジングトラクタの力学的特性を実験的に明らかにし,既報の理論的予測を検証した.さらに,非線形共振現象を実験的に確認し,トラクタ走行速度と路面凹凸間隔の関係について考察した.

接線応力速度を考慮した地盤材料の弾塑性構成式によるせん断帯発生の理論的考察

橋口公一、堤成一郎、岡安崇史、斎藤公志郎

キーワード:塑性不安定、分岐、局所化、せん断帯、構成式、下負荷面モデル、接線応力速度

農機をはじめ諸機械・構造物等の力学設計の高度化を目的として,大変形領域に至る変形挙動の解析を行う際,分岐やせん断帯等を伴う塑性不安定現象の考慮は不可欠である。先に,繰返し負荷や負荷経路急変を含む一般負荷状態における有限変形挙動を表現し得るように拡張した地盤材料の弾塑性構成式を提案した。本研究では,この構成式に基づいて非排水・平面ひずみ条件におけるせん断帯発生条件等に関する理論的考察を行った。

自脱コンバインのためのインパクト式収量センサの開発

李 忠根・飯田訓久・下保敏和・梅田幹雄

キーワード:精密農業,自脱コンバイン,クリギング,収量マップ,収量センサ

水田における収量の空間変動を計測するため,自脱コンバイン用のモミの衝撃力を計測するメインセンサと,バックグラウンドノイズを計測する補正センサから構成される,インパクト式収量センサを開発した。室内実験では,メインセンサの出力とモミ質量の相関は0.91であった。この収量センサをRTK-DGPS付自脱コンバインに搭載してモミ収量を実時間で計測するほ場実験を行った。ほ場実験では,出力とモミ質量の相関係数は0.58であった。
並流、向流、交差流通風による厚層籾のマイクロ波乾燥に関する研究

董 鉄有・木村 俊範・吉崎 繁・馮 伝平・宮武 義邦・川上 友暉

キーワード:マイクロ波、乾燥、厚層、籾、並流、向流、交差流、通風

本報告では、並流、向流及び交差流通風の補助条件下におけるマイクロ波による籾の厚層乾燥実験を行った。また、並流通風下でのマイクロ波による籾の厚層乾燥において、適正な乾燥条件について検討した。その結果、1)籾層を通る空気の役割が乾燥により蒸発した水分を排出することと籾の過熱を防止することである、2)通風方向が乾燥の均一性に対して大きな影響を及ぼすことが明らかになった。特に、並流通風はマイクロ波乾燥効率の向上と均一性の改善に有効なものであることが分かった、3)通風速度が乾燥均一性と乾燥効率に影響することが分かった。4)並流通風下での適正な乾燥条件は、マイクロ波照射エネルギーのレベルが0.10W/g以下、通風速度が0.07〜0.12m/sの範囲で、籾層の厚さが約100〜120 mmの範囲であること明らかになった。

通電処理における米ペーストの加熱速度

繆 冶煉・堀部和雄・野口明徳

キーワード:米,ペースト,食品加工,通電加熱,加熱速度,等価回路,電気的特性

米ペーストを断熱容器に充填して通電加熱を行い,加熱速度に対する含水率および食塩含有率の影響を調べるとともに,試料の電気的特性および発熱機構を検討した。試料内部の温度がほぼ均一に上昇し,その上昇速度は温度が高くなるにつれて増加した。50〜67%の含水率で最大の平均加熱速度が得られた。平均加熱速度と食塩含有率との間に直線関係があった。また,試料は電気抵抗のみの等価回路と見なすことができ,試料温度の計算値は実測値と一致した。

鶏胸肉の誘電特性の測定

田中史彦・P.マリカルジュナン・金 哲・洪延康

キーワード:誘電特性,鶏胸肉,浸漬,食塩水,バンピング

マイクロ波を利用した食品の加熱加工を最適に行うためには,被加熱体である食品のマイクロ波吸収特性を知る必要がある.食品のマイクロ波吸収度合いの指標となる誘電特性は,温度,含有塩分濃度などに依存するが,これを理論的に予測することは困難であり,このため実測によるデータの蓄積が求められている.そこで本研究では,種々の塩分濃度(0%,0.5%,1%)溶液に塩漬した鶏胸肉の誘電特性を周波数0.3〜3GHz,温度3〜75℃の範囲で測定した.特に,ISM (Industrial, Scientific and Medical use) 周波数に割り当てられている915MHz(米国)および2450MHzにおける誘電特性の解析を行い,温度と塩浸の影響について検討した.その結果,マイクロ波の浸透深さは試料温度,塩分濃度,周波数によって変化することが明らかとなった.また,マイクロ波加熱により発生するバンピングについては試料塩分濃度が高いほど,発生頻度が高くなることが明らかとなった.

食品凍結過程の3次元熱移動解析

田中史彦・前田欣治・守田和夫

キーワード:凍結,野菜,熱移動,3次元解析,コントロールボリューム法

農産物の凍結では細胞内に含まれる水溶液の凍結濃縮効果により細胞膜を通した水分の移動,ならびに相変化による体積膨張のため細胞が破損することがある.この破損の度合いは冷却速度と密接な関係を持つため,凍結過程における温度履歴が食品の品質に影響を与えることとなる.本研究では,凍結過程における農産物の温度変化を予測するための3次元熱移動モデルを構築し,その妥当性について検証を行った.温度依存項を含む支配方程式をコントロールボリューム法により数値解析し,実験結果との比較を行った.この結果,両者はよく一致し,モデルの妥当性が検証された.

製茶工程の自動制御(第1報)− 熱風乾燥における茶葉状態のセンシング −

吉冨均・中野不二雄・田中伸三・角川修

キーワード:製茶、自動制御、センシング、茶葉温度、含水率、しとり度

製茶工程全体をコンピュータによって自動制御するシステムを開発するため、制御に必要な工程中の茶葉の状態をリアルタイムで検出する方法を試みた。開発しようとするシステムは、茶の状態量として、茶葉温度、含水率、しとり度等を検出し、それに適した製茶条件として、給気の温度、風量、揉圧、主軸の回転数等を制御する多入力・多出力のフィードバック制御に基づくものである。本報では、熱風乾燥機を用いる製茶工程における茶葉状態のセンシングについて、茶葉温度、含水率の計測方法や、制御に有用なしとり度の概念とその計測方法について記した。

円形状グローサ・パターンを有するゴム履帯の開発と性能評価

デスリアル・ 伊藤信孝

キーワード:履帯車両、円形グローサ履帯、ゴム履帯、旋回抵抗、ピボット旋回

前報では旋回抵抗が円形状のグローサ・パターンの履帯モデルを導入することで削減できることを明らかにした。円形状グローサの実践的検証のために、円形状グローサ履帯の試作品を成功裏に製作し、その性能を評価した。砂状ロームでは、円形状グローサ・パターンゴムを履帯接地長制御を伴うピボット旋回と組み合わせて用いることで、通常の信地旋回による既存の直線状グローサ履帯に比較して旋回抵抗が著しく削減できる事を明らかにした。さらに、制動履帯下の土の攪乱も削減された。しかし円形状グローサ・パターンを有するゴム履帯は、直線上グローサ・パターンを有するものに比較してわずかながらけん引性能において小さな値を示した。

技術論文

自律走行車両のGPS位置計測に関わる傾斜補正

水島 晃・野口 伸・石井一暢・寺尾日出男

キーワード:自動走行,傾斜補正,RTK-GPS,ジャイロスコープ

近年,農用車両の自動走行に必要な位置計測手法として,GPSを使用するのが一般的になっている.しかし,トラクタのキャビン上では,GPSアンテナは地上から約2〜3mの位置に設置され,車両の傾斜によって位置誤差を生じる.本研究では,車両の傾斜によるGPSの位置計測誤差の補正法を考案した.傾斜を与えた有人直進走行を行いオフラインで傾斜補正を行った結果,補正を行わなかった場合の横方向誤差は平均17.1cmであった.これに対し補正を行った場合は平均2.1cmとなり,傾斜による影響をほぼ全て除去することができた.さらに,この傾斜補正法を適用した自動走行実験を行った.4.3m/sの直進走行で傾斜補正を行わなかった走行では,横方向偏差のR.M.S.は10.4cmであったのに対して,傾斜補正を行った時の自動走行では,R.M.S.は3.8cmと約64%の精度向上が確認された.

近赤外分光法による穀物成分測定の精度(第4報)――そばの水分,タンパク質,灰分について−−

夏賀元康・川村周三・伊藤和彦

キーワード:NIR,近赤外反射分光法,そば,水分,タンパク質,灰分

小麦,米,大豆に続き,近赤外反射分光法により北海道,カナダ,中国産のそばの主要成分である,水分,タンパク質,脂質,灰分の測定精度の検討を行った。その結果,これら3成分では実用上十分な精度のキャリブレーションが得られた。

フィリピンにおけるサツマイモの小規模加工法と製品

D. L. S. タン・宮本啓二・石橋憲一・松田清明・佐藤禎稔

キーワード:根菜類,加工システム,村落レベル,チップ,粉,グレイツ

フィリピンで行われている根菜類の小規模加工法を2品種のサツマイモ(コガネセンガンとシロサツマ)を原料として検討した。原料はフィリピン根菜類研究・訓練センター(PRCRTC)が開発したチッパ・グレイタで処理されるが,グレイテング(すりおろし)に要する電力はチッピングよりも高く,その変動は著しく大きい。粉砕機で乾燥チップなどを処理する場合,電力の変動は供給量に関係なく安定していたが,エネルギ消費量はチッパ・グレイタや精選機よりも大きい。精選機の電力はサツマイモ粉の供給量と回転数が高くなるほど増加した。乾燥チップの大きさと質量および乾燥グレイツの粒度係数は刃の回転数に影響される。コガネセンガンの場合,乾燥チップ,乾燥粉および乾燥グレイツの回収率は12%水分換算で,それぞれ33.3%,21.4%,30.4%であった。