第62巻3号

研究論文

音波による果菜類の品質評価に関する基礎的研究(第1報)―気泡分散系における縦波音速と弾性的特性の関係―

西津貴久・池田善郎

キーワード:果菜類,組織内ガス,気泡分散寒天ゲル,縦波音速,ヤング率,体積
弾性率

本研究では,果菜類の音速に大きな影響を与えると考えられる組織内ガスに注目し,ガスの存在割合と音速・弾性的特性の関係を理論的・実験的に検討することを目的とする.本報では,気泡分散系モデルによる縦波音速についてガス体積分率と連続相の弾性率を用いたモデル式を提案し,気泡分散寒天モデルを用いた実験を行った.その結果,気泡分散寒天の縦波音速は体積弾性率支配であり,ヤング率の寄与が小さいこと,そしてガスの存在によって体積弾性率が減少し,縦波音速の減少をもたらすことが明らかになった.またこれらの関係はモデル式と定性的に一致した.

大豆の通風乾燥における通風の温・湿度について(第1報) −裂皮発生の理論と実証および蒸れの発生−

井上慶一・大塚寛治・杉本光穂・村上則幸・黎文

キーワード:乾燥,大豆,裂皮,平衡水分,品質

大豆の乾燥過程で生じやすい種皮の裂皮について,外気の温・湿度と種皮における歪みとの関係を論究し,温・湿度の異なる条件下で単粒層の乾燥実験を行い,得られた裂皮粒発生割合から,裂皮発生時の歪みを近似的に推定した。これより,堆積した厚層乾燥での裂皮粒の発生が少なく,さらに蒸れを生じない通風の温・湿度条件を明らかにした。

接線応力速度を考慮した弾塑性構成式の提案および地盤材料への適用

橋口公一・堤成一郎・岡安崇史・斎藤公志郎

キーワード:塑性不安定,分岐,局所化,せん断帯,構成式,過負荷面モデル,接線応力速度

物質の変形が大になり,塑性変形を生じて破壊に至る過程においては,数種の変形モードを取り得る分岐や変形の局所化を伴う塑性不安定現象を生じる。本現象を解明し,妥当な限界荷重を予測することは,諸機械・機器の性能・所要動力・強度設計,土木・建築構造物の強度設計など工学上の重要問題である。本論文では,降伏面の接線方向の応力速度による変形を考慮することにより,塑性不安定現象の解析に適用し得る弾塑性構成式を提案する。さらに,地盤材料を対象に材料関数および係数を提案して,その具体的構成式を規定する。

インピーダンス特性による魚肉の鮮度判定(第1報)−魚肉の電気特性と高周波域の実用的鮮度指標の導出−

加藤宏郎・坂口守彦・大井 康之・丸尾 信・豊田 薫

キーワード: インピーダンススペクトロスコピー,魚肉,氷蔵時間、鮮度指標,高周波,Cole-Coleの円弧

魚介類の官能的鮮度評価法に代わる迅速かつ簡便な鮮度評価方法の1つとして、10kHz以上の高周波域での電気的評価方法の開発を試みた。電気インピーダンスやその要素の周波数特性による材料評価法はインピーダンススペクトロスコピー法とも呼ばれ、生物組織では損傷や鮮度低下など細胞レベルの劣化情報を迅速に得ることができる。本報では、マダイ背肉部分の抵抗・リアクタンスなどの周波数特性や複素インピーダンス軌跡の氷蔵期間中の変化を測定し検討した。その結果、鮮度変化に伴い明らかに変動する実用的鮮度指標として、電極分極インピーダンスが微小となる10kHz〜1MHzの高周波域から算出したCole-Coleの円弧半径、異なる周波数(10kHzと1MHz)における抵抗比と差、中心緩和周波数、リアクタンスのピーク値などを選び出した。

ラグ3面用測定装置による外力測定と作用特性の検証

岸本 正・大友功一・趙 誠○(Sung-Chan CHO)・玉利達人

キーワード:農用車輪,ラグ,推進力,転がり抵抗,接地荷重反力

農用車輪ラグの運動シミュレーションより得られた,ラグを構成する“前方ラグ面”,“外周ラグ面”および“後方ラグ面”の作用特性の解析結果を実験により検証した。これらの3面に作用する外力を測定するために,ラグ3面用小型トランスデューサを供試して法線方向力と接線方向力を各面別に独立して測定し,この2分力から車輪回転角や供試ラグの角度要素を用いて各面に作用する推進力,転がり抵抗,接地荷重反力を求めた。この結果,前方ラグ面は転がり抵抗と接地荷重反力,外周ラグ面は転がり抵抗,接地荷重反力さらに推進力,また,後方ラグ面は推進力と接地荷重反力を発生しており,運動解析より得られた結果と一致した。

両眼ステレオ視によるリンゴ園果実の距離計測(第2報) −対応問題画像の分析と対策−

高橋照夫・張 樹槐・福地 博・戸次英二

キーワード:両眼ステレオ視,距離測定,対応問題,同側視野,合成画像,偽像抑制,距離画像

両眼ステレオ視の対応問題画像への対策として,左右眼の同一側視野(同側視野)の特徴色の比較と合成による偽像抑制の画像処理手法を検討した.各視差距離断面で同側視野の特徴色の増減傾向を調べると,注視距離と対象物との前後関係が分かり,左右画像の視差距離断面のおよその対応付けができた.また同側視野合成では,偽像の発生位置が同側視野の外側か境界部分になるため,偽像抑制の可能なことが分かった.この手法をリンゴ園で撮影した果実の同順並び画像16組と重なり画像12組に適用した結果,視差距離断面の対応付けについては,±2視差刻み分以内の割合が同順並び画像で 90%,重なり画像で80%となり,同側視野合成により約5%の精度で距離を推定することができた.

茎の曲りによる切りバラの品質評価(第2報) −茎の3次元形状再構築−

森尾吉成・池田善郎

キーワード:画像処理,切りバラ,茎の曲がり,3次元形状,色ヒストグラム,回転運動

茎の曲がりを定量的に評価するためには,茎の3次元形状を求める必要がある。今回,茎を回転テーブルに固定し回転運動させることによって,回転角度毎に得られた茎の2次元形状から,運動パラメータとしての回転中心,振幅,初期位相を推定し,3次元形状を求める手法を提案した。茎の2次元形状は,画像中の葉と茎の形状の違いを利用し,さらに色ヒストグラムの違いを利用することによってより精度良く抽出することができた。

NIR反射スペクトルによる土壌パラメータの推定

李 民贊・笹尾 彰・澁澤 栄・酒井憲司

キーワード: 精密圃場管理、土壌パラメータの推定、NIR、反射スペクトル、生土壌

畑地、牧草地及び乾土水田につき、広範囲な含水比(3〜110% db)を持つ生土壌サンプルのNIR反射スペクトルを得、土壌パラメータの推定可能性を検討した。本実験対象の土壌パラメータは含水比、SOM含量、NO3-N含量、EC及びpHである。検討した結果、五個のパラメータにつき、NIR反射スペクトルによる推定は可能であった。含水比の推定では、低水分域(30% db以下)及び高水分域(70〜110% db)のそれぞれには線形回帰モデルが有効であったが、広範囲な水分を一つの回帰モデルで表現する時は指数回帰モデルがより有効であった。SOM含量とECは単波長モデルで推定できた。NO3-N含量の推定には多波長指数モデル、pHの推定には多波長線形モデルが有効であった。

技術論文

スクリュ形脱穀機構の脱穀作用について(第3報) −脱穀部トルクを低減させるこぎ胴の仕様

高橋弘行・市川友彦・杉山隆夫・渋谷次雄

キーワード:汎用コンバイン,スクリュ形脱穀機構,脱穀負荷,所要動力,こぎ胴仕様,負荷計測装置,脱穀性能,穀粒損失,予測

本報ではスクリュ形脱穀機構の所要動力低減を目的に、こぎ胴を軸方向に5つのブロックに分け、それぞれのブロック毎にこぎ歯の本数、スクリュ高さおよびピッチの仕様を変えたときの性能を、現在使用されている標準仕様と比較することで予測した。この結果、穀粒漏下率をあまり低下させずに、標準仕様よりトルクが低くなる仕様が数種類選択された。これらの仕様は、こぎ胴の先頭部分でのこぎ歯本数を減らし、先端部での負荷を軽減する構造であることで共通していた。この場合、スクリュ高さについては、こぎ胴の前部から後部にかけて順次高くすると、トルクはより低減する傾向を示した。また、予測した仕様のこぎ胴をコンバインに搭載してほ場実験を行った。

籾の薄層除湿乾燥に関する研究(第 1 報 ) - 除湿機を組み入れた閉鎖循環気系 -

M. J. C. レガラド・戸次英二

キーワード:薄層、除湿乾燥、籾、乾燥特性、乾減率、胴割れ

除湿機に相当する温湿度供給装置で通気の温度と相対湿度を種々組み合わせ、籾の薄層へ通気して乾燥実験を行い、除湿機を組み入れた閉鎖循環気系における籾の乾燥特性を明らかにした。乾減経過は指数曲線で表わされ、温度が10℃と低く相対湿度が60%と高い乾燥条件でも、水分15%の水準まで到達し得た。平均乾減率は温度の上昇と相対湿度の降下とともに高まり、温度の効果がより大きかった。40℃で40~60%の時の乾減率1.61〜2.90% d.b./h は、30℃で0.78〜1.70% d.b./hと20℃で0.45〜0.88 %d.b./hを上回わった。10℃で50〜60%の乾減率0.41〜0.50 % d.b./hはコントロ-ルとした自然乾燥の0.31〜0.36% d.b./hより若干高い程度であった。10℃では相対湿度を50〜60 % へ降下させても乾減率にはさほど影響を及ぼさなかった。軽度と重度の胴割れをハロゲン光を用いて検出した。これらを合計した全胴割れ粒は、乾減率が上昇するにつれてにほぼ直線的に増加した。

循環乾燥機を用いた高水分大豆の調湿乾燥

大黒正道・澤村宣志・小林 恭・帖佐 直・佐々木豊

キーワード:大豆,乾燥,循環乾燥機,温度,湿度,被害粒,乾燥速度,コスト

高水分大豆を循環乾燥機で熱風乾燥すると,粒内の水分勾配に起因するしわ粒や裂皮粒,また穀粒循環に起因する破砕粒が発生する。そこで,これらの被害粒の発生を抑えるために循環乾燥機に送風空気の湿度調節装置を付加した大豆用調湿乾燥機を開発し,送風温湿度制御方法や穀粒循環方法について検討した。その結果,穀粒を間欠循環するとともに,送風温度を30℃一定に維持し,送風湿度を45〜30%R.H.まで徐々に低下させる調湿制御を行うことにより,初期水分20%程度の高水分大豆の被害粒発生を5%以内に抑えることができた。また,熱風乾燥と比較して,被害粒の発生は減少するにもかかわらず,乾燥速度は向上し,ランニングコストは減少した。

ホウレンソウ収穫技術の開発(第1報) ―ベルト挟持式収穫機の開発とその性能―

吉田智一・窪田潤・前岡邦彦

キーワード:葉菜,ホウレンソウ,収穫,収穫技術,収穫機

本研究では,ホウレンソウをはじめとする非結球性葉菜を対象とした機械収穫技術の開発を目指している。本報では機械収穫に着目して,開発した収穫機とその収穫性能について報告する。開発機は,試作開発された掘り取り部,搬送部,収納部からなる収穫機構を市販の歩行用門型4輪運搬車に取り付けた構造の1条用収穫機である。収穫試験では,条間15cm,株間5cm,畝幅1.5m,1畝あたり5条播種による露地栽培様式で生育したホウレンソウを走行速度0.2m/sで収穫することができた。収穫されたホウレンソウの損傷状況は,葉茎枚数単位でみた損傷率が機械収穫直後で25%,下葉を除去した調製後で13%であった。

速報

トウモロコシ収穫用カッティングロールベーラの開発

志藤博克・山名伸樹

キーワード:トウモロコシ,細断,ロールベール,ラップサイレージ,ロールベーラ