第62巻2号


研究論文

画像処理による農用車両の作物列追従制御(第1報) −モデル車両による室内実験−

鳥居 徹,北出智史,手島 司,岡本嗣男,芋生憲司,戸田勝善

キーワード:画像処理,自律走行,作物列管理,作物列追従

本研究は,画像処理による農業機械の誘導を目的とした研究である。圃場実験の予備実験として,試作機による室内実験を行った。試作機は,バッテリによる4輪操舵,4輪駆動車である。画像処理のアルゴリズムは,YUV色変換によって作物列と畝間を識別し,境界線を最小2乗法により推定した。これを3次元透視変換によって,方位角と偏差を得て,「回転モード」と「平行移動モード」により,位置の修正を行った。実験の結果,目標線に良く追従することができた。

2輪駆動トラクタのけん引効率予測

大友功一・ 岸本 正

キーワード:トラクタ,けん引力,けん引効率,円すい指数,予測モデル

トラクタのけん引性能を評価するための一つの方法として,2輪駆動トラクタのけん引効率の予測を行なった。予測精度を検討するために,トラクタの機体条件ならびに平均円すい指数からけん引効率等を予測すると共に,土壌密度を変えた圃場でけん引性能試験を行ない実測データを収集した。けん引力およびけん引効率の実測値の予測値に対する偏差と予測最大値との比を偏差率として定義し求め,予測精度を検討した。その結果,全データの偏差率の平均値は,けん引力で0.07%,けん引効率で-0.29%となり,提案モデルは高い精度で予測できることを示した。

画像情報によるキャベツセル成型苗個体群の非破壊生育計測(第3報) 非破壊生育計測モデルの実用性

鈴木敏征・村瀬治比古・穂波信雄

キーワード:キャベツセル成型苗,個体群,欠株,栽植様式,葉面積,ニューラルネットワークモデル

本報では,前報において構築したキャベツセル成型苗個体群の非破壊生育計測モデルを,欠株により栽植様式を変化させた評価用個体群に当てはめ,モデルの実用性について検討した。個体群全体の葉面積の増加に伴う評価用個体群の被度及び明度標準偏差の変化は,欠株のない個体群と同様であった。評価用個体群における個体群全体の葉面積の,予測値と実測値間の決定係数は0.937であり,高い適合性を有した。同一の非破壊生育計測モデルにより栽植様式の異なる個体群の葉面積の非破壊計測が可能であることから,モデルの実用性が確認された。

自動うね合わせのための作物列センサ(第2報) ──実用的作物列検出法の検討──

岡本博史・端 俊一・高井宗宏

キーワード:作物列センサ,自動うね合わせ制御,光学的検出,リアルタイム検出,検出精度,処理速度,2列検出,1列検出

前報で開発検討した作物列検出手法を改良し,中央2列の作物列を検出する方法(2列検出法)と,1列を検出する方法(1列検出法)の2通りについて検討した。トラクタ前部に取り付けたカメラで連続画像を取得して検出実験を行った結果,2列検出では,作物の状態によっては検出誤差が大きくなることがあった。一方,1列検出では,2列検出よりも良好な検出精度が得られ,カメラ位置に対する作物列のオフセットの検出誤差(R.M.S.)が1.68〜1.75cm,方向角の検出誤差(R.M.S.)が0.65〜1.08°となった。また,検出演算に要する時間は,両手法共に1画像当たり5〜6msであり,実用上十分な処理速度が得られた。

稲稈の周波数応答特性に関する理論的考察

井上英二・平井康丸・橋口公一・岡安崇史

キーワード:汎用コンバイン,固有振動数,周波数応答特性,稲稈,不均一断面,レーリー法

汎用コンバイン集稈部(リール)と作物稈との機械的相互作用から収穫作業の精度・能率向上に寄与するリールの設計パラメータを究明するため,収穫対象となる作物稈(稲稈)の動特性の解明を試みた。まず,稲稈の加振実験を行い稲稈の動特性を表現しうる周波数応答特性(加振周波数に対する振幅比)並びに固有振動数を明らかにした。また,加振実験結果から,片持ちはりの曲げ振動理論に基づく固有振動数算定式を稲稈に適用し,稲稈の固有振動数に関与する変数について検討を行った。さらに, 不均一断面を有する稲稈の固有振動数の解析にレーリー法を適用し,その計算結果の妥当性について検討を行った。

ゴム履帯の走行抵抗に関する研究(第2報) −転輪の転動抵抗による走行抵抗の解析的シミュレーション−

稲葉繁樹,井上英二,橋口公一,松尾隆明

キーワード:ゴム履帯,転輪,転動抵抗,走行抵抗,内部抵抗

前報において,ゴム履帯に対する転輪の上下変動と転動抵抗について測定を行った結果,転輪荷重による履帯の変形特性が転動抵抗の発生要因の一つであることが明らかとなった。そこで,本研究では,前報の結果とともに農用ゴム履帯走行部の力学モデルに基づく静的釣り合い方程式により,履帯走行抵抗シミュレーションを実施し,その妥当性について検証実験を行なった。その結果,転輪の転動抵抗からなる走行抵抗を予測することが可能となった。また,転輪配置の違いによる走行抵抗の大小を定量的に評価することが可能となった。

マシンビジョンによる精密ほ場管理のための作物窒素 ストレスセンシングシステム(第1報)―システムの基本構想と基礎実験―

飯田 岳・野口 伸・石井一暢・寺尾日出男

キーワード: 精密ほ場管理, ディジタル葉緑素計,窒素ストレス,分光反射特性

精密ほ場管理技術による適切な窒素施肥管理が,収量増加,環境保全や生産コスト削減の面から期待されている.本研究はマシンビジョンを用いた作物窒素ストレスのリモートセンシングシステムの開発を最終目標とし,本報ではシステムの構想を概略した.既往のディジタル葉緑素計や葉色カラースケールに対し,葉面反射率を測定するマシンビジョンによる窒素ストレス診断法を提案した.トウモロコシ葉面の分光反射特性を調べた結果,反射測定においては550nm,650nm分光が窒素ストレス推定に適していると判断し,今後屋外実験においてマシンビジョンに装備する光学バンドパスフィルタの波長帯を550nm,650nmに決定した.

米飯物性による米の品質評価技術の開発 (第2報)−湯取り炊飯法における米のねばりに係わる品質−

清水 直人・木村 俊範・オジジョ O.N.K.

キーワード:湯取り炊飯法,米飯,含水率,糊化度,溶出固形物量,粘着力

湯取り炊飯法を用い,炊飯過程の米のねばりに係わる測定を行い,米飯の粘着力に関与する理化学的要因を明らかにすることを目的とした。糊化定数と溶出固形物量の増加速度の順序が対応することが分かり,糊化度や溶出固形物量が米飯の粘着力に影響を及ぼすものと考えられた。炊飯過程における米のねばりが粘着力,溶出固形物量や糊化度を用いて測定できることを示した。

マシンビジョンによるイチゴの選別システムに関する研究(第2報) -イチゴ(章姫)の向きと判定の機能を備えた選別システムの開発-

ペピ トメンギト バト,永田雅輝,曹 其新,日吉健二,北原上雄

キーワード:マシンビジョン,画像処理,イチゴ選別,方向,等階級判定

第2報では,イチゴの向きと等階級判定機能を備えた選別ソフトウエアの開発と選別システムの構築を行った。開発したソフトウエアは,第1報の方向決定ソフトウエアで向きを決定した後,イチゴの最大幅と高さによる面積とイチゴの上部形状面積との比から等級を判定し,画像面積Aから階級を判定するものである。選別システムの構成は,方向決定ソフトウエアと等階級判定ソフトウエアを備えたソフト部と,ベルトコンベア,ロボット,コンピュータ,CCDカメラのハード部からなる。章姫を用いた選別実験の結果,どの向きの章姫に対しても選別判定性能は等級で98.6%,階級で100%と高い性能が得られた。判定時間は1.18秒以内であった。以上より,開発した選別システムの有用性が確認できた。

ロボットによる結球野菜の選択収穫の研究(第4報) −力覚センサと収穫実験−

丁碩R・藤浦建史・石束宣明・土肥 誠・上田弘二

キーワード:ロボット,結球野菜,力覚センサ,選択収穫,レタス

収穫適期の結球レタスを選択的に収穫するロボットの技術開発を目的として,本報ではレタスの結球度合を判断するため,力覚センサを試作して球頭部の硬さを計測した。また,試作したロボットを用いて収穫実験を行った。その結果,力覚センサで計測した結球部の硬さから結球度合を判断することは有効であると考えられた。また,収穫適期のレタスの94%が収穫され,1個当たり収穫所要時間は,実験のためのデータ保存の時間を除くと,11.3sであった。

エンドエフェクタに三次元視覚センサをもつミニトマト収穫ロボット(第1報) −ロボットの構成と基礎実験−

韓麗B藤浦建史・山田久也・石束宣明・土肥 誠

キーワード:農業用ロボット,ミニトマト,障害物回避,果実収穫,自動化

エンドエフェクタに三次元視覚センサを装着したミニトマト収穫ロボットを試作して基礎実験を行った。エンドエフェクタは,吸引力により果実を収穫するもので,障害物を避けて収穫できるよう,左右振りの機構を持たせた。さらに三次元視覚センサを小型化してエンドエフェクタに装着することにより,マニピュレータの動きとエンドエフェクタの左右振りを利用して,正面走査以外に茎葉等の隙間から側面の走査も行うようにし,位置を固定したセンサでは見にくい対象物も認識できるようにした。基礎実験の結果,赤熟果実の位置をほぼ正確に計測することができた。また,三次元画像を処理して側面走査する空間を認識することも可能であった。

エンドエフェクタに三次元視覚センサをもつミニトマト収穫ロボット(第2報)−画像認識及び収穫実験−

韓麗B藤浦建史・山田久也・石束宣明・土肥 誠

キーワード:農業用ロボット,ミニトマト,障害物回避,果実収穫,自動化

エンドエフェクタに三次元視覚センサを装着したミニトマト収穫ロボットを試作して,ハウス内で画像認識及び収穫の実験を行った。このロボットは,まずロボット正面の走査を行って赤熟果実と障害物を認識し,障害物を避けて果実を収穫する。さらに正面の画像に果実が見えないような死角がある場合,茎葉等のすき間から側面走査する空間が見つかれば側面走査を行い,これによって認識した果実も収穫する。実験の結果,供試した赤熟果実の大部分を認識して収穫できた。しかし果実の落下を減少させること,へたを付けたまま収穫することが課題として残された。

潤土直播水稲における苗立ちの局所ばらつきと耐倒伏性

国立卓生・澁澤 栄・宮下高夫・笹尾 彰

キーワード:潤土直播,分げつ数,株分布,株支持力

潤土直播水稲において,同播種密度で倒伏差の生じた圃場内の一部を対象に,苗立ちの局所ばらつきと耐倒伏性の関係について調べた。その結果,倒伏開始箇所の1株穂数の頻度ピークは2本で,倒伏区や無倒伏区の3本,同程度の株密度を持つ無倒伏対照区の3本と比べて少なく,ボロノイ多角形面積の分布にも差があった。また,倒伏区は無倒伏区よりも根張りが浅く,株支持力が弱かった。株分布の差を把握するためには,1株から数株単位で観測することが必要である。

生分解性フィルムを用いた早期水稲マルチ栽培の機械化に関する研究(第1報) -ナイロンコードを用いた生分解性フィルム用マルチ穴開け機構について-

ベルナルド D. タデオ,永田雅輝,御手洗正文,石野文俊,日吉健二

キーワード:マルチ栽培,早期水稲,生分解性フィルム,環境保全

本報は,生分解性フィルムを利用した環境保全型早期水稲マルチ栽培システムを研究するために,生分解性フィルムの物理的強度,保温性,分解性,水稲生育状況等の特性について検討した。生分解性フィルムは,ポリエチレンフィルムに比べて,横方向の引張り強度および引裂き強度が弱く,保温性はポリエチレンフィルムに比べてO,3〜O.8℃低く,光量子のフィルムから反射する量は2〜5%程高かった。生分解性フィルムの植物成長に与えるマルチ効果はポリエチレンフィルムとほぼ同じであった。一方,生分解性フィルムは,マルチ効果が必要な初期生育期間の分解は少なく,3ヶ月以降から急激に分解することから,早期水稲のマルチ資材として有効的に利用できることを確認した。

生分解性フィルムを用いた早期水稲マルチ栽培の機械化に関する研究(第2報) -ナイロンコードを用いた生分解性フィルム用マルチ穴開け機構について-

ベルナルド D. タデオ,永田雅輝,御手洗正文,石野文俊,日吉健二

キーワード:マルチ栽培,早期水稲,生分解性フィルム,フィルム切開機構,ナイロンコード,田植機

水田へ敷設する生分解性フィルムへマルチ穴を切開するために,ナイロンコードを用いたマルチ穴開け機構を開発した。本機構は,回転式植付け機構を持つ田植機の植付アームに組付けられ,切削部品として安全性の高いナイロンコードを用いること,苗植付けの直前にナイロンコードの衝撃力でマルチ穴を切開することを特長としている。最適なマルチ穴長を求めるために,植付け爪とナイロンコードの運動軌跡を求めた。その結果,理論値および実験値から,マルチ穴長はナイロンコード長および取付け角度,植付け深さと植付け間隔に影響されることが判った。植付け間隔120〜160mm,植付け深さ10〜50mmの条件で理論値と実験値の差は最大でも5mm程度であり,苗の植付けに必要かつ十分な長さのマルチ穴を切開することができた。よって,本機構は水稲マルチ栽培用田植機のマルチ穴切開機構としての有用性を認めた。

技術論文

移植田と散播田における水稲の収量マップの作成

庄司浩一・川村恒夫・堀尾尚志

キーワード:収量マップ,水田,コンバイン,ロードセル,近接スイッチ,ばらつき

近年の精密農法への関心の高まりをうけて, 移植水田(30a)2枚と散播水田(63a)1枚において収量マップ作成を試みた。コンバインの位置および速度を近接スイッチ,籾流量をロードセルで測定し,推定した刈り幅にあわせて収量マップを作成した。移植田では人為的に防除方法を変えた影響を除くと収量のばらつきはほとんど認められなかった。散播田では雑草及び病虫害により大きなばらつきが生じた極端な例となった。

速報

画像マッピングシステムの開発

柴田洋一・荒木 幹・鳥山和伸・佐々木良治・浅野修・広川 誠

キーワード:精密農法,マッピング,局所管理,画像処理