第62巻1号

研究論文

画像処理による黒大豆しわ粒の判別(第1報) −線形判別関数による判別−

伊藤博通・山下律也

キーワード:画像処理,黒大豆,線形判別関数,しわ粒,テクスチャ特徴量

本研究の目的は黒大豆(丹波黒)乾燥処理後に発生する被害粒の自動判別である。このための基礎的技術として,被害粒の一種であるしわ粒の判別アルゴリズムを作成した。デジタルカメラを使用して黒大豆画像を撮影し,これをコンピュータによって画像処理した。この結果入力画像の第1次および第2次統計量やランレングス統計量などのテクスチャ特徴量が求められた。これらの画像特徴量を用いて線形判別関数を構成し,整粒としわ粒の判別を行った。誤判別率は最小値で18%となった。

拡張下負荷面モデルを導入した有限変形・土−水連成有限要素解析プログラムの開発

橋口公一・岡安崇史・堤成一郎・上野正実

キーワード:拡張下負荷面モデル,土−水連成有限要素解析,繰返し負荷,有限変形,ダルシー則

本研究では,単調ならびに繰返し負荷を受ける土の弾塑性・有限変形挙動と,ダルシー則に従う間隙水の流動の連成現象を合理的に予測するために,拡張下負荷面モデル(非古典弾塑性構成モデル)を導入したFEMプログラムを開発した。本FEMプログラムによる解析結果の妥当性を三軸試験の実測値との比較により検証した。正規圧密粘土の圧縮せん断強度と軸ひずみ速度の関係は,FEM解析結果と実測値に極めて良い一致が確認された。また,均質一様な三軸供試体でも排水遅れを伴う圧縮せん断変形が進行している場合には,不均一変形を呈することを指摘した。

作型特性を考慮したサトウキビの収穫法の改善(第3報) −収穫順序および収穫開始時期の最適化例−

孫麗女亜・上野正実・大嶺政朗

キーワード:サトウキビ,作型,収穫法,遺伝的アルゴリズム,シミュレーション,最適化

作型の特性を考慮して収穫順序や収穫開始時期を最適化するために,第2報で述べた遺伝的アルゴリズム(GA)を用いてシミュレーションを行った。経験的な考察より導いたモデルなどとの比較によってGA解は最適解と見なせ,その収束も早いので本問題の解析に有効であることを示した。最適解などの特性から,成熟したサトウキビから順に収穫するのがよいこと,収穫順序によっては大きな経済的損失が発生することを明らかにした。さらに,収穫開始時期に対して適応度はピークをもつ曲線となり最適解が存在することを明らかにした。

潤土直播水稲の作溝による耐倒伏性の向上

国立卓生・澁澤 栄・宮下高夫・笹尾 彰

キーワード:潤土直播、株倒伏、作溝、株支持力、地耐力

潤土直播水稲の耐倒伏性の改善策として、作溝による株支持力向上の効果を検討した。また、作溝型潤土直播の株支持力について散播との比較試験を実施した。その結果、作溝は根系の発達による地耐力の強化及び株支持力を向上させた。また、耐倒伏性の弱い散播直播でも、作溝により株支持力が向上した。

両眼ステレオ視によるリンゴ園果実の距離計測(第1報) −左右画像合成による距離測定方式−

高橋照夫・張 樹槐・福地 博・戸次英二

キーワード:両眼ステレオ視,距離測定,合成画像,視差距離,RGB濃度分散,鮮明さ,カラー画像,距離画像

両眼ステレオ視で果実の位置・距離を計測する手法を確実にするため,左右画像合成方式の測定原理とその基礎的性質を検討した.一対の左右画像から作成した視差距離断面群での合成像の鮮明さを比較・判定して,空間内の物体の色特徴,位置及び距離を取得する方法で行った結果,撮影距離1〜4m間で±2%以内の高い距離精度であった.赤色円板を対象に,鮮明さの指標としてRGB濃度分散とその8方向の平均分散の性質を実験によって検討したところ,対象像全体を比較範囲としたとき,ほぼ適切なカラー画像と距離画像が同時に得られた.この方法を収穫期のリンゴ園で赤色系果実を対象に適用を試みた.距離誤差は4%の範囲内となり,現場での利用に十分な精度をもつと判断された.

マシンビジョンによるイチゴの選別システムに関する研究(第1報) -イチゴ(章姫)の向きを決定するソフトウエアの開発-

永田雅輝,ペピト メンギト バト・御手洗正文・曹 其新・北原上雄

キーワード:マシンビジョン,画像処理,イチゴ選別,方向,等階級判定

筆者らが先に報告したイチゴ選別システムはイチゴを同じ向きで供給し判定するものであった。イチゴ選別システムの自動化においては,イチゴの供給向きに関係なく,0度〜360度のどの向きからでも判定できることが望ましい。そこで,本論文は章姫を供試イチゴに用いてイチゴの向きを決定するソフトウエアの開発とその検証試験を行った。検証試験は,AおよびB等級の章姫画像から幅,高さ,角度等の特徴抽出を行い,各向きの特徴抽出値について標準誤差およびt-検定を行った。その結果,標準誤差は測定されたすべての特徴抽出値において非常に小さな値であった。また,角度0度の基準向きと各角度の向きを比較した特徴抽出値のt-検定の結果は,いずれの場合も有意差が認められなかった。よって,開発したソフトウエアは章姫の向きを正しく決定できることが確認された。

技術論文

黄色種タバコ用収穫機に関する研究(第3報) −試験機器の改善と作業性能試験−

春園輝夫

キーワード:タバコ収穫機,葉たばこ,黄色種タバコ,こき落し機構,乾燥用吊り具

試作した試験機T型や乾燥用機器の実用性を検討するために,1992年より1994年の3年間黄色種葉たばこ産地において実用試験を実施した。本実用試験において提起された試験機器のトラブルや改善要望に対し,試験機T型の収容装置や葉もぎチェーンなどに改良を加え,改良機として試験機U型を試作し,その所要動力計測試験,収容装置改善試験,着葉位置別,作業速度別,および品種別の収穫作業精度試験を行った。その結果,所要動力は減少し,収穫作業精度は向上した。また,収容装置では搬送抵抗力増大とともに擦り傷が増えたため,ベルトコンベヤに貼り付けた突起の形状変更と,ローラとベルトコンベヤ間の隙間調節が行える構造へ改善したため,損傷葉が減少した。乾燥用機器についても軽量化や葉肉破壊の減少対策などの改善を行った。

黄色種タバコ用収穫機に関する研究(第4報) −葉たばこ産地における実用試験−

春園輝夫

キーワード:タバコ収穫機,葉たばこ,黄色種タバコ,こき落し機構,乾燥用吊り具

試験機T型やU型および乾燥用機器の実用性について検討するため,黄色種葉たばこ産地延べ75箇所において,1992年から1994年にわたり実用試験を実施した。実用試験での各試験機の収穫作業精度は,年次や着葉位置で差はあったが,収穫率の平均値は81.4%〜89.9%となり,実用的な値と判断された。また,損傷葉率の平均値は1.6%〜3.4%となり,実用上許容される範囲であった。しかし,未熟葉,病害葉,濡れ葉が収穫された場合や,作柄の不斉一などの悪条件が重なると,手収穫に比べ乾燥後の葉たばこの外観品質は低下する傾向にあった。機械収穫技術の習熟不足などから収穫作業の省力効果は 42.1%に留まった。実用試験の作業能率調査結果を基に経済性について検討したところ,慣行作業と機械収穫作業との損益分岐点は,処理面積約3.6haとなった。本報までの各試験結果により,試験機U型と改善した乾燥用機器は収穫と乾燥作業用の実用機器として,1995年より黄色種葉たばこ産地に導入が開始された。

立毛脱穀に関する研究(第1報) −水稲収穫性能−

杉山隆夫・市川友彦・高橋弘行・日高靖之・牧野英二

キーワード:コンバイン,省エネルギ,立毛脱穀,水稲

穀物収穫作業のより一層の省エネルギ化,低コスト化を図る新しい収穫システムを開発するため,立毛脱穀の研究を行った。供試した立毛脱穀ヘッダは,作業幅が2.5mで,可動フード,くし状の突起をもったヘッダ部ロータ,コンベヤ,取込みオーガからなり,作物を可動フードで押し付けながら,立毛状態のまま,くし状の突起で収穫し,コンベヤ,取込みオーガで後方に搬送するものである。この立毛脱穀ヘッダを汎用コンバインに取り付け,水稲に供試してヘッダの性能特性及び立毛脱穀コンバインの収穫性能を調査した。その結果,ヘッダ部ロータ周速度/作業速度比と収穫性能,作物の倒伏状態と収穫性能の関係及び同ヘッダの省エネルギ効果等を明らかにした。

立毛脱穀に関する研究(第2報)−小麦収穫性能−

杉山隆夫・市川友彦・高橋弘行・日高靖之・牧野英二

キーワード:立毛脱穀,コンバイン,小麦,省エネルギ

水稲への適応性を調査した立毛脱穀ヘッダを小麦に供試し,立毛脱穀ヘッダ及び同ヘッダを装着した立毛脱穀コンバインの小麦収穫に対する適応性を調査した。一連の試験で,ヘッダ部のロータ周速度/作業速度比と収穫性能や倒伏状態と収穫性能の関係等を明らかにするとともに,同ヘッダの省エネルギ効果により従来のリールヘッダを装着したコンバインよりも2〜3倍の高速で作業が可能であることを確認した。また,立毛脱穀コンバインの問題点の一つである残稈の処理方法の検討も併せて行った。

水田土壌における機械的深層施肥に関する研究 ―移植法と直播法における窒素損失と収量に関する評価―

バウティスタ,E.U.,スミニストラード,D.C.,小池正之

キーワード:機械的深層施肥,窒素,水田土壌,水稲,流亡損失,アンモニアガス揮発,収量,施肥効率

軟弱な水田土壌中への機械的深層施肥を効率的に行い,同時に3種類の供試施肥機の性能改善に適用しうる設計変数の特定を行う目的で,粒状,ペレット状,液状肥料を用いて,移植法と直播法(ともに分施法)に対する深層施用効果を調べた。覆土機構を装備した窒素肥料の深層施用は,窒素成分の流亡損失と蒸発損失を低水準に抑えることが分かった。移植法における深層施用で窒素施用量を慣行法に比べて40〜60%減らした場合,収量は増加し,窒素施用効率は約2倍に達した。しかし直播法では,深層施肥法と分施法の間で生育上の差異は見られなかった。3機種の肥料繰出し機構は異なっているが,いずれの事例においても深層施肥法の収量性と窒素施用効率は良好であった。これらの結果に基づいて,深層施肥機構の改善に関わる提言を行った。