第61巻6号

研究論文

画像処理によるイチゴの形状判別(第2報) ―― 特徴量の提案 ――

木下 統・永田雅輝

キーワード:画像処理,イチゴ,形状,判別,特徴量,ロジスティック回帰分析

イチゴ形状の判別のための特徴量について検討した。まず,筆者らの現在までの研究成果と経験にもとづいて,12個の特徴量を提案した。そして,それらの特徴量の統計的な分布がどのようになっているのかを調べた。また,特徴量を一つ用いることで判別が可能なのか,それとも,複数の特徴量を必要とするのかを検討した。その結果,A・B等級に関する各特徴量の統計的な分布は,等級間で異なるものと,等級間の差がないものとがあった。等級間の分布に差がある特徴量については,品種ごとに異なっていた。また,判別には一つの特徴量のみを用いるのではなく,複数の特徴量を組み合わせて用いる必要があると考えた。

画像処理によるイチゴ形状の判別(第3報) ―― 特徴量の選択 ――

木下 統・永田雅輝

キーワード:画像処理,イチゴ,形状,判別,特徴量,ロジスティック回帰分析,変数選択

画像処理を用いてイチゴ形状を判別する際に,どの特徴量を用いればよく判別ができるのか,また,その特徴量は品種によって異なるのかについて検討した。ここでは,統計的に特徴量を選択する手法について述べて,選択された特徴量による判別モデルの良否を調べた。その結果,統計的手法を用いることで,より有効な特徴量を選択することができた。また,その特徴量は品種ごとに異なっていた。判別精度については,全体的に高い一致率であった。判別モデルを構築していく段階で,統計的に特徴量を選択する手法が,補助的なかたちで十分使えると考えた。

茎の曲りによる切りバラの品質評価(第1報) −茎の抽出法−

森尾吉成・池田善郎

キーワード:画像処理,切りバラ,外観品質,茎の抽出,茎の曲がり

本研究は,画像処理を利用した切りバラの茎の形状計測による,茎の曲がりの定量評価を目的とする.今回,画像中の茎を抽出する手法として,葉部と茎部の投影面積の違いを利用する面積抽出法と,葉部と茎部の幅の違いを利用する幅抽出法の2手法を独自に開発した.茎以外の部分として,花弁部は,その色相の違いから除去し,葉部は,メディアンフィルタ,領域分割,高次回帰曲線を順に適用することによって漸進的に除去した.実験の結果,幅抽出法は面積抽出法よりも性能が高く,推定した茎骨格線の最大誤差は茎幅の約2倍であった.

バウンシングトラクタの非線形力学とカオスに関する理論解析

酒井 憲司

キーワード:衝撃振動子,バウンシング、トラクタ,非線形力学,カオス,分岐,ポアンカレ断面

トラクタの舗装路面単独走行時おける転倒・転落事故が農作業死亡事故の第1要因となって久しい。しかし、事故原因については何らかの例外的・突発的な事態が発生したと推定されているのみで、そのメカニズムについての明確な理解は未だ得られていない。路面の凹凸によって発生する大きなバウンシングが、トラクタ道路単独走行時の転倒事故の遠因ではないかとの問題意識から、従来のトラクタの線形振動モデルを拡張した非線形振動モデルを構築し、動的特性を力学系解析によって明らかにした。それによって、従来の線形振動モデルに基づいた考察からは、例外的・突発的と考えられる倍周期振動、準周期振動、カオス振動などの発生が理論的に確認された。

GPによる植物病害の自動診断用識別パラメータ作成

佐々木豊・岡本嗣男・芋生憲司・鳥居徹

キーワード:植物病害、自動診断、分光反射率、識別パラメータ、遺伝的プログラミング

本研究では環境保全を念頭にした未来の植物管理手法の重要な技術となる植物病害の自動診断システムを提案し、その基礎研究を行ってきた。これまでに植物病害の診断には650nmの波長情報が有効であり、その波長情報を使用した健全葉と病葉の識別パラメータであるP0やTh_M0を考案し、その有効性を示した1)-3)。その次の段階として本論文では以下の結果を報告する。1)作成した識別パラメータは屋外における診断でも有効であった。 2)遺伝的プログラミング(GP)を導入し、複数の識別パラメータを組み合わせ、より識別率の高い新たなパラメータが作成できた。

繰返しねじりせん断における中空円筒試料土の動的挙動(第2報) ―試料土の破壊に係る諸変数について―

P.ウサボリスット・小池正之・余田 章・佐藤純一・長坂善禎・B.バハラヨーディン

キーワード:動的せん断強さ,限界状態,繰返しねじりせん断,応力,ひずみ,側圧,有効側圧,有効応力比

トラクタ旋回時等に発生する土の破壊現象を解明するため,砂壌土を供試して動的せん断強さに係る実験的検討を行った。土の破壊現象は,せん断強度と限界状態理論の観点から考察した。試料土が破壊する時のねじりせん断応力を特定することができた。この応力以下の領域では,繰返し載荷数を増加しても破壊しなかった。一方,ねじりせん断応力を標準設定値より大きくとった場合,1回目の印加サイクルの途中で破壊する事例も観察できた。また,破壊に至るまでの繰返し載荷数と関与変数との関連性についても詳細に調べた。

接ぎ木苗生産の機械化に関する研究(第3報) −−活着・順化装置の試作とプラグ・イン接ぎ木苗の特性−−

西浦芳史・穂波信雄・平知明

キーワード:接ぎ木,活着,順化,苗特性,結合強度,TR比,ファイトテクノロジー

前報までに新しく提案したプラグ・イン接ぎ木法の加工装置についてトマト(Lycopersicon esculentum Mill.)苗を材料に検討した。その接ぎ木実験の結果で,活着程度の評価は活着率だけでは不十分であり,活着後の生育活性などを加える必要性が生じた。さらに,活着・順化装置の役割も重要であることが明らかとなった。そこで,本報では,活着率,生育活性の向上を図るべく活着・順化装置を試作し,その有効性を検討した。その結果,超音波加湿方式が温湿度制御の安定性と即応性で比較的に優れていた。次に,この試作活着・順化装置を用いて成苗させたプラグ・イン接ぎ木苗の特性を調べた。その結果,等法性を持った接合形状であるプラグ・イン法は,接合面が大きくかつ密着度が高くなった。穂木・台木間における養水分の通道が円滑で,地上部および地下部の発達がバランスよく生育し,シンクとソースの相互作用が十分に発揮されていた。また,茎軸の軸心全体を全周で支持するため,台負け現象は生じないことが明確となった。

接ぎ木苗生産の機械化に関する研究(第4報) −−接ぎ木操作の自動機械化−−

西浦芳史・穂波信雄・平知明

キーワード:接ぎ木,自動化,所要時間,成功率,トマト

本研究は,植物生理に基づいた全く新しい接ぎ木法として提案したプラグ・イン接ぎ木法を基本とした接ぎ木苗生産の機械化に関するものである。前報までは,トマト(Lycopersicon esculentum Mill.)苗を材料とした加工,活着・順化,成苗に至るまでの検証実験結果をもとに,このプラグ・イン接ぎ木法の有効性を示した。ここでは,半自動型の接ぎ木加工操作機械を試作し,その性能を評価すると同時に自動機械化における問題点について整理を行った。試作機は成功率90%,人手による挿し接ぎの1.4倍の処理速度であった。グッリパ性能,切削抵抗,切り屑の排除,中心ずれ,接合挿入力に関わる問題を抱えている。

おがくずガス化発電用ガス発生炉の性能に関する実験的研究 −可燃ガス発生プロセス、炉内温度分布および生成ガス・固形分組成の分析−

清水幸丸・松平恒夫・法貴誠

キーワード: ガス化,バイオマスエネルギー,エネルギー変換,おがくず

おがくずを燃料としたガス化コジェネレーションプロセスを開発し、改良を重ねてきた。ガス発生炉は竪型の移動床で、炉底から吸引される空気によりおがくずを燃焼し、その燃焼熱を熱分解の熱源としている。生成ガスは、洗浄後ガスエンジンを駆動し直結した発電機により電力に変換される。エンジン排ガスから温水を回収し、さらに温風に変換し木材の乾燥に用いており、プロセス全体のエネルギー回収効率は50%を越えている。しかしながら炉内の反応状況については不明な部分が多く、プラントとしてスケールアップを図る観点からも炉内の状況を把握することは重要であると考え、生成ガス性状、炉内温度分布および発電出力などの運転性能との関係について詳細な計測を実施した。さらに5年間操業してきた炉を停止し、炉堀を行い炉内の状況を詳細に調査した。その結果、以下の点が明らかとなった。@ガス発生炉の冷ガス効率は約50%であり、発熱量が4〜6MJ/Nm3のガスを安定して回収できる。Aおがくず中の固定炭素の燃焼熱を熱源とし、700℃程度の温度領域で安定したガス化が行われている。B炉内に充填された未反応のおがくず層は、タール除去およびガスの偏流防止に効果的な役割を果たしているが、通気抵抗の原因でもあり、この堆積層厚さは設計上最も重要な要素である。

赤外線熱画像によるリンゴの検出に関する研究(第4報) −左右ステレオ画像によるリンゴ果実までの距離の計測−

張 樹槐・高橋照夫・福地 博・孫 明・寺尾日出男

キーワード:赤外線熱画像,ステレオ画像,対応付け方法,単純類似度

著者らは,これまで赤外線熱画像を利用してリンゴ果実や葉・枝などの温度分布特性をリアルタイムに計測し,リンゴや葉などの温度変化の特徴及びそれらと外気温との関係について検討した。また遺伝的アルゴリズムに基づくリンゴ果実のパターン認識方法を提案した。本報は,それらの研究結果を踏まえ,ユークリッド距離による単純類似度を計算し,左右のステレオ画像の中にあるリンゴ果実の対応付け方法,及び果実までの距離の計測方法について検討を行った。その結果対象となる果実について,単純類似度による果実の対応付けはほぼ正確にできることを確認した。また果実までの距離の計測精度は,実測値との誤差が最大で17cm(約8%)の結果を得た。

自律走行車両のための作業機走行軌跡制御(第2報) ―前輪操舵車両の場合―

リリック スティアルソ・瀧川具弘・小池正之・長谷川英夫

キーワード:軌跡制御、非ホロノミック拘束、前輪操舵車両、多項式

前輪操舵車両に装着した作業機の軌跡制御法開発のために研究を行った。前輪操舵車両の運動には「非ホロノミックな拘束」として知られる制限が存在する。この拘束に抵触せずに出発点から目標点まで多項式で表した軌跡にそって車両を誘導する制御である。車両自身(後車軸中心)を多項式軌道にそって走行させる場合には、出発点と目標点とを指定すれば軌道方程式を直接決定できたが、車両に装着した作業機での軌跡方程式の決定には計算を繰り返し行う必要があった。この方法は前進している車両の後部に装着した作業の軌跡制御に直接応用できないが、車両が後進する場合には応用できる。よって、時間軸の反転により軌跡制御が可能であった。これら軌跡制御法の性能はシミュレーションにより確認した。

無人追走方式の研究(第2報)

飯田訓久・前川智史・工藤壮司・梅田幹雄

キーワード:農業ロボット,自律走行,追走制御,超音波センサ,自脱コンバイン

農作業の能率向上や省力化を行うため,一人の作業者が2台以上の農業機械を同時に運行する方法として,無人追走方式を考案した。この方式は,超音波を用いて車両間の相対的な位置を検出し,作業者が運転する先行車両の後ろをコンピュータ制御の追走車両が追従走行するものである。本報では,第1報で述べた車両間の相対的な位置を計測する装置を2台の自脱コンバインに搭載して,コンクリート路面上で追走制御実験を行った。この結果,オフセットがある場合でも追走車両は精度良く追従走行できることが確認できた。

作型特性を考慮したサトウキビの収穫法の改善(第2報) −遺伝的アルゴリズム(GA)による最適化法−

孫麗女亜・上野正実・大嶺政朗

キーワード:サトウキビ,作型,収穫法,遺伝的アルゴリズム,自己交叉,最適化

作型の特性を考慮してサトウキビの収穫法を改善するために,第1報で提示した単位収量モデルおよび糖度モデルを用いて,遺伝的アルゴリズム(GA)の適用を検討した。本報では,収穫順序および収穫開始時期の最適化の方法について述べた。まず本問題は組み合わせ最適化問題に帰着できることを示し,次にいくつかの基本仮定のもとに遺伝的アルゴリズムを適用するための定式化を行い,具体的な解析法を開発した。 適応度の計算に関連して,作型の推移式を記述し,作型構成ベクトル,作型推移マトリックスの特性を示して,作型推移マトリックスおよび作型対応ベクトルを求めた。

自動うね合わせのための作物列センサ(第1報) ──処理システムの比較と性能評価──

岡本博史・端 俊一・高井宗宏

キーワード:作物列センサ,うね合わせ制御,光学的検出,リアルタイム検出,検出精度,処理速度

本研究では,畑作管理作業時の自動うね合わせに適用可能な作物列検出センサを開発した。この検出法は,作物列画像を遠視野・近視野に分け,緑(G)と赤(R)の輝度を縦方向に積算し,演算(G−RまたはG/R)を行う。そして,このグラフのピーク位置を遠近で結んだものを作物列として検出する。本報告では,カラーラインセンサでハード的に積算を行うハードウェア処理システムと,市販CCDカメラからの画像をソフト的に積算するソフトウェア処理システムを比較した。その結果,ソフトウェア処理システムの方が,装置コスト,柔軟性,検出性能などの点で優位であった。ソフトウェア処理システムの場合で,誤検出が約20%生じ今後に課題を残したが,誤差平均と処理速度については実用値に近い値が得られた。

技術論文

履帯式車両の旋回抵抗算定のための理論的モデル

デスリアル・ 伊藤信孝

キーワード:履帯車両、旋回抵抗、摩擦抵抗、排土抵抗、旋回抵抗モーメント比、矩形/円形グローサ履帯

履帯式車両が路外での走行性において優れていることは明らかで るが、旋回性能についてはかなりの問題が る。これまでに伊藤らにより提案されている制動履帯の接地長を制御するピボット旋回を用いての旋回抵抗削減法は、履帯式車両の旋回抵抗改善の効果的な方法と考えられる。本報は矩形及び円形状のグローサ・パターンを有する履帯モデル双方についての旋回抵抗算定のための理論的モデルについて論ずるもので る。提唱したモデルの検証から算定結果が実験結果とよく一致していることがわかった。

自動走行田植機の開発(第1報) - リアルタイムキネマティックGPSによる位置認識と自動走行-

長坂善禎・谷脇 憲・大谷隆二・重田一人・佐々木泰弘

キーワード:リアルタイムキネマティックGPS,田植機,自動作業,一軸FOGセンサ,FOG姿勢計測装置,車両姿勢

本研究は,代かき水田における田植機による自動作業技術の開発を目的とする。このシステムでは,田植機の位置計測にはリアルタイムキネマティックGPS(以下RTKGPS)を,車両姿勢の計測には,ヨー角に一軸光ファイバジャイロセンサ(以下一軸FOGセンサ)を,ロール角,ピッチ角に三軸光ファイバジャイロ式のFOG姿勢計測装置を用いた。RTKGPSの位置データは田植機の傾斜の影響を受ける上,データ出力に時間遅れがあるため,傾斜補正と時間遅れ補正を行った。これによる位置,姿勢データをもとに自動移植作業を行ったところ,直進時の目標経路からの最大偏差10cmで往復作業を行うことができた。

自動テスト精米機の開発(第2報) −開発機の性能と実用化−

牧野英二・杉山隆夫・市川友彦・野口俊輔・福田覚・石井 勇

キーワード: 米、品質、精米、自動

正確な米品質測定を行うための前処理として高精度な精米ができる自動テスト精米機を開発した。この自動テスト精米機は米の精米特性を測定し、精米作業に有用な情報を得ることもできる。開発機は、縦形摩擦式の精米機であり、少量のサンプルを高精度に自動的に精米できる。開発した自動テスト精米機の精米歩留りモードと精米回数モードによる性能試験を行った結果、高精度で効率的な自動精米ができ、その実用性を確認することができた。また、精米歩留り精度向上のための改良を行った結果、目標精米歩留りの±0.2%程度まで自動的に高精度な精米ができた。