第61巻4号

研究論文

地盤上の剛性車輪のけん引力変動に関する力学的考察

上野正実・岡安崇史・橋口公一・鹿内健志・大嶺政朗

キーワード:けん引力の変動,接地反力,歩行運動,砂地盤,剛性車輪,トルクのつり合い式

車輪が発生するけん引力は定常状態においても一定ではなく,ある幅をもって変動する。これは慣性力を無視できる低速走行時でも見られる一般的な現象であるが,従来の研究では諸力学量の平均値のみが扱われ,このような変動は考慮されてこなかった。しかしながら,走行性の解明や作業機の走行制御において重要となる現象であると考え,本研究では,砂地盤上で剛性車輪による走行実験を行い,けん引力などの変動特性について力学的解析を行った。走行車輪に作用する接地反力ベクトルは,接地面上をある幅をもって往復し,その挙動は人間の歩行運動に類似していることを明らかにした。接地反力と車輪表面との交点すなわち着力点から車軸の鉛直中心線までの水平距離は,けん引力の増減に対してそれぞれ逆方向に変化し,両者には負の傾きをもつ直線関係が見られた。これらの現象はトルクのつり合い式で説明できることを示し,けん引力などの変動現象解明の第一歩を提示したと考える。

の操舵特性を考慮した枕地の最短旋回時間問題(第2報) −運動の方向を前進・後退を含めた場合への拡張−

鳥巣 諒,武田純一,田中健一,井前 讓

キーワード:トラクタ,枕地旋回,最短時間制御,軌道計画,バンバン原理,最適制御理論,数値計算

人の操縦するトラクタの枕地での最短旋回時間問題を,最適制御理論を援用して検討した。これまでのBang-Bang原理による解法を次の2つの点で拡張した。一つは,枕地旋回時の車両の特性や操縦の状態を,より現実の運動状態に適合させるようにすること。もう一つは,トラクタの運動方向を前進のみならず後退も許す場合に拡張することである。拡張した状況を考慮して,状態方程式,評価関数を再構築し理論解析を行った。他方,実機による旋回実験を実施した。両者の結果はよく一致し,理論の妥当性が検証された。また,車輪型移動ロボットの枕地での軌道計画について検討し,最短時間制御を求める前半部の解析が,基準軌道計画に適用可能であることを示した。

円形状グローサを有する履帯の諸元決定法

デズリアル・伊藤信孝

キーワード:ゴム履帯,円形グローサ,ころがり抵抗、沈下,履帯接地長制御を有する(あるいは有しない)ピボット旋回

履帯グローサは進行方向に直角に配置したもの、またはグローサ間への土の付着防止とより良好なけん引を目的としていくらか角度をつけたものが一般的である。接地長制御によるピボット旋回ではより良いけん引に加えて旋回抵抗モーメントを著しく低減できる円形状グローサが有効であることが提案されている。本研究はピボット旋回を前提とした円形状グローサを有するゴム履帯の諸元を、けん引性能、履帯の沈下を考慮して検討したものである。本報で提案の方法による履帯諸元の計算結果と市販のコンバインのそれを比較した結果、その妥当性を検証することができた。

自律走行のためのGPSとジャイロのカルマンフィルタによるセンサフュージョン技術(第1報)

井上慶一・大塚寛治・杉本光穂・村上則幸・黎文

キーワード:トラクタ,自律走行,センサーフュージョン,カルマンフィルタ,GPS,自動化

ジャイロとGPSを組み合わせて位置認識を行うためのカルマンフィルタによるセンサーフュージョン技術を具体的に明らかにした。ジャイロのドリフトやオフセットをGPSによる位置情報を観測値として推定し,トラクタの位置と方向の精度を共に向上させることができた。更にこの手法により,圃場において自律走行トラクタによる自動ロータリ耕うん作業を行った結果,従来より位置推定の精度が向上し,トラクタをほぼ決められたラインに沿って自律走行することができた。

接ぎ木苗生産の機械化に関する研究(第2報) −− 切削加工装置の試作 −−

西浦芳史・穂波信雄・平 知明

キーワード:接ぎ木,植物生体加工,切削抵抗,超音波加工,超高速加工,ファイトテクノロジー

第1報で報告したプラグ・イン法がトマト(Lycopersicon esculentum Mill.)を材料とした接ぎ木実験の結果,新しい機械接ぎ木法として位置づけられることが明らかとなった。また,同時に試作した接ぎ木加工機の切削性において,加工精度を十分に確保することが重要であることが明らかとなった。そこで,本報では,より切削性の高い加工装置の構成を試み,苗の被削性と接ぎ木による評価・検討を試みた。

高活性もみ殻灰の製造装置および製造方法の開発に関する研究

和田一朗・河野俊夫・前田直己・川上 洵

キーワード:もみ殻,もみ殻灰,焼成炉,燃焼炉,非晶質シリカ

高活性もみ殻灰を製造するためには,もみ殻灰中のシリカが高比表面積となる温度で,固定炭素が燃焼するのに十分な時間焼成を行う必要がある。本研究は,送風孔を有するスターラを炉内に備え,燃焼状態のもみ殻をかくはんしながら,燃焼空気を供給するかくはん焼成炉を試作し,製造された高活性もみ殻灰の評価を行うとともに,燃焼条件を検討したものである。試作焼成炉は,従来の燃焼装置に比べて,低温で長時間のもみ殻の焼成が可能となり,得られたもみ殻灰は,活性度が非常に高いことに加えて未燃炭素量も少なく,高付加価値での利用が期待できることを示した。

水田におけるモミとワラの収量マップ

李 忠根・飯田訓久・梅田幹雄・下保敏和

キーワード:精密農業,空間依存性,モミ収量,セミバリオグラム,収量マップ

水稲(ミナミヒカリ)の収量及び水分の空間変動を視覚的にとらえるため収量マップを作成した。供試したほ場の面積は0.5haで,収量調査はあらかじめ等面積に分割した区画毎に行った。区画の大きさは,刈り幅1.2m×長さ1m,同様に6m×5m及び12m×10mの3種類とした。1.2m×1m区画においてモミ収量は単位面積当たりの乾量で5.5〜9.7t/ha,ワラは同様に乾量で6.2〜18.0t/haの間で変動していた。次に,モミ収量の空間依存性を評価するため,セミバリオグラムを求めた。この結果,モミ収量の空間依存性が明らかになった。


天候の短期予測に基づく農作業スケジューリングに関する研究(第3報) ― 雨量の程度をSFSWアルゴリズムの改良―

イ.ワヤン.アスティカ、笹尾 彰 、澁澤 栄、酒井 憲司

キーワード:サトウキビ機械収穫作業、作業スケジューリング、遺伝的アルゴリズム、収穫機械最適配置、短期天候予測

本報では、第1報で作成したSFSWスケジューリングアルゴリズムを発展させて、雨の日およびそれに続く日に作業ができる確率を導入することにより改良した。すなわち、このスケジューリングでは、前報の晴れか雨かという2段階の区別から、晴れおよび雨の程度を4段階に分けた計5段階で作業可能性を検討した。NSFSWと名付けた新しいアルゴリズムを、第2報で報告したSFSWで解いたサトウキビの収穫問題に適用した。この最適化手法では、最適化に要する時間を削減できるように改良された。雨の日およびそれに続く日の作業の可能性を決定する日雨量を考慮したNSFSWアルゴリズムにより得られたコストや最適スケジュールは前報のSFSWアルゴリズムにより得られた結果とかなり異なり、より信頼できるものとなった。

技術論文

昆虫工場における飼育環境計測制御システムの開発(第2報) ―― カイコ飼育室の温湿度制御 ――

彭 彦昆・大浦正伸

キーワード: 昆虫工場,カイコ,飼育温湿度,計測制御システム

カイコの工場化飼育において,飼育環境の自動制御システムの開発が重要な課題である。本報では,カイコ飼育室を制御対象として,パソコン,温湿度センサ,温湿度記録計,信号入出力装置等から計測制御システムを構成し,作成した計測制御用プログラムにより計測制御機能の検討を行った結果,経時・経日の最適温湿度を自動設定すると共に,飼育室内及び外気の温湿度をリアルタイムで計測収集しCRT画面上に表示することが可能となった。さらに,カイコの飼育位置での計測データに基づく温湿度フィードバック制御により,目標とする飼育温湿度と実測値との偏差が抑えられた。

アフリカ産植物油の特性
ダグラス シタンダ・西山 喜雄・ダニエル ムトゥリ
キーワード:アフリカ産油種子,原油,搾油方法,利用可能性,油性

アフリカ産の植物油をディ−ゼルエンジンの燃料および潤滑油,油圧ブレ−キオイルとして利用する観点から,その燃料特性の測定を行った。植物油は化学的方法と力学的(圧搾)方法により抽出し,ディ−ゼル油およびヒマワリ油と比較検討した。測定は,植物油の密度,動粘性係数,熱量,灰分,引火点,発火点,熱伝導率およびpHを求めた。その結果,植物油の密度は温度に対し直線的に減じ,動粘性係数は温度の減少とともに指数関数的に増加することを明らかにし,これらの関係についての精度の高い実験式が求められた。また,灰分および引火点は搾油方法の影響が大きいことが分かった。

速 報

直播栽培水稲の播種法別株支持力

国立卓生・澁澤 栄・宮下高夫・笹尾 彰

キーワード: 水稲直播,播種法,株支持力