第61巻2号

研究論文

加振によるロータリ耕うん装置カバーへの土壌付着防止に関する研究

王 秀崙・伊藤信孝・鬼頭孝治

キーワード:土壌付着,土壌付着の防止,ロータリ,加振

本研究では,ロータリ耕うん装置カバーへの土壌付着の防止を図るために,ロータリ耕うん装置カバーを加振し,実験圃場において土壌の付着実験を行い,ロータリ耕うん装置カバーへの付着土壌の分布と重量を測定した。その結果,いずれの実験条件においても加振による土壌付着防止の効果が見られ,特に加振周波数30Hzの場合,土壌付着防止の効果が最も顕著であることが確認された。

画像情報によるキャベツセル成型苗個体群の非破壊生育計測(第1報) 被度モデルによる地上部新鮮重の計測

鈴木敏征・村瀬治比古・穂波信雄

キーワード:画像情報,キャベツセル成型苗,個体群,色度,被度

本研究は,画像特徴量と地上部生育との関係モデルを用いて,セル成型苗個体群の非破壊生育計測技術の開発を行うことを目的としている。本報では,3種類の被度モデルによるキャベツセル成型苗個体群の地上部新鮮重の非破壊計測について検討した。被度計測は、RGB表色系における色度gのしきい値により抽出したキャベツセル成型苗画像を用いて行った。検定用セル成型苗個体群について,被度モデルによる地上部新鮮重の予測値と実測値とはよく一致し,決定係数(R2)は最大で0.90であった。

歩行用トラクタハンドルの設計要素に関する基礎研究

J. C. V. シキャット・御手洗正文・國武昌人・永田正輝

キーワード: 人間工学、歩行用トラクタ、ハンドル、筋電図、筋電

本研究の目的は農作業者の疲労を軽減するために、人間工学に基づいた農業機械・機具の設計要素を明らかにすることである。今回は筋電計測により疲労を軽減するための作業姿勢と適切な歩行用トラクタハンドルの設計要素について解析を行った。負荷作業時の上半身の作業姿勢は上腕曲げ角、下腕曲げ角ともに下向きで鉛直方向に近い作業姿勢ほど筋肉疲労が小さく、下半身は足首曲げ角 0〜30゜以下の作業姿勢において負担が小さくなることが確認された。また、歩行用トラクタはハンドルグリップサイズ直径 35 mm、ハンドル高さ650〜800 mm、ハンドル幅580〜620 mm に設定すれば作業疲労を小さくできることが明らかになった。

マシンビジョンによる芝地の雑草検出 −分割領域でのテクスチャー特徴量の利用−

アーマド ウスマン・近藤 直・有馬誠一・門田充司・毛利建太郎

キーワード: 雑草、芝、テクスチャー特徴量、分割領域、マシンビジョン

ゴルフ場や庭園などにおける芝地の雑草防除は行わなければならない作業であるものの、最小限の薬剤散布あるいは機械的防除が望まれているため、芝と雑草とを見分ける必要がある。本研究では、類似した緑色を呈する芝と雑草を、画像から抽出されるテクスチャー特徴量で識別する方法について検討した。その方法は、あらかじめスムージング処理をおこなった画像と行っていない画像を9分割および16分割した上で、3つのテクスチャー特徴量(一様性、局所一様性、コントラスト)を抽出した。その結果、雑草の寸法にあった領域分割を行い、スムージング処理を施した画像において、良好に雑草を検出できることがわかった。

レーザーセンサを用いた車両位置計測法の研究 (第1報)

稲畑建英・瀧川具弘・小池正之・小中俊雄・余田 章

キーワード:自律走行、レーザースイッチ、最小二乗法、初期化、DOP

単純な機能を持つレーザーセンサを利用した位置決め方式を開発した。自律走行を開始するためには、まず、車両の位置と方向をほ場に設定された地図上で座標値と角度として確定すること、つまり初期化操作が必要である。この論文では、ほ場の周囲に設置した光反射標識の方向を単純なレーザーセンサで計測して初期化を行う方式を報告する。この方式では、車両の位置と方向を最小二乗法で計算した。最小二乗法により、計算された位置と方向の共分散行列も得られるので、計測の精度を推定できる。この方式の有効性をほ場試験で検討した結果、 40m角のほ場であれば 5cm以下の精度で位置決めが可能であることがわかった。さらに、光反射標識の設置について、OP( Dilution of precision)の利用についても実験を通じて評価した。

農業用ロボットのマン・マシン協調システム(第1報) ─ マニピュレータを対象とした危険度の算出 ─

門田充司・近藤 直

キーワード:安全性,ロボット,危険度,関数, シミュレーション,マニピュレータ制御

本研究は人間と隣接した場所で協調作業を行う農業用ロボットの安全システムの開発を目的としている。本報では,まず安全かつ効率的なロボットシステムの構成を述べ,ロボットが人間に及ぼす危険度の算出方法を検討した。次に,コンピュータ・シミュレーションによって算出された危険度に応じたマニピュレータの制御方法を検討した。その結果,危険度とそれに対応するロボットの動作を考慮することで,安全かつ作業効率を低下させることのない制御が行えると考えられた。

農業用ロボットのマン・マシン協調システム(第2報) ― マニピュレータ作業空間における人間のセンシングシステム ―

門田充司・近藤 直・中司憲持

キーワード:安全性,ロボット,超音波センサ,赤外線センサ,距離検出,識別

前報では,安全かつ効率的なロボットシステムの構想および危険度の算出方法の検討,危険度を用いたマニピュレータの制御のシミュレーションを行った。本報では,ロボットの周囲に存在する人間を検出するためのセンシングシステムの検討を行った。まず,人間の距離情報および存在の有無を検出するセンサとして,超音波および赤外線センサを選定し,各センサの基礎実験を行った。さらに両センサの情報を融合して,背景と人間とを識別するアルゴリズムを検討した。実験の結果,このセンシングシステムを用いることによって,人間の情報だけを抽出し,その動きを検出することができた。

砂地盤における剛性車輪の走行性高精度予測モデル

上野正実・大嶺政朗・鹿内健志・橋口公一・岡安崇史

キーワード:走行性,高精度予測,接地応力,法線応力,接線応力,剛性車輪,砂地盤

車輪走行性の解析において重要な接地応力分布の予測には,平板の接地圧と沈下量の関係を記述したM.G.Bekkerの経験式に基づくいくつかのモデルが広く利用されている。これらは簡便で実用上有用ではあるが,すべり率や沈下量による法線応力分布の変化を表現できないなどいくつかの欠点があり,走行性を高い精度で予測するには改善を要する。本研究では剛性車輪を対象とし,法線応力には放物線分布モデルにすべり率の効果を考慮した修正放物線モデルを,さらに,接線応力にはJanosiモデルにピークを有する接線応力−すべり変位関係式などを導入した拡張モデルを提示した。これらに基づいて沈下量から接地応力分布,けん引力,トルクおよびこれらの経時変化を予測する一連のシステムを開発し,砂地盤におけるモデル剛性車輪の走行実験結果と予測結果とを比較し,適用性が高いことを示した。

潤土直播水稲の株倒伏抵抗の評価法

国立卓生・澁澤 栄・宮下高夫・笹尾 彰

キーワード:潤土直播,株倒伏,土塊,株支持力

潤土直播水稲の株倒伏に関して、出穂後2〜3週間経過時に、試作した稲株引抜き負荷測定装置による稲株引抜き試験を実施し、異なる品種及び播種密度について株支持力を調査した。その結果、引抜き稲株の根系付着土塊形状は、土壌中の根の分布域や量を表す指標となり、株支持力の判断材料となった。また、株支持力を向上させるためには播種密度を少なくして分げつを旺盛にすることが重要になる。

植物病害の自動診断に関する基礎研究 - 健全葉と病害葉の識別 -

佐々木豊・岡本嗣男・芋生建司・鳥居 徹

キーワード: 植物病害、自動診断、分光反射率、光学フィルター画像、識別指標

環境保全にとって植物病害の診断は重要である。実際の診断を考慮するとその省力化や作業効率の向上を図らねばならず、将来的にこの植物診断の自動化は必要不可欠な課題と考える。最終的な目標は植物病害の自動診断システムを構築することであり、本論文では分光反射特性と光学フィルター画像を用いた自動診断について次の結果を報告する。1) 500, 600, 650, 700nmは分光反射を使った可視害認識に関し重要であった。 2) 500, 600, 650nmの光学フィルター画像は他のフィルター画像に比べ識別に適していた。3)健全葉と病害葉を識別する識別パラメータを作成した後、識別実験を行って5%以下の識別誤差を得た。

主成分分析とニューラルネットワークによる茶の水分予測 −近赤外域吸光度への融合型PCA-ANN回帰モデルの適用−

後藤 正・村瀬治比古・池田善郎

キーワード:茶,近赤外分光分析法,水分,ケモメトリックス,主成分回帰,部分最小自乗回帰,主成分分析−ニューラルネットワーク回帰モデル

日本緑茶(煎茶)の製造工程における茶葉の水分予測を行うため,近赤外分光分析法で得られた吸光度を主成分分析法により前処理し,入力パターンベクトルを生成してニューラルネットワークにより予測する方法を検討した。3因子の主成分スコアを入力信号,水分量を出力信号とする3-3-1階層型ニューラルネットワークPCA-ANNは,検証試料に対する予測標準誤差と相関係数をそれぞれ1.547%w.b.と0.998とした。重回帰,主成分回帰および部分最小自乗回帰に比較して,この予測標準誤差は30〜73%に改善され,検証結果は良好であった。近赤外域吸光度の多重共線性の問題を解決し,かつ非線形関係を表すことのできる主成分分析・ニューラルネットワーク(PCA-ANN)回帰モデルの有効性が明らかとなった。

太陽熱・除湿併用玄米乾燥に関する研究 (第1報) -FRPソーラーハウスの温度予測-

リドワン ラフマト・堀部和雄

キーワード:FRPソーラーハウス、熱流れ、ソーラーコレクタ、熱収支

本論文は、省エネルギ、環境にやさしいエネルギの利用、食味という観点から太陽熱。 除湿併用玄米乾燥システムを提案し、その確立を数学モデルを用いたシミユレーシヨンにより目指している。本報では、太陽熱乾燥の集熱方法としてFRPハウスを太陽熱コレクタとして利用する場合と、ハウス内にコレクタを設置した場合とを考え、その温度予測モデルを作成し、実験で妥当性を検証した。その結果、モデルで予測した値は、実測値とよく一致し。この太陽熱集熱モデルが、利用できることを明らかにした。

人の操舵特性を考慮した枕地の最短旋回時間問題(第1報)−トラクタの運動が前進のみの場合について−

武田純一・鳥巣 諒・田中健一・井前讓

キーワード:トラクタ,枕地,最適制御理論,人の操舵特性

人がトラクタのハンドル操作を行う場合は,操舵系に慣性や摩擦があるので瞬時に任意の操舵角に切ることができない。また,トラクタが枕地に進入する場合は,操舵角が零の状態で旋回を開始し,耕地に戻るとき再び零に戻して旋回を終了する。このような実際の農作業における枕地旋回の状況を考慮した運動学モデルを導びき,最適制御理論を援用して枕地の最短旋回時間問題を検討した。さらにアスファルト路面上で実機による旋回実験を行い,その結果と理論解析の結果を比較検討した。それらは良く一致し解析手法の有用性が検証できた。従って,この問題に対する新しい定式化は,横滑りの少ない現実の枕地旋回の状況を高水準で表現でき,解析に用いた数値計算手法の応用として,農用車両の自律走行の研究などを挙げることができる。第2報ではトラクタの運動に後退も許す場合について検討する。

天侯の短期予測に基づく農作業スケジューリングに関する研究(第1報) 一スケジューリングアルゴリズムの作成一

イ.ワヤン.アスティカ,笹尾彰,酒井憲司,澁澤栄

キーワード:農作業スケジューリング,遺伝的アルゴリズム,最適機械配置,短期天候予測

本研究は短期間(1週問)の天侯予測に基づいて農作業のスケジュールを作成しようとするもので,天気予測のリスクをコストとして評価した。本報では作成したスケジューリングアルゴリズム,SFSW(Stochastic Farm Work Schedulimg Algorithm Based on Short Range Weather Variation)について報告する。SFSWの中では天気予測によるリスクをコストで評価し,これを最小とする最適化問題とした。この最適化には遺伝的アルゴリズムを用いた。最適化は二段階で行った。天侯予測にしたがって,第一段階はコストを最小にする作業時間を決める。第二段階では雨天により作業できない時間と完了できない作業により予測されるコストを最小にし,また,作業する機械の最適配置を決定する。最新の天気予測を含むように,スケジュールは毎日更新されるようにした。

技術論文

マイクロ波乾燥室内の乾燥床上の照射エネルギー分布

董 鉄有・ 繆 冶煉・馮 伝平宮武 義邦・ 吉崎 繁

キーワード:マイクロ波,エネルギー,アンテナ,乾燥

実験データとマイクロ波アンテナ理論を用いて,典型的なマイクロ波乾燥室内の乾燥床上の照射エネルギー分布を解析した。その結果,高い誘電損率をもっている被乾燥物がマイクロ波乾燥室の乾燥床に均一に堆積されている場合,被乾燥物が乾燥室に連結しているマイクロ波導波管の開口からの入射波の照射エネルギーを吸収するため,乾燥床上の照射エネルギー分布はマイクロ波導波管開口アンテナの放射パターンを解析することによって決定できることなどが明らかになった。

閉鎖循環系における生ニンニク球根の除湿乾燥

片平光彦・戸次英二

キーワード:ニンニク球根,閉鎖循環系,除湿乾燥,質量減少速度,水・熱収支

乾燥室と除湿機をエア・ダクトで連結し、周囲空気が送入されない閉鎖循環系を構成した。乾燥室の温・湿度を15,25,35,40℃と30,45,60%に組み合わせた設定となるように、除湿機で調整した。自然乾燥の質量減少速度が0.08%/hであったのに対し、除湿乾燥では40℃−30%区が0.16%/h、35℃以下では0.14〜0.04%/hと、温度が低く湿度が高い区ほど低速となった。乾燥後の鱗茎は、いずれの区も63%の高水分を保持した状態にあった。総合熱効率は40℃−30%区と35℃区で25.8〜36.2%にあったが、低温の25℃−60%区と15℃区では4.9〜16.1%と著しく低かった。水分1kg乾減の所要エネルギ量は、温度が低く湿度が高くなるほど指数関数的に高くなり、質量減少速度の増大とともに減少した。閉鎖循環系における水・熱収支式を示し、実験で同時に得られた数値を用いて検証した。

高温炭粉を原料にした機能性ボードおよびシートの開発

木幡 進・山本栄人

キーワード:高温炭粉、キトサン、アルギン酸ナトリウム、乾燥イ草、いも焼酎、廃液、貝殻粉、グリセリン、機能性ボード、機能性シート

調湿作用、ガス吸着能などの機能を有する高温炭粉を主原料にしたボードおよびシートを試作する目的で、高温炭粉と天然物由来糊料(キトサン、アルギン酸ナトリウム)、天然物由来バインダ(イ草廃棄物、アコヤ貝殻粉、いも焼酎廃液)および柔軟剤を用いた製造技術を検討した。金型を用いて試作した厚さ約10mmの均一なボードの圧縮強度は最大で109kPaであった。イ草廃棄物はバインダとして特に有効であった。一方、試作した厚さ約2-3mmの均一なシートの引張強度は最大で12.7kPa、伸張率は128%であった。イ草廃棄物および焼酎廃液はバインダとして、また、グリセリンは柔軟剤として有効であった。

アスパラガス接触センサの研究

大友功一・岸本 正

キーワード:グリーンアスパラガス,アスパラガス収穫機,接触センサ,アスパラガスセンサ,アスパラガスロボット

アスパラガスの経営安定および規模拡大には雇用が困難になりつつあるパートの人手に替えて機械に収穫させるのが改善策との観点から,工業用センサなどで制御する低価格な収穫機の開発に着手した。収穫作業の制御情報収集のための認識システムに,アスパラガスに接触してその存在を認識できる接触センサを位置づけた。予備実験では,アスパラガスは絶縁体で覆われているために,常温では接触センサはアスパラガスを認識できなかった。しかし,接触子を約40℃から80℃の範囲で加温することにより認識が可能になり,接触子の温度が70℃付近で100%の認識率となることを明らかにした。