第61巻1号

研究論文

耕盤のある圃場における支持力のすべり線解(第3報)履帯に対する支持力

鹿内健志・久木田徹・橋口公一・上野正実

キーワード:履帯,支持力,すべり線場,剛塑性,平面ひずみ,耕盤

一般に圃場は硬い耕盤の上に軟弱な作土が存在する2層構造を呈し,均質半無限地盤とは異なる支持力特性を示すと考えられる。本研究では,履帯の合理的な設計指針を得るため,耕盤を有する圃場の履帯に対する支持力を,無限個の近接する荷重が剛盤(耕盤)上の摩擦性剛塑性体(作土)に作用する平面ひずみ問題として理想化し,すべり線法により理論解析を行なった。荷重間隔が小さい場合,すべり線場の干渉を生じ,また,作土厚が小さい場合すべり線域が制限されるが,荷重幅,荷重間隔および作土厚に応じて4種のすべり線場に分類できることを明らかにし,可容な速度場が成立する正解すべり線場を提案した。また,それぞれのすべり線場に基づいて支持力を算定し,荷重幅,荷重間隔および内部摩擦角に応じた支持力の推移状況を明らかにした。

無次元数による穀類の通風圧力損失の解析(第1報) −大豆の通風圧力損失−

井上慶一・大塚寛治・杉本光穂・村上則幸・黎文

キーワード:圧力損失,通風抵抗,乾燥,シミュレーション,物性量,大豆

堆積通風乾燥における圧カ損失を計算によって求めるため,材料の抗カ係数と摩擦係数をレイノルズ数の関数として表し,通常の堆積通風乾燥で用いられる40<Re<200の範囲において大豆において一般的に成立する実験式を求めた。これにより大豆の通風圧力損失特性を,得られた抗カ係数,または摩擦係数の実験式を用いて材料の比表面積と堆積層の空隙率,風速の関数として表し,実際の測定結果と比較した結果,高い精度で圧力損失特性を近似することができた。

農作業計画の最適化に関する研究(第1報) −作業経路の最適化−

大土井克明・笈田 昭・山崎 稔・山下道弘

キーワード:作業計画,最適化,移動距離,遺伝的アルゴリズム,巡回セールスマン問題

農作業の受委託等により,営農規模が拡大するにつれて複雑なものとなる作業計画を最適化する手法を追及することが本研究の目的である。本報では,一台の機械が点在するほ場を作業するときの移動経路の最適化について報告する。具体的には,ほ場間の移動距離を最短にすることとし,福知山市と和知町のほ場データを用いて計算した。最適化の手法として遺伝的アルゴリズムを用いた。コード化を経路表現とした手法,順序表現とした手法の二つを比較し,前者が優れていることを明らかにした。また,ニューラルネットワークを用いた手法と比較し,ほ場の数が多い場合には特に有効であることを確認した。

無人追走方式の研究(第1報)

飯田訓久・前川智史・梅田幹雄

キーワード:農業ロボット,自律走行,追走制御,超音波センサ,赤外線センサ

耕うんや収穫等の農作業の能率向上や省力化を行うため,一人の作業者が2台以上の農業機械を同時に運行する方法として,超音波を用いた無人追走方式を考案した。この方式は,コンピュータ制御の車両が一定の車間距離,オフセット及び相対姿勢角を保ちながら,作業者が運転する車両を追従走行するものである。このため,超音波と赤外線を用いて,2車両間の相対的な位置を計測する装置を開発した。本報では,開発した装置の計測精度を室内実験で求めた。この結果,測定誤差は車間距離58mm,オフセット29mm,相対姿勢角1.41度以内で測定できることが確認できた。

動的ガス環境下におけるトマト果実の呼吸特性

中野浩平・胡 文忠・安永円理子・前澤重禮・秋元浩一

キーワード:動的ガス環境,呼吸特性,クライマクテリック,トマト果実

本研究では,クライマクテリック型果実(climacteric fruits)の1つであるトマト果実を対象に,パウチ法により呼吸速度の測定を行い,ガス濃度変化が呼吸代謝,追熟生理に及ぼす影響を検討した。二酸化炭素濃度が増加し酸素濃度が減少する環境のもとでは,収穫熟度に応じた呼吸抑制効果が認めらるとともに,呼吸商はガス濃度の変化と熟度に関係して推移することが示唆された。また,未熟収穫果は高二酸化炭素状態で追熟阻害を生じた。更に,酸素濃度4.5%以下の環境では熟度によらず嫌気呼吸を行った。

有限要素法による車輪の走行性能の解析(第1報) ―土の負荷時モデルと除荷時モデルを用いた解析―

広間達夫・阿部考志・片岡 崇・太田義信

キーワード:有限要素法,粘弾性モデル,走行性能,土壌圧縮

土の負荷除荷過程における粘弾性及び塑性的挙動を近似的に表すために,負荷時は粘弾性の性質を持ち除荷時は弾性の性質を持つ土のモデルを導入し,さらに土と車輪との摩擦力を考慮した有限要素解析法を開発した。有限要素解析に必要な3軸応力系の弾性係数及び粘性係数は一軸圧縮試験で求めることができる。一軸圧縮試験について有限要素解析を行い,負荷除荷過程で粘弾性及び塑性的挙動を示す本モデルの妥当性を確かめた。本解析方法を用いれば,車輪のけん引性能と予想される圃場の圧縮の問題がシミュレーションによって扱えるようになる。

有限要素法による車輪の走行性能の解析(第2報) ―走行性能と土中の応力分布―

広間達夫・阿部孝志・一戸陽介・片岡崇・太田義信

キーワード:有限要素法,粘弾性モデル,土中の応力,土壌圧縮

負荷時は粘弾性の性質を持ち除荷時は弾性体として振る舞う,負荷除荷過程で粘弾性及び塑性的挙動を示す土のモデルを基にした有限要素解析及び走行実験を行って,剛性車輪の走行性能と土中の鉛直応力について検討した。本解析モデルは,進行低下率が15%以下のけん引力で有効であることが分かった。進行低下率が15%付近で実験結果は最大けん引効率に達した。更にけん引負荷が増加して進行低下率が増加すると接地法線応力の最大値が減少し,土中の鉛直応力と体積ひずみが減少することが明らかになった。

リンゴ収穫ロボットのためのハンド機構

片岡 崇,石川雄三,広間達夫,太田義信,元林浩太,矢治幸夫

キーワード:リンゴ,果梗,離層,収穫,農業ロボット,ハンド

リンゴは,北東北地方において重要な農産物の一つである。しかしながら,その収穫作業は,未だ人の手によって行われている。人の手による収穫作業において,リンゴ果実部は離層を中心とした円回転をしていることがわかった。さらに,収穫に必要なリンゴ果実の枝からのもぎ取り力を調べた。この結果,果梗を果台部の離層から脱離させるための引張り強度は約47 Nであり,また離層を中心とした回転強度は約0.05 N・mであった。これらをもとに,果梗部を把持し,離層を中心に果実部全体を回転させる機構をもつ収穫ハンドを試作した。収穫実験の結果,90%を越える確率でリンゴ収穫が達成された。開発されたハンドは,リンゴ収穫に十分な機能を持つことがわかった。

小規模ほ場における土壌肥沃度パラメータの時空間変動

李 民贊・笹尾 彰・澁澤 栄・酒井憲司

キーワード:精密ほ場管理、土壌肥沃度、空間変動、時間変動、マッピング

トウモロコシ生育中の畑地及び水稲収穫後の乾土水田において、NO3-NとEC及びpHをそれぞれ4.2×4.2・区画(0.6mグリッド)及び10×10・区画(1mグリッド)で表層(5-15cm深)と中層(15-25cm深)及び下層(25-35cm深)の3層別に観測した。 NO3-Nに着目した解析より、平面的分布はトウモロコシ畑で対数正規分布になり、水田では正規分布になった。また、トウモロコシ畑のNO3-Nの空間分布について、各層間に高い相関があった。さらに、セミバリアンス解析より、トウモロコシ畑では畝方向及び畝間方向とも距離分散が一定であり、水田では畝方向で距離分散が一定だが畝間方向で飽和関数状の距離分散を示した。

農作業服による作業性と快適性の定量化に関する研究(第4報) −農作業服への悪臭物質の吸着−

桑原宣彰・尾畑納子・岡本嗣男

キーワード:農作業服、作業性、快適性、衣料素材、吸着、悪臭物質、水分率

農作業時接触する機会の多い悪臭物質の、羊毛、綿、ナイロン、アクリル、ポリエステルなど各種繊維への吸着性と、その吸着に及ぼす水分の影響を検討した。得られた結果は以下の通りである。1)繊維の種類によって、悪臭物質の吸着量は異なり、それらは以下のような順となった。(1)アンモニア: 羊毛>綿>ナイロン>アクリル>ポリエステル(2)硫化水素: 綿>羊毛>ポリエステル>ナイロン>アクリル(3)酢酸(4)アセトアルデヒド(5)ホルムアルデヒド: 羊毛>綿>ナイロン>ポリエステル>アクリル 2)吸着の大小は繊維の水分率にほぼ比例し、吸湿性の高い繊維での吸着量が大きいという傾向を示した。3)悪臭物質の一種で水との親和性が強いホルムアルデヒドの吸着は、湿度によって変化し、低湿度領域での増加は緩やかであるが、高湿度領域では急激に上昇した。低湿度領域での吸着挙動は、ホルムアルデヒド濃度が高くなっても、吸着量が一定量以上に増えない、見掛け上ラングミュア型となった。4)水分率を0に外挿した時の吸着量は、各繊維の溶解度パラメーター値に比例した。このことから、悪臭物質の繊維に対する吸着性は、その繊維の溶解度パラメーター値から推定可能であることが判った。

農作業服素材に付着した農薬の洗浄に関する検討

尾畑 納子・桑原 宣彰・岡本 嗣男

キーワード:農作業服、農薬、洗浄、ガスクロマトグラフィ、界面活性剤

農薬散布作業時に着用する農作業服の効果的な洗浄方法を確立するため、各種洗浄条件のもとで、綿、ナイロン、ポリエステル素材について、それらの除去性を中心に検討した。結果は以下の通りである。
1)繊維に付着する農薬量は、40℃で24時間アセトン溶液に浸漬した後、ガスクロマトグラフのFPD検出器により定量することができた。2)各繊維への農薬の付着量は、綿が最も多く、次いで、ポリエステル、ナイロンの順となった。3)その洗浄性は繊維の種類によって異なり、綿は洗浄しやすく、水のみでも可能であった。ナイロンは、40℃でアルカリ性にしたSDS溶液で優れた効果が認められた。ポリエステルは、洗浄しにくいが、LASとNCIの界面活性剤によって比較的良好な洗浄効果が得られた。

技術論文

クズウコン(アロ−ル−ト)の小規模加工方法の評価

D.L.S.タン・V.G.ガヤニロ・宮本啓二・石橋憲一

キーワード:クズウコン・デンプン,村落レベル,イロハン,加工方法,デンプンの品質

クズウコン(アロ−ル−ト)からデンプンを得るために、フィリピンで行われている4種の村落レベルの小規模な加工方法を検討した。これらはA:イロハンを用いてクズウコンの根茎を磨砕後、デンプンを調製する方法、B:根茎をすりおろした後、デンプンを抽出する、C:チップ状にした根茎を湿式粉砕後、デンプンを調製する、D:チップ状にした根茎を乾燥後、粉砕する方法である。その結果、Dの方法は人・時当たりの製品収量は最も高かったが、デンプン含量ならびに品質は最低であった。Bは1.47kg/人・時の収量を示し、製品収量ならびにデンプン回収率ともに高く、4種の方法の中では最良の方法であった。さらに、クズウコンの小規模加工に関する所用電力、物質収支、所用水量などに加えて、製品の品質すなわち、色、粒度、粘度などについても述べている。

田植機用千鳥植え植付機構の開発研究(第2報)

小西達也・津賀幸之介・冨田宗樹市川友彦・吉田清一

キーワード:田植機、植付機構、立体軌跡、千鳥植え

前報で見いだした立体軌跡植付機構による千鳥植えの可能性を実証するため、2種類の千鳥植え田植機を試作した。その1つは作業幅の拡大を目的としたもので、目標複条間15cmの植付機構4組を45cm間隔に配置した。栽培試験の結果、従来の6条並木植えと同程度の収量が得られた。もう1つは、複条間18cmの植付機構5組を36cm間隔で配置し、u当たり30株程度の密植千鳥植えを行う田植機とした。試験の結果、田植機による密植千鳥植えの可能性が明らかになった。また密植千鳥植えの効果について、手植えにより植付けを行い栽培した結果、10%程度の増収効果が確認された。

フラットベルトによる脱穀機構に関する研究(第2報) ― 脱穀性能について ―

イ ネンガ スアスタワ,岡本 嗣男,鳥居 徹,木谷 収

キーワード:脱穀,稲,フラットベルト,収穫,易脱粒性

フラットベルト式脱穀装置を試作し、脱穀試験を実施してその特性を明らかにした。使用した米の種類はJavanica系統のArborio、Indica系統のBluebonnet 50、Japonica系統のKoshihikariである。ベルトの中に挿入される穂が大きくなるにつれて脱穀するのに大きなトルクを必要とした。この現象はすべての品種、ベルト間隔、ベルトの速度に対して認められた。ベルト間隔が1ミリの場合のトルクは2ミリの場合に比べ大きかった。Indica系統のBluebonnet 50は実験で用いた他の品種に比べて脱穀される割合が大きかった。このことは設定したすべての実験に関して認められた。これに対してJaponica系統のKoshihikariは脱穀し難くその割合が低かった。損傷を受けた籾の割合は供試した籾の種類に中ではBluebonnet 50が一番小さかった。ArborioとKoshihikariの場合では脱穀された籾は全てベルトの後方に移動された。しかしBluebonnet 50の籾では脱穀過程の途中でベルトの下に落ちるものも認められた。

堆肥調製システムの開発 −堆肥堆積・切返し機と作業法の開発−

西崎邦夫・柴田洋一・横地泰宏

キーワード:堆肥,堆肥調製,切返し機

低コスト堆肥化システム構築のため,簡易堆肥堆積運搬車と堆肥切返し機を開発した。堆肥堆積運搬車の利用により短時間に堆肥の堆積が可能となり,さらに堆積時に上下のビータによって撹幹・粉砕されるため,腐熟に必要な空気率の確保や均一混合という条件が満たされる。この堆肥堆積運搬車は,堆肥列成形カバーを折り畳むことにより,マニュアスプレッダとしても利用できる。切返し機はトラクタ装着式で,前部に混合・撹幹のための2つのビータを装備している。幅2.5m,高さ1.5mの堆肥列を4.5-5.!m/minの速度で切返しできる。堆肥堆積運搬車と堆肥切返し機の組み合わせで個別農家向けの低コスト堆肥化システムを構築することができる。