第60巻6号

研究論文

バイオガスの農用小型ディーゼル機関への応用(第4報) ──簡易コジェネレーションシステムの試作──

石井耕太・麓 貴弘・寺尾日出男・野口 伸

キーワード:バイオガス,二燃料運転,ディーゼル機関,コージェネレーションシステム

バイオガス二燃料機関の効率を向上させるため,コージェネレーションシステム(CGS)への改造を行い,冷却水と排気からの熱回収を試みた。排気熱交換器は並流二重管式の単純な構造とし,装置の製作及び熱交換シミュレーションを容易ならしめた。実験ではシミュレーション予測を超える回収熱量を得,排気脈動が伝熱係数を向上させたと考えられる。排気熱交換器の副次効果として,機関熱効率の向上が認められたが,これは排気が冷却されて収縮し排気抵抗が低下したことが主因と推測される。単純なシステムながら,機関熱効率に回収熱量を加えたエネルギ効率は約65%を得た。

画像処理による土の変位のオンライン計測に関する研究

橋口公一,岡安崇史,上野正実,鹿内健志

キーワード:土の変位,ひずみ,オンライン計測,画像処理,土槽実験,車輪走行性

農機や建機がもたらす土の力学的挙動を解明するには,土中各部の刻々の変位の定量的な把握が不可欠である。筆者らは,先に,土槽の透明側壁に配置したマーカの動きより,土の変位を計測するシステムを開発した。このシステムでは,マーカ位置(座標値)の読取りを手作業で行うため,データ解析に膨大な時間を要し,解析可能なデータ数には自ら限界がある。この欠点を解消するため,本研究では,高密度カメラと画像処理技術を用いて,土の変位を高精度かつ高速で自動計測するオンラインシステムを開発した。また,車輪走行に伴う土の変位の計測を行い,本システムの適用性を検証した。

プラウ耕深の深浅交互設定による雑草抑制の可能性

酒井憲司・谷 真介・高井宗宏

キーワード:プラウ,雑草,雑草管理,埋土種子動態,生活史,行列モデル,力学系,耕うん,数理生態学,齢構造,密度依存性

環境への懸念から,除草剤一辺倒の耕地除草法の見直しが行われている。本研究は,雑草抑制効果を高める耕うん法開発のための基礎研究である。耕うん作業を構成要素として組み込んだ雑草生活史モデルを構築し,土壌中の雑草種子の深度分布を記述した。耕うん法による雑草抑制効果に関する既往の知見である深耕反転の有効性を,開発したモデルを用いた数値実験により確認し,モデルの妥当性を検討した。その上で,プラウ耕深の深浅交互設定による雑草抑制効果の可能性を数値実験により確認した。

作型特性を考慮したサトウキビ収穫法の改善(第1報)ー収量および糖度特性の解析とそのモデル化ー

孫麗女亜・上野正実・秋永孝義・永田雅輝

キーワード:サトウキビ,作型,収穫法,収量,糖度,モデル化

サトウキビ栽培のユニークな特色である作型は,収量,品質あるいは経済性に加え,作業方法や機械の利用などにも大きく関係する。特に,収穫は作型の決定に大きく関与するとともに,その時期や方法によって今期だけでなく次期の収量や品質に影響を及ぼす。本研究では,作型の特性を考慮した適正な収穫法の確立をねらいとして,それに関連する基礎研究を行った。本報では,作型と収量および品質との関係,収穫時期や植え付け時期が収量,品質および次期収量に及ぼす影響を明らかにし,それらの特性に基づいて収量と糖度のモデル化を行った。


接ぎ木苗生産の機械化に関する研究(第1報) −−プラグ・イン法の提案−−

西浦芳史・穂波信雄・平 知明

キーワード:接ぎ木,植物組織構造,植物生体加工,植物形態特性,ファイトテクノロジー

本研究は,植物組織学や植物生理学的な見地から接ぎ木における活着の条件を満たし,かつ,将来の自動化を目指した新しい機械接ぎ木法の開発に関するものである.我々が提案した接ぎ木法であるプラグ・イン法(Plug−in Method)における接合面の加工形状は,穂木がテーパ軸状,台木がテーパ穴状であり,この方法における原理的な接ぎ木の可能性についてトマトを用いて検討した.本報では,果菜類の接ぎ木用苗における内外部の構造をもとにプラグ・イン法を考案し,さらに,本方法の有効性を検証するためにトマト(Lycopersicon esculentumMill)を用い,その内部構造から加工部位,穂木と台木の通導組織径の大小の組み合わせの範囲について検討した.そして,試作した実験用加工装置を用い,加工および接ぎ木の可能性について実験的な検討を行った.その結果,プラグ・イン法が新しい機械接ぎ木法として位置づけられることが明らかとなった.

バーレー種タバコ用自動葉編み機に関する研究(第3報) −給葉機構の性能と給葉サイクルの検討−

服部信義・前川良明・長村一男

キーワード:タバコ,タバコ葉,葉編み機,自動給葉,給葉サイクル時間,移送方法

第2報では,バーレー種タバコ葉を自動的に1枚ずつ葉編みする自動葉編み機を開発し,ほぼ実用レベルの成果を得たことを報告した。しかしながら,給葉部については移送アームのタバコ葉に対する遠心力の影響で,安定した1枚当たりの給葉サイクル時間は1.2s/枚で限界を示した。そこで,本報ではさらに給葉能率の向上を図るため,給葉機構について検討した。新たな移送方法としては,葉長方向にタバコ葉を移送する方法が有効であると考え,基本性能実験を行った。その結果,給葉サイクル時間は0.8s/枚まで短縮可能と判断したが,編み込みまで想定した場合,葉の衝突力と姿勢を制御する手段が必要となった。

小麦充てん層の通風乾燥に関する研究 ―層高の変化を考慮した熱・物質モデル―

小出章二・西山喜雄・村田 敏・菅原祐二

キーワード:層高、通風乾燥、小麦、熱・物質モデル、乾物質量

これまで通風乾燥での穀物の水分・温度の予測は、共乾施設における実用面の重要さから、数多く研究されてきた。この穀物層(特に籾層)の通風乾燥シミュレーションは、穀物乾燥理論の発展により、現在実用化の域に達しているが、その一方で、小麦など水分変化に伴う容積変化が大きい材料に対しては、層高が変化するため、測定・解析は複雑となる。本報では、小麦充てん層の層高が含水率、温度、湿度や通風抵抗に与える影響をかんがみ、穀物水分変化に伴う層高変化を考慮した新たな熱・物質(水分)モデルを構築した。これに対し、小麦充てん層における通風乾燥試験を行い、層高、含水率、温度、湿度や通風抵抗の経時変化を測定した。その結果、計算値は測定値に良く一致し、本モデルの妥当性が示された。

家畜糞の堆肥化におけるアンモニア揮散(第1報) アンモニア揮散の要因の検討

前田武己・松田従三

キーワード:アンモニア揮散,家畜糞,悪臭,高速堆肥化法,C/N比,送風量

乳牛糞と破砕籾殻を用いて,高速堆肥化法におけるアンモニア揮散を調べた。実験は,堆肥化の過程におけるアンモニア揮散の発生時期の把握と,C/N比と送風量がアンモニア揮散に与える影響を調べるため行った。堆肥化中のアンモニア揮散は,最高温度到達後から始まり高温時にはその揮散量も多く,温度の低下に伴って減少し,室温近くにまで低下すると終息した。アンモニア揮散量は,最高到達温度が55℃以上に達した条件では,C/N比が低いほど,送風量が大きいほど多くなった。アンモニア揮散の要因を検討した結果,材料中の窒素量とりわけアンモニア態窒素量,温度上昇と送風による水分蒸発,pHの上昇の影響が大きいことが判明した。

サトウキビ培養苗増殖ロボットに関する研究

岡本嗣男・趙 春山・實山安英鳥居 徹・芋生憲司

キーワード:自動化、無菌作業、マシンビジョン、ロボットハンド、組織培養、移植

本研究の目的は、現在手作業によって行われている種苗用茎頂培養苗の増殖過程における分割移植作業を自動化するシステムを開発することである。ここではサトウキビ培養苗の増殖作業を対象として、マシンビジョンを援用したロボット移植システムを試作した。本研究では、移植能率の向上を目指して、培養ポット内に繁殖しているサトウキビ苗二株のうち,一株ずつを試作四本指ハンドでそれぞれ二株に分割し,その二株を同時移植した。二株の苗をそれぞれ二分割して移植するのに要した時間は約22秒であり、熟練者の人手による作業と比べても十分高い能率が得られた。


画像処理による収穫時のリンゴ果実の識別(第3報) −−カラー画像処理のニューラルネットワークモデルと二値画像処理法の開発−−

孫 明・高橋照夫・張 樹槐・戸次英二

キーワード:リンゴ、収穫、識別、色信号、 ニューラルネットワーク、二値画像処理、ロボット

本研究は黄緑色系リンゴ果実の識別と連結果実の分離・認識をする二値画像処理法を開発する目的で行われた。黄緑色系リンゴ果実の識別にニューラルネットワークの技術を導入し、天候や時刻の異なるカラー画像を対象に、果実、葉、枝、背景の領域を分割した。その結果、順光状態では果実の描画率がほとんど目標の80%以上であったが、逆光状態では果実の輝度が90以下または彩度が30以下になると、葉との区別が困難になることが多かった。空・反射シートの領域分割は完全にでき、枝についても描画率は80%以上に達した。また、二値画像における連結果実の分離・認識について、輝度の多値しきい値処理法と距離変換・拡散処理併用法を考案して適用の結果、平均認識率は前者が71%であったが、後者は89%であり有効と認められた。

赤外線熱画像によるリンゴの検出に関する研究(第3報) −リンゴ樹の温度変化のリアルタイム計測−

張 樹槐・高橋照夫・福地 博・孫 明・寺尾日出男

キーワード:赤外線熱画像,温度計測,2値画像,リンゴの検出

赤外線熱画像でリンゴや葉・枝を識別する応用手法として,第1報では特定の時間におけるリンゴ樹の温度分布特性について報告した。本報はその結果を踏まえ,リンゴ樹の24時間の温度変化をリアルタイムに計測し,リンゴや葉などの温度変化の特徴及びそれらと外気温との関係について検討した。その結果,昼間及び日没後の約3時間以内では,リンゴの温度は葉より約1℃以上高く,また葉の温度は外気温とほぼ等しいことを確認した。深夜及び早朝の場合,リンゴと葉との間に顕著な温度差はなく,しかも両者ともほぼ外気温に等しくなることが明らかとなった。また,この温度差情報を利用することで2値画像が得られ,樹上のリンゴを容易に検出することができた。

一段逆さ仕立てトマト収穫用エンドエフェクタ

門田充司・近藤 直・K.C.ティング G.A.ジャコメリ・D.R.ミアーズ Y.キム・P.P.リング

キーワード:ロボット,エンドエフェクタ,収穫,トマト,マニピュレータ

一段果房によるトマト生産システムは,光や空間,労力を有効利用できる新しい施設栽培システムの一つである。さらに,この一段果房を移動式ベンチから逆さ仕立てにすることにより,植物を仕立てる労力が軽減されるとともに,果実周辺の障害物が少なくなるので自動化の導入が計りやすくなる。そこで本研究では,一段逆さ仕立てによるトマト生産システムへのロボットの導入を検討し,収穫用エンドエフェクタと簡易型マニピュレータの試作と基礎実験を行った。実験の結果,この生産システムへのロボット化の可能性が確認された。

技術論文

黄色種タバコ用収穫機に関する研究(第1報) −こき落とし機構を有する試験機の試作−

春園輝夫

キーワード:タバコ収穫機,葉たばこ,黄色種タバコ,葉もぎ,こき落し機構

黄色種タバコ用収穫機の開発を目標に,新たに考案したこき落とし機構によりタバコの葉を茎稈から離脱させる葉もぎ装置を有し,走行装置にクローラを使用した乗用型の試験機を試作した。こき落とし機構は,傾斜軸で駆動する一対のローラチェーンの水平速度を車速に同調させ,ローラチェーンと葉もぎつめが茎稈に対して下方向にのみ作用するよう構成した。ローラチェーンの傾斜軸は,傾斜角度を可変とし,茎稈に対して作用する範囲を任意に調節できる機構とした。葉もぎされた葉は,葉もぎ装置直下のベルトコンベヤにより,機体両側の収容袋に搬送させる機構とした。また,葉もぎに必要な力と葉の搬送抵抗力について検討し,機械の動力並びに安全性を考慮した設計を行った。

フラットベルトによる脱穀機構に関する研究(第1報) ― 籾とフラットベルトの摩擦特性について ―

イ ネンガ スアスタワ・岡本嗣男・鳥居 徹

キーワード:易脱粒性、米、ゴムベルト、摩擦係数、脱穀

籾とゴム表面の摩擦係数を実験的に調べた。実験に使用した米の種類はJavanica系統のArborio、Indica系統のBluebonnet 50、Jhona 349およびJaponica系統のKoshihikariの四種類である。ベルト素材としてはコンベヤゴムシート、ナチュラルゴムシートおよびシリコンゴムシートの三種類を供試した。摩擦係数の測定結果はこれらのほとんどの組み合わせにおいて差異のあることが認められた。また、コンベヤゴムシートにおける結果では、籾の含水比が高いと摩擦係数も大きくなる傾向を示した。ここで得られた結果は、フラットベルトを用いた易脱粒性稲の脱穀機構の設計・性能評価に活用できる。

超音波とブラシを用いた赤トウガラシ洗浄機の開発

朴 宗洙・韓 忠洙

キーワード: 赤トウガラシ,超音波,回転ブラシ,固定ブラシ,洗浄精度

赤トウガラシは韓国でよく食べられている食材としてその消費量が非常に多い。一般に赤トウガラシは50%以上が未洗浄のまま消費者に販売されている。最近,加工工場および一部農家で出荷前の赤トウガラシを機械洗浄しているが,洗浄精度と損傷率に若干の問題がある。そこで,本研究では赤トウガラシの洗浄精度の向上と,損傷率を減少させることを目的に,超音波と水平回転ブラシを使用する赤トウガラシ洗浄機を開発して実験した。その結果,超音波と改造されたブラシを使用することで,洗浄精度の向上と赤トウガラシ損傷率を減少することが確認できた。