第60巻5号

研究論文

バイオガスの農用小型ディーゼル機関への応用(第3報) ──バイオガス最適供給スケジュールのロバスト性──

石井耕太・寺尾日出男・野口 伸

キーワード:バイオガス,二燃料運転,ディーゼル機関,供給スケジューリング,ロバスト性

バイオガスを二燃料機関の燃料として利用する場合,ガスをタンクに一時貯蔵し機関への供給法を最適にスケジューリングすることで,機関の性能を向上可能である。しかしスケジューリングのためにはバイオガス発生量・機関負荷の時系列データが既知である必要があり,これらが毎日同じパターンを繰り返すと仮定していた。実際にはこれらのパターンは変動すると予測されるので,スケジューリング時とは異なるパターンの下でスケジュールを適用した場合の,燃料消費量に関する機関性能の低下を検証した。ガス発生・機関負荷データにランダムノイズなどを加えたデータで検討したところ,ガス発生パターンの変化はほとんど燃料消費量の増加を生じなかった。一方機関負荷はより影響が大きく,時間軸方向にパターンがずれると燃料消費量の増加が大きい。全体的には消費量の増加は少なく,多少の変動の下でも最適供給スケジュールは有効であった。

アップカットロータリ耕うんの土塊投てき性(第3報) −角運動量による土塊投てき性能評価−

片岡 崇・渋沢 栄・小野寺一宏・太田義信

キーワード:ロータリ,耕うん,トルク,エネルギ,運動量,角運動量

本報では,切削・投てき過程における土塊の運動量変化という視点から投てき性能の評価を試みた。土塊の運動量変化を耕うんづめから加えられる力積の変化,すなわち耕うん軸まわりの角運動量変化と関連づけた。耕うん抵抗に有利なすくい面長さの小さい短すくい面づめを用いた結果,耕うん軸回転数を高めることによって少ない耕うん軸まわりの角運動量変化で土塊の投てきに必要な運動量を与えることができることがわかった。所要耕うん軸トルク,切削土塊の投てき軌跡などから,耕うん軸回転数は耕うんづめの先端周速度で5.5〜6.0 m/s程度まで高めることができると計算された。これは,市販ロータリ耕うん装置の耕うん軸回転速度に比べ約30%増である。

研削式精米に関する研究(第1報) ―歩留り・砕米率特性−

小出章二・西山喜雄・滝川裕子

キーワード:研削式精米,研削式精米機,酒造精米,歩留り,砕米,精米特性

本報では,効率のよい精米および酒造精米を行う観点から,短粒種米を供試材料とし研削式精米特性について研究を行った。測定では立型小形精米機を用い,種々の玄米水分および精白ロ−ル周速度の条件下で歩留り,砕米率,形状等の経時変化を計測した。解析の結果,歩留りについては精度の高い表現式を得ることが出来た。次に,歩留りと砕米率との関係を調べ,これより歩留り(無次元化した歩留り)と砕米率との関係式を導出した。その結果,得られた計算値は砕米率特性をよく表現できた。また,米粒の圧砕剛度,球形度は歩留りに依存することが示された。

サトウキビの生産支援情報システム構築に関する研究

孫麗 ・上野正実・秋永孝義・永田雅輝・川満芳信

キーワード:サトウキビ,生産支援情報システム,糖度,作型,品質データ,データベース

高収量・高品質のサトウキビを低コストで安定的に生産するには,土壌状態,生育状態,病害虫の発生,気象などの情報を的確に把握し,農家に提供する情報システムの構築が必要である。そのシステムの構成と機能を検討するとともに,品質取引制度によって得られた糖度などをデータベース化して,システムの基本部分を作成した。このデータベースを用いて糖度の分布特性を検討し,さらに,作型,品種および収穫期の降水量が糖度に与える影響を統計的に解析して,いくつかの特性を明らかにした。

キクの挿し木作業の自動化に関する基礎的研究(第4報) −植え付け装置の開発−

門田充司・近藤 直・秋山尚文

キーワード:挿し木,キク,ロボット,植え付け,トレイ

前報までに,視覚部における挿し穂の把持位置検出アルゴリズムの検討,挿し穂の整形装置の試作と基礎実験を行ってきた。本報では,前報で報告した整形装置で処理された挿し穂をセル整形トレイに植え付けるための植え付け装置の試作と実験を行った。植え付け装置は,整形装置で処理を終えた挿し穂を10本把持するプレートを有し,それらを同時にトレイに植え付けることができる。植え付け実験の結果,約95%の成功率で挿し穂をトレイに植え付けることができた。

バンカーサイロ作業の自動化(第2報) ―サイレージ詰込み・取出し装置試作2号機の性能とコンピュータによる自動化―

矢治幸夫・屋代幹雄

キーワード:バンカーサイロ,サイレージ,取出し作業,詰込み作業,自動化

バケットに代わる搬送コンベヤの装着,踏圧ローラの改良,切断装置の新設等の改良を行ったサイレージ詰込み・取出し装置試作2号機の作業性能を検討するとともに,リミットスイッチ,ロータリエンコーダ等のセンサならびに駆動モータ用インバータを取り付け,システム制御用プログラムを開発してマイクロコンピュータによる運転の自動化を図った。切断装置の付加によりグラスサイレージの取出し作業は順調に行われ,73kg/minの掻き出しが可能となった。自動運転による詰込み作業能率は600kg/h,取出し作業能率は440kg/hを示した。

耕うんロボットシステムの開発(第3報) −位置認識システムと地磁気方位センサを併用した無人作業における90°旋回・幅寄せ制御の高精度化―

行本 修・松尾陽介・野口 伸・鈴木正肚

キーワード:自動制御,90°旋回,幅寄せ,学習機能,操舵制御,耕うんロボット

耕うんロボットシステムにおいて,慣行のマニュアル運転による能率・精度に匹敵する90°旋回と幅寄せを行う制御法の開発を目的とした。90°旋回時は土壌表面の含水比・土質など路面の状態変化によって,旋回半径が変動することから,その制御方法に作業中に旋回半径を学習する機能を付与した。また,幅寄せ制御については,前・後進を併用して幅寄せできる方法を提案し,幅寄せ難度を量的に表現することによって,前進幅寄せの必要性の有無を自動認識して,むだの少ない幅寄せ動作が行える制御法を考案した。

田植ロボットの視覚部に関する研究(第3報) ―土の畦の検出―

陳 兵旗・東城清秀・渡辺兼五藍 房和・B.K.Huang

キーワード:田植ロボット、土の畦畔、エッジ検出、マスク処理、畦の境界線の検出

水田の畦は土の畦畔とコンクリートの畦畔に大きく分けることができる。畦畔はさらに田植ロボットが走行する上で、走行の目標とするもの、田端となるものおよび側面端となるものに類別される。まず、改良Kirschオペレータを利用した微分処理によって畦畔のエッジ候補点を抽出した。マスク処理によって畦の境界線部分の白画素を抽出し、さらにハフ変換によって畦の境界線を検出した。画像内に目標とする畦の端点がある場合には、端点に合わせて端面の畦の境界線を検出できることを示した。

画像処理による収穫時のリンゴ果実の識別(第2報) −−果実、枝葉、背景の領域分割−−

孫 明・高橋照夫・張 樹槐・戸次英二

キーワード:リンゴ、収穫、識別、色信号、色差信号、RGB信号比、ロボット

赤色系リンゴを対象に前報で問題になった逆光下の果実抽出手法、及び果実と周囲の枝葉と背景の領域分割法を開発した。果実、枝葉、空・反射シートのRGB信号特性を解析した結果をもとに、色差信号G−Yに加え、RGB信号比R/G、B/R、B/Gを併用する領域分割法を考案した。天候や時刻の異なる照射状態の画像を対象に適用を試みた結果、順光あるいは逆光にかかわらず、果実のほとんどの描画率が目標の80%に達した。葉と空・反射シートの識別も描画率80%以上となることが多かった。しかし、枝と葉等との区別はまだ不十分であった。

技術論文

植物油の粘性が噴霧粒径に及ぼす影響

富樫千之・松森一浩・上出順一

キーワード:噴霧粒径,代替燃料,植物油,液浸法,動粘度

ディーゼル機関の代替燃料の一つとして研究している植物油(ナタネ脱酸油,パーム脱酸油)および両油と軽油の混合油の動粘度と噴霧粒径の関係を調べた。噴霧粒径の測定は前報1)と同様に受止め液をシリコン油とする液浸法とし,動粘度は供試植物油と軽油の混合割合および燃料噴射温度を変えて調整した。その結果,各噴射温度において供試油の動粘度が高くなるにつれて,平均噴霧粒径は連続的に大きくなり,2油種間に相違は認められなかった。さらに,噴射温度が異なっても,平均噴霧粒径は供試油の動粘度との関係で1本の曲線に整理できることを明らかにした。

田植機用千鳥植え植付機構の開発研究(第1報)

小西達也・津賀幸之介・冨田宗樹 市川友彦・吉田清一

キーワード:田植機、植付機構、立体軌跡、千鳥植え

植付機構一組あたりの作業幅拡大と、新栽植様式の実現による稲作の安定増収を目的として、千鳥植えを行う回転式植付機構を開発した。この植付機構は、高速田植機の植付機構を基本として、植付爪の揺動軸を、公転軸と非平行に配置することによって構成され、2個の植付爪がそれぞれ立体的な軌跡を描くようになっている。非平行軸間の不等速回転伝動には、非円形歯車と円錐歯車を使用した。設計に必要なパラメ−タを明らかにするとともに、植付爪の挙動を表示するシミュレ−タをワ−クステ−ション上に作成し、これを用いて性格の異なる2種類の植付機構を設計・試作した。実験の結果、千鳥植えの可能性が見いだされた。

フロアブル剤散布装置の開発(第2報) −チュービングポンプ式散布装置−

沢田雅仁・浜口隆文・本島 修・佐藤 功・小林堅二・中村正一

キーワード:田植機,フロアブル剤,吐出量,散布量,固着,調量

田植と同時に原液のフロアブル除草剤を滴下する,チュービングポンプ式のフロアブル剤散布装置を開発した。条数,株間,薬剤散布量と連動した調量機構の吐出量について,試験を行った。また,連続滴下による吐出量の変動,薬剤固着による詰まりについての試験を行った。その結果,試作機は薬剤の詰まりがなく,調量が簡便で,メンテナンスに優れた機構を有することを確認した。また試作機は,実用化に耐えうる装置であると判断された。

2つの転動輪を使った走行軌跡の計測

本橋圀司・高野 剛・田中勝千

キーワード:位置計測,測距輪,トラクタ,横滑り

トラクタの前後に装着した2つの転動輪によってトラクタの進行距離と進行方向角を測定し,走行軌跡を求める装置を試作した。この装置の計算上の進行方向角計測誤差は100m走行あたり約0.65度で,誤差は進行距離に比例して大きくなり旋回の程度とは無関係であった。実際の測距誤差は±0.21%程度で,進行方向角の計測誤差は計算値の2倍以内であった。また,本装置は機体が横滑りしているときでも正しく進行方向角を検出することができ,傾斜地でも高精度に進行方向角を計測できた。

速報

高電圧パルスによる懸濁液中キュウリつる割れ病菌の殺菌

谷野章・大西謙次郎・小林琢也・富士原和宏・飯本光雄・内野敏剛

キーワード:高電圧パルス,殺菌,キュウリつる割れ病菌,養液栽培