第60巻4号

研究論文

深耕アップカットロータリ耕うんの土壌かく拌性(第1報) ― 土壌かく拌シミュレーションモデルの構築 ―

小野寺一宏・片岡 崇・太田義信・広間達夫

キーワード:ロータリ,耕うん,投てき,土壌かく拌,モデル,土壌堆積

本研究は,すくいづめを持つ深耕アップカットロータリ耕うんにおける耕うんづめすくい面形状および耕うん条件と土壌かく拌性との関係,さらには作物生育に適した耕うん後の土壌形成について検討することを目的とする。ロータリ耕うんにおいて,土壌かく拌性の評価は直接作物生育の場の把握に結びつき,極めて重要な課題といえる。ここでは,従来の質点系力学による切削土の後方投てきシミュレーションモデルをもとに,切削土の土塊形状および滞空時間を考慮した耕うん後の土壌かく拌シミュレーションモデルについて提案する。このモデルを用いた結果,土壌かく拌性は耕うんづめすくい面形状パラメータの土壌切削角( )とすくい面曲率中心角( )に大きく影響されることを明らかにした。

早期水稲のマルチ栽培用田植機に関する基礎研究(第3報) − マルチ栽培用田植機の試作と圃場性能試験 −

日吉健二・永田雅輝・梅崎輝尚・ベルナルド D.タデオ・王 紅永

キーワード:早期水稲,マルチ栽培,マルチ穴開け機構,田植機

ポリエチレンフィルムマルチによる早期水稲栽培用の田植機として,フィルム敷設とマルチ穴開け機構を装備したマルチ栽培用田植機を試作し,圃場性能試験を行った。マルチ穴長は,土壌が軟弱なため理論値より約2cm小さくなったが,移植に必要な最小マルチ穴長より1〜2cm大きかった。また,マルチ穴内の植付位置は,田植機によりフィルムが前方に引っ張られたため,理論値より3〜5cm程後方となった。このような,マルチ穴の短小化やマルチ穴の不完全な切開およびフィルムの移動により,浮苗株や埋没株が発生したものの,正常株率は92%となった。以上の結果,試作機は実用化のためには多少の改良を必要とするものの,水田での適用性が確認され,本研究の初期の目的は達成したと判断された。

バンカーサイロ作業の自動化(第1報) ― サイレージ詰込み・取出し装置の設計目標と試作1号機の性能 ―

矢治幸夫・屋代幹雄

キーワード:バンカーサイロ,サイレージ,取出し作業,詰込み作業,自動化

バンカーサイロの詰込み作業と取出し作業の自動化を図るために,サイレージ詰込み・取出し装置試作1号機を製作し性能を検討した。試験用小型バンカーサイロの左右壁上部に設置したラックレールを走行する走行装置,均平・取出しロータとバケットからなり,走行装置に懸架され昇降する作業装置の機能は良好であった。1号機の層別踏圧による詰込みは埋草密度318〜490kg/m3,取出し能率はソルガムサイレージで最大226kg/minを示した。踏圧方式,材料運搬方式,サイレージ取出し方式は改良する必要があった。

耕うんロボットシステムの開発(第2報) ― 位置認識システムと地磁気方位センサを併用した無人作業における直進制御法 ―

行本 修・松尾陽介・野口 伸・鈴木正肚

キーワード:地磁気方位センサ,位置認識システム,操舵制御,非線形制御,耕うんロボット

第1報で考案した作業計画モジュールで得られたロボットの走行経路を追従制御できる走行制御法を開発することが目的である。測量機器を改造して試作された位置認識装置(OPTREC)と方位計測のための地磁気方位センサ(TMS)を併用した耕うんロボットシステムを構築して,その直進走行制御法を検討した。車両運動の非線形性を考慮した操舵制御系を構成し,平坦な路面の既定経路を平均横方向偏差5.2cmで走行させることができた。しかし,回り耕時の直進精度を向上させる上で,初期位置を決定する幅寄せ制御の高精度化が不可欠と判定された。

キクの挿し木作業の自動化に関する基礎的研究(第3報) − 挿し穂の整形装置の開発 −

門田充司・近藤 直・秋山尚文

キーワード:挿し木,キク,ロボット,整形,物理的特性

前報までにキクの挿し木作業のロボット化を目的として,視覚部における挿し穂の把持位置検出アルゴリズムの検討を行ってきた。本報では,多くの時間と労力を要して手作業で行われている挿し穂の整形を短時間で行う装置の検討を行った。まず,装置の基本機構を決定するために,挿し穂の物理特性を調査した。その結果を基に,Y字状カッタによって葉を整形する方法と,切断およびせん断力によって整形する方法の2種類の整形装置を試作した。これらの装置を用いて挿し穂の整形基礎実験を行った結果,約90%の成功率で挿し穂を整形することができた。

三点リンクのあそびによって発生するトラクタ作業機系の非線形挙動

ブクタ アッティラ・笹尾 彰・酒井憲司・渋澤 栄

キーワード:非線形系,あそび,衝撃加振器,分岐,カオス,ポアンカレマップ

高生産性,高作業能率を達成するために,トラクタの走行速度向上への要求が強まっている。しかし,トラクタのほ場間における高速度行時に,作業機ヒッチング部に大きな負荷が作用し,破損や事故を引き起こす場合もある。本研究では,3点リンクにおけるフリープレイ(あそび)がトラクタ作業機系の非線形振動を発生させるものを考えた。Collins,酒井らによって行われた研究結果に基づき,3点リンクにおけるフリープレイを,衝突要素とする衝撃加振器としてトラクタ作業機系をモデリングした。得られたモデルを用いて数値実験を実施し,系の非線形挙動を調べた。起振力の周波数を制御パラメータとする,周期振動,倍周期振動,カオス振動の分岐構造を明確にした。

技術論文

フロアブル剤散布装置の開発(第1報) − ピストンポンプ式散布装置 −

沢田雅仁・藤間則和・佐藤 功・浜田順一・高尾 裕

キーワード:田植機,フロアブル剤,吐出量,散布量,固着,調量

我が国の水稲作では,環境への汚染防止や農作業時間の短縮が要望されている。そこで田植と連動した吐出しを行い,移植と同時に原液のフロアブル除草剤を滴下する,ピストンポンプ式の田植機装着型フロアブル剤散布装置を開発した。試作機は,乳剤やフロアブル剤の種類によって吐出量が変動することがなく,試作機の進行方向に対する散布量の変動はわずかであった。また,ノズル先端にノズルキャップを装着することによって,長時間試作機を停止させても配管系には,固着によるつまりは発生しなかった。

光学的手法による果実の品質評価(第3報) − 果実硬度と果実の吸光度及び果肉内吸光度分布との関係 −

イ ワヤン ブディアストラ・池田善郎・西津貴久

キーワード:透過率,吸光度,硬度,リンゴ,ナシ,レーザ,散乱,吸収

波長783nmの低出力レーザ光の透過率計測システムを試作した。リンゴとナシの果肉を柱状に整形した試料を用いて吸光度とその分布を測定し,試料硬度との関係を調べた。その結果,試料硬度と吸光度との間に相関がみられた(r>0.80)。一方,吸光度の果肉内での変化率と試料硬度との間にはほとんど相関がみられなかった(r<0.53)。ただし,ラリタン種のリンゴではその相関は高かった(r=0.80)。吸光度及び硬度の差異は果実細胞の細胞壁中の微細構造,つまりミドルラメラの変化によるものと思われる。