第60巻3号

研究論文

トラクタフレームの動特性解析 − 締結部動特性評価とフレームのモデル化 −

小泉孝之・沢辺重行・久保元勇・石田栄一

キーワード:トラクタフレーム,締結部動特性,回転次数比分析,実験モード解析,モデル化

本論文の目的はボルト締結部が全体構造の動特性に与える影響を評価し,締結部動特性を考慮したトラクタのモノコック型フレームの動特性モデルを構築することである。まず,ボルト締結部が構造物の動特性に与える影響を調べ,その結果,構造物の全体剛性を低下させる要因の一つは,モードの形状であることを明らかにした。また,その現象を数値実験に適用する方法を提案した。次に,実機フレームに対し回転次数比分析・実験モード解析を行い,フレームの動特性を把握した。そして,ボルト締結部を考慮してフレームの動特性モデルを構築した。その解析結果は実験結果と比較してほぼ一致し,良好なフレームの動特性モデルを構築できた。

耕盤のある圃場における支持力のすべり線解析(第2報) − 干渉状態のすべり線場の支持力解析 −

鹿内健志・橋口公一・久木田徹・上野正実・亀井雅浩

キーワード:支持力,すべり線場,剛塑性,平面ひずみ,耕盤

圃場機械の走行部の合理的な設計指針を得るため,耕盤のある圃場の車両に対する支持力問題を剛盤上の摩擦性剛完全塑性体への2つの近接する荷重としてモデル化を行い,すべり線法により解析を行った。第1報で2つの荷重下に生じる干渉状態のすべり線場は荷重幅および荷重間隔に応じて5種に分類されることを示した。本報ではそれぞれのすべり線場に基づいて支持力を算定し,荷重幅,耕盤深さおよび荷重間隔による支持力の推移状況を明らかにした。

インゲン豆の薄層乾燥特性

田川彰男・村松良樹・藍 房和・村田 敏

キーワード:インゲン豆,薄層,乾燥特性,減率乾燥第2段,無限平板モデル,Arrhenius 型の式, 乾燥速度定数

インゲン豆について,5段階の温度とそれぞれの温度に対し2〜3段階の相対湿度の乾燥空気条件下における薄層乾燥特性を測定した。含水率の測定データを数値微分して乾燥速度を算出し,乾燥特性曲線から,インゲン豆の乾燥は減率乾燥第二段で行われることが予測できた。測定データを拡散方程式の近似解に非線形最小二乗法を適用し当てはめたところ,形状係数B1の値は約0.8となった。そのため,拡散方程式における無限平板モデルの厳密解に非線形最小二乗法を適用して測定データをあてはめ,測定値と計算値を比較したところ両者は非常に良く一致し,インゲン豆の乾燥特性は無限平板モデルの適用により推定できることが分かった。また,乾燥速度定数KはArrhenius型の式に良く従った。

動的ガス環境下におけるキュウリ果実の呼吸特性

中野浩平・胡 文忠・安永円理子・秋元浩一

キーワード:呼吸速度,呼吸商,キュウリ,動的ガス環境,低温障害

動的ガス環境下でのキュウリ果実の呼吸特性を明らかにするため,2種類のフィルムを用いたパウチ法で呼吸速度の測定を行った。急速な酸素減少・二酸化炭素増加のあるガス環境では,呼吸速度が抑制されるが,キュウリ果実においては特に,酸素濃度変化に影響されることが示唆された。また,酸素濃度の減少速度が極めて速い環境下では,呼吸商は増大し,ガス環境の変化速度が呼吸系に影響を及ぼすものと考えられた。低温感受性作物であるキュウリ果実は低温下で,二酸化炭素排出量が増大するのに対し,酸素消費量の増加は少なく,その呼吸商は2前後となった。


耕うんロボットシステムの開発(第1報) − 位置認識システムと地磁気方位センサを併用した無人作業の構想と作業計画生成法 ―

行本 修・松尾陽介・野口 伸・鈴木正肚

キーワード:耕うん作業,自律走行車両,作業計画,経路計画,地磁気方位センサ,位置認識システム

本研究の目的はロボットに耕うん作業させる上で,必要十分な機能を有したロボットシステムを構築することにある。航法センサに位置認識システムと地磁気方位センサを併用し,人の知能部分に相当する作業計画(走行経路)の自動生成と,その計画に基づいて作業走行させる上で要求される一連の制御機能を有したロボットシステムの開発が狙いである。本報では耕うんロボットの全体構想と作業計画法について検討した。ティーチング走行モジュール,作業計画モジュール,往復耕モジュール,移動走行モジュール,そして回り耕モジュールからなるロボット作業法を考案した。

最適制御理論による枕地最短旋回時間問題(第2報) ― トラクタに後退も許す場合と一般的な軌道計画問題 ―

鳥巣 諒・田中健一・井前 讓

キーワード:トラクタ,枕地,旋回方法,初期制御入力,一定値入力法,変動値入力法,軌道計画

第1報に続き,枕地の最短旋回時間問題を最適制御理論でトラクタに後退も許す場合について検討した。はじめに,第1報と同様の方法である一定値入力法で数値計算を行ったが満足な結果は得られなかった。そこで,これを解決するために初期制御入力の与え方を工夫した変動値入力法で数値計算を行い良好な結果が得られた。この結果は枕地旋回の自律走行の基礎的資料になりえる。

ラン科植物組織培養苗の自動選別およびロボット移植について

海津 裕・岡本嗣男・鳥居 徹

キーワード:移植,ロボットシステム,エンドエフェクタ,画像処理,形状記憶合

ランやカーネーションなど観賞用の花卉類では,組織培養を用いた苗の大量生産が一般的になってきた。しかしその作業はほとんど人手に頼っており生産コストが高くなる原因となっている。本研究ではラン科植物苗の生産を対象として,その育苗過程における移植作業をマシンビジョンとロボットを用いて自動化するシステムを試作し,その性能を調べた。その結果,苗を認識するのに要した画像処理時間は0.6秒,ロボットによる把持,置床にかかった時間は1本の苗あたり,20秒であった。また,移植の成功率は約80%となった。

キクの挿し木作業の自動化に関する基礎的研究(第2報) − 近赤外画像および輪郭の複雑性を利用した挿し木認識アルゴリズムの開発 −

近藤 直・小川雄一・門田充司

キーワード:挿し木,キク,視覚センサ,ロボット,複雑性,近赤外画像

本報では,前報で報告した挿し穂の主茎端点検出方法の問題点を解決するため,近赤外領域に感度を有するモノクロTVカメラを用いること,および輪郭の複雑性を利用し,葉の領域を考慮に入れたアルゴリズムを開発することにより,実験を行った。その結果,近赤外領域における穂と背景との識別は,色画像による識別より有効であることが確認された。また,画像処理時間は1本あたり1.5秒と前アルゴリズムと変わらなかったものの,本アルゴリズムを用いたときの成功率は,96.1%と前アルゴリズムをはるかに上回った。さらに,本アルゴリズムでは,3つのしきい値を用いることによって,誤認識を0とすることができた。

繰返しねじりせん断における中空円筒試料土の動的挙動(第1報) ― 繰返し力, 周波数, 乾燥密度の影響 ―

P.ウサボリスット・小池正之・余田 章・佐藤純一・長坂善禎・B.バハラョディーン

キーワード:繰返しねじりせん断,応力,ひずみ,側圧,有効側圧,有効応力比

トラクタ走行時,とくに旋回時等に発生する土壌の動的締固め現象の解明を目的として,繰返しねじりせん断載荷試験を行った。繰返し数の増加につれて,ねじりせん断ひずみと間隙水圧は増加する傾向を示した。ねじりせん断応力とひずみの大きさは,乾燥密度と載荷周波数による影響を受けた。しかしながら,ねじりせん断ひずみと有効応力比の関連において,乾燥密度と載荷周波数をパラメータとした両者の差異は小さいことが分かった。

走行速度と種子検出信号を用いた種子繰出し量のコンピュータ最適制御(第2報) − PI制御のアルゴリズムの室内実験 −

P.P.ガルシア・伊藤信孝・鬼頭孝治・王 秀崙

キーワード:播種機,播種量制御,コンピュータ制御,プログラミング,パルス幅変調

本報はコンピュータ制御を用いて走行速度の変化に比例して播種量を制御する方法について述べたものである。制御アルゴリズムはPI(比例・積分)制御に基づいて構成され,室内実験の結果から,制御系は,車両走行速度が「低」から「高」にあるいは「高」から「低」に変化するとき即座に応答するが,実際の繰出しロールの回転速度が安定する時間は,前者の場合はほぼ3〜4秒,逆に走行速度が「高」から「低」に変化する後者の場合はわずか2秒であった。この時間は入力に対する応答の(無駄時間を含めた)安定域に至るまでの所要時間であり,応答はわずか1秒前後で行われていることを考慮すると,所要の繰出しロールの速度を制御プログラムの合理的なサンプリング回数内で達成することが
できた。

技術論文

無農薬除草のための基礎的研究(第3報) −識別処理の連続化−

柴田洋一・西崎邦夫・横地泰宏・唐牛敦史・荒木 幹

キーワード:画像処理,除草,作物認識,ファジィ,配列

連続走行する自動物理除草機を想定し,視覚センサがどの様なタイミングで画像入力を行っても,作物配列の規則性を利用した作物と雑草との識別が可能となるよう処理手法を改良した。その結果,条間60cm,株間40cmに植え付けられた2条植えのハクサイ苗と雑草とを,0.53m/sの走行速度で連続的に識別できた。誤認識無く識別できた画面数の割合は86.7%,作物が消去された画面の割合は2.8%,雑草が残存した画面割合は10.5%であった。また,処理速度は実用の範囲内にあると判断された。

誘導ケーブル式果樹無人防除機の開発(第3報) ― 果樹園への適応性及び作業性能 ―

戸崎紘一・宮原佳彦・市川友彦・水倉泰治・木下雄史

キーワード:誘導ケーブル,無人防除,無人走行,果樹,付着性能,スピードスプレーヤ

著者らが開発した誘導ケーブル式果樹無人防除機の様々な果樹園への適応性及び作業性能を把握するために,既存の果樹園(わい性台リンゴ園,棚作りブドウ園及びナシ園)に誘導ケーブルを敷設し,開発機の動作確認及び作業性能試験を行った。その結果,いずれの果樹園でも円滑な無人散布作業を行うことができ,各種安全装置は確実に作動した。また,無人散布時の作業能率及び散布液の樹冠内への付着性能は,いずれも有人のスピードスプレーヤと同等以上であった。これらの結果から開発機は,様々な果樹園に対する適応性を有し,それぞれの園地において十分な性能を発揮できることが確認された。

昆虫工場における環境計測制御システムの開発(第1報) ― システム構成及び基礎実験 ―

彭 彦昆・大浦正伸

キーワード: 昆虫工場,カイコ,飼育装置,飼育環境,シーケンサ,計測制御

本研究は,昆虫飼育工場における飼育装置及び飼育環境の自動制御システムの開発を目的としている。本報では,カイコの飼育を対象として,パソコンとシーケンサ並びに各種センサー等から計測制御システムを構成しシミュレーション手法による基礎実験を行った。カイコ飼育工場における飼育装置の自動運転を実現する可能性を得た。また,経日・経時的な最適温度設定による飼育環境温度のリアルタイムフィードバック制御が可能となった。

光学的手法による果実の品質評価(第2報) − NIR反射率計測システムによるリンゴとマンゴーの糖度及びリンゴ酸濃度の予測 −

イ・ワヤン・ブディアストラ・池田善郎・西津貴久

キーワード:近赤外,反射率,リンゴ,マンゴー,糖,リンゴ酸,線形多変量解析,液体クロマトグラフィー

果実のオンライン品質検査用の近赤外光反射率計測システムを試作した。リンゴ(ゴールデンデリシャス)については果肉を柱状に整形し,マンゴーについては切り出さずにそのまま用いて,糖度とリンゴ酸の予測を試みた。2種類の多変量解析によって,波長1400-2000nmのlog(1/R)と液体クロマトグラフ法で測定した糖度及びリンゴ酸濃度との間の回帰式を決定した。ステップワイズ法で得た較正式を用いて,果実糖度とリンゴ酸濃度予測の可能性について検討した。その結果,予測値との相関係数は0.9以上,予測値の標準誤差は0.44%以下であった。