第60巻2号

研究論文

耕盤のある圃場における支持力のすべり線解析(第1報) − 干渉状態のすべり線場 −

橋口公一・鹿内健志・久木田徹・上野正実・亀井雅浩

キーワード:車両,支持力,すべり線場,剛塑性,平面ひずみ,耕盤

一般に圃場は硬い耕盤の上に軟弱な作土が存在する2層構造を呈し,均質半無限地盤とは異なる支持力特性を示すと考えられる。本研究では,車両の合理的な設計指針を得るため,耕盤のある圃場における車両の支持力問題を剛盤上の土に2つの近接する荷重が作用する平面ひずみ問題として理想化し,すべり線解法を導入して理論的解析を行った。荷重下に生じるすべり線場として,荷重幅および荷重間隔に応じた5種の干渉状態のすべり線場を提示した。

早期水稲のマルチ栽培用田植機に関する基礎研究(第2報) − ナイフ式マルチ穴開け機構の理論的解析 −

日吉健二・永田雅輝・梅崎輝尚・王 紅永・岡田芳一

キーワード:早期水稲,マルチ栽培,マルチ穴開け機構,田植機

回転式植付機構の運動式からナイフの往復揺動運動を取り入れたマルチ穴開け機構の運動式を導出し,植付爪とナイフの運動シミュレーションを行い,マルチ穴長と植付位置の理論値を算出した。その結果,マルチ穴長は植付深さを深くすると長くなり,植付株間を広くすると短くなる傾向となった。また,植付位置はマルチ穴の中央部よりやや前方となった。フィルムを敷設した移動土槽を用いて,マルチ穴開け機構による実験を行った結果,ナイフ刃先は植付爪より早くフィルムに到達し,切開されたマルチ穴の形状は全て直線的なスリット形となり,植付位置は理論値の傾向と一致した。したがって,本機構によるマルチ穴切開と植付作業の同時化の可能性が確認された。

玄米用回転型通気乾燥装置について

亀岡孝治・伊藤信孝

キーワード:通風乾燥機,玄米,籾,薄層乾燥特性

籾および玄米の乾燥を目的として実験用回転型通気乾燥装置を試作した。この装置を用いて,籾,玄米について空気温度を変えて乾燥実験を行った。この結果,同じ乾燥条件下では,籾乾燥に比べ玄米乾燥の方がはるかに高速乾燥を達成出来る事が示された。また,回転ドラム内の玄米は,良好に流動撹はんされており,玄米の乾燥速度は薄層乾燥速度に近似出来ることが,等しい乾燥条件での薄層乾燥実験結果との比較から示された。胴割れが殆ど生じない事を考慮して,高速乾燥が達成出来る本乾燥装置の最適設定空気温度条件は30℃から40℃付近であると考えられる。

エタノール噴霧処理による米の貯蔵性の改善(第2報) − 品質特性および貯蔵性について −

馮 伝平・繆 冶煉・豊島英親・吉崎 繁

キーワード:精白米,エタノール,貯蔵,脂肪酸度,酵素活性,糊化特性

本報では精白米の貯蔵性を改善するために,濃度80%のエタノール溶液の精白米に対する重量比(以下重量比と称す)0.2〜15%,密封保持時間30秒〜60分の条件下で精白米のエタノール噴霧処理を行ない,処理米の物理的・化学的特性および貯蔵性を検討した。保持時間10〜60分の範囲においては処理米の残存酵素活性は34〜37%(重量比1%の場合)となり,処理直後の米粒のカビ菌数は大きく減少した。処理による糊化特性や吸水特性への影響は認められず,処理米の白度,胴割れ粒率および水浸ひび割れ率は上昇した。一方,貯蔵中における処理米の脂肪酸度の増加,最高粘度およびブレークダウンの上昇,カビの増殖が抑えられた。適切なエタノール噴霧処理は精白米の古米化を抑制できるものと考えられる。

豆類の吸水特性


田川彰男・村松良樹・笠井孝正・藍 房和・村田 敏

キーワード:豆類,吸水,拡散,指数モデル,Arrhenius型の式

小豆とインゲン豆の吸水特性を5段階の浸漬温度(10,20,30,40,50℃)に関して測定した。その結果,小豆とインゲン豆の吸水過程は,初期,恒率,減率の三つの吸水期間から構成されることが分かった。初期および減率吸水期間の測定データを拡散方程式の近似解に非線形最小二乗法を利用してそれぞれあてはめ,測定値とこれによる計算値を比較したところ,両者は良く一致した。このことから,これらの期間における含水率変化は拡散方程式の近似解の指数モデルで表されることが分かった。さらに,それぞれの吸水期間における速度定数と浸漬温度の関係は,Arrhenius型の式に良く従った。

エビのマイクロ波加熱に関する研究(第1報) − 凍結点以上における誘電特性 −

田中史彦・P.マリカルジュナン・洪 延康

キーワード:マイクロ波,エビ,誘電率,誘電損率,温度,周波数

エビ(Penaeus sp.)の誘電特性を明らかにするために,誘電率および誘電損率を温度0〜70℃,周波数300〜3000MHzにおいて測定し,周波数や温度,尾肉の繊維方向の違いが誘電率や誘電損率に与える影響などについて検討した。特に,マイクロ波加熱加工で重要となる915MHzおよび2,450MHzでの誘電特性について詳細に調べ,誘電率および誘電損率がそれぞれ温度に関して一次式,二次式で近似されることを明らかにした。また,両周波数におけるマイクロ波の,浸透深さと温度の関係についても考察した。


学習機能を有した自律走行車両に関する研究(第4報) − オンラインニューロコントローラ −

石井一暢・寺尾日出男・野口 伸・木瀬道夫


キーワード:オンラインニューロコントローラ,自己修正機能,適応制御,位置計測システム,方位計測システム,ニューラルネットワーク

農用車両の使用される環境はオフロードでしかも装着される作業機が種々に変更されるので,その運動は時空変動を有する。本報はこれまでの研究によって開発された位置・方位計測装置を用いて1)-3),車両運動の特性変化にも適応可能な制御法を考案することを目的とした。ニューラルネットワーク(NN)のもつ自己組織化機能を用いて,ニューロコントローラに自己修正機能を付加する手法を考案した。車両シミュレータを使用した走行シミュレーションを行った結果,路面変化が生じてもオンラインニューロコントローラは路面変化に適応し,良好な追従精度を示した。また,実機による実験を考慮して位置計測システムの時間遅れに対する車両シミュレータを使用した位置推定法を考案した。本手法を援用した走行実験の結果,オンラインニューロコントローラは路面特性の違いに適応でき,ほ場走行に対して有効であることを確認した。

飼料生産圃場における自律走行トラクタに関する研究

石田三佳・芋生憲司・岡戸敦史・竹永 博・本田善文・糸川信弘・澁谷幸憲

キーワード:自律走行車両,光ファイバジャイロスコープ,超音波速度計,飼料生産

飼料生産圃場における作業の省力化を目的として,自律走行トラクタの開発を行った。自律走行のためには,車両の位置と方位を正確に認識することが必要である。本システムでは2つの内界センサ(光ファイバジャイロスコープと超音波ドップラ速度計)をトラクタに取り付けて,ヨー角速度と走行速度を検出し,その出力を積分してトラクタの位置を計算した。操向制御はコンピュータにより,オンオフ制御と比例制御を組み合わせて行った。速度を0.7〜1.8m/sの間の4段階に設定して平坦な圃場で50mの直進走行試験を行った結果,目標線からの横方向の偏差が最大10cm程度であった。また実作業への適用性を実証するために直進時1.2m/s,旋回時0.8m/sの速度で400mの走行試験を行ったところ,設定経路からの最大偏差は1.5m程度であった。


キクの挿し穂作業の自動化に関する基礎的研究(第1報) − 色画像およびチェインコードを用いた挿し穂認識アルゴリズムの開発 −

近藤 直・小川雄一・門田充司

キーワード:挿し穂,キク,視覚センサ,ロボット,チェインコード,色画像,画像認識

本研究は,多大な時間と労力を要するキクの挿し穂作業の自動化を最終目的とし,本報では,その自動化システムで重要な役割を占める穂の把持位置検出アルゴリズムの開発を行った。対象となるキクの穂をカラーTVカメラで画像入力し,色信号による背景との識別を行い,その2値画像を基に,マニピュレータが把持するために必要となる穂の主茎端点の検出を,チェインコードのデータに基づくMFN(Most Frequent Number)法および主茎端点近傍の形状を認識する方法によって行った。その結果,約88%の成功率で検出可能であり,1本あたりの検出時間も約1.5秒とほぼ満足な結果が得られた。

直播ビートの自動間引きに関する研究(第2報) − 画像の色情報によるてん菜の識別 −

登坂直範・端 俊一・岡本博史・高井宗宏

キーワード:てん菜識別,自動間引き,カラー画像処理,光量,RGB表色系,YIQ表色系

てん菜自動間引きのための汎用性の高い画像処理手法の確立を目的とし,ほ場内でのてん菜の識別に対して,カラー画像色情報の利用可能性を検討した。カメラに入射する光量の指標として光量指数(L/F2)を定義した。昼光下では時刻や天候にかかわらず,画像中の植物および土壌のRGBそれぞれの輝度値は,光量指数で回帰することができた。この回帰曲線を利用して,RGB空間上で植物と土壌を分離する最適な平面を求めることができ,2000<L/F2<6000の範囲において,一定のしきい値で植物と土壌を識別することが可能となった。次いで,てん菜と雑草の分離識別の可能性を検討した結果,抽出した植物体に適宜収縮処理をした後,葉色の色合いを識別するため,RGB輝度をYIQ表色系に変換して,緑からマゼンダの色差を表すQの中央値を使用することにより,てん菜の原形を保ちながら雑草の55〜78%を消去することができた。

疎水性ガス圧力下における食品モデル中の細菌の増殖抑制効果

橋本 篤・大下誠一

キーワード:疎水性ガス,キセノンガス,水の構造,細菌,増殖抑制,食品モデル

疎水性ガスとしてキセノンガスを用い,食品モデルおよび細菌中の水の構造化を促進させ,食品モデル中に存在する細菌の増殖抑制効果について実験的に把握した。その結果,初期キセノンガス分圧が高いほど,食品モデルおよび細菌内部の水の構造化が促進され,増殖抑制効果が大きくなるものと考えられた。そして,食品モデル表面から4.3mmまでの距離では,細菌の増殖抑制効果に顕著な差異は認められなかった。一方,細菌の種類により増殖抑制効果に顕著な差異が認められ,本法はグラム陽性菌よりもグラム陰性菌に対してより効果的であった。


自律走行車両のための作業機軌跡制御法(第1報) − 四輪操舵車両の場合 −

瀧川具弘・小中俊雄・小池正之・野口良造・長谷川英夫

キーワード:自律走行車両,軌跡制御,四輪操舵,クロソイド,自動制御

農業用自律走行車両に装着した作業機軌跡の制御法について研究した。四輪操舵車両ではヨー角速度と横方向移動速度が別個に制御できることを利用した。タイヤスリップがなく,水平な平面上を定常旋回するとの仮定に基づいた簡略化した車両モデルを用い,与えられた軌跡上を走行するために必要な条件を導いた。そして,この条件から操舵角度を計算するアルゴリズムを求めた。90度旋回のシミュレーションの結果,この制御法で装着作業機を与えられた軌跡にそって移動させられることが確認された。しかし,必要な操舵角度は,軌跡形状に強く依存することがわかった。そこで,クロソイド,円弧状,矩形状の軌跡を与え比較した結果,クロソイドカーブが最も適していた。

技術論文

稲稈の力学特性に関する一考察

井上英二・金 暎根・橋口公一・岡安崇史・鹿島 潤

キーワード:汎用コンバイン,リール,稲稈,たわみ特性,大たわみ式,曲げこわさ

本研究は,稲の収穫作業時における汎用コンバイン集稈部(リール)の稲稈に作用する機械的作用を明らかにするため,稲稈の曲げこわさ並びにたわみ特性について検討を行った。まず,リールの機械的作用による稲稈のたわみ特性は,そのたわみ量の大きさから通常の弾性はりのたわみ式で推定するには限界があることから,弾性はりの大たわみ式の導入を試みた。また,大たわみ式について,ピアノ線を用いてその有効性を確認し,稲稈に作用する荷重とたわみ量の関係を推定した。その結果,実測値のたわみ特性と推定値には良い一致が見られた。さらに,稲稈の高さ方向に変化する曲げこわさについてその傾向を論じた。

簡易型ホウレンソウ収穫機の開発(第1報) − 携帯型機の試作と収穫実験から見た改良課題 −

小林由喜也

キーワード:ホウレンソウ,収穫機,携帯型,電気動力

簡易型ホウレンソウ収穫機の一案として携帯型機を試作し,3品種を供試して収穫実験を行い,改良課題を検討した。その結果,現時点における作業能率は人力の60%程度と推定された。葉の損傷と根の切断長で出荷の可否を判定すると,草姿が立ち性の品種では一般的な調製で出荷可能なものが75%程度,出荷不能なものが+数%あった。残りはさらに1〜2枚を破棄すれば出荷可能であった。草姿が開張性の品種では損傷が大きく,当面は立ち性の品種が実用化の対象と考えられた。現在,人力以上の能率を目標に,1回当りの収穫株数を増やす刈取り部の改良と損傷低減対策として搬送中の作物姿勢を制御する搬送部の改良を行っている。

小形ロールベーラの梱包特性

亀井雅浩・山名伸樹

キーワード:小形ロールベーラ,乾物密度,ロールベール,わら,牧草,成形方式

小形ロールベーラの梱包特性を把握するため,成形方式がチェーンコンベヤ式とローラ式のトラクタ直装式小形ロールベーラを供試して,わら類や牧草の含水率,切断長及び拾い上げ作業速度がロールベールの乾物密度や所要動力に及ぼす影響を調査した。梱包密度はチェーンコンベヤ式よりもローラ式の方が高くなったが,所要動力が大きいため,最大所要動力当たりのベールの乾物密度はローラ式の方が小さくなった。牧草や無切断わら梱包の場合,チェーンコンベヤ式では最大所要動力を小さくする最適な拾い上げ作業速度が存在した。小麦わら及び稲わら梱包では,5cm以上の切断長の違いによる最大所要動力当たりのロールベールの乾物密度への影響は両成形方式ともにほとんどみられなかった。


光学的手法による果実の品質評価(第1報) − クベルカ−ムンク理論に基づく果実の光学特性と熟度・糖度との関係について −

イ・ワヤン・ブディアストラ・池田善郎・西津貴久

キーワード:リンゴ,ナシ,クベルカ−ムンク,反射率,透過率,散乱,熟度,吸収係数

リンゴ(ふじ)及びナシ(二十世紀)について,クベルカ−ムンク(K-M)理論に基づいて波長240-2600nmの光学特性の測定を行った。果皮の存在や熟度がK-Mパラメータに及ぼす影響を調べ,果実の品質評価の可能性について検討した。果皮が存在すると,果皮なしのものと比較して可視光領域ではその吸収係数は大きくなるが,近赤外光領域では逆に小さくなる。また散乱係数についてはほぼ全領域で大きくなる。リンゴでは550nm,ナシでは620nmにおいてlog(1/R)あるいはK-M理論の吸収係数Kと糖度との間に高い相関(r≧0.91)がみられた。