第60巻1号

研究論文



農用ゴム履帯走行部の動的パラメータの同定


野口良造・井上英二・中野和司

キーワード:ゴム履帯,パラメータ同定,動的パラメータ,モデル,シミュレーション,ガウス・ニュートン法

農用ゴム履帯走行部のフーリエ級数で表されたゴム履帯の特性値について,ガウス・ニュートン法を用いたパラメータ同定手法を示し,走行実験データを用いてその有効性について考察を行った。その結果,ゴム履帯のバネ定数kと粘性減衰係数cの動的パラメータのフーリエ級数において,その第1項までのモデルを用いて良好なパラメータ収束を促すとともに、シミュレーション精度の向上がはかれることを明らかにした。さらに本研究での同定手法を用いれば,走行部の上下方向およびピッチング方向の時間変位のみを観測データとして,実波形に最適にフィットするモデルパラメータを求めることが可能であることを明らかにした。

早期水稲のマルチ栽培用田植機に関する基礎研究(第1報) ―ナイフ式マルチ穴開け機構の開発―

永田雅輝・日吉健二・梅崎輝尚・王 紅永・岡田芳一

キーワード:早期水稲,マルチ栽培,マルチ穴開け機構,田植機

本研究は,ポリエチレンフィルムマルチ栽培を早期水稲作へ導入して,初期生育の促進,出穂期・成熟期の早進化を図るための機械化技術として,フィルム敷設と植付作業が同時化できる田植機の研究を目的とするものである。第1報では水田に敷設するフィルムへマルチ穴を切開するために回転式植付機構に連動してナイフが往復揺動運動するナイフ式マルチ穴開け機構について研究した。ビデオ画像解析の結果,ナイフ刃先は植付爪より前方からフィルムに到達し,植付け寸前でマルチ穴を切開することを確認した。よって,マルチ穴開け機構はフィルムへのマルチ穴の切開と植付作業を同時化するマルチ栽培用田植機の移植機構として適用できることを明らかにした。

大豆の体積,見かけ体積,充てん率と水分の関係 −乾燥シミュレーションのための大豆の物性量−

井上慶一

キーワード:大豆,物性量,シミュレーション,比容積,見かけ体積,密度,3軸寸法

大豆の乾燥制御のためのシミュレーションモデル作成のために,大豆の比容積,見かけ体積,空隙率など乾燥に影響する大豆固有の物性量について理論的考察を行い,これらを基本的な物性量(乾物比容積,充てん係数)と水分の関数として表わした。さらに調査した5品種(タチナガハ,タマホマレ,フクユタカ,スズユタカ,エンレイ)の大豆に適合する以下の近似式を得た。
  Vm=V0+γ・m=0.771+0.965m(0.1<m)
  Vm={(m/ρw)2+2V0c(m/ρw)+V02}1/2 (0<m)
    Vm'=Vm/(1−ε)=6Vm/kπ
ただし, m(d.b. decimal),Vm;乾量基準の比容積(10-3m3/kg),Vm';見かけ体積,ε;空隙率,V0=0.771(10-3m3/kg),V0c=0.746,k=1.00 −0.029m
以上の結果,乾燥シミュレーションに必要な物性量を少ない基本的定数で表すことができるようになった。

MA段ボール箱による野菜鮮度保持と箱内ガス濃度予測 −ブロッコリの場合−

内野敏剛・永尾宏臣・村田 敏・河野俊夫・中村宣貴

キーワード:鮮度保持,MAP,段ボール箱,ブロッコリ,ガス濃度予測

従来のプラスチックフィルム小袋包装に比べ箱詰めや運搬などの操作性の高い段ボール箱を用いて,MAP(Modified Atmospere Packaging)によるブロッコリの鮮度保持試験を行った。内外両面にプラスチックフィルムをコーティングしたMA段ボール箱と普通段ボール箱間で鮮度保持効果を比較した結果,10℃では質量および還元型アスコルビン酸の保持,黄化の防止等でMA段ボール箱は普通段ボール箱より鮮度保持効果が高かった。また,ブロッコリのガス交換速度を容器内の酸素と二酸化炭素濃度の関数として容器内ガス濃度の理論式を導き,ガス濃度変化の予測を行った結果,計算値は測定値とよく一致した。

インペラ式籾摺機の摩擦衝撃特性に関する研究(第3報) −インペラ優劣の量的な評価について−

王 学剛・伊藤信孝・三輪恭爾・鬼頭孝治・王 秀崙

キーワード:インペラ脱ぷ,玄米,砕粒率,回帰,量的評価

本報ではインペラ式籾摺り機の脱ぷ実験結果に基づき,インペラの優劣に対する定量的な評価を試みた。即ち,玄米サンプルの砕粒率をいかに正確に測定するかについて,検討した。脱ぷ率と砕粒率の関係曲線の特徴を分析し,砕粒率を脱ぷ率の関数として表すことを試みた。特定指数及び分数式型などの関数型を用いて,脱ぷ率と砕粒率の実験曲線を回帰分析した。比較計算の結果,特定の指数曲線で砕粒率と脱ぷ率の関係を正確に表すことができることを確認し,3つのパラメータの特定指数方程式でインペラ脱ぷ性能の優劣を量的に比較評価することによって,安定した計算結果が得られ,信頼性も高いことが分かった。


学習機能を有した自律走行車両に関する研究(第3報) −自律走行車両の位置計測法−

石井一暢・寺尾日出男・野口 伸

キーワード:位置計測システム,色度変換行列,ニューラルネットワーク,往復作業走行

農用車両の走行環境は時間的・空間的に変動するため,それに適応できる制御法が高精度に農用車両を自律走行する上で必要となる。本報は前報で考案した非線形制御器であるニューロコントローラが使用できるように位置計測装置を改良した。車両の代表点である標識認識に時間を要しない色度変換行列を使用し,ほ場において計測精度を調べた。その結果,本装置が40×60m以内の近距離において13cm以下で高精度に計測できることを確認した。また,さらに認識精度を向上させるために,ニューラルネットワーク(以下,NNと呼称する)を使用した標識認識法を検討した。最後に,位置計測システムのナビゲーシ\ョ ンシステムとしての有効性を明らかにするために,往復作業を想定した走行実験を行\っ た。その結果,設定した作業幅で走行可能であり,本システムの有効性が実証された。

三次元視覚センサを用いたミニトマト収穫ロボット(第2報) −ロボットの構成と収穫実験−

I.D.M.スブラタ・藤浦建史・山田久也・石原幸信・湯川琢至・檜田 賢

キーワード:農業用ロボット,ミニトマト,障害物回避,果実収穫,自動化

三次元視覚センサをもつミニトマト収穫ロボットを試作して実験を行った。マニピュレータは,左右旋回,上下移動,上下旋回,腕の伸縮の4自由度をもつ。収穫ハンドは,吸引力により果実を収穫するもので,果梗や葉等の障害物を避けて収穫できるよう,左右振りの機能をもたせた。そして,三次元画像処理により,果実と障害物の位置を認識して,ハンドの軌道や振る方向を決めた。確実な収穫作業のためには,まだいくつかの課題が残されているが,障害物回避機能は,ミニトマト収穫ロボットに有効 と考えられた。

赤外線熱画像によるリンゴの検出に関する研究(第2報) −遺伝的アルゴリズムによるリンゴの検出−

張 樹槐・高橋照夫・福地 博・孫 明・寺尾日出男

キーワード:赤外線熱画像,遺伝的アルゴリズム(GA),パターン認識,リンゴの検出

前報では,赤外線熱画像によるリンゴ樹上の温度分布特性及びリンゴの2値画像の取得方法について検討した。本報は,前報で得られた2値画像の中でリンゴの輪郭線が円形状をしていることに着目し,遺伝的アルゴリズム(GA)を応用したパターン認識によるリンゴの検出問題を2値画像から円図形の抽出問題とみなし,その検出アルゴリズムを構築し,かつその妥当性について検討を行った。その結果,外部の光や温度環境が異なる昼夜などの撮影条件の相違に関係なく,赤外線熱画像の中に存在するほとんどすべてのリンゴが検出できた。しかもそのリンゴの位置及び大きさは,ほぼ赤外線熱画像の中のものと一致していることが分かった。

スイカ果実識別のための画像処理による標識の検出

竹田洋志・並河 清

キーワード:スイカ,着果棒,着色球形標識,画像処理

スイカ収穫適期は,果実の着果後40日から50日とされており,果実が直径4cm程度の大きさになったときに地域によっては着果棒を設置し,それにより収穫時期を判断している。本研究は着果棒として異なる色の球形の標識を使用し,画像処理による着果棒の位置検出と収穫時期の判定の可能性について検討した。その結果,白色標識では,抽出画像の大きさによる位置検出誤差は8.6%以内であった。しかし,赤色,黄色および青色の各標識の抽出においては,色の抽出は可能であったが,領域全体の抽出による位置検出の誤差は20%を越えた。なお,水色および紫色の標識は識別ができなかった。


3次元代用電荷網膜による画像認識

C.カナリ・村瀬治比古・穂波信雄

キーワード:位置独立性,同定,3次元形状,代用電荷法,ニューラルネットワーク

3次元の代用電荷解析法を用いて視野内にある立体の形状と大きさの認識の可能性について検討した。代用電荷解析法で用いられる境界点および領域内点をそれぞれ光受容細胞および視神経細胞とみなし代用電荷境界面を代用電荷網膜とした。網膜前面の視野内に任意の位置で大きさの異なる立体を計算機で発生させ,その立体が代用電荷網膜上に投影された写像から光受容体への刺激値を計算した。代用電荷網膜の出力値すなわち視神経細胞の興奮レベルと平面図形の形状および大きさとの対応関係はニューラルネットワークを用いて行った。認識率は形状および大きさについて平均でほぼ75%という結果が得られた。立体の底面の中心位置が網膜半径のおよそ10%以上の位置にある場合には認識率の低下が見られた。本研究で用いられた条件のもとにおいては3次元代用電荷網膜を用いることで網膜視野内にある立体の形状と大きさが認識できることを確認した。

技術論文

エアバッグ式乾燥機によるニンニクの加熱通風乾燥(第2報) −排風の一部再循環によるエネルギ利用の改善効果−

片平光彦・戸次英二

キーワード:ニンニク球根,エアバッグ式乾燥機,再循環,エネルギ効率,熱効率

収穫直後のニンニク球根は,貯蔵水分までの予措乾燥に長時間を要して乾燥速度を遅くするため,エネルギ消費量が穀物などと比較して著しく多くなることを前報で明らかにした。本報では,このエネルギ消費量を少なくするため排風の一部を再循環する方式を取り入れ,効果確認実験を行った。非循環区を対照に循環風量割合を38,51,77%の三通りに設定した区を設けて比較した結果,総収入熱量に占める循環熱量の割合は,38%区で0.1%に過ぎなかったが,51%区で9.9%,77%区で15.1%に増加した。エネルギ効率は非循環区の190.8MJ/kgに対し,循環熱量割合の最も高い77%区が54.6MJ/kgで71.4%の節減となり,熱効率も非循環区の2.3%に対し,77%区で15.2%と改善された。

自動搾乳システムによる定時搾乳作業と連続搾乳作業の比較

干場秀雄・梅津一孝・高畑英彦

キーワード:自動搾乳システム,一日三回定時搾乳作業,20時間連続搾乳作業,搾乳能率,搾乳回数

本研究は自動搾乳システムによる一日三回定時搾乳作業と連続搾乳作業を比較し,それぞれの特徴を明らかにすることを目的にした。搾乳能率は前者で 11〜13頭/時であったが,後者は長時間作業のため3〜4頭/時と差を生じていた。二搾乳ストールの利用比率は前者で搾乳ストール1が55%,搾乳ストール2が45%であったのに対し,後者では搾乳ストール1が68%,搾乳ストール2が32%であった。乳牛の搾乳間隔時間は前者で8〜9時間とその幅が狭かったが,後者では乳牛の自発的行動の違いにより5〜12時間と広かった。作業者の実働時間は前者で一日3時間であったが,後者では2時間に短縮され,さらに深夜の作業が無い利点があった。一日の搾乳回数は前者で必ず三回搾乳出来たが,後者では平均2.7回に留まっていた。