第59巻第6号論文要旨

研究論文

3方向応力測定器によるタイヤラグ面接地応力の測定

全亨奎・谷口哲司・岸本正・吉田慎・玉利達人

キーワード:接地応力,法線方向応力,接線方向応力,横方向応力,農用タイヤ,ラジアルタイヤ

タイヤの接地面に作用する応力を測定するために,タイヤラグフェースの一点における法線方向応カ,接線方向応力及び横方向応力を同時に測定できる測定器を開発した。本測定器を1本のタイヤラグの3ヶ所すなわちタイヤ踏面中心部,同側端部ならびにこれらの中間部の3ヶ所に埋め込んで各応力を測定した。測定例としてすべり率20%時の応力分布状態を示し,最大接地応カ値及び発生位置を検討した。

 

ゴム履帯の走行抵抗に関する研究(第1報) −転輪の転動抵抗に関する基礎的研究−

稲葉繁樹・井上英二・松尾隆明・橋口公一・山中捷一郎

キーワード:ゴム履帯,所要動力,走行抵抗,内部抵抗,履帯の変形

履帯走行装置において,所要動力低減のためにその内部で発生する走行抵抗の解明について検討を行った。まず,走行時に内部抵抗の一つとして作用すると考えられる転輪のゴム履帯に対する転動抵抗について,転輪による鉛直荷重を7段階,転輪径を5種類設定し,測定を行った。その結果,転動抵抗の挙動は,鉛直荷重の大きさによって,ほぼ三つのパターンに類別された。また,転輪径が大きくなるにしたがって,転動抵抗の変動幅が小さくなる傾向が見られた。以上のことから,転輪荷重による履帯の変形特性が内部抵抗の発生要因の一つとして考えられた。

 

根株処理機械の開発研究(第3報) −スタンプカッタのスケールモデルによる実験−

田中勝千

キーワード:スタンプカッタ,ナイフ,アンヴィルカット,クリッパカット,切断力

スタンプカッタ切断部のスケールモデルを製作し,木材切断時のシリンダ推力,ナイフを支持しているアームの回転角およびナイフに生じる垂直方向力(Z軸方向力)を測定できる計測システムを開発した。刃先角が25〜60°の片刃と両刃のナイフを用いた切断実験から,anvil cutよりclipper cutの方が概ね10%大きな切断力を要することが示された。また,前報までの基礎実験で示唆された,刃先角が大きいほどナイフに作用する垂直方向カが小さくなる傾向を示すことを,ブナ材とスギ材を使って実験的に明らかにした。

 

アップカットロータリ耕うんの土塊投てき性(第2報) −切削土塊の剛体後方投てきモデル−

片岡 崇・小野寺一宏・渋沢 栄・太田義信

キーワード:ロータリ,耕うん,運動モデル,慣性モーメント,剛体力学,回転

低動力深耕アップカットロータリ耕うんを可能としたすくい面設計法及びその工学的基礎理論である土塊の質点投てきモデルのひとつの限界を明らかにした。このモデルではスライス状の長い土塊が回転を伴って後方へ投てきされる場合には,その運動の軌跡をほとんど予測することができない。そこで,切削土塊の回転及び慣性モーメントを考慮した新しい土塊の投てきモデルを提案した。これにより細長いスライス状土塊が形成される場合でも,土塊の投てき性を表現することが可能となった。

 

エタノール噴霧処理による米の貯蔵性の改善(第1報) −遊離脂肪酸生成速度の低下−

繆 冶煉・馮 伝平・吉崎 繁

キーワード:米,米糠,貯蔵,エタノール,遊離脂肪酸,酵素活性,反応速度論

米の貯蔵性を改善するために,新しいエタノール噴霧処理プロセスを提案した。米糠を試料としてエタノール噴霧処理を行い,試料の酵素活性および貯蔵中における遊離脂肪酸の生成速度を調べた。その結果,遊離脂肪酸の生成速度はエタノール濃度およびエタノール溶液と糠との重量比によって変化した。エタノール濃度80%(v/v),重量比60g溶液/100g-糠,保持時間5min以上の噴霧処理により,27.6%の最小相対反応速度が得られた。また,相対反応速度と残存酵素活性との間に直線関係が存在しており,貯蔵中における遊離脂肪酸生成速度の低減は糠の内在性酵素の失活によるものであることが明らかになった。

 

バーレー種タバコ用自動葉編み機に関する研究(第2報) −自動葉編み機の試作−

服部信義・前川良明・長村一男・中嶋博之・春園輝夫

キーワード:タバコ,タバコ葉,葉編み機,自動給葉,バインダ紐

バーレー種タバコの収穫葉の葉編み作業を行う自動葉編み機の試作研究を行った。試作機は,給葉部と編み込み部から構成される。給葉部は,第1報で報告した吸着・把持機構を用いた。編み込み部は,給葉部から送られた葉を編み込むために,ジュート麻製のバインダ紐2本を撚り合わせるための機構をもたせた。安定的な1枚当たりの給葉時間は1.2秒であった。葉編み作業時間は,2.9分/連で,従来の連編み機の4.8分/連と比較して約40%の時間短縮につながる見込みを得た。葉編み精度を示す正常葉編み率は,バーレー21で86〜98%,みちのく1号で82〜91%であった。

 

下水汚泥の造粒に関する研究(第1報) −土壌改良材の添加による造粒−

工藤正義

キーワード:下水汚泥,造粒,生石灰,コンシステンシ,粒度分布,均一度

下水汚泥には,窒素やりん酸及び有機物など作物の生育に有効な成分が含まれている。本研究の目的は,下水汚泥の取扱性を高めるために,下水汚泥に添加材を加えて造粒することである。攪はん型造粒機による実験を行い,次の知見が得られた。1)添加剤としては生石灰が適している,2)最適石灰混合比は0.26〜0.38である,3)造粒機の最適羽根回転数は50rpmである,4)造粒機の最適運転時間は20〜30分間である。

 

赤外線熱画像によるリンゴの検出に関する研究(第1報) −樹上の温度分布特性及びリンゴの2値画像の取得 −

張 樹槐・高橋照夫・福地 博・寺尾日出男

キーワード:赤外線熱画像,温度分布特性,2値画像,リンゴの検出

農業用ロボット等によるリンゴ収穫の場合,樹上のリンゴを葉や枝などと識別することが不可欠な条件である。本研究は,樹上のリンゴと葉などの間に温度差が存在していることに着目し,赤外線熱画像によるリンゴの検出の可能性について検討した。その結果,晴れ,無風の日の場合リンゴと葉との間に1℃以上の温度差があること,及びリンゴと枝などの間に顕著な温度差がないことを確認した。また,この温度差情報を利用することにより容易に2値画像が得られ,リンゴを検出することができた。

 

キュウリの画像認識に関する研究(第2報) −本葉の葉位と個体の認識−

西 卓郎・近藤 直・毛利建太郎

キーワード:形状認識,生育管理,生長ルール,キュウリ,2値画像,投影モデル

本研究では,作物の生育管理の自動化を目標とし,生長ルールを考慮した植物体の形状認識アルゴリズムの開発を行っている。本報では草丈30cm 以上に成長したキュウリの2値画像を対象として,本葉の葉位の認識および群生画像からの個体の認識を試みた。葉位の認識は,本葉の位置を,草丈,開度,葉柄長などの生長ルールから存在確率で表す投影モデルを作成し,これと2値画像とを比較することにより,約73%の確率で可能となった。またこのモデルを群生画像に適用することにより,画像中に存在する本葉がそれぞれ個体に属するものかを推測することが可能となった。

 

米飯物性による米の品質評価技術の開発(第1報) −米飯の水分および糊化度が米飯のテクスチャに及ぼす影響−

清水直人・木村俊範・大坪研一・豊島英親

キーワード:インド型米,日本型米,米飯,水分,糊化度,加熱吸水率,物性,テクスチャ,硬度,粘着力

米飯の水分および糊化度が米飯テクスチャに及ぼす影響を明らかにし,米飯物性を指標とした米の品質評価への指針を得ることを目的とした。米飯水分が米飯テクスチャに及ぼす影響が大きいことから,水分63%w.b.に調整したインド型米および日本型米の米飯をテクスチャ測定に供した。米飯粒において糊化澱粉の割合が高いものは,米飯の硬度が低下することが明らかとなり,米飯粒に残存している細胞壁が米飯の硬度増加に大きく影響することが推察され,加熱吸水率ならびに糊化度が米飯の硬度に係わる指標として活用できることを示した。

 

ニューロモデルによる茶の品質評価 −近赤外域吸光度と測色値の利用−

後藤 正・村瀬治比古・池田善郎

キーワード:ニューラルネットワーク,茶,品質評価,近赤外法,主成分分析,測色値

拡張カルマンフィルタを学習則に用いたカルマン・ニューロ(7-7-1型三層ニューラルネットワークモデル)により茶の品質評価モデルを構築し,その適用性を検証した。近赤外法により得られた吸光度および測色値を主成分分析し,得られた寄与率の高い少数の主成分(第1〜7主成分)を入力信号,4項目の官能検査の合計点を出力信号として構築したモデルは,未知試料に対して相関係数r=0.9290の高い予測性を示した。

 

走行速度と種子検出信号を用いた種子繰出し量のコンピュータ最適制御(第1報) −種子繰出し制御装置の開発−

P.P.ガルシア・伊藤信孝・鬼頭孝治・王 秀崙

キーワード:播種量,自動制御,播種機,パルス幅変調

本研究はホッパーから繰出し部を通じて落下した種子量と播種機の走行速度の双方をセンサーにて検出し,その検出信号にパルス幅変調技法を適用して,単位面積あたりの播種量を所定の範囲に維持するための種子繰出し機構の最適制御システムの開発を目的とする。本報の前半では12V直流モータで駆動される繰出し部機構の回転速度を7〜87rpmの間で,6種類のパルス周波数と20〜100%の9つのデューティ比の範囲で構築するとともに,上記の速度範囲での種子繰出し量のキャリブレーション曲線も作成した。後半では,開発するコンピュータプログラムで用いるパルスのオン・オフ間隔を計算する式について詳述した。

 

技術論文

歩行用トラクタ−作業機系の閉ループ特性を表すパラメータの同定法

M.E.エゲラ・武田純一・鳥巣 諒

キーワード:歩行用トラクタ,トラクタ−作業機系,パラメータ同定,相当慣性モーメント,閉ループ制御系,非線形最小二乗法

一般に歩行用トラクタ−作業機系の内部動力伝達系はエンジン部,走行部,作業機部の3つの単純な慣性系に置き換えることが可能である。本研究では,まず,これら3つの内部動力伝達系の相当慣性モーメントをエンジンのクランクシャフトに集中し,相当慣性モーメントの特性について明らかにした。この結果,全相当慣性モーメントに占めるエンジン部の相当慣性モーメントの割合が非常に大きいことなどを明らかにした。次に,歩行用トラクタ−作業機系の内部動力伝達系の動的モデルを定式化し,このモデルを用い系の閉ループ特性を表すパラメータ同定した。この方法は,耕うん軸側から外乱としてステップ状の負荷トルクを入力し,エンジン回転数の応答波形を用い非線形最小二乗法によりパラメータの同定を行おうとするものである。得られたパラメータ値は系の特性をよく表すことができた。