第59巻第4号論文要旨

研究論文

最適制御理論による枕地最短旋回時間問題(第1報)―最適制御問題の定式化とトラクタが前進だけする場合―

鳥巣 諒・田中健一・井前 讓・石川 隆

キーワード:トラクタ,枕地,非ホロノミック移動ロボット,軌道計画,最適制御理論,数値解法

トラクタの枕地での旋回時の最短時間や最短軌道について検討した。はじめに,これらを決定する問題が,非ホロノミック移動ロボットの軌道計画問題と本質的に同等であることを状態方程式の表現から明らかにした。次に,この開ループ制御問題を解くために最適制御理論を適用して,枕地での最短旋回時間と最短旋回軌道を数値解法により求めた。その結果は,これまで知られている結果とよく一致することを示した。

 

インペラ式籾摺機の摩擦衝撃特性に関する研究(第2報) −摩擦エネルギーによる羽根形状設計−

王 学剛・伊藤信孝・三輪恭爾・鬼頭孝治・王 秀崙

キーワード:摩擦エネルギー,インペラ羽根形状,脱ぷ率,砕粒率,籾摺り作業

摩擦と衝撃はインペラ式籾摺り機において,脱ぷに与える影響が大きく重要な要素である。本報では籾とインペラ羽根との摩擦によるエネルギーを分析し,摩擦エネルギーの増大と衝撃の減少をはかって,良好な脱ぷ効果を得ることを目的とする。計算結果より、摩擦エネルギーは主に激摺部の中心角によって決定され,激摺部の中心角を増大することによって脱ぷ効果を改善することができることを指摘した。試作したインペラと市販インペラを市販機と試作機に取付け,比較脱ぷ実験を行った。実験結果よりインペラの通常作業回転数域では新しいインペラによる玄米の砕粒率が市販インペラに比べて少なく,市販機と試作機両場合にはそれぞれ6%と8%程度軽減した。

 

貯蔵農産物の二次代謝としての色発現

元永佳孝・亀岡孝治・橋本 篤

キーワード:トマト,農産物,表面色,追熟,色彩計測,色素生成,二次代謝

トマトの追熟における表面色変化を色素生成による色発現と捉え,表面色変化から色発現メカニズムと色素生成を半定量的に検討した。トマト表面の色相変化を計測し,解析することで,色発現の起点となる発色点がトマト内隔壁上部に存在する事が確認された。次に,トマト表面色の変化に携わる主な色素であるクロロフィル,リコピンをカロチンを基準に,これらの含有割合の変化を解析した。この結果,色素抽出実験で得られる含有量変化と同様の変化傾向を示した。この事から,速度過程のモデル化が困難とされている複雑な二次代謝の一つである色素生成の一指標として,表面色が有用である事が実験的に示唆された。

 

農作業服による作業性と快適性の定量化に関する研究(第3報) −農作業服素材の紫外線透過性に及ぼす泥汚れの影響−

桑原宣彰・尾畑納子・岡本嗣男

キーワード:農作業服,作業性,快適性,泥,泥汚れ,衣服素材,紫外線透過性,紫外線被曝

本論文においては,農作業時の紫外線被曝の軽減をはかる目的で,布の紫外線透過性に及ぼす泥汚れの影響について検討した。得られた結果は次のとおりである。1)泥付着量に対するハンター指数(L,a,b,ΔE)の変化は,酸化鉄を,より多く含む泥ほど,大きかった。2)泥汚れの色相は,低濃度の泥懸濁液の色相によって推定できることがわかった。3)泥汚れによって,布の紫外線透過は低下した。低下の程度は,酸化鉄を多く含む泥および黒色系の腐葉土で大きかった。4)泥付着による紫外線透過の低下と,見掛けの吸光係数の増加との間に相関性のあることがわかった。これは泥付着によって生じる吸光係数の増加と散乱係数の低下のうち,紫外線遮断に対して前者の方が効果の高いことを示唆する。5)泥付着の場合には,染色布の場合と比べて,散乱係数による紫外線透過率への寄与が小さかった。以上の結果は,紫外線遮断のための作業服の開発に際し,有用な知見となり得るものと考えられる。

 

農用自律走行車両の制御に関する研究(第3報) −走行制御システムによるハウス内走行実験−

金子昌彦・中野和弘・ 岡田徳次

キーワード:自律走行車両,ニューラルネットワーク,画像処理,ファジィ制御,走行制御システム

本報では,特別な走行目標の設置を必要としない自律走行制御システムについて述べる。ハウス内全域を自律走行するためには,ハウスの大きさや走行路の形状等の巨視的な情報から,車両の進行方向等の微視的な情報までを処理する必要がある。本報で構築した走行制御システムは,4つの階層からなり,自律走行に必要な情報処理を階層的に行う。さらに,本システムの制御特性を検証するため,実験用車両を製作してハウス内での走行制御実験を行った。

 

スイカ収穫ロボットにおける視覚システムの開発(第2報) −画像処理による熟度判定−

徳田 勝・川村恒夫・山本博昭・堀尾尚志

キーワード:スイカ,熟度判定,画像処理,HSI

本研究は,ロボットによるスイカの収穫作業を実現するために必要な,果実を検出する視覚システムの開発を目的としている。現在は,着果日からの積算日数で収穫時期を判断している。本報では,画像処理を用いてスイカの熟度判定を行い,未熟,適熟,過熟を見分ける方法について検討した。そのためにまず,未熟,適熟,過熟のスイカをサンプルとして用いて,果実の緑縞の部分だけを抽出し,その部分の色を調べた。取り込んだ画像はRGBからHSI変換して,その色相Hと彩度Sについて調べた結果,Hのヒストグラムの(ピークの画素数)/(ピークの右側の画素数)が未熟から過熟にかけて減少していることが分かった。また,彩度Sの平均は糖度があがるに連れて直線的にに減少しているのが分かった。

 

画像処理による収穫時のリンゴ果実の識別(第1報) −リンゴ園の果実画像に対する2値化処理−

孫  明・高橋照夫・戸次英二

キーワード:リンゴ収穫,識別,色信号,色差信号,ロボット

本研究は,リンゴ収穫のロボット化を実現するために必要な果実検出の視覚システムを開発しようとするものである。本報では,2値画像で果実の描画率が80%以上得られることを目標に,色信号を用いた画像処理法を検討した。果実,葉,枝等の色信号濃度ヒストグラムの解析から求めたしきい値で,収穫時のカラーTV画像に2値化処理を施した。その結果,赤色系果実に対して色差信号G−Yのしきい値−5を用いると,順光状態では目標の描画率80%を得られたが,逆光状態では果実の輝度が低下して目標に達しなかった。黄緑色系果実に対しては,2原色の差信号R−Bでしきい値30を用いると,果実の輝度が110以上において描画率80%以上を得られた。ただし,逆光では目標に達せず,また太陽光の葉面反射で果実と葉との識別を誤ることがあった。

 

電気浸透潤滑による耕うん作業機の牽引抵抗低減(第2報) ―スライダを用いた土槽実験―

P.A.S.ラディテ・並河 清・飯田訓久

キーワード:牽引抵抗低減,電気浸透潤滑,土槽実験

スライダを用いた土槽実験を行い,電気浸透潤滑による牽引抵抗の低減を実証した。牽引抵抗に関係するスライダと土壌の摩擦力を解析するため,潤滑作用のある部分とない部分からなる合成モデルを導出し,摩擦力に関係するパラメータを求めた。実験では,スライダを陽極,土槽の底に敷いた金網を陰極として直流電圧を最大120Vかけ,牽引力を測定した。速度は最大62cm/sで行った。供試した土壌は,第1報と同じ砂壌土とシルト質壌土である。この結果,シルト質壌土では牽引抵抗を最大33.7%(速度61.1cm/s,含水比27.2%,圧力9.6kPa),砂壌土では最大16.5%(速度26.4cm/s,含水比28.1%,圧力9.6kPa)低減できた。

 

技術論文

エアバック式乾燥機によるニンニクの加熱通風乾燥(第1報) −乾燥室内の静圧に対する水・熱収支とエネルギ効率−

片平光彦・戸次英二

キーワード: ニンニク,エアバック式乾燥機,熱収支,水収支,エネルギ効率

エアバック式乾燥室でニンニク球根を加熱乾燥する際の適切な静圧について検討するため、静圧を陰,陽,零に変えて実験を行った。陽圧下の気流は乱れて部分的にエアバックの裾部から漏出し、熱効率は30.5%、エネルギ効率は142.6MJ/kgであった。陰圧下の気流は安定していたが、周囲空気の漏入があって熱効率は最も低い8.4%にすぎず、エネルギ効率は128.6MJ/kgであった。零圧下の気流は最も静穏な状態で経過し、熱効率は12.2%、エネルギ効率は最も大きい198.4MJ/kgであった。結局、熱効率は低くなるが気流が安定してエネルギ消費の少ない陰圧が、エアバック式に適していると判断された。ここで、各静圧下の水収支式と熱収支式を提示し、エアバック型乾燥機の特性を表した。

 

自律走行トラクタのヨー角測定に関する研究 −一軸ジャイロスコープによるヨー角測定に車体の傾斜が及ぼす影響−

芋生憲司・石田三佳・岡戸敦史・竹永 博・澁谷幸憲・本田善文・糸川信弘

キーワード:トラクタ,飼料生産,自律走行車両,ヨー角,ジャイロスコープ

自律走行車両の方位角(ヨー角)測定に一軸ジャイロスコープを用いた場合,車体の傾斜による測定誤差が生じる。この誤差特性を明らかにするため,ジャイロスコープで検出される車体の垂直軸まわりの回転角と,ヨー角の関係について理論的に検討した。また水平な飼料生産圃場においてトラクタを走行させ,圃場の凹凸や旋回時の遠心力により生じる車体の傾斜角を測定し,そのデータからヨー角測定に及ぼす車体傾斜の影響を調べた。その結果,ヨー角と車体の垂直軸まわりの回転角の角度差は主に旋回中に生じ,旋回速度の上昇に伴って大きくなること,また旋回中のヨー角の変化に比べて,車体の垂直軸まわりの回転角の方が小さく検出されることを確認した。

 

誘導ケーブル式果樹無人防除機の開発(第2報) −無人散布システム−

戸崎紘一・宮原佳彦・市川友彦・水倉泰治

キーワード:誘導ケーブル,無人防除,無人散布,自動制御,スピードスプレーヤ

本研究では,無人散布システムを搭載した誘導ケーブル式果樹無人防除機を開発した。この無人散布システムは,第1報で報告した果樹園内の作業経路に敷設した誘導ケーブルに沿って無人走行するための無人誘導走行制御(すなわち,無人走行システム)に加えて,薬液タンク内の薬液が全量散布された時点及び作業終了地点での作業の自動停止,遠隔操作による本機の走行,送風及び散布の開始・停止,旋回部外側への不要な散布の自動停止等の制御を行う。さらにこのシステムは,作業経路上の障害物との衝突回避,誘導ケーブルからの逸脱あるいは誘導ケーブル断線時の自動停止等の安全装置の制御を行う。試験用走路で行った無人散布試験の結果,開発機は円滑に作動することが確認され,また,有人のスピードスプレーヤと同等以上の作業能率で散布作業が可能と推察された。

 

籾の乾燥における胴割れ −選択したジャポニカとインデカ種の胴割れ挙動の差−

R.C.バウテスタ・戸次英二

キーワード:ジャポニカ,インデカ,胴割れ,ワックス状,非ワックス状,乾燥速度

選択したジャポニカとインデカの7品種の籾について,単粒層の模型乾燥装置を用いて胴割れの挙動を比較した。米粒の理化学的特性は胴割れに変化を及ぼした。ジャポニカ種はインデカ種よりも乾燥速度が遅く,同じ乾燥速度のもとでより多くの胴割れを生じた。乾燥速度がインデカで4%/h,ジャポニカの粳で1%/h,糯で1.5%/hにおいて,重胴割れが起生しだした。乾燥速度の上限は,ジャポニカの粳(品種,むつほまれ)が0.8%/h,糯(品種ユキミモチ)が1.2%/hである。また,インデカでは高いたんぱく質,アミローズ,GTをそれぞれもつ粳は5%/h,高いアミローズ,中間のたんぱく質とGTをもつ粳は4%/h,中間のアミローズ,GT,たんぱく質をもつ粳は4%/h以下,また中間のたんぱく質をもつ糯は2.5%/hである。