第59巻第3号論文要旨

研究論文

食品の熱物性に関する研究(第3報) −澱粉の種類と熱物性−

沈 百禎・堀部和雄・大下誠一

キーワード:澱粉ゲル,比熱,密度,伝熱モデル,固有熱伝導率

サツマイモ澱粉,トウモロコシ澱粉の粉末およびゲルを用いて比熱,密度,温度伝導率を測定し,それらのゲルの有効熱伝導率を算出した。さらに直列モデルを利用してこの2種類の澱粉の固有熱伝導率を推算した。同時に既報で求めた馬鈴薯澱粉,小麦澱粉の値と比較した結果,4種類の澱粉の中で最小値と最大値に対する割合は比熱,密度,熱伝導率の順にそれぞれ,30%,28%,27%であった。一方,有効熱伝導率の相対誤差を求めた結果,最大で6.86%であったので,上述の値の相違は測定誤差によるものではなく,澱粉の種類により生じたものと考えられる。

 

農産物表面の色彩画像処理システムの構築

元永佳孝・亀岡孝治・橋本 篤

キーワード:農産物,表面色,追熟,色彩計測,色彩画像処理システム,HSL座標系

農産物の表面色管理を目的とした色彩画像処理システムを構築し,その表面色計測におけるいくつかの問題点について検討した。まず,一般的な画像処理でも問題とされる照明条件の設定および,人間の視知覚とカメラの撮像特性との色認識に関する問題には,HSL座標系を用いることで対処した。また,照明条件に関しては,照明光量,撮像角度についての影響を実験的に検証し,色相H,彩度Sはそれらの条件の影響をほとんど受けないことが確認された。次に,バナナとトマトを試料として,追熟過程での表面色変化を色相H,彩度Sで解析した結果,未熟から完熟までの変化は色相に完熟から軟化までの変化は彩度に表れることが解り,表面色計測の可能性が示された。

 

田植ロボットの視覚部に関する研究(第2報) −ハフ変換による目標苗列中心線の抽出−

陳 兵旗・渡辺兼五・東城清秀・藍 房和・B.B.ファング

キーワード:田植ロボット,ハフ(Hough)変換,目標苗列中心線,高速・高精度,検出,抽出

第1報の自動2値化に引き続き,ハフ(Hough)変換によって目標苗列のハフ線を検出することを検討した。目標苗列の中心点を選定することによって計算回数は大幅に減少し,目標苗列の中心線が高速・高精度で抽出された。さらに,端点検出処理によって,田端に検出される苗列端点までの苗列中心線が抽出された。

 

スイカ収穫ロボットにおける視覚システムの開発(第1報) −光条件と識別率の関係−

徳田 勝・川村恒夫・山本博昭・堀尾尚志

キーワード:光条件,スイカ,画像処理,ガウシアンラプラシアン,果実識別率

本研究は,ロボットによるスイカの収穫作業を実現するために必要な,果実を検出する視覚システムの開発を目的としている。本報では,本視覚システムによるスイカ果実の検出を野外において様々な光条件下で行い,果実検出の可否と画像濃度の関係を調べた。従来の方法では,識別のためのしきい値が固定されていたため,原画像の平均濃度とコントラストの組み合わせによっては,検出が困難な場合があった。これを改良するために,今回は画像の濃度およびコントラストから識別のしきい値を求める手法を検討し果実検出を行ったところ,画像の濃度およびコントラストに左右されずに検出を行うことができた。また,従来のガウシアンラプラシアン処理に局所処理を組み合わせた手法により,影領域の識別制度を向上することができた。この結果構築したアルゴリズムは幅広い光条件下での果実検出に適当であると判断された。

 

ロボットによる結球野菜の選択収穫の研究(第2報) −三次元画像によるレタスの認識−

高 衛民・藤浦建史・土肥 誠・中尾清治

キーワード:農業用ロボット,結球野菜,レタス,選択収穫,画像処理,三次元視角センサ

レタスなどの結球野菜を選択的に収穫するロボットの開発を目的として,三次元画像からレタスを認識する研究を行った。本報では,1畝1条植えのレタスを対象とし,前報で報告した三次元視覚センサを用いて計測した画像からレタスの認識を試みた。三次元画像の前処理として画像の平滑化を行い,平滑化した画像から結球部を2値化し,位置や大きさの認識を行った。その結果,収穫適期のものとして設定した直径以上の62個のレタスのうち60個を適期と判定できた。そして,設定した直径未満の60個のすべてを未熟と判定でき,2か所で大きい外葉を結球部と誤認識した。検出位置の誤差の平均値は12.4mm,直径の誤差の平均値は13.4mmであった。

 

電気浸透潤滑による耕うん作業機の牽引抵抗低減(第1報)[英文] −不飽和土壌の電気伝導度−

P.A.S.ラディテ・並河 清・飯田訓久

キーワード:電気浸透,電気伝導度,不飽和土壌

この研究は,電気浸透による潤滑作用を用いて,耕うん作業における牽引抵抗を低減しようとするものである。本報では,主に電気浸透に深く関係する不飽和土壌の電気伝導度について述べる。電気伝達度は,砂壌土とシルク質壌土を供試し,含水比,密度及び電極に作用する圧力をかえて,円柱状土壌に直流電圧をかけた場合の電気抵抗から求めた。実験の結果,土壌の電気伝導率は電圧や電流によらず一定で,電極に作用する圧力に線形な関係があった。また,シルト質壌土の場合,電気伝導率は,含水比に対して2次関数となり,砂壌土では1次関数であった。密度の影響は,低い含水率では2次関数,31.5%以上では1次関数になった。

 

技術論文

ナタネ粗製油による小型ディーゼル機関の運転(第3報) −無負荷運転試験−

富樫千之・上出順一

キーワード:代替燃料,ナタネ粗製油,無負荷連続運転,堆積付着物,小型ディーゼル機関

植物油によるディーゼル機関の代替燃料の研究のなかには,燃焼温度が高くなる負荷運転では問題はないが,無負荷運転では軽油と比較して燃焼室内のカーボン堆積が多くなることが指摘されている。本報では,ナタネ粗製油を燃料とした無負荷運転を行い,予燃料室およびノズル部へ付着した堆積物を,供試燃料の不燃料物含有率の関係で整理するとともに,ナタネ精製油及び軽油の場合と比較した。その結果,ナタネ脱酸油は無負荷連続運転でも予燃料室への堆積付着物量が少なく,代替燃料として使用可能なこと,灰分測定法による供試燃料中に含まれる不燃料物含有率と予燃焼室への堆積付着物量は相関があるため,供試燃料の不燃料物含有率の測定によって粗製油の代替え燃料としての可能性を判定できること,などが考察された。

 

トラクタ前部装着ヒッチに関する研究

池見隆男・李  季・土居栄城

キーワード:トラクタ,前部装着ヒッチ,プラウ,三点リンク,前方収束下部リンク,後方収束下部リンク

トラクタ前部及び後部装着作業機による作業を行う場合,作業の安定性は,主に前部装着作業機に支配されると考えられる。そこで,前部装着作業機単独による作業を想定して,前部装着ヒッチに対する作業機負荷が作業安定性に与える影響を調べ,基本的なヒッチ機構についてその有効性を検討した。前部装着作業で作業が困難と思われるプラウ耕の場合,前方収束下部リンクのヒッチでは,作業機を安定させることが可能であるが,後方収束下部リンクでは,安定させるのが困難である。上部リンクについては,前方または後方に収束するもの双方とも上下方向の運転を安定させ得るが,後方収束リンクの方がトラクタの運動に与える影響は小さい。

 

無代かき水稲直播栽培に関する研究(第3報) −不耕起播種技術の開発−

大谷隆二・西崎邦夫・柴田洋一・横地泰宏

キーワード:水稲直播,不耕起播種機,播種深度

寒地の水稲直播栽培で,高い苗立ち率を確保するためには,播種深度の高精度化が必要であり,そのためには高い砕土率の播種機が要求される。本研究では,播種する極く限られた部分を高速回転する鋸刃で作溝し,砕土率の高い播種床を構成することにより,一定深度に播種する不耕起播種技術を開発した。土壌水分に応じて,最適な鋸刃の歯数,回転数,作溝深を選択することで耕起播種を上回る播種精度と苗立ち率が得られた。

 

養液栽培用スギ・ヒノキ樹皮ベッドの物理特性

魏 亜玲・林  圭・岩尾俊男・藤浦建史・竹山光一

キーワード:養液栽培,樹皮ベッド,比重,三相分布,保水性

養液栽培用樹皮ベッドの保水性と通気性について検討するため,その物理特性を測定した。ベッドを水に漬けると約12時間でほぼ飽和状態の含水比に到達した。飽和状態になったベッドを金網に載せて排水すると,5分後のみかけの三相は,固相が約26%,液相が約28%,気相が約46%であった。このように気相の割合が大きいため通気性は良好と考えられた。金網上でさらに排水を続けると重力による水の移動で約8時間にわたり排水が続いた。樹皮ベッドは,繊維間及び繊維内に保水性があり保水性が良かった。