第58巻第6号論文要旨

研究論文

根株処理機械の開発研究(第2報) −片刃のナイフ形状についての考察

    田中勝千

キーワード:ナイフ,摩擦係数,刃先角,形状,根株

片刃のナイフに作用する曲げ荷重の大きさと向きを調べることのよって,片刃のナイフの形状と実作業との関わりを検討し,両刃と比べた場合の片刃の利点を示した。また,切断時に片刃の切刃に発生する曲げ応力について,刃面圧力センサの測定値を用いる方法と,抵抗線歪みケージをナイフに直接接着し,測定された曲げモーメントを用いる方法の二通りで求め,切刃の形状を検討した。刃先角が小さいほど曲げ応力は大きく,刃先角25゜のナイフでは300MPaとなった。切刃先端の強度を維持しつつ切断力を低減するために,片刃の切刃の形状を二段刃とすることを提案した。

籾のマイクロ波乾燥に関する基礎的研究

    中野浩平・河野俊夫・喜田環樹・村田 敏・内野敏剛・井上眞一

キーワード:マイクロ波乾燥,誘電加熱,拡散理論,直交選点法,発芽率,脂肪酸度

誘電加熱法を穀物乾燥に応用するための基礎研究として,籾を対象にマイクロ波乾燥試験を行った。マイクロ波乾燥は従来型の乾燥とは異なり独特の特徴を有している。乾燥特性については拡散理論を用いて,昇温特性については熱収支式をたて,重きつき残差法の一つである直交選点法により連立常微分方程式の形に分解しRunge-Kutta-Gill法にて数値計算し,実測値との比較検討を行った。また,マイクロ波乾燥が穀物の品質に与える影響を検討するため,発芽率と脂肪酸度の測定を行った。

赤外線ガス分析計による籾・小麦の呼吸特性の測定

     河野俊夫・中野浩平・喜田環樹・村田 敏・内野敏剛・井上眞一

キーワード:穀物,呼吸,小麦,赤外線ガス分析計

温度273.15〜313.15[K],含水率19〜35(%,d.b.)の範囲において,籾と小麦の種子から発生するCO2ガス濃度を,1ppmまで読み取ることのできる赤外線ガス分析計を使って測定した。測定したCO2ガス濃度は理想気体として,単位時間,単位乾物重量当たりのCO2mg数に換算した。その結果,両穀物の呼吸速度は多くの研究者が報告しているように温度に対しては指数関数的に増加することが確認され,また,籾については含水率に対しても指数関数的に増加するが,小麦の呼吸特性の増加傾向は,低含水率での指数的傾向から高含水率の直線,あるいはS字の増加傾向へと変化することが明らかとなった。呼吸速度を記述する実験式を提案し,そのパラメータを最小二乗法による当てはめによって得た。提案した式は穀物の呼吸速度が穀温に対してアレニウス型の増加傾向を持つこと,および籾と小麦と含水率に対する傾向の違いを考慮している。

水の構造化による農産物の貯蔵(第1報) −植物細胞の代謝抑制

    大下誠一・橋本 篤・瀬尾康久

 キーワード:構造化した水,水素結合,原形質流動,代謝制御,保存

低温が代謝制御に寄与する理由の一つとして水の粘度増大を指摘した。その上で,水の粘度と水素結合の関係から,水素結合した水分子数の増加により代謝制御が可能という考え方を示した。このためキセノンガスを細胞内水に溶解させて水の構造化を図り,代謝制御効果を検討した。オオムギ子葉鞘細胞の原形質流動速度は288Kの下で大気下で5.9um/sであった。水を構造化すると流動速度は低下し,キセノンガス分圧0.5MPaで4.1um/sとなった。構造化を解除すると6.2um/sに回復した。7日間保存後の細胞片の生存率は通常の状態ではゼロであったが,水の構造化を図ると向上し,最適なキセノンガス分圧の範囲は288Kで0.4〜0.7MPaであった。

横置きイ草の熱風乾燥実験と数値シミュレーション

    川崎功三・井村英昭・相浦正廣・伊藤 繁

キーワード:数値シミュレーション,実験,横置きイ草,熱風乾燥,泥染め

現在,イ草は束ねられ,泥染めされた後,熱風乾燥機内に立てた状態で詰められ,乾燥されている。しかし,この乾燥方法では乾燥時間が長く,イ草下部は長い時間,高温の乾燥風に曝されている。これによるイ草品質の低下が懸念されている。これに対して,乾燥時間を短くすることができ,また自動連続乾燥に適した乾燥方法として横置き乾燥方法が考えられる。そこで,著者らは横置き熱風乾燥実験を行うと共に,その数値シミュレーションを行った。そして以下の結論を得た。1)横置きイ草乾燥はイ草厚さを薄くできるので乾燥時間を短くでき,厚さ57mm,熱風温度70゚C,設定熱風速度1m/sで約4,000sであった。2)シミュレーション結果と実験結果はよく一致しており,本乾燥モデルは横置きイ草乾燥過程を表するのに十分有効である。

小麦製粉の篩工程における最適篩選定手法 −中間産物の粒度分布関数の導出と応用

    関 竜司・村田 敏・広瀬孝志

キーワード:小麦,製粉,段階式製粉,調質,テンパリング,篩分,最小二乗法,含水率,平均粒子径

本報文では,段階式製粉工程における各工程産物の粒度分布関数の算出と,それを用いて行う篩分工程における最適篩選定手法について報告する。すなわち,小型段階式製粉機を用い,原料小麦の調質条件を3段階に変えて行った挽砕試験における各工程生成物の粒度分布データを,挽砕条件をパラメータとした粒度分布関数のモデルに最小二乗法を適用して当てはめ,粉度分布関数を導出した。これは製粉工程中の各挽砕条件の変動と各工程産物毎の粒度分布構成の変動と関係を表す関数である。さらにこの関数を用いて,汎用的な最適篩選定手法を考案した。 

イチゴの自動選別システムに関する研究(第2報) −画像処理による選別のための果形判別法

     永田雅輝・木下 統・浅野克典・曹 其新・日吉健二

 キーワード:イチゴ,選別,コンピュータ,画像処理,幾何学的特徴

第1報では果形の幾何学的特徴を提案して,これらの果形判別に対する有効性を明らかにした。本報ではこれらの特徴を組み合わせた4種類の判別法を提案して,実際のイチゴを用いた判別実験からこれらの判別法の有効性を明らかにした。その結果,処理時間は比較的長いが,投影像の重心を求める方法がより正確に判別できることが分かった。それに対して縦横比と横幅比を用いた方法は判別精度は劣るが,処理時間がたいへん短くより実用的であると考えられた。

農産物の品質判定に関する基礎的研究(第2報) −ナス表皮の色沢評価と光沢消失過程

    松岡孝尚・宮内樹代史・矢野卓也

キーワード:品質評価,分光比反射率,表面色,光沢,ナス,選果施設,微視的観察

本研究では,ナスを対象として,実際の選果施設での従来の人の目によるナスの光沢の評価と,可視領域の分光比反射率によるナスの光沢の評価を比較し,ナスの光沢の客観的評価基準について論じた。そして,ナス表皮の分光比反射率と色差を測定し,ナスの光沢と明度が異なることを明らかにした。さらに,光沢消失にともな他の物性の変化を測定するとともに,電子顕微鏡によりナスの表面を微視的に観察し,ナスの光沢は表皮に存在する円形状の粘着性物質に因ることを明らかにした。

ロータリ耕うんトルク波形の同定シミュレーション[英]

    野口良造・中野和司

キーワード:ロータリ耕うん,トルク波形,耕うん刃,モデル,同定,Gauss-Newton法

耕うん刃1本あたりのトルク波形四辺形モデルの特性値を同定できるプログラムをGauss-Newton法を用いて開発し,収束条件についても検討を行った。シミュレーションでは,耕土条件(土壌硬度のみ)の異なった場合でも,トルク波形四辺形モデルを決定する全てのパラメータを容易に同定できた。さらに,耕うん刃配列を決定する上での重要な設計資料である1本の耕うん刃のトルク波形のパラメータを,人工圃場での実験を行わずに,実圃場で測定された耕うん軸トルク波形から直接同定できる可能性を明らかにした。

技術論文

水稲の水耕育苗と移植技術の開発に関する研究(第1報) −育苗方法と苗の巻取り

    田坂幸平・小倉昭男・唐橋 需

キーワード:水稲,水耕法,育苗,マット苗,不織布,ロングマット水耕苗

本研究は,水稲育苗法で長さ5〜6m,幅28mの水稲のマット苗を育苗し,その苗をロール状に巻き取って田植検に載せ,移植する技術を開発することを目的としている。苗のマット強度を一定に保つため,マット強度補強材として不織布を用い,播種床に不織布を敷いて種籾を播種し,稲の根がらみによってマットを形成し,10〜15日間で草丈10〜15pのマット苗を育苗した結果,安定した引張強度を有するマットを得ることができた。また,このマット苗をロール状に巻き取ったところ,苗の質量は60p当たり1〜1.4sで,慣行土付苗の約1/5であった。

誘導ケーブル式果樹無人防除機の開発(第1報) −無人走行システム

    戸崎紘一・宮原佳彦・市川友彦・水倉泰治

キーワード:スピードスプレーヤ,農薬被曝,騒音,無人防除,無人走行,誘導ケーブル,磁界,ファジィ推論

スピードスプレーヤによる農薬散布作業では,作業者への農薬被曝及び騒音が問題となっている。これらの問題に対処し,安全性の向上,作業環境の改善,省力化及び高能率化等を図るため,無人防除機を開発した。開発機の誘導ケーブル式無人走行システムは,作業経路に沿って敷設した誘導ケーブルに交流を流すことによって生じる磁界を検知しながら,常に操舵装置を誘導ケーブルに沿って走行するよう制御する。本システムでは,ファジィ推論を用いた操向制御アルゴリズムを採用したため,より円滑な無人走行が可能となった。平坦な裸地に敷設した誘導ケーブル上で,開発機を用いて無人走行を行った結果,直進部及び旋回部ともに円滑で安定した走行が可能であった。

小麦充てん層の通風抵抗に関する研究

    小出章二・村田 敏・内野敏剛・管原祐二・田中史彦・K.S.P.アマラトゥンガ

キーワード:通風抵抗,圧力降下,空隙率,小麦,Ergun式

小麦充てん層の通風抵抗を明らかにするために,種々の水分(14.5〜29.8%w.b.)と空塔風速(0.227〜0.975m/s)のもと静圧の測定を行った。その結果,小麦充てん層の通風抵抗は含水率依存性があることが確認された。さらに,本研究ではErgunの圧力降下式を導入して,小麦の含水率から充てん層の通風抵抗を推算することを試みた。その結果,計算値は測定値と高い適合性を有することが明らかとなった。