第58巻第5号論文要旨

研究論文

トラクタの最短時間制御問題(第1報) −車線変更時の最短時間制御の定式化とその実車実験

     鳥巣 諒・中坪敏行・井前 譲

キーワード:トラクタ,最短時間制御,車線変更,終端時間固定問題,最適アルゴリズム,非線形車線方程式

本論文の目的は,車線変更時の操作法が最短時制御という原理で説明できるということを示そうとするものである。はじめに,非線形車両方程式を状態方程式とし,終端固定の評価関数を構築し低速車両の車線変更時の挙動を最短時間制御問題として定式化した。次ぎに,定式化した状況に則した実車実験を行った。また,実車実験とシミュレーションを比較し,車線変更時の人の操作法が基本的には最短時間制御であることを示した。

流体噴出によって生ずる土壌破壊の解析(第4報) −水を噴出するインジェクタによる土壌破壊

    高  鋭・新家 憲・常松 哲

キーワード:サブソイラ,インジェクタ,流体噴出,有限要素法,破壊距離,牽引抵抗力

流体を噴出するサブソイラの目的は二つあり,一つはパンブレーカとして使う場合であり,他の一つはインジェクタとして使う場合である。前者は土壌の破壊度合が出来るだけ大きい方が良い。後者は土壌の破壊度合を出来るだけ小さくしたい。本報は水を噴出するインジェクタによる土壌破壊を有限要素法(FEM)によって理論的に考察した。結果として,亀裂破壊を生ずるような通常の圃場(含水率8.6%)でインジェクタ作業をしようとする時,破壊距離,破壊エネルギを小さくしようとするインジェクタでは,水を流すことは有効であった。この場合,流量が多いほど破壊距離,破壊エネルギおよび牽引抵抗力が減少した。しかし破壊効率は低かった。

根株処理機械の開発研究(第1報) −ナイフ形状と切断力および刃面圧力との関係

    田中勝千

キーワード:切刃,切断抵抗,圧力,根株

根株処理機械の最適なナイフ形状を究明するために,刃先角を25〜60゜の5段階に変えた2種類のナイフ(片刃,両刃)を製作し,切刃面に刃面圧力を測定できるセンサを取り付けた。2MNの圧縮試験機を用いて,一枚のナイフで木材を切断する実験から,以下の知見が得られた。木材の切断抵抗は,刃先抵抗,圧縮抵抗および摩擦抵抗からなり,そのほとんどは木材の圧縮抵抗とそれに伴う摩擦抵抗であった。最大切断力は片刃の場合材料幅1p当たり17〜31kN/p,両刃の場合16〜23kN/pで片刃の方が大きく,ロータリ用ナイフの場合とは逆の結果となった。(最大切断力/平均切断力)は1.4〜1.8であって,刃先の形状による差はほとんどなかった。最大刃面圧力は片刃の場合10〜65MPa,両刃の場合10〜26Mpaとなり,片刃の方が大きかった。

水の構造化を利用した野菜の貯蔵

    橋本 篤・大下誠一

キーワード:貯蔵,水の構造,モヤシ,キセノンガス,細菌の増殖抑制

本研究では,無極性ガス圧力下において,野菜内の水を構造化する貯蔵方法について検討した。供試野菜としてモヤシを用い,無極性ガスとしてキセノンガスを用いた。その結果,水を構造化することにより,貯蔵中のモヤシ付着細菌の増殖とモヤシの変色が抑制された。また,0.25MPaから0.94MPaのキセノンガス分圧下においては,キセノンガス分圧が高くなるほどモヤシ付着細菌の増殖抑制効果は大きくなった。さらに,貯蔵に最適な水の構造化の程度が存在することが示唆された。

培養処理による米の加工(第2報) −玄米の培養による遊離アミノ酸の生成

    繆 冶煉・M.D.アガド・吉崎 繁

キーワード:玄米,遊離アミノ酸,米の加工,培養,動力学

95%相対湿度の空気中,あるいはまき床で培養した玄米試料の遊離アミノ酸を定量分析した。空気中で培養した玄米に蛋白質および遊離アミノ酸の含有量の変化は見られなかった。一方,15,30および40゚Cのまき床での培養により玄米の遊離アミノ酸総量は23.05mg%からそれぞれ31.18,54.79および40.75mg%に増加した。遊離アミノ酸の生成は蛋白質の分解に由来し,その過程は一次反応モデルで近似できた。各遊離成分の生成速度は温度によって異なり,それらの含水量は温度および時間の制御によって調製できることが明らかになった。

食品の熱物性に関する研究(第2報) −蔗糖の固有熱伝導率および食品モデルの伝熱機構

    沈 百禎・堀部和雄・大下誠一

キーワード:寒天,蔗糖混合ゲル,寒天ゲル,伝熱ゲル,固有熱伝導率,フラッシュ法,食品モデル

成分割合を変えた6種類の寒天・蔗糖混合ゲルを食品モデルとして,フラッシュ法により温度伝導率を測定し,別の方法で求めた比熱と密度のデータを用いて293[K]における食品モデルの有効熱伝導率を算出した。食品モデルの伝熱機構では,ゲルを固化するために加えた寒天の影響を無視し2成分系とした場合とその影響を考慮し3成分系とした場合について,解明を試みた。その結果,食品モデル(寒天・蔗糖混合ゲル)の伝熱機構としては,直列モデルが最適であるが,これは蔗糖の質量割合が0.20以上である場合に適用できることが判った。すなわち直列モデルに関して,寒天・蔗糖混合ゲル中の蔗糖の質量割合の適用範囲に制限があることが示された。なお,蔗糖の質量割合が0.20以上であるとき,このモデルから蔗糖の固有熱伝導率は293[K]で0.30±0.01[W/mK]を得た。

イチゴの自動選別システムに関する研究(第1報) −画像処理による果形の幾何学的特徴の抽出

    永田雅輝・木下 統・浅野克典・曹 其新・日吉健二

キーワード:イチゴ,選別,コンピュータ,画像処理,幾何学的特徴

イチゴ生産において,選別作業は多大な時間と労力を必要とする。そのためこの作業を自動化するシステムの開発が望まれる。そこでこの問題を解決するために,本研究ではイチゴの選別システムの開発を目的とする。このシステムは,コンピュータとマニピュレータを用いて果形の判別および搬送区分けを自動化するものである。イチゴの果形は画像処理で判別することとして,本法では果形を表現し得る幾何学的特徴の抽出を試みた。ここでは7種類を提案して,その果形判別に対する有効性を検証した。その結果これらを用いることで果形判別が可能であると考えられた。

画像処理による水稲の葉色測定に関する研究(第3報) −水稲群落の葉色値の測定

     大角雅晴・中村喜彰・山崎 稔

キーワード:画像処理,水稲,葉色,RGB濃度値

本研究では,水稲栽培における水稲群落の肥培管理の高度化と省力化を図るため,コンピュータを利用した画像処理を応用することを試みた。水稲群落のデジタル画像のRed,Green,Blue濃度値と葉緑素計の測定値との相関関係を調べ,画像から葉緑素計測定値を推定する重回帰式を求めた。水稲を栽培した水田で実験した結果,本研究で開発した葉色値の測定システムの葉色値の測定精度は,葉緑素計におよばないものの,市販のカラースケールで測定した場合以上の測定精度が得られることがわかった。また,測定に必要な時間も大幅に短縮できることがわかった。

技術論文

汎用コンバインの開発研究(第3報) −麦収穫性能

    市川友彦・杉山隆夫・高橋弘行

キーワード:汎用コンバイン,スクリュ型脱穀機構,小麦,大麦,脱穀選別損失,損傷粒,発芽率

 試用した汎用コンバインを小麦,二条大麦,六条大麦の収穫に供試して,作物含水率(収穫時期),送塵弁の開度,刈高さ及び流量と作業性能の関係を各々調査した。一連の収穫試験では,排稈口損失,排塵口損失及びこれらを合計した脱穀選別損失,わら漏下率,穀粒口における損傷粒割合,夾雑物割合などの基本的な脱穀選別特性及び脱穀部動力等を明らかにし,汎用コンバインが小麦,大麦の収穫に対して高い作業性能を有していることを実証した。さらに,小麦を供試して収穫時期別に発芽率を調査し,スクリュ型脱穀機構を持つ汎用コンバインが種子用としても利用できることを明らかにした。