第58巻第4号論文要旨

研究論文

サボニウス風車の効率向上に関する研究(第2報) −集風装置に適するロータの形状について

    呉  雷・木谷 収・岡本嗣男・鳥居 徹

キーワード:サボニウス風車,集風装置,ロータの形状

サボニウス風車は強風時でも必要以上に回転速度が上昇しないため安全であり,稼動風速範囲が広いことや風向制御が必要ないなどの特長があるが,他の形式の風車に比べて効率が低い。前報では,サボニウス風車の効率を高めることを目的として,集風装置を付加し,その特性と効果を調べた。本報では,低風速域での出力向上を目的として,集風装置と12種類のロータを組み合わせてそれぞれのロータの出力を測定し,集風装置に適したロータの形状を検討した。

離散要素法による穀粒排出現象のシミュレーション −要素の形状が流動状態に及ぼす影響

    坂口栄一郎・川上昭太郎・田村 聡・飛田布美子

キーワード:穀粒,排出現象,閉底容器,シミュレーション,離散要素法,円要素,ベア要素,楕円要素,転がり摩擦,粒子配向性

穀物調製加工処理操作における穀粒流動現象を,離散要素法によって予測することの可能性について検討した。そのために基本的な重力流動である平底容器のスリットから排出現象を対象として,白米とガラスビーズについて,実験結果とシミュレーション結果を巨視的流動状態について比較し,穀粒の流れの特徴を表現できるパラメータについて考察した。円要素の回転運動に転がり摩擦を考慮したことと,円要素を剛体的に2個結合させたペア要素によるシミュレーションは,実験結果における自由表面の位置の時間変化との適量的一致に有効であった。白米の流れの特徴である粒子の配向性は,楕円要素によって表現が可能であった。

コロナ放電からのイオン風によるシイタケの乾燥促進

    薛 国栄・飯本光雄・内野敏剛

キーワード:コロナ放電,イオン風,シイタケ,乾燥促進,乾燥速度,収縮率,色彩,吸水量

 従来の熱風乾燥法にコロナ放電を組入れた乾燥システムにより,放電に伴うイオン風のシイタケ乾燥促進効果を調べた。温・湿度一定下で,ファンの送風量と放電の印加電圧を変えた結果,イオン風処理区の乾燥速度は対照区の1.4〜1.6倍となり,乾燥時間の短縮が可能であった。イオン風処理区ではシイタケの収縮率が減少する傾向が見られ,イオン風処理によりシイタケの品質向上の可能性が示唆された。処理区のシイタケのヒダは対照区よりわずかに褐変した。イオン風処理による乾燥促進効果は印加電圧の増加とともに増大し,送風量の増加とともに減少した。イオン風速は印加電圧の一次関数であった。

精白米の水分吸着等温線に関する研究

    村田 敏・田中史彦・K.S.P. アマラトゥンガ・渋谷和子・田川彰男

キーワード:精白米,吸着等温線,高湿用修正Chen-Clayton式,飽和含水率,蒸発潜熱

精白米の加工を考える上で重要となる吸着等温線について研究を行った。吸着等温線式のひとつであるChen-Clayton式は飽和湿度に対応する平衡含水率が無限大となり,高湿度での実用性は低い。そこで,本研究では飽和含水率の導入によりChen-Clayton式を基礎とした飽和湿度でも発散しない改良式の開発を行った。これを測定データに当てはめ精白米吸湿特性を整理した。また,この式から精白米に含まれる水分の蒸発潜熱を計算した。さらに,精白米の吸水状態について研究を行ったので報告する。

ロボットによる結球野菜の選択収穫の研究(第1報) −二次元認識と三次元形状計測

    高 衛民・藤浦建史・中尾清治・土肥 誠

キーワード:農業用ロボット,結球野菜,レタス,選択収穫,画像処理,三次元視覚センサ

レタスなどの結球野菜を選択的に収穫するロボットの開発を目的とし,結球レタスを画像認識する研究を行った。本報では,まずビデオカメラを用いて二次元画像処理による認識を試みた。その方法は未結球レタスと結球レタスで陰影の分布が異なることを利用したもので,設定した球径値以上の結球レタスの抽出と大体の位置を検出することが可能であった。しかし,条件により,正確な位置や大きさを求めることができないことがあった。このため,赤外線レーザ光を走査して作物の三次元形状を直接計測する三次元視覚センサを試作し,予備実験を行った。その結果,レタスの三次元形状を4秒で計測することが可能であった。

三次元視覚センサを用いたミニトマト収穫ロボット(第1報) −ミニトマトの認識

    I.D.M.スブラタ・藤浦建史・山田久也・桧田 賢・湯川琢至・中尾清治

キーワード:農業用ロボット,ミニトマト,三次元視覚センサ,果実収穫,障害物の認識

三次元視覚センサを用いたミニトマト収穫ロボットを試作し認識実験を行った。試作した三次元視覚センサは,赤色(波長685nm)と近赤外(830nm)の2本のレーザビームを,光軸を重ね合わせて3本に分割して発射し,対象物からの反射光を3個のPSDで受ける走査型センサである。対象物の形状は,レーザビームの走査によって三角測量方式で計測し,赤色,近赤外両波長の対象物での反射率の違いによって茎葉,未熟果実から赤熟果実を識別した。また障害物との衝突を避けるために,画像処理ソフトウェアによって果梗や葉を認識した。

農業用油圧マニピュレータの研究(第3報) −スイカ収穫作業への応用

    飯田訓久・梅田幹雄・並河 清

キーワード:農業ロボット,スイカ収穫,油圧マニピュレータ,グリッパ,果実直径の測定

既報の重量物の取扱いを目的とした油圧マニピュレータを用いて,スイカ収穫ロボットを開発した。スイカ収穫作業は,大きくて思い果実の持上げ作業であるため,マニピュレータの性能を評価するには最適な農作業と考えた。ほ場において収穫実験を実施し,マニピュレータの位置決め精度,果実の把持成功率及び果皮の傷の有無を測定した。この結果,マニピュレータによりグリッパと果実の位置偏差が最大54.3mm生じた場合でも,果皮を痛めずに安定して果実を収穫することが可能であった。今回の実験において,収穫ロボットの収穫成功率は65%であった。

AHPによる農業機械更新の意志決定支援システム

    野口良造・小中俊雄・瀧川具弘

キーワード:農業機械,更新,AHP,意思決定,システム,費用/便益分析

 農業機械の更新において最適な代替案を選択するために,農業機械の追加購入と使用停止の観点から,更新条件,代替案の数および評価項目の検討を行い,AHP(Analytic Hierarchy Proccess)による農業機械の更新の意思決定支援システムを提案した。その結果,農業機械の更新に伴う代替案の総数を明らかにするとともに,使用停止と追加購入の比較評価項目により通常のAHPモデルと費用/便益分析を採用したAHPモデルによる代替案の評価を可能にした。また,通常のAHPの結果と費用/便益分析を採用したAHPの違いを考察し,代替案の選考順序の違いが生じる理由を明らかにした。

培養処理による米の加工(第1報)[英] −培養玄米の精米粉の糊化特性

    繆 冶煉・M.D.アガド・豊島英親・吉崎 繁

キーワード:玄米,澱粉,米の加工,培養,糊化特性,粘度,動力学

米の食味改善および健康食品の開発を目的に玄米の培養処理を提案し,精米粉の糊化に及ぼすその影響を反応速度論的および組織学的に検討した。30゚Cのまき床で培養を行うと,玄米内部の既存酵素が活性化され,さらにこれらの酵素反応によりアミロプラストの包膜が破れ,澱粉粒が分解された。培養玄米の精米粉は異なる糊化特性をもっており,最高粘度およびブレークダウンが培養時間によって増加と減少の二段階で変化した。また,一次反応モデルを用いてシミュレーションを行った結果,米粉の糊化過程はアレニウス方程式で表され,活性化エネルギーは30゚Cまき床での培養により1.157×105から1.492×105J/molに増加したことが明らかになった。

技術論文

カルチベータ用中耕爪の耐摩耗性に関する研究(第2報) −要因効果の分析について

    鄭  鋼・太田義信・広間達夫・片岡 崇

キーワード:アブレシブ摩耗,中耕爪,セラミックス溶射,シャンク形式,耐摩耗性

第1報では,カルチベータ用中耕爪の各部の摩耗状態および摩耗量の分布特性について検討した。本報では効果的な摩耗対策を明らかにするために,溶射材料,溶射部位,爪母材の硬さ,爪先の形状および爪取り付けシャンク形式を実験因子として,中耕爪の摩耗に作用する因子の効果を調べた。その結果,中耕爪の耐摩耗性について重要な因子は溶射材料とシャンク形式であり,次いで溶射部位と爪母材の硬さである。その中で最も耐摩耗性の効果があると認められた組み合わせは,セラミックス溶射爪をS形ばねシャンクに取り付けた場合であり,中耕爪表面に厚さ1mmのタングステンカーバイドを溶射した爪は,市販されている鋼爪に対して2倍以上の耐摩耗効果が得られることを明らかにした。

汎用コンバインの開発研究(第2報) −水稲収穫性能

    市川友彦・杉山隆夫・高橋弘行

キーワード:汎用コンバイン,スクリュ型脱穀機構,スクリュ型選別機構,水稲,脱穀選別損失,損傷粒

試作した汎用コンバインを水稲収穫に供試して,収穫時期,収穫時刻,送塵弁の開度,わら/穀粒比及び流量と脱穀選別性能との関係を各々調査するとともに,脱粒性の難易が脱穀選別性能に及ぼす影響についても調査した。一連の収穫試験では,排稈口損失,排塵口損失及びこれらを合計した脱穀選別損失,わら漏下率,穀粒口における損傷粒割合,枝梗付着粒割合,夾雑物割合などの基本的な脱穀選別特性及び所要動力等を明らかにし,汎用コンバインが水稲に対して高い性能を有していること実証した。また,実用化への課題についても考察した。

機械分析法と官能試験法とによる米の食味評価

    川村周三・夏賀元康・河野慎一・伊藤和彦

キーワード:機器分析法,近赤外分光法,官能試験法,米食味分析計,米,食味

機器分析による米の食味評価法が開発され実用化されている。しかし,機器分析による米の食味評価が官能試験の食味評価に換えて利用できるか,それぞれの機器で得られた食味評価に相関があるか,などの客観的データに少ない。そこで,近赤外分光法を利用した3機種と電磁波を利用した1機種を用い,61種類の米の機器分析と官能試験とを行った。機器分析による食味評価と官能試験の総合評価との相関は低かった。したがって,これらの機器は食味評価として数値を示すほどの精度はなく,食味別に米をグループ分けすることに用いるのが適当であった。各機器の食味評価値の間に互換性はなかった。機器分析法による米の食味評価の今後の発展のためには食味評価尺度の統一が不可欠である。

自動搾乳システムの搾乳能率

    千場秀夫・梅津一孝・高畑英彦

キーワード:自動搾乳システム,搾乳ロボット,搾乳能率,乳牛の乳頭位置

本研究は自動搾乳システムの特徴,その搾乳作業法並びに搾乳能率に影響を及ぼす諸要因を明らかにすることを目的とした。搾乳作業法を列車のダイヤグラム方式で表し,搾乳能率に及ぼす要因の解析を試みた。搾乳能率は乳牛の搾乳室内への入室時間,乳牛の乳頭位置,搾乳ロボットのセンシング速度,搾乳時の設定真空圧等に影響されていた。乳牛の搾乳室内への入室時間は牛の慣れに伴い短縮されていた。乳牛の乳頭位置はティートカップ取り付け時間に影響を及ぼしていた。乳頭検出センサの性能向上は搾乳ロボットのセンシング速度を速めていた。搾乳時の設定真空圧の増加は乳汁流出速度を早め,搾乳能率を向上させた。