第58巻第3号論文要旨

研究論文

立て詰め束イ草の乾燥効率の改善

     河崎功三・井村英昭・相浦正広・伊藤 繁

キーワード:イ草乾燥,熱効率の改善,自動制御,熱風乾燥,排気湿度,数値シミュレーション

イ草は束ねられ,熱風乾燥内に立てた状態で詰められ,熱風により乾燥される。しかし,乾燥が進むにつれ水分蒸発量が減少し,熱風が乾燥に寄与せず排気され,熱効率が落ちる。高温のまま排気される熱風を,排気湿度を基準に吸気へフィードバックすれば熱効率の改善が期待できる。この方法を評価するために乾燥シミュレーションを泥染めイ草および未泥染めイ草について行った。そして,以下の結果を得た。泥染めイ草,未泥染めイ草,両方ともフィードバック制御により乾燥時間は若干長くなるが熱効率はよくなり,条件によっては全乾燥熱量が10%以上減少する。

黒糖の品質に関する基礎的研究(第2報) −黒糖の品質と無機成分の関係

    秋永孝義・岡留博司・国府田佳弘

キーワード:黒糖,品質,物理的特性,化学成分

前報では沖縄県産の黒糖の品質の向上や製造技術の改善に資する基礎的資料を得るため,沖縄県内全工場の黒糖の物理的特性を調査し,黒糖の物性が産地によって大きく異なることなどを明らかにした。さらに黒糖の食品としての嗜好との関連から,無気化学成分と食味を調査した。そして物性と化学成分の関係を重相関分析で求めた。その結果,燐酸,カリウムとカルシウム含量が黒糖の硬度や粘度等の物性に,窒素含量は黒糖の色に影響を及ぼしていることが明らかになった。

スイカ収穫グリッパの開発

    飯田訓久・古部勝也・並河 清・梅田幹雄

キーワード:農業ロボット,スイカ収穫,セルフ・ロック方式,6軸力覚センサ

スイカの収穫作業を自動化するためにグリッパの開発を行った。はじめに,グリッパの仕様を決定するために,スイカの形状と力学特性の計測を行った。この結果に基づき,4本のリンク形フィンガにより,スイカとフィンガの間の摩擦力を利用して把持力を得るセルフ・ロック式グリッパを試作した。次に,グリッパの収穫性能を評価するために,グリッパとスイカの位置偏差許容範囲の測定実験とグリッパとスイカの接触部分に発生する最大応力の測定実験を室内で行った。この結果,グリッパは位置偏差40mmがある場合でも,スイカを痛めずに収穫することが可能であった。

農作業服による作業性と快適性の定量化に関する研究 −農作業服素材の紫外線透過性に関する検討

     桑原宣彰・岡本嗣男

キーワード:農作業服,作業性,快適性,衣服素材,染色,紫外線透過性,紫外線被曝

 農作業時の紫外線被曝量の軽減をはかる目的で,農作業服,特に今回は,その繊維素材および色が布の紫外線の透過性に及ぼす影響について検討し,以下の結論を得た。1)繊維素材によって,紫外線の透過率は大きく異なった。ポリエステルの透過率は低く,綿のそれはかなり高かった。2)また,染色をすることによって,透過率は低くなった。これらの繊維素材や色を適宜有効に選択することによって,紫外線の被曝量を大幅に減らすことが可能であることがわかった。3)布の紫外線透過は,Kubelkaの理論を適応することによって,吸光係数と散乱係数が求まり,それによって,各種布の特性が把握できた。4)農作業時の紫外線被曝による日焼けを,最小紅班量以下にするための布に必要な吸光係数と散乱係数の範囲を決定することができた。これらの結果は,より望ましい農作業服の開発,および農作業者が,作業服を選択するために有用な知見となり得るものと考えられる。

差分法を用いた籾貯蔵ビン内の二次元温度分布モデル[英]

    M.A.バスニア・阿部武美・疋田慶夫

キーワード:差分法,温度分布,籾,熱伝導,貯蔵,計算予想,円筒型ビン

円筒形の籾貯蔵ビン内の温度分布を予測するため,偏微分方程式で記述される二次元熱伝導問題の数学モデルを差分方程式に帰着させ,それを代数方程式としてコンピュータを利用して数値的に解いた。このモデルに空気と穀物の熱的特性およびビンの壁材の物理的,熱的特性を入力し,数値シミュレーション開始時の気温等の初期条件およびその後の気温がわかれば,穀物ビン内の任意の位置の温度を知ることができる。モデルはベーシック言語で記述したが,計算時間は比較的短時間で終えることができた。実験は壁材料が,a.木製およびb.ウレタンフォームを挟んだ薄い鉄板製で,それぞれの内径が0.8mの円筒形ビン2基を用いて行ったが,実験値は予測値と良く近似した。

技術論文

カルチベータ用中耕爪の耐摩耗性に関する研究(第1報) −摩耗量分布について

    鄭  鋼・太田義信・廣間達夫・片岡 崇

キーワード:耕うん,アプレシブ摩耗,中耕爪,セラミックス溶射,摩耗分布

省エネルギおよび低コストの耕うん作業として,ミニマムティレッジを行うための高速耕うん装置の開発を目指しているが,その基礎研究の一環として,現段階では高速耕うん装置のひとつのモデルと考えられるカルチベータ用中耕爪を供試して,土砂摩耗の特性と耐摩耗性向上のための改善方法について検討を行った。本報では,主に摩耗の進行状態について論述し,第2報では摩耗対策について検討する。まず本報では,従来のカルチベータ用中耕爪と耐摩耗性があるといわれている新素材ファインセラミックスを利用した溶射爪について圃場実験と室内実験を行い,作業走行距離に基づく摩耗状態に関して摩耗質量および面摩耗量を主な比較対象として検討した。その結果,中耕爪先端部と左右両端部の摩耗が大きいこと,および面摩耗量は爪の土壌貫入深さにほぼ比例して増加することを明らかにし,セラミックス溶射を施した中耕爪には面摩耗に関して耐摩耗性の効果があることを確かめた。

ウリ科野菜用接ぎ木装置の開発(第4報) −実証試験と実用機の普及

    小林 研・小野田明彦・鈴木正肚・大月晴樹

キーワード:接ぎ木,苗,苗生産,野菜,果菜,ウリ科,キュウリ,ロボット

 機能確認機及び実験機で開発された技術をベースに,穂木と台木の供給は人手で行い,クリップを自動供給する接ぎ木装置を開発した。本機を埼玉,岩手両県の園芸試験場と苗生産現場で行った8回延べ7,500株を越えるキュウリの接ぎ木試験に供試して実用性を検討した。その結果,作業能率は660〜840株/h,作業性度は接着率90%以上と性能は安定し,実用性があると判断された。この成果は農業機械メーカに移転され,1993年10月に「接ぎ木ロボット(商品名)」として全国に販売された。

空気噴射式湛水直播法の開発(第1報) −播種法開発のための基礎試験

    澤田恭彦・伊藤清一・遠藤征馬・花井英之・堀部和雄

キーワード:水稲,湛水直播,水田,気体力学,苗立ち

水稲の省力栽培法である湛水直播栽培では苗立ち率を高めることが収量確保に必須の要件であり,いかに精度よく播種して出芽環境を整えるかにより苗立ちの良否が決定される。そこで,空気噴射式の播種法を採用するときの土壌条件および田面水の存在が播種精度に及ぼす影響について考察した。その上で実験機を試作し,栽培実証試験を行って本播種法の実用性を確かめた。以上の結果効率,精度とも目標水準に達し,移植なみの収量が得られた。

汎用コンバインの開発研究(第1報) −基礎試験とコンバインの試作

     市川友彦・杉山隆夫

キーワード:汎用コンバイン,スクリュ型脱穀機構,スクリュ型選別機構,水稲,小麦,大豆

スクリュ型脱穀・選別機構を心臓部に持ち,水稲,麦,大豆,そば,ハトムギ等,多くの作物の収穫作業に利用できる汎用コンバインの開発研究を実施した。本研究の成果を関連メーカに技術移転した結果,スクリュ型脱穀機構を基軸とする汎用コンバインが実用化・市販化し,水稲や畑作物の収穫作業に利用されている。一連の開発研究の概要を4報にわたって報告する。第1報では,汎用コンバインの設計資料を得るために実施した脱穀選別部基礎試験及び掻込み部基礎試験について論じるとともに,これらの基礎試験結果をもとに試作した汎用コンバインの概要について報告する。

ロールベール切断機の開発(第2報) −開発機の性能

    市戸万丈・八谷 満・冨樫辰志・佐々木泰弘

キーワード:ロールベール,円盤刃,レシプロ刃,所要電力,処理残,切断長

混合飼料調製を目的にロールベールを細切断する細断機について研究を行った。直交する方向に配置した2種類の刃物によって,ロールベールを方形切断する新機構の細断機の原型を開発した。ロールベールサイレージを主対象に,ロールベール乾草・ロールベール稲わらを用いて開発機の細断性,取扱性,消費電力等を調査した。低消費動力性,細断精度はほぼ目標を達成したが,対象物が円柱形状を維持することが前提の切断方式のため,切断できない部分(処理残)が発生した。また時間当たり処理量等が目標を下回ったこと等,さらに性能を向上させる必要がある。

共同乾燥施設用エアフィルタの集塵性能

    角 厚志・新家 憲

キーワード:大気汚染,集塵,エアフィルタ,共乾施設,ダスト濃度,粒子径分布

 本報告は共乾操施設の乾燥機から排出されるダストを捕集して大気汚染を改善しようとするものである。本報では不織強化綿と合成繊維からなるエアフィルタを供試した。これは使い捨てであるが,ダストの捕集効率が高く,適正風速が0.4m/s(濾過風速)と大きく,設置コストが安価である。このフィルタの捕集効率および寿命を調べた。結果として,捕集効率はダスト粒子50Um以上で約98%,20〜30Umで86〜89%,10Um以下で89%であった。ダスト濃度16mg/m3の排気状態では20日目に急速に圧力が上昇した。エアジェットで清掃する必要があった。

樹上走行モノレールによるカンキツ園の農作業自動化

    岡崎紘一郎・宮崎昌宏・長崎裕司・糸川信弘

キーワード:傾斜地,カンキツ,樹上走行モノレール,防除装置,繁茂度センサ,搬送装置,自動化

機械化が困難な急傾斜地カンキツ園の農作業の自動化を図るため,樹形を関心自然形から誘引柵仕立てに改造し,整枝した樹体を支える支柱を利用して,地上約2.2mの高さの樹冠上に樹上走行用軌条を設置した。この軌条上を走行する単軌条運搬機をラジコンによる遠隔操作及びセンサからの入力に応じて自動走行できるようにした。門型ブームでカンキツ樹を跨いで両側面から薬剤を噴射する装置,ならびに,発光ダイオードで繁茂度を検知するセンサを開発した。また,採果した果実に対応できるスライド式バケットコンベアによる果実運搬装置を開発した。