第58巻第2号論文要旨

研究論文

アルコ−ル・軽油二燃料噴射式機関の農用トラクタへの応用に関する研究(第4報) −トラクタ機関としての実用可能性

    坂田親紀・寺尾日出男・野口 伸

キーワード:気化ディーゼル法,トラクタ機関,アルコール燃料,PTO軸負荷性能試験,ほ場作業試験

農用として具備すべきトルク特性・燃費性能を有しながら,化石燃料の代替と排気成分の改善を図ることを目的として,アルコール・軽油二燃料で運転可能なトラクタ機関を開発した。噴射時期を運転中に調整・設定できる軽油噴射ポンプを新たに搭載して,オペレータが軽油単味モード・二燃料モードの2運転モードを任意に選択運転することができる。本報は試作機関についてPTO軸負荷性能試験を行い,出力,燃費,NOx濃度,煙濃度を検討した。燃費性能,トルク特性は無過給のトラクタ搭載用ディーゼル機関の平均的な値を示し,二燃料モードでは軽油単味モードと比較して,NOx濃度は最大で約40%ほど低減した。さらにほ場作業試験としてプラウ耕作業を行い,試作トラクタ機関の制御法の妥協性と実作業時の変動負荷に対する有効性を確認した。

サボニウス風車の効率向上に関する研究(第1報) −集風装置の性能についての実験

    呉  雷・木谷 収・岡本嗣男・鳥居 徹

キーワード:サボニウス風車,風車効率,集風装置

筆者の一人の故郷である内モンゴルには豊富な風力エネルギがあり,現在すでに風力発電機が多くの家庭で使われている。しかし現在普及しているプロペラ風車は低風速域で特に出力が小さい問題がある。筆者等は,この問題を解決するために,サボニウス風車を再検討することにした。サボニウス風車は低風速で始動し,強風に強く,稼動風速範囲が広いことや風向制御が必要ないなどの特長がある。しかしサボニウス風車は他の形式の風車に比べて効率が低く,出力が小さいという問題がある。本研究は,サボニウス風車の性能改善を図るためにサボニウス風車に集風装置を付加して風洞模型実験を行い,集風装置の特性ならびに集風装置を付加したときの効果を調べたものである。

穀物の吸水に関する研究

    村田 敏・徳永淳一・田中史彦・小出章二・K.S.P.アマラトゥンガ

キーワード:穀物,吸水,平衡含水率,アレニウス式

穀物の浸漬による吸水は拡散現象の理論をもとに解析される。本研究では,吸水を乾燥の逆過程であると考え,種々の温度(0゚C〜40゚C)における吸水特性を明らかにした。解析は減率乾燥第二段の代表的乾燥モデルである平板モデルを適用し,非線形最小二乗法により吸水速度定数及び平衡含水率を算出した。この当てはめの結果,測定値と計算値はほぼ一致し,また吸水測定定数にArrhenius型の温度依存症性のあることが確認された。

籾の呼吸速度に関する研究

    疋田慶夫・韓 東海・安部武美

キーワード:穀粒,籾,呼吸,温度依存性,含水率依存性

穀類の乾燥や貯蔵過程における品質低下の指標として呼吸特性を導入することを目的に,籾の呼吸速度の温度と含水率への依存性を調べた。温度と呼吸速度の関係はArrheniusおよびGore式によく適合し,品種および含水率に依らないほぼ一様な温度係数の値が得られた。含水率と呼吸速度の関係においては,23〜25%D.B.を境に呼吸速度の増加割合が著しく増加した。また,品種間の差異がわずかに認められたが,含水率と呼吸速度の関係は,Arrhenius型の曲線でほぼ近似することができた。籾の呼吸速度は温度と含水率を変数とするArrheniusおよびGore式で表すことができた。

牧草収穫作業のためのトラクタの自動操舵に関する研究

    西村秀司・本田善文・芋生憲司・竹永 博・糸川信弘

キーワード:自動操舵,自動走行車両,トラクタ,牧草収穫,ジャイロスコープ

牧草収穫作業の省力化のために,トラクタの自動操舵システムを開発した。このシステムでは圧電振動式ジャイロスコープと超音波ドップラ速度センサによって,トラクタの位置と方向を認識した。各センサからの出力をV/F変換し,出力パルスの数を数えることによって簡単に時間積分を行うようにした。操舵はパーソナルコンピュータによって,オンオフ制御と比例制御の組み合わせで行った。圃場における実験の結果,良好な制御を行うことができた。速度を0.8m/sおよび1.8m/sとして100mの直進走行を行った場合,横変移が最大でも0.2mであった。また速度0.8m/sで一辺25mの正方形走路を走行した結果,走行終了時の機体のずれは0.5m以内であった。

連結車両の制御動作モデル(第1報) −人の適応性を考慮した新しい制御動作モデルの提案

     鳥巣 諒・井前 讓・柴田 茂

キーワード:人―連結車両系,操縦性,時変ゲイン制御動作モデル,車線変更,適応能力,最適制御アルゴリズム

人は連結車両を操縦するとき,周囲状況や車両の特性に応じて自己を適応させる。本論文は,PDモデルのゲインを時変ゲインに拡張した新しい制御動作モデルを提案する。人の適応性を時変ゲインで表現するこのモデルは,ゲインの決定法を最適制御問題に変換し,最適制御アルゴリズム手法を適用し,最適解を求める構造になっている。本報では,理論構成を中心に述べ,第2報で,このモデルを適用した車線変更時の人―連結車両系の閉ループ特性を検討する。

ラン幼苗のマシンビジョンによる等級選別について

    海津 裕・岡本嗣男・木谷 収・鳥居 徹

キーワード:培養苗,自動化,マシンビジョン,フーリエ級数展開,ロボット

ラン培養苗の移植作業をロボットによって自動化するために,その視覚部として,画像処理による苗の良否判定,及び大きさの選別システムの開発を試みた。モノクロカメラによって取り込んだ苗画像を,図心を中心にして境界線のサンプリングを行い,サンプル値の時系列に対してフーリエ級数展開を行った。その結果,投影面積,フーリエ係数,サンプル値,などを等級選別の基準として用いることで,良好な判定結果を得ることが出来る。

鉱物を用いた水の機能化に関する基礎的研究(第1報) −麦飯石による水の機能化の検討

     中村 博・石川勝美・岡田芳一・田辺公子・槐島芳徳

キーワード:麦飯石,水処理,pH緩衝能,イオン交換作用,導電率

水処理に鉱物を用いると,鉱物表面に依存する陰荷電により水にpH緩衝能やイオン交換作用等を持たせることが期待できる。そこで本報では石英斑岩に属する麦飯石が,水に接したときに結晶性微粒子(ミセル)を形成することに注目し,水自体にpH緩衝力を付与する機能化処理システム開発を目的とした。すなわち,麦飯石の粒径・投入量を変えてpH緩衝能の基礎実験を行い,同時にイオンの定量分析,導電率の測定も行った。その結果,麦飯石は酸性,中性ではpHを増加させ,アルカリ性ではpHを減少させた。また,イオンの溶出は交換性陽イオンでるNa+,K+,Ca+,Mg2+濃度の増減が認められた。導電率は粒径の細化と投入量の増加により最大12.5%増加した。

2輪トレ−ラ系の周波数応答について[英]

    S.W.ムグシア・武田純一・出口雄一・鳥巣 諒

キーワード:周波数応答,路面波長,正弦波横変位入力,正弦波操舵入力,トラクタートレーラ系

2輪トレーラ系の操縦性・安定性を調べるために,トラクタの周期的操舵入力に対するトレーラ系の周波数特性を検討した。本論文では,系への入力はトラクタ前輪点軌跡とし,トラクタ後輪点やトレーラ輪点を出力とする周波数応答測定法を提案した。本測定法はパルス応答法やスラローム実験法よりも,入力が正確かつ系の制御が容易であり,2輪トレーラ系のような低速車両への適用性に優れている。本測定法によるアスファルト路面上での実車による周波数応答実験と車両の運動学モデルから導いた周波数応答を比較検討し,理論の妥当性を確認した。さらに,この結果を用いて,操舵角を入力とする周波数伝達係数を求め,系の諸元と周波数特性の関係,入力周波数と各出力特性の関係などを制御工学的観点から考察した。

技術論文

ナタネ粗製油によるディーゼル機関の運転(第2報) −長時間運転試験および始動試験

    富樫千之・上出順一

キーワード:代替燃料,ナタネ粗製油,小型ディーゼル機関,長時間運転,始動性

機関は,出力特性がよく,始動性が良好で,燃焼音が小さいことが要求される。さらに代替燃料を使用する場合は,長時間運転でも機関に支障を及ぼさないことが必要である。本報では,4種のナタネ粗製油(脱酸油,脱ゴム油,水和脱ガム油および原油)を使用した場合の機関への影響を確認するための長時間運転(定速回転数,75%負荷)および脱ガム油による始動試験を行った。その結果,脱酸油および水和脱ガムはディーゼル燃料として使用が可能と考えられた。また,始動用ガソリンカップからガソリンを滴下することによって脱ガム油でも容易に始動できた。

ウリ科野菜用接ぎ木装置の開発(第3報) −実験用接ぎ木装置による連続接ぎ木作業

    小林 研・鈴木正肚

キーワード:接ぎ木苗,苗,苗生産,キュウリ,メロン,スイカ,ロボット

機能確認機で得た基本技術と新たに開発した機構からなる実験用接ぎ木設置により20株連続接ぎ木作業を行った。苗とクリップは自動供給した。円盤外周3等分位置にハンドを設けた搬送部の周囲に苗供給,切断,接着の各部を配置し,ハンドをこの順に移動させた。切断部は苗形状を矯正して切断する回転アーム型とし,クリップ掛けは往復動するカムで行った。本機は,20株のキュウリ接ぎ木を約1分で行うことができ,作業能率は手接ぎ木の約10倍,作業精度接98%,活着率95%そして成苗率87%であった。また,プリンスメロン,スイカ苗の接ぎ木にも適応できた。

ロールベール切断機の開発(第1報) −切断機構の選択

    市戸万丈・八谷 満・冨樫辰志・佐々木泰弘

キーワード:ロールベール,混合飼料,方形切断,円盤刃,走行刃,レシプロ刃

混合飼料調整を目的にロールベールを細切断する細断機について研究を行った。まず市販解体機・切断機の切断機構及び所要動力等を調整検討した。それらの調整の結果から,将来さらに普及が期待される混合調整のために,ロールベールを均一に切断できる機械への強い要望を認めた。そこで2種類の刃物を直交する方向に配置し,低所要動力でロールベールを方形切断する新切断機構を開発する方針を決定した。切断刃として円盤刃,レシプロ刃,走行刃の3種類を試作・検討して切断機構を採用した。

キャブ内の熱的快適性向上の研究(第3報) −被験者実験によるキャブ内の定常温熱環境評価

    松本照幸・門谷皖一

キーワード:キャブ,空調,皮膚温,温冷感,熱的快適性,疲労,CO2濃度

本報では,建設機械キャブ内の空調機の吹き出し口配置が異なる2種類を用い,冬期寒冷条件下の暖房実験及び人口太陽を含めた夏期温暖条件下での冷房実験を行い,被験者を用いた作業操作中(シミュレーション操作)の生理量,心理量を計測することによりキャブ内の定常温熱環境を評価した。また,PMVも同時に測定し被験者実験結果との比較も試みた。その結果,暖房条件も冷房条件も吹き出し口を分散した空調機の方が熱的快適性に優れていることが明らかになり,疲労度も低減できることがわかった。また,キャブのような限られた小空間での換気の必要性も認められた。

二燃料ディーゼル機関の最適運転法[英]

    野口 伸・石井耕太・寺尾日出男

キーワード:ディーゼルエンジン,メタン,機関性能,最適化理論,最適制御

汎用ディーゼル機関をメタン・アルコールなどの補助燃料を使用して性能を最大化できる制御方法を提案した。試作システムは機関回転数,機関軸トルク,補助燃料流量が観測できることを前提にして,熱効率,煙濃度,代替率などの性能を最大化できる。本法は多目的最適化法を適用することにより,複数の性能のパレート最適解を探索し,重み係数法によって個々の性能の重みを設計者が任意に設定することが可能である。本報では補助燃料としてメタンそ使用して,その有効性を検証した。