第58巻第1号論文要旨

研究論文

生籾の太陽熱直射乾燥に関する研究(第4報) −波面層の日射量と乾燥特性

工藤泰暢・C.I.ニンド・戸次英二

キーワード:太陽熱直射乾燥,放射乾燥,波面層,生籾

波面層の傾斜面を固定した場合に,日射量は午前に東側,午後に西側の各傾斜で最高760W/m2と800W/m2になり,平面層の600W/m2と比べ約1.3倍も高かった。この傾斜方向を太陽へ向けて変移させた場合,日射量は平面層の日変化と同様に経過したが,540W/m2にとどまった。それぞれの乾燥速度は平面層の0.28%/hに対し,波面層の傾斜方向固定で0.30%/h,同じく傾斜方向で0.29%/hであった。乾燥速度を乾燥定数kに置きかえて日射量との関係を見ると,方向固定は一日の日射量が1.2〜1.6MJ/m2と狭く,0.3〜1.6MJ/m2と広い範囲に経過した方向変移よりもk値がわずかに高かった。同じ日射量でも午後にはk値が高くなる傾向が見られた。

果樹園作業の自動化に関する研究(第1報) −パタ−ン認識によるリンゴの検出

    張 樹槐・高橋照夫・福地 博・寺尾日出男

キーワード:リンゴ,パターン認識,エッジ抽出,2値画像,分散値,果実収穫

果実の収穫作業を自動化するために,本報ではパターン認識の技術を応用し,果樹の中からリンゴを認識する方法について検討した。リンゴの認識手順は,まず果樹のビデオ画像をパソコンへ取り込み,それを平滑化及びエッジ抽出処理し,リンゴの輪郭線を含む2値画像に変換した。さらにその輪郭線がどの程度円形に近いかを知るため,統計解析の分散値計算を行いリンゴの検出を試みた。供試リンゴの品種はふじと紅林であった。果樹園における撮影は順光と逆光の2条件で行われた。その結果構築したアルゴリズムは,リンゴの品種や光条件などに影響されずに,果樹のビデオ画像の中からリンゴを検出するのに適当であると判断された。

メロンのネットパターン

    川上昭太郎・坂口栄一郎・梅田重夫

キーワード:マスクメロン,果皮部,ネット,フラクラル次元,ネットパターン

マスクメロンのネットの特性を明らかにするために,ネットに囲まれた個々の果皮部の面積,ネットの幅を測定し,ネットのパターンの特徴について検討した。その結果,ネットの囲まれた個々の果皮部の平均面積やネットの平均幅などはメロンの産出年,等級によって異なるが,ネット交点はランダムに分布しているのではなく,ある規則性があること,またネット交点と交点を結ぶパス数との関係から見ると,ネットの粗密にかかわらず,ネットのパターンは格子型に近いことが明らかになった。

家畜自動歩行計量器に関する基礎的研究(第1報) −歩行計量器としての具備すべき条件

    干場秀雄・梅津一孝・高畑英彦

キーワード:家畜歩行計量器,二頭計量現象,スレショルド,個体識別装置,アンテナ,タグ,受信領域

本研究は歩行中に家畜の体重値を自動的に計れる自動歩行軽量器の具備すべき条件を明らかにすることを目的とした。家畜の真の体重値を計量するには,対象家畜の最少体重値と最大体重値の間にスレショルド(しきい値)の設定が有効であった。軽量器上の糞の重量は計量精度に影響し,その補正が必要であった。家畜が計量器上で停止すると,後続の家畜が計量器は乗り込む二頭計量現象が発生し計量不可能となり,これを避けるための分離装置が必要であった。個体識別装置の具備すべき条件として,アンテナに対するタグの向きを直角にする,受信領域を家畜通路の全面に取る,アンテナの長さは家畜の歩幅以上に取ることが明らかになった。

オリフィスからの粉粒体の流量測定装置の開発 −微小時間間隔での流量測定法    

 黎  文・林 尚孝・森泉昭治・関 正裕

キーワード:粉粒体,流量,オリフィス,測定装置,微小間隔測定

粉粒体の流動性の基礎的研究にとってオリフィスからの流量測定は不可欠である。従来の研究では,流量は一定であると仮定して,オリフィスからの粉粒体流量を,一定時間(10〜60秒)に流出した質量から求めるか,あるいは一定の質量の流出時間から求めてきた。このような測定間隔では,粉粒体の流出時の微小時間内にどのような現象が起こっているかについて詳しく知ることはできない。今回新しく開発した流量測定装置により,0.13秒ごとの流量を精密に測定することが可能になった。本測定装置の性能と有効性を検証するために行った実験から,これまで見逃された現象や従来の学説の成立範囲,微小時間内での流量変動などが明らかにすることができた。

測距輪による位置認識

本橋圀司・高野 剛・田中勝千・嶋田 浩

キーワード:測距輪,ボジショニング,路面凸凹,コンピュータ

第5,6輪による位置認識装置を試作し実験を行った。本方式は各車輪が通過する路面の凸凹周波数とその位相,特に低周波の波形と位相がほぼ等しくないと,直線走行の認識が難しい。そこで高周波部分は平滑化を行い,低周波部分は左右測距輪の走行した路面の起状の違いによる測距差を検出し,修正した。平坦地で実験した結果,600m以内の走行であれば位置認識誤差は1〜3m以内で移動距離が短いほど認識誤差は小さかった。

走行速度対応の繰出量自動調節に関する研究(第1報) −調節装置の開発と種子・肥料の繰出性能

    庄  森・小松 実

キーワード:施肥播種機,操出量自動調節装置,接地輪型走行速度センサ,DCモータ駆動操出軸,操出軸回転数,比操出量

 本研究は,接地軸からの走行速度信号によって操出軸の回転速さを調節し,トラクタの走行速度の変動に関係なく一定の比操出量で操出作業を行うことを目的としている。試作機は,およそ0.12〜0.75m/sの走行速度範囲を調節可能であり,粒状化成肥料を用いたときの操出テストでは,0.29m/sと0.56m/sのとき比操出量はそれぞれ3.69g/mと3.63/mであった。そして走行速度別にみた比操出量の分布変動係数は7%以下を示した。

農業機械作業者耳元騒音の能動制御(第2報) −トラクタに搭載時の消音効果     

彭 彦昆・笹尾 彰・渋沢 栄・沢村 篤・吉田智一

キーワード:機械騒音,騒音低減,能動制御,適応フィルタ,フィードバック制御,RLSアルゴリズム

農業機械作業者に対する耳元近傍の騒音レベル低減をめざし,音波干渉効果を利用したフィードバック制御タイプのアクティブノイズコントロール(Active Noise Control:ANC)システムの実用的検討を試みた。本報では,高速ハードウェアDSP(Digital Signal Processor)を用いて,RLS(Recursive Least Square)アルゴリズムをフィードバック制御方式に組み入れるANCシステム(以下FB-RLSシステムと称す)を実現し,乗用形トラクタの実機上で作業者耳元に対する消音効果の検討を行った。その結果,機関定格回転数における作業者耳元近傍の全周波数域音圧レベルで5〜6dB程度,0〜500Hz帯域の最大音圧レベルで14dB程低域できた。

3種類の米の小枝梗の引張り強さと曲げ強さと籾の質量の特徴[英]

    I.N.スアスタワ・木谷 収・坂井直樹・米川智司・岡本嗣男・鳥居 徹

キーワード:力学特性,脱粒性,米型,確率長円,判別分析

易脱粒性米の収穫時の穀粒損失を減らすには,脱粒性に関係する力学特性を調べることが有用である。慣行法で作られたArborio(Jauanica型),Bluebonnet50,Jhona349(Indica型)とコシヒカリ(Japonica型)の稲を使用し,品種を変数として穂の小枝梗の引張り強さ,曲げ強さ,籾の質量のそれぞれの穂の中での特徴を調べた。穂に付いた個々の籾について,力学特性をもとにして,小枝梗の引張り強さと曲げ強さと籾の質量の関係を解析した。これには籾の配列を基準にした穂の構造モデルを使用した。確率長円を用いて小枝梗の引張り強さと曲げ強さを関係に基づいて,米の品種をグループ分けした。

技術論文

無代かき水稲直播栽培に関する研究(第1報) −土壌物理性と易耕性

    大谷隆二・西崎邦夫・柴田洋一

キーワード:水稲直播,無代かき,土壌の物理性,易耕性

寒地での水稲作に,無代かき直播栽培を導入した場合の土壌への影響を明らかにするため,4年間代かきをしなかった圃場と代をかいて水稲栽培した圃場を対象に,土壌の諸特質を検討した。その結果,無代かき圃場は,保水性,排水性,易耕性,地耐力の点で優った。無代かきは,融雪後短期間で,良好な播種床を高能率に造成することができる方法であることが明らかになった。

小麦製粉工程における流量変動の伝播に関する研究(第2報) −製粉工程シミュレータを用いた流量変動シミュレーション

    関 竜司・村田 敏・広瀬孝志

キーワード:小麦,製粉,段階式製粉,含水率,挽砕,篩分,平均粒子径,シミュレーション,スプレッドシート

本報文では第1報で報告した算出式を用いて,段階式製粉の各工程における産出物の性状の変動をシミュレーションする手法について報告する。これは,パーソナルコンピュータ上に構築した製粉工程シミュレータを用いたもので,任意の挽砕条件の入力により各工程の状態を即座に出力するものである。シミュレーションを実行した結果,任意の挽砕条件を操作したときの,各工程における産出物の量や平均粒子径などの変動の仕方を特徴付けることができた。

メタン発酵法による洗米廃水の処理特性

    北村 豊・田川彰男・林 弘道

キーワード:排水処理,洗米廃水,メタン発酵,汚泥返送,COD除去,ガス収率,動力学

接触法と在来法により操作するメタン発酵槽を用いて洗米廃水の処理実験を行った。汚泥返送を行う接触法は,在来法の約5〜10倍高い7.6〜14.8g-VSS/Lの菌体濃度を得た。COD除去率はどちらのプロセスにおいても95〜98%と高く,消化ガス収率は接触法で0.37〜0.39ml/mg-COD,在来法で0.36〜0.45ml/mg-CODを示した。また発酵槽の見かけの速度パラメータである菌体の’maxおよびKsは,それぞれ接触法について0.27mg/mg・d,177mg-COD/,L在来法について0.69mg/mg・d,-56mg-COD/Lであった。これらの結果の接触法は,基質消費活性の低い菌体群をメタン発酵槽内に高濃度に滞留させることにより,COD濃度6000〜15000mg/Lの洗米廃水1Lを1.5〜3.8日の滞留時間で浄化できる可能性を示した。

家畜糞尿スラリのレオロジー特性に関する研究

    梅津一孝・高畑英彦・干場秀雄

 キーワード:家畜糞尿スラリ,粘度,レオロジー特性,遠心分離法,スラッジ体積百分率

本研究は,広範囲な固形分濃度の家畜糞尿スラリを対象にそのレオロジー特性値,すなわち,せん断速度とせん断応力の関係を決定するパラメータとしての遠心分離法によるスラッジ体積を用いる方法について実験的に検討を行った。粘性係数と粘性指数は遠心分離法で求めたスラッジ体積百分率を用いた式で表すことが出来た。また,ホルスタイン搾乳牛,育成牛,肥育豚,採卵鶏の4種類の糞尿スラリについて,これらの式の定数を求めた。

キャブ内の熱的快適性向上の研究(第2報) −環境試験室におけるキャブ内の温熱環境解析     

松木照幸・高橋良昭・今村敏英・門谷皖一

キーワード:キャブ,熱的快適性,皮膚温,空調,冷房,人工太陽

本報では,建設機械のキャブ単体をキャブ外の温度および風速のコントロールが可能な人工太陽光を備えた環境試験室内に設置し,冷房運転時における外界条件によるキャブ内の温熱環境特性を解析し,オペレータの生理量を計測した。その結果,キャブ内に及ぼす日射の影響が非常に大きく,キャブ内の壁面やオペレータの皮膚表面は,その部位により大きな温度差の生じることが判明した。キャブ内の熱的快適性を向上させる対応策として,窓ガラスの日射透過率の制御,効率的な冷風吹き出し口の配置,通気性シートの採用が,非常に有効であることを明らかにした。

クスノキ(Cinnamomum camphora Sieb.)における比葉面積の非破壊計測

    守谷栄樹・三輪精博・松井鋳一郎・後藤清和

キーワード:比葉面積,非破壊計測,葉内含水率,並列キャバシタンス,クスノキ,苗木,CO2固定能力

植林や緑化においては,樹木のCO2固定能力を考慮する必要がある。本報では,苗木(1〜2年生)のCO2固定能力を相対成長率(RGR)によって評価する考え方を適用し,その構成因子である比葉面積(SLA)を非破壊計測する手法を検討した。苗木の葉内含水率とSLAとの間には,直線関係が認められたことから,葉内含水率はSLAの適切なパラメータであることが判明した。葉内含水率は並列キャパシタンス(測定周波数:10MHz)によって非破壊計測が可能となった。以上から,並列キャパシタンスによって非破壊的に直接SLAを推定することが可能となり,その推定精度は標準誤差で30cm2g-1であった。