第57巻第6号論文要旨

研究論文

バイオガスの農用小型ディーゼル機関への応用(第1報)  *実験車両による検証実験

    石井耕太・寺尾日出男・野口 伸

キーワード:バイオガス,二燃料運転,ディーゼル機関,代替エネルギ,NOx排出量

本研究の目的は有気廃棄物などの嫌気性発酵によって発生する可燃性のバイオガスをディーゼル機関の燃料として適用することにある。メタンと二酸化炭素の混合による擬似バイオガスの合成装置を製作し,小型直接噴射式ディーゼル機関にバイオマスを予混合供給してバイオガスと軽油の二燃料運転に関する基礎的知見を蓄積した。バイオガスは排気ガス中のNOxを30~70%低減すること,40%程度の低メタン濃度においても性能上問題はないことが判明した。低負荷域では燃料消費率の増加が認められ,効率的な運転の達成には使用負荷域とバイオマス供給量が重要と判断された。

 

人による2輪トレーラ系の操縦性(第3報)  *人の後退運動制御

    鳥巣 諒・S.W.ムグシア・武田純一

キーワード:二輪トレーラ系,斜線変更,認識モデル,後退制御,シミュレーション,適応性

2輪系の後退時に人がどのように操縦しているかについて制御工学的観点から検討した。人―車両系問題として車線変更時の人の操縦性を取り上げ,実車実験を行った。他方,車両方程式と人の制御動作モデル(認識モデル)を組み合わせ,車線変更のシミュレーションを行い,人のハンドル角へのフィードバック操作を模擬する複合シミュレータを作成した。これを用いて,連結車両の後退時の人の操縦性を明らかにした。また,連結車両の自律走行問題との関連性も検討した。

 

耕うん用なた刃のCAD用数理モデル研究(第2報)  *わん曲前後の角度要素及び刃首部と直刃部

    桜井文海・坂井 純

キーワード:わん曲前後,角度要素,刃首部,直刃部,刃縁曲線

本研究は,コンピュータ利用設計(Computer Aided Design,CAD)用数理モデルによってロータリ耕うん用なた刃を設計する手法を開発することが目的である。本報では,生産工程の中でわん曲部のわん曲前後の角度要素及び刃首部の曲線と直刃部の刃縁曲線との交点を求める設計手法を解明し,なた刃峯部曲線の設計理式を提案した。また,本研究による諸式と既知理論式を組合わせることにより,29個の設計条件を選択して,なた刃形状を決める寸法と角度要素の理論式により求める数理モデルを提案した。これらを人間の思考プロセスにしたがって諸式に代入し,なた刃の企画設計をコンピュータで行うと共に,XYプロッタで製図完了までのフローチャートと,マイコン用のプログラムを開発した。

 

直播ビートの自動間引きに関する研究(第1報)  *間引き法の検討

    登坂直範・端 俊一・高井宗宏・酒井憲司・岡本博史

キーワード:直播てん菜,自動間引き,株間,間引き法,初期生育,根重,糖収量

本研究は,てん菜栽培の省力化を目指し,直播栽培体系における間引き作業の自動化を目的としている。本報では,自動間引きに適した間引き法を見出すべく,圃場実験を行い検討を行った。目標株間および間引き方法を変えて実験を行った結果,株間はてん菜の初期生育に影響を与えるが,最終的な糖収量には影響が及ばないと推定され,間引き方法についても,残す株の大小を考慮するか否かは,根重及び根周にわずかに影響を与えたが,糖収量にまでは影響が及ばないことが明らかとなった。以上の結果より,自動化のための間引き方法は,株間が20~25cmの範囲で株の大小を考慮せずに間引く方法が適当との結論が得られた。

 

貯留中穀倉内の熱・水分移動  *自然対流項を含んだ解析

    小出章二・村田 敏・内野敏剛

キーワード:自然対流,呼吸熱,籾,貯留,有限要素法,熱移動,水分移動,Darcyの法則

穀層内の穀物の温度・水分分布を予測するにあたり,呼吸熱と自然対流を考慮した2次元の熱拡散・水分移動の蒸発拡散方程式の導出を試みた。これらの式は対流項を含む強い非戦形方程式であり,その対流項は流体力学的計算を必要とするが,これらを連立して解くことにより,穀層内の穀物の温度・水分分布や自然対流が理論的に求められる。本研究では温度・水分の異なる2つの層を層接触させ測定を行った。その結果は計算値とよく一致した。よって,本研究で行った解析手法は,穀層内の温度・水分予測に利用できることが実証された。

 

精白米の吸湿過程における平衡含水率の測定  *初期含水率の平衡含水率に与える影響

    村田 敏・田中史彦・K.S.P.アマラトゥンガ・渋谷和子・内野敏剛

キーワード:精白米,吸湿,平衡含水率,初期含水率,ヒステリシス

精白米の吸湿特性を明らかにするため,湿り空気通風による吸湿試験を行った。測定は風速32.4m/minの下,温度10,20,30,40゚C,湿度50,60,70,80,90%RHの条件で行い,減率乾燥第一段式を吸湿に応用することで吸湿速度定数及び平衡含水率を整理した。また,非線形最少二乗法の特殊解法により精白米におけるChen-Clayton式のパラメータを決定し,吸着等温線を算出した。さらに,初期含水率の違いによる平衡含水率への影響についても実測を行い,その発生原因について若干の考察を行った。

 

自律走行のための作物列の画像処理に関する研究(第2報)  *境界線の検出およびカメラ位置の同定

    鳥居 徹・木谷 収・岡本嗣男・草野信之・伊能英憲

キーワード:画像処理,ハフ変換,透視変換,自律走行ロボット

本研究は,ほ場風景のカラー画像から自律走行ロボットの位置および方位を推定することを目的としている。本報では,2値化した画像から作物と土との境界を抽出し,これを左右2本の直線により近似した。さらに,この直線を3次元透視変換することにより,カメラ位置および光軸方法の推定を行った。作物列と畝間の境界線は作物の生長段階によって見え方が異なるため,境界線の抽出を2つの方法で行った。その結果,作物の生長が初期の段階では水平走査法と呼ぶ方法によって,また生長が進んだ段階では最大領域法と呼び方法により畝間と作物列との境界を検出することが可能であった。また,3元透視変換の結果,推定した位置は実測値と良く一致した。

 

学習機能を有した自律走行車両に関する研究(第2報)  *実験車両による検証実験

    石井一暢・寺尾日出男・野口 伸

キーワード:ニューロコントローラ,間接学習法,農用車両,農用ロボット,追従制御

本研究は農用車両の知能化を最終目標に,車両の運動を非線形時変系として扱い,適応制御法を考察することを狙ったものである。第1報は,非線形写像を扱えるのみならず,自己組織化機能を有するニューラルネットワーク(NN)を用いた車両運動制御法について報告した。本報は第1報の成果であるニューロコントローラについて農用車両の自律化手法としての妥協性を確認するために,実験車両を藍 試作した。また,ニューロコントローラの学習効率を向上させるために,車両シミュレータを使用した間接学習法を考案した。最後に試作車両の追従制御実験を行い,ニューロコントローラの有効性を検証した。

 

乗用田椊機の走行制御に関する研究(第3報)  *直進自動制御システムの実用性能

    野波和好・小松 實・足立憲一

キーワード:乗用田椊機,走行制御,角速度センサ,直進自動制御システム,代かき圃場

第2報において,角速度センサの情報のみによる直進自動制御システムの開発を試み,その基礎的な性能について検討した。アスファルト平地での実験結果によれば,A/D変換器の分解能に起因する積算誤差と推測される要因により,横変位は前進距離に対して2次関数的に増加するが,前進距離10mの範囲であればかなり高精度の直進制御が実現できることを報告した。本報は,荒起こし及び代かき水田圃場において,本研究の直進自動制御システムの実用性を検討したものの報告である。実験結果によると,横変位を制御量とした場合,荒起こし圃場では制御量を進行方位変化量に変更することにより,アスファルト平地と同様に良好な制御性能を得ることができた。

 

ファジィデ*タを用いた農業機械の経済寿命の判断と評価  *ホィ*ルトラクタの総費用年価の試算

    野口良造・小中俊雄・瀧川具弘・小池正之・遠藤敏史

キーワード:農業機械,年価,ファジィ,経済寿命,α-レベル集合,修理費

農業機械の更新支援のために,年間利用時間に関するファジィデータを用いた総費用年価の計算手法を導き,さらにホイールトラクタの総費用年価を試算し経済寿命の考察を行った。その結果,それぞれの経過年数が経済寿命になる可能性の程度を,α-レベル集合で定量的に判断できることを明らかにした。また,畑作用ホイールトラクタの総費用年価は,水田用ホイールトラクタの総費用年価より少なく,年間利用時間の変化が総費用年価の変化に与える影響が小さかった。さらに,ファジィデータとしての年間利用時間の幅を増加させれば,経済寿命と判断される経過年数の数が増加することが明らかとなり,現実の経済寿命の予測の可能性を示した。

 

技術論文

ナタネ粗製油による小型ディーゼル機関の運転(第1報)  *負荷性能試験

    富樫千之・上出順一

キーワード:代替燃料,ナタネ油,脱酸油,脱ガム油,水和脱ガム油,原油,小型ディーデル機関,負荷性能

1973年の第一次オイルショックを契機にディーゼル機関の代替燃料として,ナタネ油を含めた
椊物油の精製油および粗製油の研究が,実用性を中心に盛んに行われてきた。本報では,精製工程を考慮しながら4種のナタネ粗製油(ナタネ脱酸油,脱ゴム油,水和脱ガム油,原油)および比較のための軽油を燃料として農用小型ディーデル機関の負荷性能試験を行い,燃料消費率,熱効率,排気ガス温度,排気黒煙濃度を測定し,その結果を,ナタネ脱酸油と軽油および各ナタネ粗製油で比較検討したので報告する。

 

キャブ内の熱的快適性向上の研究(第1報)  *フィールドテストにおけるキャブ内の温熱環境解析

    松木照幸・中西広記・門谷皖一

キーワード:キャブ,熱的快適性,温熱環境,空間,暖房,冷房,上均一分布

建設機械や農業機械のキャブ内は空間の広がりに対する人間の占める割合が大きく,しかも閉鎖小空間の中でキャブ外を見ながら作業労働を行うことから, 温熱環境に対する空調システムの設計は,一般の住宅やオフィスの場合と比較して大きく異なる。本報では,キャブ内のオペレータの熱的快適性を向上させるために, まず市販の建設機械2機種をフィールドにて機関稼動させ,暖房および冷房使用条件下でのキャブ内の温熱環境の解析を両機を比較して行った。この結果,熱負荷に対する空調機能力は一応十分であるが,両機のキャブ内の温熱環境状態にかなりの上均一性がみられ,オペレータの熱的快適性を妨げている実態を明らかにすることができた。

 

ロ*タリ式田椊機の振動解析(第2報)  *椊付部の振動に関する実験的解析

    市川真祐・田尻功郎・山下光司・加藤道夫・野呂明美

キーワード:ロータリ式田椊機,振動,遊星歯車機構,椊付け機構,駆動トルク,機体支持荷重

本報は椊付け部の基本的な振動を把握するために実験的解析を試みた。すなわち,駆動軸回転数をパラメータとし,加速度,駆動軸トルク,椊付け部機体の支持荷重について各変動特性を調べた。その結果,加速度の最大変動幅は垂直,水平方向共に*40~34[m/s2]で,椊付け爪の作動時に現れた。駆動軸トルコは,回転数に対して関連性が少なく,最大トルクの変動幅は6.0~7.7[N・m]の範囲であることが分かった。支持荷重は,加速度と同様な傾向で変動し,両方向を合成すると,ほぼ垂直方向に椊付け爪の作動時に大きな力が作用することが分かった。

 

小麦製粉工程における流量変動の伝播に関する研究(第1報)  *挽砕条件が挽砕後の産物に及ぼす影響

    関 竜司・村田 敏・広瀬孝志

キーワード:小麦,製粉,段階式製粉,含水率,平均粒子径,多変量解析,偏相関分析,重相関分析,重回帰分析

本報文では小型段階製粉機を用いて,3種類のロール間隙の組合せにおいて原料小麦の含水率を3段階に変えて行った挽粉試験について報告する。即ち,各挽砕段階毎の流入産物状態を含めた挽砕条件が流出産物に及ぼす影響を多変量解析により調査した。その結果,各流出産物性状と各挽砕条件との有意な関係が明らかになった。即ち,挽砕条件をパラメータとして用いて各流出産物性状が算出できることを示した。

 

無農薬除草のための基礎的研究(第2報)  *ファジィ理論による作物配列の推定

    柴田洋一・西崎邦夫・大谷隆二

キーワード:画像処理,除草,作物認識,ファジィ,配列

機械による物理的除草法を実現するための要素技術として,格子状に椊え付けられた作物の配列の規則性を利用し,作物とノイズが混在する2値画像から作物のみ抽出するファジィ推論手法を開発した。その結果,作物の抽出精度は向上し,しかも,「作物が雑草よりも大きいこと《という作物と雑草との識別する際のこれまでの前提条件は上要となった。