第57巻第4号論文要旨

研究論文

履帯式車両の旋回性の評価について(第3報)   *信地旋回と緩旋回の比較

    白  捷・伊藤信孝・鬼頭孝治・王 秀崙

キーワード:履帯式車両,緩旋回,信地旋回,旋回性能

履帯式車両では,機器式変換機を有するがゆえに,信地旋回での旋回が最も一般的であった。しかし旋回時に圃場の土が履帯により移動したり,掘り起こされたりすることを極力抑えるために,近年緩旋回とよばれる機能を装備したコンバインが開発・市販されるに至っている。この旋回方式は,駆動側履帯と制動側履帯の速度比を約3:1として旋回するもで,信地旋回に比し旋回半径も大きく,作業能率も劣る。しかしながら,旋回時に圃場表土を深く掘り起こさないという利点がある。本報ではこの緩旋回と従来の信地旋回を仕事,動力の面から比較検討する。

 

傾斜地における装軌車の等高線走行

    渡辺啓二・北野昌則・柿野忠嗣

キーワード:装軌車,傾斜地,等高線走行,操舵入力,数学モデル

これまでに,傾斜地における装軌車の運動特性を明らかにするために,履帯幅の影響や履帯の対路面特性を考慮した数学モデルを提案し,模型実験結果と数値解析結果の比較検討を行い,理論解析の妥当性を確かめてきた。本論文では,装軌車が傾斜地において斜面谷側に流されることなく,等高線走行するための拘束条件や運動方程式を導出し,走行条件と操舵入力について数値解析を行った。その結果,車両姿勢を斜面の山側に回頭させるとともに,最適な操舵入力を与えることによって,等高線走行することが可能であることが明らかになった。

 

生籾の太陽熱直射乾燥に関する研究(第3報)   *平面層の乾燥特性と熱収支

    工藤泰暢・C.I.ニンド・戸次英二

キーワード:太陽熱直射乾燥,放射乾燥,攪拌,厚層,平面層

籾層の平坦な表面に太陽熱を直射し,2時間に1回の攪拌頻度で乾燥を進めた場合,層厚5,7.5,10cmの各乾燥速度は0.35,0.28,0.18%/hであった。層を厚くするほど総乾燥時間は長くなるが,毎時処理能力で見るとそれらの差は僅少であった。層厚5cmについて2,1,0.5時間ごとに1回の頻度でそれぞれ攪拌すると,時間間隔の短いほど乾燥は早まり,表面温度の上昇も多少制御された。日射量の熱消費構成には層厚と攪拌頻度に対して共に大きな変動がなく,水分蒸発には10~15%程度しか利用されていないことが分かった。晴天日の籾層表面における反射率は日平均値で0.38であったが,太陽高度角の最も大きくなる12時付近で最低値を示した。

 

豆類の熱物性の測定(第1報)   *非定常プロ*ブ法による測定結果からの推算

    田川彰男・村田 敏

キーワード:熱物性,非定常プローブ法,豆類,有効熱伝導率,有効温度伝導率,かさ密度,比熱

3種類の豆類(小豆,金時豆,手亡)の熱物性を,非定常棒状熱源(プローブ)法により,5段階の含水率(5,10,15,20,25%(wet basis))および5段階の温度(10,20,30,40,50゚C)に関して測定した。得られた測定データを,熱伝導方程式の近似解析解に非線形最少二乗法を適用して,測定結果と計算値を比較したところ,両者は極めて良く一致した。得られたパラメータの値を用い,パレメータを構成する2つの式からなる非線形連立方程式を解くことにより豆類の有効熱伝導率,有効温度伝導率を得ることができ,さらに,得られた値を基に豆類の比熱を推算することができた。

 

減圧製粉の昇温抑制効果

    村田 敏・スロウラ.フセイン・今田大介・K.S.P.アマラトゥンガ

キーワード:製粉,小麦,真空,減圧製粉

本報では,製粉時に発生する熱による粉体の品質低下の防止に有効な減圧製粉について研究を行った。測定では,圧力を(170~1025hPa),水分を(13.4~20.2%w.b.)と変化させることにより,各々の条件における製粉機の消費電力,小麦粉末の水分変化を求めた。その結果,常圧時(この場合1025hPa)の製粉に比べ,減圧時の製粉では,製粉後の粉末の温度上昇が少ないことが明らかになった。また,消費電力は減少し,製粉後の水分の減少量は大きくなった。なお,製粉機への小麦の供給速度は,小麦の水分に依存することが示された。

 

画像処理による水稲の葉色測定に関する研究(第2報)   *ニューラルネットワ*クを応用した水田画像の識別

    大角雅晴・中村喜彰・山崎 稔

キーワード:画像処理,水稲,葉色,ニューラルネットワーク,RGB濃度値,l*a*b*値

本研究では,水稲栽培における水稲群落の肥培管理の高度化と省力化を図るため,コンピュータを利用した画像処理を応用することを試みた。前報では水稲の葉身について葉緑素計の測定結果と画像処理結果との相関関係を調べ,画像処理が適用できる可能性を明らかにした。この測定方法を実際の水田に適用するには,撮影した画像から測定対象である水稲群落と,その他の背景とを識別する必要がある。そこで,この機能を実現するためにニューラルネットワークを応用した画像処理ソフトウェアを開発した。本報では,このソフトウェアの概要と水田の画像を識別させた結果について報告する。

 

自律走行のための作物列の画像処理に関する研究(第1報)   *色解析による2値化

    草野信之・伊能英憲・木谷 収・岡本嗣男・鳥居 徹

キーワード:画像処理,自律走行,主成分分析,HIS変換,判別分析法

本研究は,ほ場風景のカラー画像から自律走行ロボットの位置および方位を推定することを目的としている。カラー画像の色解析として主成分分析法とHSI変換の2つの方法で行い,画像を作物と土の領域に分割して2値化を行った。2値化のしきい値の決定には,判別分析法を用いた。その結果,主成分分析法の場合,曇天では撮影時間に関係なく領域の分割が可能であったが,晴天では時間によって上可能な場合があった。一方,HSI変換では曇天,晴天および撮影時間に関係なく分割が可能であり,屋外における色識別に有用であることが判明した。

 

農業用油圧マニピュレータの研究(第2報)   *手首関節の位置制御

    飯田訓久・梅田幹雄・並河 清

キーワード:農業用ロボット,油圧マニピュレータ,油圧比例弁,弁の動作遅れ,重力補償

重量物の取扱いを目的とした5自由度油圧マニピュレータを開発している。腰,肩及び肘の3つの関節は油圧サーボ弁で制御し,その位置制御系と位置決め精度について第1報で述べた。他の2つの手首関節は,油圧比例弁で制御を行った。サーボ弁と比較して,比例弁は構造が簡単で安価であるが,構造の違いや動作遅れのために制御性能では劣っている。また,重量物を取扱う場合,重量の影響により正確な位置制御は困難である。本報では,比例弁の動作遅れと重力の影響を補償し位置制御系を設計し,繰り返し位置決め動作実験と軌道追従実験を行った。この結果,比例弁制御の手首関節でも,サーボ弁とほぼ同等な精度で位置制御が可能であった。

 

技術論文

傾斜地ミカン園におけるウィンチ装着運搬車の傾斜地性能

    古川嗣彦・川崎 健・伊藤茂昭

キーワード:傾斜地ミカン園,ウィンチ,運搬車,無人運搬

傾斜地ミカン園における運搬作業の省力化を図るため,園内の上下運搬作業と園外の農道運搬作業が可能なウィンチ装着運搬車を試作した。園内では上下方向に敷設した排水路を利用して無人走行が可能である。この方式による園内の無人走行は良好で,荷物の積み替えが省略できるため作業能率が向上し,作業強度の軽減効果も期待できる。また,階段ミカン園におけるウィンチワイヤ張力と車輪分担荷重の計算法について検討した。

 

束側面の熱風流によるイ草乾燥

    河崎功三・井村英昭・相浦正廣・伊東 繁

キーワード:イ草乾燥,側面流,イ草束直径,熱風乾燥,水分拡散係数

イ草は収穫後束に結束され,泥染めされた後,熱風乾燥機に立てに詰められて乾燥される。結束されているので束と束の間に空隙が生じる。熱風が通る空隙は,この空隙とイ草束内の各イ草間に生じる空隙である。イ草は各イ草の空隙を通る熱風により,下部から上部へ乾燥すると同時に,束と束の間の空隙を通る束側面流により,側面からも乾燥する。実際の乾燥では,束側面流による乾燥はイ草間空隙を通る流れに比べ乾燥への寄与が少なく,乾燥効率が上がらない要因であると,言われている。しかし,側面流による乾燥特性についての報告はなされていない。そこで,本研究では側面流による乾燥の特性を求める実験を行った。そして,次の結論を得た。1)水分拡散係数は泥染めおよび未泥染めイ草ともにイ草束直径が大きくなるほど,また熱風温度が高くなるほど大きくなる。2)泥染めイ草の水分拡散係数はすべての実験において(熱風温度60~90゚C,イ草束直径10~40mm)未泥染めイ草のそれより大きい。