第57巻第3号論文要旨

研究論文

流体噴出によって生ずる土壌破壊の解析(第3報)   *水を噴出するパンブレーカによる土壌破壊

    高  鋭・新家 憲・常松 哲

キーワード:サブソイラ,パンブレーカ,流体噴出,有限要素法,破壊距離,牽引抵抗力

流体を噴出するサブソイラの目的は二つあり,一つはパンブレーカとして使う場合であり,他の一つはインジェクタとして使う場合である。前者は土壌の破壊度合が出来るだけ大きい方が良い。後者は土壌の破壊度合を出来るだけ小さくしたい。本報はまず水を噴出するパンブレーカによる土壌破壊を有限要素法(FEM)によって理論的に考察した。結果として,含水比8.6%の土壌は亀裂破壊を起こす。この土壌水分では,必要以上に水を流すべきではない。すなわち流量は牽引抵抗力が減少する最小限度とする方が破壊距離が大きくなる。含水比16.3%の土壌では塑性流動を起こす。このような土壌では,パンブレーカが進行しても,土層内に生ずる応力はきわめて小さく,破壊距離は小さくなる。すなわちバンブレーカとしての効率が小さい。したがって,このような土壌水分のパンブレーカ作業は避けるべきことになる。

 

振動による土壌付着の防止に関する研究(第2報)   *土壌含水比と投てき角度による土の付着性

    王 秀崙・市川真祐・伊藤信孝・鬼頭孝治

キーワード:土の付着防止,ロータリ耕うん,振動,モーダル解析

本報では,土壌投てき実験装置を用い,プレートを振動させた場合と振動させない場合において,土壌含水比とプレートに対する土の投てき角度による土の付着性への影響を調べた。プレートに振動を与えず土の投てき角度が,完全に土が離脱する最大投てき角度である離脱投てき角度上限より小さいとき,土は付着しなかったが,完全に土壌付着する最少投てき角度である付着投てき角度下限より大きいとき,土の付着が見られた。完全付着投てき角度下限と完全離脱投てき角度上限は土の含水比によって異なることが明らかになった。さらに,プレートを振動させた場合,完全離脱投てき角度上限と完全付着投てき角度下限が両方とも大きくなり,振動の効果が確認された。また,土の離脱が加振加速度比に大きく関係することがわかった。

 

ヒートポンプによる椎茸の除湿乾燥(第2報)   *乾燥過程における特性

    韓 東海・安部武美・疋田慶夫・鶴崎 孝

キーワード:椎茸,除湿乾燥,乾燥効果,成績係数,除湿係数,品質

前報と同じヒートポンプ乾燥装置を用いて,約12kgの椎茸の乾燥実験を行った。慣行の方法を参考にして,風量は161kg/hを基本としたが,風量を増加させた場合および熱源を電気ヒータにした場合について乾燥特性を比較した。除湿乾燥法の乾燥温度が40゚C一定であるのに対し,電気ヒータ法では40~55゚Cまでの逐次昇温法をとるため,同じ風量では,除湿乾燥法による乾燥速度は遅くなったが,風量を増加させると,乾燥速度,乾燥効率および装置の成績係数とも電気ヒータ法を上回ることを示した。密閉型ヒートポンプ乾燥装置では,適切な風量の選択が重要であり,風量比や装置の性能を併せて考慮すべきことを明らかにした。また,除湿乾燥の停止時期を除湿係数によって決定した。

 

食品の熱物性に関する研究(第1報)   *馬鈴薯澱粉について

    沈 百禎・大下誠一・堀部和雄・橋本 篤

キーワード:澱粉ゲル,伝熱モデル,固有熱伝導率,フラッシュ法,食品モデル

馬鈴薯澱粉と水からなるゲルを用いてガス置換法により密度を測定し,また馬鈴薯澱粉粉末を用いてDSCにより比熱を測定し,それぞれの実験式を得ると供に,ゲルを食品モデルとし,温度伝導率をフラッシュ法により測定し,有効熱伝導率を算出した。更に,有効熱伝導率を用いて4種類の伝熱モデルを仮定して澱粉の固有熱伝導率を推算した。その結果,直列モデルが最も適当であることが示された。また,このモデルで推算した馬鈴薯澱粉の固有熱伝導率はゲル中の水分割合に対する依存性があることが認められた。従って,求めた値は見かけの固有熱伝導率であると考えられる。

 

インペラ式籾すり機の動力学解析(第3報)   *籾粒の羽根面での跳ね返りと比例則の適応性

    西山喜雄・菅原節敏

キーワード:インペラ,籾すり機,比例則,跳ね返り,衝突,反発係数,跳ね返りの摩擦係数

第1報で提示した籾―羽根系の動力学方程式および比例則は,羽根面での跳ね返りを無視しているが,実際の籾すり機では無視できない。本報では前報の動力学方程式を跳ね返りを加味して拡張した。また,従来の空間固定座標系の他に,脱ぷファンとともに回転する回転座標系を導入した。この場合比例則は,跳ね返りを含んだ場合にも,また回転座標系においても成立することを示した。また空間中での落下試験によって籾と羽根との間の反発係数および跳ね返りにおける摩擦係数および運動エネルギ比を計測した。いずれも,跳ね返りが確率現象であることを示した。しかし,これらの値の平均値は跳ね返り運動の平均値に対応し,平均値において比例則が成立していることを導いた。

 

自律移動ロボットに関する研究(第2報)   *ファジィモデルによる走行制御手法

    戸田勝義・木谷 収・岡本嗣男・鳥居 徹

キーワード:自律移動,走行制御,ファジィ制御,ティーチング,システム同定

本研究は農業用自律移動車両のための走行制御法の開発を目的として,直線軌道を用いた車両誘導問題の設定,およびこの問題に対するファジィモデルを用いた走行制御手法の応用を試みた。畝間走行を想定し,車両に対して追従するべき目標直線軌道を与え,この軌道に車両の位置および姿勢が追従するように車両を誘導するといった問題を設定した。この問題を実現するために,ファジィモデルを用いた制御系の設計,試作実験車両を用いたティーチングによるファジィモデルの同定および走行制御実験を行った。その結果,実験車両による実走行において本走行制御手法の有効性が確認できた。

 

2段式風車の試作と基礎研究

    世良田和寛・宮本眞吾・青山友雄

キーワード:高速型風車,2段式風車,ピッチ角,一方クッラチ,ソリディティ

今日使用されている最も効率の良い高速型風車は起動性が悪く,何らかの起動方法を必要としている。起動を目的とする多翼部と高回転が得られる2枚翼部を同一回点軸上にとりつけた2段式の起動性に優れた高速型風車を試作した。多翼部および2枚翼の単段試験で得た数値を基にして,多翼部のピッチ角は最も始動,起動性の優れているピッチ角17゚および高出力の7゚と2枚翼部の自己起動が行われなかったピッチ角3゚,5゚および7゚の組合せの2段式風車とした。多翼部と2枚翼部とピッチ角の組合せによって異なるが100~500rpmの広範囲で高出力が得られた。

 

はつ土板プラウ曲面部に発生する土壌反力の予測 [英文]

    S.ジョンワットポール・小池正之・小中俊雄・余田 章・瀧川具弘

キーワード:はつ土板プラウ,反力,れき土,力変換器,応力分布,数学モデル

はつ土板プラウ曲面部に発生する応力予測のための数学モデルを用いて,接線方向と垂直方向の分布を求め,実験値との比較検討を行った。分力成分の実測は,試作した小型三方向分力変換器で求めた。この変換器の較正線図から,分力成分間の干渉はほとんど認められなかった。低速度域での曲面部における応力分布では,耕起速度の変化による変動は少ないことが分かった。高速度域の応力分布は理論解についてのみ検討し,その変動特性を調べた。

 

小型カシューナッツ脱果機の開発に関する研究(第2報) [英文]   *手動式および半自動式脱果機の性能試験と評価

    T.ティババルンホン・坂井直樹・木谷 収

キーワード:カシューナッツ,脱果機,前処置,ふるい分け,性能試験,経済分布

カシューナッツの脱果前処理とふるい分けに関する実験から,30分の煮沸と24時間の自然乾燥の組み合わせが最適条件として得られ,さらにふるい分けにより厚さと幅をそろえることで最終的に82.7%の完全果率を達成することができた。6種類の手動式脱果機の性能試験を行ったところ,AE(KKU)2型が,作業能率0.871kg/h,脱果効率99.0%,完全果率79.3%で最も良かった。一方半自動式のAE(KKU)SAIの試験結果からは,搬送速度40個/分,すなわち作業能率3.14kg/hのとき脱果率75.0%で,完全果率が80.0%という実用上の最適条件が得られた。6種類の手動式脱果機の経済分布によると,AE(KKU)2型が,100kg/年の作業能率のときの最低の搊益分岐点と償還機関で,最適の純益約1,000バーツ/年を示した。一方半自動式の方は,作業能率5t/年のときの約17,000バーツ/年の純益を示し,この機種は大量処理のときのみ魅力のあることがわかった。

 

技術論文

6輪駆動運搬車の傾斜地走行性能

    古川嗣彦・川崎 健・伊藤茂昭

キーワード:傾斜地,6輪駆動運搬車,走行性能

6輪駆動運搬車の傾斜地におけるけん引性能,登降坂性能,旋回性能,傾斜駐車性能,制動性能,転倒安定性等の走行性能を調査し,傾斜地適応性を検討した。本機は,登降坂能力は高いが,上整地において後方転倒しやすいこと,降坂制動性能がやや劣ること,傾斜面において旋回能力が低いという機能上の上均衡がみられる。

 

ウリ科野菜用接ぎ木装置の開発(第2報)   *機械接ぎ木の可能性の検討

    鈴木正肚・小林 研・猪之奥康治・三浦恭志郎

キーワード:接ぎ木,苗,苗生産,野菜,果菜,ウリ科,キュウリ,ロボット

第1報で開発した要素技術からなる機能確認機を製作し,キュウリ接ぎ木作業を行って機械による接ぎ木の可能性を検討した。接ぎ木法の片葉切断接ぎ,苗を子葉展開基部で吊り下げて供給する方法,ウレタンゴム付フィンガによる苗把持法,カミソリによる切断法そしてクリップによる接着法は有効に機能した。機能確認機は7秒で1株の接ぎ木作業を行い,作業精度は接着率83%,活着率65%,成苗率60%であった。これらの結果から接着や切断の精度向上は必要であるが,機械接ぎ木の成否を決める接ぎ木法,切断位置決めそして把持法は目的どおり機能したことから機会接ぎ木は可能であると判断した。

 

自動苗生産システムの開発   *ハンドリング装置及びシステムの評価

    坂上 修

キーワード:苗生産,ハンドリング,運搬,トレイ配置,積み込み,評価,システム化

ロボット及び作業装置による自動苗生産システムを確立するため,すでにロボット本体と横移動,土詰め・播種,良均質苗育成,肥培管理技術について報告した。本研究では,新たにハンドリング作業の自動化を目的として,トレイ配置,移動,積み込みにかかわる作業装置の開発及びロボットシステムの評価について考察した。ハンドリング装置はトレイを連続的に苗床に並べたり,移動させたり,移椊または出荷のためのパレットに積み込み,集める方式である。上下及び水平動を行う2組のリニヤヘッドを使ってトレイのハンドリングを行う。またシステムの評価では,ロボット開発経費,処理能力,利用方法及び今後の標題等について検討を加えた。

 

農作業環境における移動体の高速認識アルゴリズム

    入交智彦・久保田守・寺尾日出男

キーワード:視覚センサ,画像処理,色度,確率密度関数,関テーブル

視覚センサによる位置計測装置を農作業環境において使用する場合,画像中の移動体を精度良く分離・抽出することが重要である。目標画素を色彩の相違によって分離することを試み,色彩を表現するパラメータとしてR,G,B各輝度の比である色度を採用した。1色度をしきい値とする目標画素の抽出は50m離れたマーカの認識が可能であったが,いくつかの画像では誤認が発生した。2色度を変量とする確立密度関数による認識処理は良好な結果が得られ,さらに計算を関数テーブルによって高速化するアルゴリズムを考案し,認識処理時間0.53秒と実用的な認識処理プログラムを開発した。