第57巻第2号論文要旨

研究論文

白漿土改良用プラウの開発(第1報)   *模型プラウによる土槽内実験

    新家 憲・工藤正義・前川 司・常松 哲

キーワード:白漿土,重粘土,土層改良,プラウ,混合,けん引抵抗力

白漿土を改良する趙の圃場実験および新家の土壌調査に基づいて,代1層(Ap層)をそのままにして,第2層(Aw層)と第3層(B層)を1:1に混合することを試みた。本報では,まず基礎実験として,1/2スケールの模型プラウを数種類制作して,土壌槽内で実験を行った。結果として,立ち上げ型および落下型プラウは,実用性があると考える。しかし,折り畳み型は土壌がプラウ上で移動せず,このままでは実用性がなかった。

 

画像処理によるスイカ果実の識別

    徳田 勝・並河 清

キーワード:スイカ,色による切り出し,ガウス関数,画像処理,動画像処理

本研究は,ロボットによるスイカの収穫作業を実現するために必要となるスイカの果実を検出する視覚システムの開発を目的としている。本報では,カラー画像および,特定波長を利用した濃淡画像からの果実の認識をおこない,また,葉に隠れた果実領域の抽出方法として,送風による葉の振動を利用した動画像処理の方法による果実の上可視部の抽出方法について検討した。その結果,果実の黒縞と緑縞の反射率の近い波長帯を利用した濃淡画像を用いることにより果実を識別できることが判明した。また,葉を揺らし連続画像に動画像処理を適用することによって,通常では検出されない,果実の上可視部領域を抽出することができた。

 

農業機械作業者耳元騒音の能動制御(第1報)   *適応フィルタの検討

    彭 彦昆・笹尾 彰・渋沢 栄・吉田智一

キーワード:機械騒音,能動制御,適応フィルタ,フィードバック制御,LMS・RLS・FAEST アルゴリズム

農業機械作業者に対する耳元近傍の騒音レベル低減をめざし,音波干渉効果を利用したフィードバック制御タイプのアクティブノイズコントロール(Active Noise Control:ANC)システムの実用的検討を試みる。本報では,RLS(Recursive Least Square)アルゴリズム及びその改良形のFAEST(Fast A-Posteriori Error Sequential Technique)アルゴリズムをANCシステムに組み入れることにより,従来のLMS(Least Mean Square)アルゴリズム利用の場合より,収束速度と消音レベル及び動作速度の点で格段の効果があることを示した。その結果,高性能だが演算時間が遅いという難点をもつRLSアルゴリズムを実用化レベルまで改良できる見通しを得た。

 

測距輪による走行軌跡の計測

    本橋圀司・嶋田 浩・田中勝千・高野 剛

キーワード:測距論,走行軌跡,誤差修正アルゴリズム

測距輪を使いトラクタの走行軌跡を計測した。装置は閉合誤差2%程度の精度を持っていた。これに更なる精度向上を目的とし,計測誤差を自動修正するプログラムを組み込んだ。その結果,平坦地はもちろんのこと,傾斜ほ場の走行軌跡もコンピュータ上にほぼ正確に再現することができた。

 

現代制御理論による農用車両の操向制御(第3報)   *車体屈折式車両の操向制御系におけるオブザ*バの設計とその評価

    桶  敏・村瀬治比古・中村喜彰・穂波信雄

キーワード:同一次元オブザーバ,LQ最適レギュレータ,操向制御,車体屈折式車両,田椊機

本報では本研究の最終段階として,車体の屈折角と横方向の変位から他の状態変数を推定するオブザーバの設計および設計したオブザーバの特性について考察した。車体屈折式車両の操舵系に関して,リカッチ方程式の重みは出力誤差に影響することから適切な重みを明らかにした。また,実機についての実験から同一次元オブザーバは状態量を正しく推定していることが明らかになった。本報においては,状態量の観測が困難な場合が多い実際場面での線形多変数制御理論の適用の問題点を考慮して,オブザーバの導入による問題解決策を示したもので,農用車両の操向制御への現状制御理論の適用の可能性について,田椊機を例に実用性をふまえた基礎研究を行ったものである。

 

椊物伸長生長制御における昼夜間温度差と日長の相互作用

    清水 浩・山崎 稔

キーワード:伸長生長,昼夜間温度差,日長,画像処理,非接触,三次元計測

本研究では,画像処理技術を応用した三次元非接触計測システムを用いて,バーベナ(Verbenabonariensis L.)の伸長生長量に対する昼夜間温度差(DIF)と日長の相互作用を計測,解析したものである。昼間温度が夜間温度より高い正のDLFでは一日当たりの節間生長が促進され,またその逆である昼間温度が夜間温度より低い負のDILでは制御された。DIFは明期における生長に顕著な効果を示すが,暗期の生長にはほとんど効果のないことが判明した。さらに単位時間当たりの生長量である生長速度は,日長には影響されずDLFの値のみによって決定されることが明らかになった。

 

麦飯石の理化学的特性について

    石川勝美・岡田芳一・中村 博

キーワード:麦飯石,石英斑岩,理化学的特性,活性化,生態系農業

生態系農業の構築等の視点から,造岩鉱物の特性を生かした微小エネルギ利用の新しい技術開発は重要である。そこで石英斑岩に属する麦飯石による水,土壌の活性化を期し,麦飯石の農業面への効果的導入を図ることを目的として,その理化学的特性について検討した。

 

小型カシュ*ナッツ脱果機の開発に関する研究(第1報) [英文]   *手動および半自動脱果機に適した脱果法の検討

    タバチャイ・ティババルホン・岡本嗣男・木谷 収

キーワード:カシューナッツ,脱果機,手動式,半自動式,脱果性能

カシューナッツ脱果機開発のため,脱果に関連するナッツの物性値ならびに力学特性を測定した。その結果,生のナッツの殻に平板圧縮でクラックを発生させるためには,50~70kgfの力を加える必要があることがわかった。また,煮沸前処理をしたナッツに対して,一組の刃で幅方向に挟んで力を加えることにより,クラックを発生するために必要な力をおよそ20kgfまで減らせることが判明した。次に,生産農家や加工業者がどのような脱果機を求めているのかを調査した結果,手動式並びに動力型の両方の形式の必要性が示された。一組の刃でクラックを発生させた後一方の刃をひねってからこじ開ける新たな脱果機構を利用した2種類の手動式カシューナッツ脱果機と同じ原理を用いた半自動脱果機を設計試作した。

 

技術論文

ウリ科野菜用接ぎ木装置の開発(第1報)   *要素技術の検討

    鈴木正肚・小林 研・猪之奥康治・三浦恭志郎・平田孝三

キーワード:農業ロボット,ウリ科野菜,キュウリ,接ぎ木苗,活着率

ウリ科野菜類の接ぎ木苗を省力的に生産する装置を開発することを目的に研究を行った。装置設計に先立ち,機械化に適する接ぎ木法,苗形状と切断位置決め,苗の把持,切断そして接着資材などの要素技術について検討した。装置に採用する接ぎ木法には,活着率,作業工程数,機械化の難易度の面から各種方法を検討した結果,片葉切断接ぎ法が適しているとの結論を得た。また,切断等の位置決め基準として子葉展開基部が利用できること,胚軸に加わる圧縮歪を胚軸径の30%以内に抑えようと把持して,穂木10゚,台木30゚の角度で苗を切断し,接着資材には手作業と同じクリップを用いることで高活着率が得られることを確認した。

 

苗生産ロボットシステムの開発(第4報)   *肥培管理装置

    坂上 修

キーワード:苗生産,栽培,管理,散布,二酸化炭素,灌水,自動化

ロボット及び作業装置による自動苗生産システムを確立するために,すでに本体と横移動装置,播種作業,良均質苗育成技術について報告した。本報では,水・液肥・薬液等の溶液散布,施設内温度調節,CO2施用など肥培管理作業装置の自動化について考察する。溶液散布はタイマまたは土壌水分センサの信号により動噴を作動し,ロボットを走行移動させながらその全面に装着したブームノズルより溶液を噴出させて行う。施設内温度調節は3個の温度設定器の信号でモータを駆動し,ビニールハウスの開閉・換気扇の回転により行う方式である。CO2施用装置はタイマの信号によりガスボンベの電磁弁を開放し,ロボットを走行させながら装着したノズルからCO2を放出する方式である。

 

農作業事故防止エキスパ*トシステムに関する研究

    蛭薙利親・木谷 収・岡本嗣男・鳥居 徹

キーワード:農作業安全,エキスパートシステム,知識ベース

現代の農業は機械化が進展する一方,農作業時において農業機械利用による様々な事故が多発している。これらの農作業事故に対処するために,機械利用を含めた農作業安全対策は,近年特に必要性を増している。本研究では,農業作安全の向上を目的として農作業事故分析を行い,この分析結果をシステム内の知識ベースとして活用して農作業事故防止のためのエキスパートシステムを構築した。本システムは,エキスパートシステム構築ツールを使用し後ろ向き推論によって構築した。農業機械の専門技術者による本システム検討の結果,安全教育用システムとして有効であるとの評価を受けた。