第57巻第1号論文要旨

研究論文

履帯式車両の旋回性の評価について(第2報)   *ピボット旋回の効果について

    伊藤信孝・鬼頭孝治・白  捷

キーワード:履帯車両,旋回性能,信地旋回,ピボット旋回

先に履帯接地長を制御することによって,履帯載荷重を履帯中央部に集中させ,載荷重を支持できるに十分な支持力を有する範囲で, 設置長さを少なくすることによって旋回抵抗モーメントが大幅に削減できる実用的な機構を報告した。しかしながら,そうした装置の装備は機械のコスト・アップや, 履帯設置長制御のための余分なエネルギ消費につながる。本報では従来の信地旋回と, 上述の接地長可変制御を適用したピボット旋回を, 旋回時になす仕事の観点から比較・検討し, 旋回角がある角度以上ではピボット旋回の効果が大きく,それ以下では信地旋回が有利であることを明らかにした。

 

水田土壌の動的粘弾性特性に関する研究

    山本郁夫・小池正之・佐藤純一・村上則幸

キーワード:動的粘弾性特性,複素弾性率,搊失係数,Voigt モデル,Maxwell モデル,粘弾性定数

水田土壌の動的粘弾性特性を明らかにするため,供試土に微小振動を印加し,複素弾性率および搊失係数に乾燥密度,振動数,含水比が及ぼす影響について検討した。乾燥密度と増加と含水比の低下につれて複素弾性率が増加する傾向が確認できた。搊失係数は乾燥密度の増加によって上昇傾向を示すものの,含水比による影響は指摘できなかった。振動数の増加につれて複素弾性数率と搊失係数はともに増加した。Voigt モデルとMaxwell モデルにより解析を行い,粘弾性定数が振動数によって変化する様子を定量的に調べた。

 

玄米乾燥の実用化に関する研究(第2報)   *循環型乾燥機による玄米の乾燥特性

    劉 建偉・後藤清和・三輪精博・富田和伸

キーワード:玄米乾燥,循環乾燥,熱エネルギ,胴われ率,破米率,肌ずれ,食味試験

全報で明らかにした玄米乾燥の基礎的特性をもとに,乾燥条件を定めて実用規模の籾用循環型乾燥機を用いて実験を行った。玄米乾燥で消費された電力は,大気温度にもよるが少なくとも籾乾燥の場合の1/2以下となった。胴われの発生率は初期乾燥速度に支配されるが,基礎実験の時と比較して多かった。これは循環中における衝撃や摩擦が原因であると考えられる。循環中に生ずる肌ずれ発生量は玄米の初期含水率と直線的な関係にあった。乾燥終了後の白米の食味官能検査で玄米乾燥と籾乾燥の試料間に差がないものと判断された。したがって,今後乾燥速度をもう少し小さくして品質の向上を図ることができれば,循環型乾燥機による玄米乾燥の実用化は可能になると考えられる。よって,省エネルギ,低コスト化の達成に寄与することが期待できる。

 

食品の凍結理論

    村田 敏・田中史彦・羽原一宏

キーワード:凍結,非線形熱伝導方程式,重みつき残差法,食品溶液,凍結率

食品や農産物の凍結は含まれる水溶液の凍結であることに着目し, 温度と凍結率の関係を含む熱伝導方程式を導いた。この方程式は見かけの温度伝導率が温度に依存する強い非線形の熱伝導方程式であるが,これを重みつき残差法(選点法)によって数値解析し,実測値と比較した。その結果,両者はよく一致し,方程式の妥当性が示された。

 

農産物の品質判定に関する基礎的研究   *分光反射特性によるナス光沢の定量化

    松岡孝尚・宮内樹代史・孫 徳明

キーワード:品質評価,ナス,光沢,分光比反射率,定量比

農産物の色,つや(光沢)は,品質評価の指標のひとつとして大変重要であるが,その測定例は少ない。そこで,供試材料にその品質評価基準として光沢が重要視されるナスを用い,スペクトロラジオメータシステムにより表面の分光反射特性を測定することで,光沢の定量化を試みた。その結果,光沢の度合いを,可視領域分光比反射率として定量化することができた。この値を指標として,種々の貯蔵条件による経時変化を調べたところ,貯蔵開始後48時間において,貯蔵条件に関わらず光沢は著しく劣化した。また,収穫時の光沢が良いものほど,劣化の度合いが激しいことが明らかになった。

 

水耕栽培システムの改善に関する研究   *空気吸込みノズル構成要素のDO値への影響

    房  薇・岩尾俊男・藤浦建史・竹山光一・林 圭 ・岩崎正美

キーワード:水耕システム,吸気ノズル,空気吸込穴径,DO値

この研究の目的は,水耕システムの吸気ノズルについて,構造が簡単で,砂,根などの浮遊物による目詰まりがなく,作物の生育段階に合った溶存酸素量(DO値)が容易に供給できる実用的ノズルを開発することにある。本研究は,ノズルの吸気特性に関係する影響要因(水流量,排水口径,空気吸込穴径,噴口穴数)とDO値との関係を検討した。その結果,高いDO値を得るためには,空気吸込量の増大と供に,ノズル内でバブリング(泡立つ)現象を起こさせることが必要であること及びDO値は空気吸込穴径により容易に調節し得ることが明らかとなった。

 

キュウリ収穫ロボットの研究(第3報)   *モノクロTVカメラと走査型距離センサを組み合わせた果実検出

    有馬誠一・藤浦建史・近藤 直・芝野保徳・山下 淳

キーワード:農業ロボット,キュウリ,果実収穫,視覚センサ,TVカメラ,画像処理,光電センサ,三次元画像

本報では,前報までに報告した収穫ロボットの視覚部として,キュウリ果実の識別,認識,および位置検出を行うセンサの開発を行った。まず,果実の識別および認識を波長850nmに透過率を持つ干渉フィルタを装着したモノクロTVカメラにより行い,位置検出を立体形状の計測可能な走査型距離センサにより行う構成を考案し,各々の視覚センサの基礎的実験を行った。その結果,前者は,果実全体が露出している場合には,ほぼ良好な識別および認識結果を得た。また,後者は果実の位置検出のみならず,ロボットが収穫する際,障害物となる可能性のある茎葉等の位置まで検出可能であり,有効な方法であると考えられた。

 

技術論文

苗生産ロボットシステムの開発(第3報)   *高品質苗生産関連装置

    坂上 修

キーワード:接触刺激,機械的ストレス,検知,除去,セル,苗,剪葉

敷設内における自動苗生産システムの開発のため,ロボット及び作業装置の試作を行っている。高品質苗を生産するためには,苗肥培管理過程で種々の処理を行う必要があり,本報では苗接触刺激,欠株・上良苗検知・除去及び苗トッピング作業装置について検討した。欠株や過小苗の検知・除去では,光ファイバセンサと吸引装置が順次これらの箇所を検知し,除去する。苗の接触刺激では,椊物体を撫でることでエチレンを生起苗をコンパクトで堅くかつ均一に仕上げる。移椊苗の剪葉では,ロボット前部に装着された電動往復モアが圃場移椊前に生育を揃えるためにセルリ苗の上部を切り取る。