第56巻第6号論文要旨

研究論文

車輪下の土壌変形の有限要素法による解析(第3報)  *土の粘弾性特性を考慮した解析

    広間達夫・太田義信・片岡 崇

キーワード:土壌変形,有限要素法,設置応力,トラフィカビリティ,粘弾性,車輪と土の摩擦

圃場で出会うような比較的含水比が高い土壌の上を走行する車両の走行性を調べるために,土の粘弾性モデルを導入し,車輪と土の摩擦力を考慮した剛性車輪―土系の有限要素法による解析を行った。その結果,接地法線応力の最大値は車輪最下点の前者に生じ,法線応力の最大値は進行低下率の増加に伴って小さくなること,また接地接線応力の最大値は,進行低下率の増加に伴い接地部の後方部から前方に移動しその値も大きくなることなどが,実験結果と同様な結果が得られることを確認した。本解析方法により,接地応力分布やけん引力などの車輪の走行特性を把握することが可能になった。

 

履帯式車両の旋回性の評価について(第1報)  *超信地旋回と信地旋回

    伊藤信孝・鬼頭孝治・白 捷

キーワード:履帯式車輪,旋回性,信地旋回,超信地旋回

履帯式車両の旋回性の評価は,一般に旋回に要する所要エネルギ,旋回半径,旋回時間等で評価される。自脱コンバインのような農業仕様のものでは上記の評価項目に加えて,いかに旋回時に圃場表土を乱さないかが大切である。本報では信地旋回,超信地旋回に圃場表土が2次元的に度の程度乱されるかを,比較・検討,考察した。その結果,従来の信地旋回方式は超信地旋回に比較して旋回時に圃場が乱される面積が理論的に2倊,実験的に約1.7倊であることを明らにした。

 

乾燥ハウス利用通風乾燥に関する研究

    澤田恭彦・堀部和雄

キーワード:ハウス通風乾燥,籾,乾燥予測,含水率,気象,作業体系

ハウス乾燥の実用化を図るため,乾燥が停滞する夜間や曇雨天日の対象として,乾燥条件に応じて通風,加熱・通風,通風停止を選択するハウス通風乾燥のモデルを試みた。まず乾燥予測モデルを作り,その妥当性を乾燥実験で確かめた。乾燥の可否と操作選択の判断は,空気平衡含水率と籾の現在含水率との比較により行った。これにより,実際の気象条件を与えてのシミュレーションが可能となったので,このモデルを利用し,ハウス通風乾燥を実作業体系に適用する場合の問題について検討した。

 

ヒートポンプによる椎茸の除湿乾燥(第1報)  *密閉型ヒートポンプ乾燥装置の性能

    韓 東海・安部武美・疋田慶夫・鶴崎 孝

キーワード:椎茸,ヒートポンプ,除湿乾燥システム,成績係数,密閉型

本報はヒートポンプを利用した乾燥機を試作し,椎茸を乾燥することを想定して,実験を行った報告である。収穫時の椎茸は水分が90%w.b.前後であり,品質面から,木材乾燥の場合と同様に,初期の乾燥温度が40゚C位に制限され,乾燥が進むにつれて昇温させる方法が採られている。椎茸がおもに冬期前後に収穫乾燥されることから,本研究では,省エネルギを図る目的で,ヒートポンプによって除湿した乾燥空気を循環させる密閉型乾燥機について,排気の温度,湿度,風量が装置の成績係数および性能に及ぼす影響を調べた。乾燥初期の除去水分が多い場合には,ヒートポンプ装置の成績係数は高くなるが,仕上がり時の高温空気では低くなる。

 

食品に適した平衡含水率式(第2報)  *高水分食品とDA式

    亀岡孝治・奥田知晴・堀部和雄

キーワード:グルコース,マルトース,ショ糖,デンプン,水分活性,平衡含水率,Dubinin-Astakhov

飽和塩を用いて10゚Cでの結晶状態のグルコース,マルトース,ショ糖,およびトウモロコシデンプンへの水分収着実験を行った。結晶糖の実験では飽和点以下ではほとんど収着は生じず,飽和点より大きな水分活性では,収着量は糖水溶液モデルから計算される曲線上に乗ることが解った。また,アモルファスショ糖のデータに対してはDubinin-Astakhov(DA)式での回帰はよく適合し,デンプンに対しては水分活性が0から1の全範囲でよく適合した。この結果,DA式は非多孔性食品に対しても適用可能な事が示された。

 

農産物・食品のヤング率とポアソン比の温度依存性  *両端固定条件による測定

    村田 敏・小出章二

キーワード:ヤング率,ボアソン比,両端固定条件,温度依存症,低温障害,農産物,食品

従来の弾性率の測定では,接触面である両端の影響を無視するか,摩擦力を減じて,引張・圧縮試験結果を両端自由の境界条件で解析する方法が行われてきた。しかし,大部分の農産物では試料が小さくて両端の影響を無視することが出来ず,また,接触面の摩擦力が大きくて,両端自由の境界条件で解析するには無理があった。この研究では,逆に試料の両端を接着固定し,数学的には複雑であるが,両端固定円柱に関するFilon(1902)の式を導入して,圧縮試験によって正確に材料定数(ラメ定数)を測定する方法を開発し,6種類の農産物・食品についてポアソン比とヤング率を求めたのでその結果について報告する。また,これらの測定値については,従来求められていなかった温度依存性(5~25゚C)を明らかにした。 

 

乾燥過程における食品加工残渣内の水分移動

    東城清秀・渡辺兼五・藍 房和・A.C.チャオ

キーワード:農業廃棄汚泥,椊物性残渣,食品加工残渣,乾燥,水分移動,液状移動水,トレーサ,タンクモデル

豆腐粕などの食品加工残渣の乾燥機構を明らかにするために,残渣内の液状移動水に注目して水分の移動形態について検討した。液状移動水のトレーサとしてKCl希薄水溶液を供試材料に加えて成形した試料を乾燥して,試料各層のKCl量の変化を測定した。実験の結果,豆腐粕などの場合は乾燥初期には表層のKCI量が増加するが乾燥時間の経過とともに表層より深層のKCl量が増加し,乾燥の進行とともに液状移動水の流れの向きが局部的に変化することが明らかになった。タンクモデルによって物資収支を解析すると,表層から深層に向かって移動する液状移動水が4%/h程度依存することがわかった。

 

超音波センサによるブームスプレーヤの噴霧高さ制御(第2報)  *噴霧高さ自動制御装置の開発

    佐藤禎稔・宮本啓二・松田清明

キーワード:防除機,ブームスプレーヤ,噴霧高さ制御,ブーム高さ,超音波センサ

散布幅15mのトラクタ直装式ブームスプレーヤを供試し,超音波センサによる噴霧高さ自動制御装置を開発した。制御装置は8ビットのマイクロプロセッサと超音波センサ計測,油圧電磁弁操作,スイッチ入力の各インターフェースで構成され,5本のブームを独立に制御することができる。噴霧高さ制御には,予め制御するブーム高さの変化量と油圧シリンダの伸縮量の関係を求めておき,設定高さとセンサが検出した噴霧高さの偏差に応じて電磁弁の方向と作業時間を計算して操作量を決める方法を採用した。基礎実験の結果,ブームは地面の高さ変化に対して良好に制御され,本制御装置の基本動作が確認された。

 

キュウリ収穫ロボットの研究(第2報)  *キュウリの物理的特性に基づくハンド部の試作と収穫基礎実験

    有馬誠一・近藤 直・芝野保徳・藤浦建史・山下 淳・中村 博

キーワード:農業用ロボット,キュウリ,果実収穫,物理的特性,収穫用ハンド,キュウリ生産システム

本報は,全報で示した傾斜棚栽培のキュウリを収穫するハンド部の開発を目的として,2台の試作機の製作および実験を行った。まず,ハンド部の基本機構を決定するために,キュウリ各部位の物理・力学特性を測定した。その結果を基に,果実を把握し,果柄を検出および切断する1号機を試作した。このハンド部による収穫基礎実験では,果柄が短い場合,および葉柄,主茎等が近くにある場合は,検出・切断のスペースが確保できないため,良好に収穫できないことがあった。そこで,検出・切断部に改良を加えた2号機を試作し,実験を行った結果,ほぼ良好に収穫できた。

 

農業用プロペラファンの軽量化研究(第3報)  *軽量化したファンの振動・騒音特性

    銭 新耀・市川真祐・伊藤信孝

キーワード:防霜ファン,羽根,振動特性,モード解析,騒音,音場解析

本報では市販の防霜ファンとそれを軽量化した試作ファンを供試し,その振動・騒音特性を比較し,軽量化の効果を検証した。モード解析法を用いて供試ファンの固有振動数,減衰比等の振動特性と1次モード,2次モード,および供試ファンの稼動時における羽根全体の振動状態を解明し,軽量化後のファンの振動特性が軽量化前のファンに比べ性能上ほとんど差のないことを明らかにした。供試ファンの騒音特性を調べた結果,軽量化前後の両ファンの騒音水準がほぼ同じであること,また,発生する騒音に回転騒音の成分の騒音レベルが高いことが判明した。さらに音響インテンシティ法によって両ファンの音場解析を行い,騒音低減の方法を探った。

 

技術論文

苗生産ロボットシステムの開発(第2報)  *播種装置及び土詰め・履土装置

    坂上 修

キーワード:ロボット,播種,コート種子,土詰め,履土,苗,自動化

ロボットによる播種関連作業の自動化装置の開発について検討した。播種作業では,セルプレート往復式種子繰り出し機構を利用した播種ユニットにより,トレイへの播種が1度で完結するロボット索引式播種装置を開発し,手まきの4倊の能率が得られ,播種ミスも極めて少なかった。土詰め・履土作業では,横溝ロールによる床土繰り出しタイプの自走式の装置を開発し,スタートボタンを押すことによりトレイへの土詰め・履土が可能になった。

 

無農薬除草のための基礎的研究(第1報)  *画像処理手法による作物と雑草の識別

    柴田洋一・西崎邦夫・大谷隆二

キーワード:画像処理,識別,除草,判別分析法,計量特徴

機械による物理的除草を実現するために要素技術として,画像処理による作物の抽出手法を開発した。作物と雑草との識別は,大きさを示す三つの計量特徴値(射影面積,最大水平弦長,最大垂直弦長)を用いることにより可能であった。野菜と雑草の成長速度を比較した結果,この手法の適用可能期間は,レタスで定椊から30日程度まで,キャベツで35日程度まで,ハクサイは全栽培期間を通して可能と推定された。照度に対しては,供試カメラに1/64の減光フィルタを装着することにより,4,000から60,000lxの範囲内では,射影面積で4%以内の誤差,両最大弦長で3%以内の誤差で抽出できた。