第56巻第4号論文要旨

研究論文

穀類の水分移動特性に関する研究(第4報)  *籾,玄米および籾殻の乾燥特性の比較

    豊田浄彦

キーワード:穀物乾燥,籾,玄米,籾殻,粒内水分移動,律速段階,2槽モデル

本研究では,薄層乾燥実験より求めた玄米および籾殻の乾燥特性と籾の乾燥特性とを比較し,籾粒内水分移動の律速過程について考察した。籾とその構成要素である玄米および籾殻の乾燥特性を2槽モデルおよび指数モデルの乾燥定数として評価した。その結果,従来,玄米の乾燥が主体とされる籾の乾燥期間Ⅱでは,籾殻の被履により生じると思われる玄米―籾殻間の水分移動抵抗の影響が示唆された。更に,水分移動抵抗比∮を用いて,玄米―籾殻間の水分移動の影響の大きさとその温度依存性について考察した。

 

生籾の除湿乾燥に関する研究  *循環式乾燥機での乾燥特性と熱効果

    張 林紅・戸次英二

キーワード:除湿乾燥,緩慢乾燥,近周囲温乾燥,循環式乾燥機

普及している循環式乾燥機に新たに複数の貯留槽を組み合せた貯留乾燥システムを想定し,市販の循環式乾燥機のバーナ加熱部を0.3kW容量の除湿機に換えて,生籾の除湿乾燥を試みた。その結果,張込量1,421kgと8.7%の乾燥スパンに対し,毎時0.07%の乾燥率で5.4日を要した。しかし,循環回数が多くなったため,割れ籾や脱ぷ粒の増加傾向が見られた。熱効率は電熱加熱の0.7→0.4より高い0.9→0.7で経過した。ここに,除湿機を装備した循環式乾燥機が籾の緩慢乾燥の過程でその品質を保持しつつ熱を有効に利用して,乾燥仕上がりに至ることが確認された。

 

玄米乾燥の実用化に関する研究(第1報)  *玄米乾燥の基礎的研究

    後藤清和・三輪精博・劉 建偉・富田和伸

キーワード:玄米乾燥,胴われ, 砕米,テンパリング,初期含水率,乾燥速度

米を取り巻く環境は厳しく,生産の低コスト化が要請されている。そこで,ポストハーベストの段階で生産コスト低減のために有効である玄米乾燥について検討を行い,実用化のための実験を行った。玄米乾燥は熱エネルギの効率的使用および乾燥,貯蔵設備の容積効率の向上の両面から合理的である。本報では,通風空気の温・湿度,玄米の初期含水率等の適切な乾燥条件を検討した。その結果,標準の空気条件として温度が30゚C,相対湿度が50%が適当であり,また,テンパリングは,休止時間と乾燥時間の比を3以上にする必要性が明らかになった。次報でその結果をもとに実際規模で行った実用化のための実験結果を報告する。

 

立て詰め束イ草の熱風乾燥実験と数値シミュレーション

    河崎功三・井村英昭・相浦正廣・石橋貞人・伊東 繁

キーワード:数値シミュレーション,束イ草,熱風乾燥,厚層,泥染め

一般に,畳表の材料であるイ草は束ねられ,泥染めされた後,熱風乾燥機内に立てた状態で詰められ,乾燥されている。しかし,束乾燥における泥染めの効果や,乾燥過程の研究はまだ上十分と思われる。特に,乾燥の理論的検討はまだされていない。著者らは,1本イ草の乾燥特性を基に,立て詰めイ草乾燥モデルをつくり,束乾燥の数値シミュレーションを行うと共に乾燥実験を行った。そして,実験結果とシミュレーション結果を比較検討し,以下の結論を得た。1)シミュレーション結果と実験結果は良く一致しており,本乾燥モデルは束イ草乾燥過程を表すのに十分有効である。2)イ草表面に付着した泥は乾燥風からイ草への熱移動にほとんど影響を与えていない。

 

近赤外分光法による穀物成分測定値の変動要因  *品種と収穫年度がキャリブレーションに及ぼす影響と機器の経時変化

    夏賀元康・川村周三・伊藤和彦

キーワード:近赤外分光法,小麦,玄米,水分,タンパク質,収穫年度,キャリブレーション,分析器,経時変化

北海道産小麦3品種を用い,品種ごとにキャリブレーションが他の品種へ適用できるか検討し,各品種間に有意な差を見いだした。すなわち,ある品種で作成したキャリブレーションを他の品種に適用すると誤差が大きくなった。つぎに,収穫年度がキャリブレーションに与える影響について検討し,収穫年度はタンパク質のキャリブレーションに有意な影響を及ぼすこと,したがって,精度の良い測定値を得るためには数年にわたって試料を収集し,それからキャリブレーションを作成する必要があることを見いだした。ついで,近赤外分析機器の経時変化が存在し,これが測定値の変動要因のひとつであることを見いだした。したがって,精度の良い測定を行うためには基準試料による分析機器の日常的な精度チェックが必要である。

 

馬鈴薯の乾燥特性の研究(第1報)  *真空フライ理論確立のための基礎物性の測定

    村田 敏・田中史彦・K.S.P.アマラトゥンガ

キーワード:馬鈴薯,体積収縮,修正恒率乾燥,減率乾燥第一段,減率乾燥第二段,Arrhenius式,糊化

農産物のフライ加工は一種の脱水操作であり乾燥理論をもとに解析されるはずである。農産物のフライをこの立場から説明するためには,フライ対象農産物の加工温度域における乾燥特性を知る必要がある。今回の馬鈴薯をとりあげ乾燥特性を明らかにした。馬鈴薯は乾燥過程で形状が変化し,乾燥機構が変わる。乾燥初期で高含水率農産物に特有な恒湿乾燥期間があると思われるが,この区間の乾燥速度は一定にならない。これは乾燥による収縮で蒸発面積が減少し,見かけは減率乾燥となるためである。それぞれの乾燥速度定数にArrhenius型の温度依存性があることが確認された。

 

学習機能を有した自律走行車両に関する研究(第1報)  *ニューロコントローラによる追従制御

    石井一暢・寺尾日出男・野口 伸

キーワード:ニューラルネットワーク,非線形制御,農用車両,バックプロパゲーション,追従制御

本研究は農用車両の知能化を最終目標に,車両の運動を非戦形時変系として扱い,適応制御法を考察することを狙ったものである。農用車両の運動の非戦形性は道路走行を前提とした車両よりも著しいことが知られている。本研究は非線形写像を扱えるのみならず,自己組織化機能を有するニューラルネットワーク(NN)を車両運動制御に応用することを目的とした。構築したコントローラは学習した走行ばかりでなく,その汎化性のための任意の走行に対しても適切に操作量を決定することができた。また,車両運動シミュレーションを用いた追従制御実験を行った結果,古典制御法として一般的なPID制御と比較してニューロコントローラの有効性が明らかにされた。 

 

追従型けん引システムの開発(第4報)  *トラクタの車輪操向角度の推定による制御法の開発

    平田 晃・山吊伸樹・瀧川具弘

キーワード:

第3報までにトレーラ車輪のアクティブ操向制御方式を提案し,インライン式とオフセット式のトレーラの追従性がこの制御によって大きく改善されることを報告した。しかし,この方式ではトラクタの車輪操向角度を計測する必要があることが,実用上の問題点となっていた。そこで,トラクタの車輪操向角度を推定し,これを用いてアクティブ方式を行う方法を開発したので報告する。まず,トラクタ車輪操向角度の推定方式を比較検討した結果,オブサーバによる方式が最も良い成績を示したが,逆算による方法で実用十分な精度を有することがわかった。逆算による推定では,けん引角度と角速度から,トラクタ車輪操向角度を求めた。この逆算によるアクティブ方式を市販のロールベーラへ適用し,ステップ応答試験,90度旋回試験,蛇行走行試験や圃場での牧草収穫試験を行った。その結果,推定値を利用したアクティブ制御は,第3報までに示した方式とほぼ同程度にトレーラの追従性を向上されることがわかった。

 

農業用油圧マニピュレータの研究(第1報)  *マニピュレータの試作と位置制御

    並河 清・梅田幹雄・飯田訓久

キーワード:農業用ロボット,油圧マニピュレータ,サーボ弁,非線形制御,軌道追従運動

ほ場で重量野菜や肥料袋を取扱うため,出力/質量比が高く,エンジンから動力変換が容易な5自由度油圧マニピュレータを開発した。このマニピュレータは,大きな駆動力と経済性を考慮して,1つの手首関節を除き油圧シリンダで駆動した。しかし,油圧シリンダ駆動では,シリンダ変位と関節角の非線形性のための位置制御が困難で,制御性能が問題になる。本報では,マニピュレータの運動学的解析を行い,制御性能を確認するために手首を除く3関節で軌道追従実験を行った。シリンダ変位と関節角の非線形の補償には,マップを利用して制御を行い,軌道追従運動を実現した。この結果,マニピュレータの位置決め精度と制御性能が明らかになった。

 

農業用プロペラファンの軽量化研究(第1報)  *防霜ファンの強度解析

    銭 新耀・市川真祐・伊藤信孝

キーワード:プロペラファン,羽根,強度解析,ひずみゲージ,頻度解析

本研究は,構造強度上過剰設計と思われる農業用プロペラファンに対し,その軽量化設計法の構築を目的としている。本報では,防霜ファンを対象として,実験応力解析法を用いて防霜ファンの羽根の強度特性を調べた。応力塗料膜法により羽根の応力分布を調べ,主応力方向を見いだし,その方向に沿って2軸ひずみゲージを7箇所に貼り,各種回転数(740,840,940,1060,1150rpm)の状態における羽根の各測定点の応力及びファンの回転軸トルクを測定し,最大応力が発生したと判明した点については,測定した羽根のひずみ波形の頻度解析を行った。その結果,供試ファンの羽根は設計強度にかなり余裕があることが判明し,羽根の軽量化可能な手法の一つを提示することができた。

 

作業者被曝騒音のアクティブコントロール(第3報)  *搭載システムとその性能

    吉田智一・石川文武

キーワード:音,騒音,騒音低減,騒音制御,能動制御,信号処理,適応システム,適用制御,ディジタルフィルタ

農業機械作業時に作業者が被曝する騒音を低減するために,音波の干渉を利用したアクティブノイズコントロール(ANC:Active noise control)の適用を試みている。本報では,乗用型トラクタ2機種を供試し,その実機上で作業者耳元に対して消音を行うANC搭載システムを作成した。検討したシステムの基本構成は,前報の評価システムと同様のフィードフォワード制御方式の他に,今回追加作成したフィードバック制御方式の2種類である。これらの搭載システムを機関騒音に適応した結果,機関定格回転時の誤差入力位置において最大10dB程度,作業者耳元(頭部)位置において4~6dBの音圧レベルの低減を確認した。消音対象周波数は500Hz以下であり,騒音レベルでは1~2dBの低減に相当する。

 

オオムギ子葉鞘細胞における画像解析(第1報)  *原形質流動について

    亀岡孝治・堀部和雄

キーワード:オオムギ子葉鞘細胞,画像処理,原形質流動,原形質糸

原形質流動の活動度は,椊物細胞中に接種したシリコンオイルの原形質流動中での動きによって観察することができる事が報告されている。本論文では,対象細胞中で動く油滴の位置を追跡するために,画像処理システムを構築した。画像データとしては,タイムラプスビデオで撮影したオオムギ子葉鞘細胞を用いた。油滴の上透明な輪郭の抽出には差分フィルターが効果的であることがわかった。また,画像処理には,背景の濃度のばらつきが少ない青画像を用いた。病原菌がない場合の原形質流動速度の変化は0~50μm/minに対し,病原菌を接種した場合の原形質流動速度の変化は0~100μm/minであることが判明した。この結果は目視で行われた実験結果とよく一致した。

 

技術論文

ソイルクラフト生成制御による出芽阻害防止技術(第1報)

    竹中秀行

キーワード:たまねぎ,出芽,ソイルクラフト,火山性土

本研究の目的は,ソイルクラフトによって引き起こされる種子の出芽阻害防止技術の開発にある。筆者は出芽阻害防止の一つの方法として,ソイルクラフトの生じ難い資材を種子に履土し,種子の上だけはソイルクラフトを生成させない手法を開発した。本報では,既存の播種機に装着する出芽促進資材施用装置を試作し,火山性土を施用して粘質圃場におけるたまねぎの出芽試験を行った。その結果,火山性土施用区の出芽率は無施用区よりも改善され,施用による出芽阻害防止効果が確認された。

 

果実の衝撃カウンタの開発

    芋生憲司・竹永 博・森嶋 博・瀬尾康久・川越義則

キーワード:果実,衝撃,振動,加速度,輸送

青果物は輸送中の振動・衝撃により搊傷を受ける。振動・衝撃の程度を測定するために衝撃をカウントする装置を開発した。この装置は果実と一緒に段ボール箱に梱包して,輸送することが可能であり,輸送中作用した設定加速度以上に衝撃の回数を3軸方向でそれぞれカウントする。衝撃カウンタは加速度を検出するための球体と電子回路のパッケージで構成されている。球体はアクリル製で圧電式3軸加速度検出器を内蔵している。