第56巻第2号論文要旨

研究論文

車輪の上昇抵抗力及び車輪ラグの設計理論(第1報)  *車輪に作用する鉛直付着力

    坂井 純・崔 重 ・井上英二

キーワード:車輪工学,鉛直付着力,鉛直付着力係数,上昇抵抗力,上昇抵抗力係数,接地圧

本研究は,農用車輪に作用する新しい外力として,「上昇抵抗力《及びその主な要素である「鉛直付着力《を提案すると共に,それらに関する理論的及び実験的分析を通じて車輪力学を再考察することと,車輪ラグの運動及び力学的特性を考察することによって合理的な三次元車輪ラグの設計理論を構築して,それらに基づいてトラクタの新しい動力学的分析を試みることにその目的がある。その第一段階として本報では,車輪に作用する外力の1つである「鉛直付着力《を高精度に測定できるセンサーを用いた実験装置を開発供試して,湿った粘質土壌上を走行する車輪にはこれらの鉛直下向きの外力が存在することを証明すると共に,接地圧と走行速度の変化が鉛直付着力及び鉛直付着力係数に与える影響を考察した。

 

ロータリ耕トラクタの動特性に関する基礎的研究(第1報)  *トラクタの運動方程式および各パラメータ測定

    野口良造・井上英二・木下 統・坂井 純

キーワード: トラクタ動力学,振動解析,運動方程式,周波数伝達関数

乗用トラクタの最適設計を行うためには,設計工学および人間工学的見地から,作業機系を含めたトラクタの振動解析が重要である。本研究では,ロータリ耕うん抵抗反力を加振源としたトラクタの振動特性を調べるために,lagrangeの運動方程式を用いて,ロータリ耕トラクタの運動方程式及び周波数伝達関数を導出した。またシミュレーションで必要な,動的モデルの各パラメータを測定した。特にトラクタタイヤに関しては,簡易な方法により得られた自由振動曲線の対象減衰率から,タイヤのバネ定数および粘性減衰係数を求めた。またタイヤ単体とトラクタ装着状態での特性値の違いを明らかにし,トラクタの共振周波数の予測を可能にした。

 

装軌車の超堤運動について

    北野昌則・渡辺啓二・篠村和也・藤島明弘

キーワード:

本報文では,装軌車の超堤性能,すなわち垂直段差障害に対する装軌車の走行性能を明らかにすることを目的としており,車両諸元および履帯と地盤間の滑り特性などから超堤運動の理論モデルを確立するとともに,理論解析と模型実験の両面から比較検討した。その結果,履帯と路面の相互作用を考慮した超堤運動の理論モデルにより装軌車の超堤運動の解明が可能となった。また,装軌車の超堤性能は車両の幾何学的形状と地盤特性に大きく影響を受けることが明らかとなった。

 

生籾の太陽熱直射乾燥に関する研究(第1報) [英文]  *薄層乾燥モデル

    C.I.ニント・工藤泰暢・戸次英二

キーワード:太陽熱放射,自然乾燥,太陽熱直射乾燥,米乾燥,薄層モデル

さまざまな天候のもとで生籾の薄層に対して行った太陽熱直射乾燥実験は,実際の厚層乾燥のモデル化に必要なデータを提供した。屋外で自然乾燥中の空気条件は,乾減率をときどき0にすることがあったが,一般に通用しうるは薄層乾燥モデルをほぼ暗示することができた。ここで水分除去に関する日射の効果は,入射熱と蒸気圧差との直接かつ増大する関係で表わされる。乾燥定数の0.384h-1は最少二乗法で水分差に対する乾減率をプロットすることにより得られた。また実施した試験のほとんどにおいて,籾の表面温度は周囲温度より高く,例外の雲天時には逆となった。

 

近赤外分光法による穀物成分測定値の変動要因(第1報)  *穀物の種類・品種と粉砕条件が粒度と水分に及ぼす影響

    夏賀元康・川村周三・伊藤和彦

キーワード:近赤外分光法,小麦,玄米,粉砕温度,粒度,水分

小麦3品種と玄米を供試材料とし,粉砕機3機種を用いて3種の設定温度のもとで粉砕し,粉砕条件が供試材料の籾の粒度と水分に及ぼす影響を調査した。その結果,穀物の種類と品種,粉砕機,粉砕温度は粒度と水分のそれぞれ有意な影響を及ぼすことが明らかになった。また,粉水分からの原粒水分の推定は制度が低かった。

 

青果物の軟らかさ非破壊評価装置の開発(第1報)  *圧縮変形量による評価装置「HITカウンタ《

    大森定夫・鷹尾宏之進 

キーワード:青果物,果実,非破壊評価,品質評価,軟らかさ,キウィフルーツ

青果物の弾性範囲内での圧縮力と変形量を捉え,軟らかさの非破壊評価を試みた。基礎試験装置(HITカウンタⅠ型)を試作し,キウィフルーツなど軟らかさ評価に用いた結果,非破壊による軟らかさ評価が可能であった。また,力学的な軟らかさ評価だけでなく,熟度,食べ頃判定や出荷時の品質管理,貯蔵中の品質評価などへの利用の可能性を確認した。そこで,専門的な知識を必要とせず,取扱いや操作が簡便な単体の装置(HITカウウタⅡ型)を試作した。この装置を数カ所の試験場にて実証試験をした結果,数種の果実で軟らかさの非破壊評価が可能であることが確認された。開発した装置は商品化され,試験研究機関等で利用され始めている。

 

食品溶液の固液平衡

    村田 敏・田中史彦・松岡孝尚・羽原一宏

キーワード:有効分子量,凝固点降下,凍結率,食品溶液,活動度

食品溶液の凝固平衡特性を明らかにするため種々の溶液について凝固点降下を測定した。先ず,試薬溶液(酸・糖類)により凝固点降下を測定し,測定装置の制度検定を行った。これを用いて食品溶液の種々の濃度における凝固点を測定した。その結果,食品溶液の凝固点降下は溶質濃度の増大とともに理想溶液の挙動から偏差することがわかった。次に実在溶液の活動度を考慮した凝固点降下方程式を熱力学的に厳密に求め,パラメータを決定したが,その結果の適合性はきわめて高かった。さらに,このパラメータを用いて,食品冷凍を考える上で特に重要となる凍結率の計算が示され,また,理想溶液から偏差を示すための活動係数も計算した。

 

家畜糞の好気性分解反応特性(第1報)  *熱発生速度,酸素消費速度を指標とした考察

    岩淵和則・木村俊範

キーワード:好気性分解,堆肥化,熱発生速度,酸素消費速度,家畜糞

小容積(1,000cm3)の断熱反応槽を用いて,家畜糞の好気性分解実験を行った。品温,通気温,酸素濃度を測定し,熱発生速度および酸素消費速度を計算した。この結果,家畜糞の好気性分解反応初期過程における微生物の活性状態を的確に表現する指標は温度変化速度ではなく,熱発生速度や酸素消費速度で代表される反応速度であることを示した。特に,試料比熱の違いによって,温度変化速度は大きく影響を受けることが明らかになった。

 

視覚センサによる農用車両の位置計測法の開発(第2報)  *計測精度の検討と目標認識法の孝案

    太田克行・寺尾日出男・入交智彦・久保田守

キーワード:色彩ペクトル,確率密度関数,位置計測,自律走行車両,シリアル通信

前報では位置計測システムを構成する視覚センサモジュールを1台試作し,室内実験によってその角度計測精度の検討を行った。本報ではさらにモジュールの構造に変更を加え,それを2台使用したシステムを構築し,その計測密度について検討した。その結果,幅20m,奥行14mの範囲において±10cmの精度で位置計測が可能であった。また本システムを屋外で使用するための目標認識系に着目して,屋外に設置した計測点の画像について解析を行い,その結果から色彩の違いによる計測点の認識法を考案した。

 

ニューラルネットワークによる農用車両の最適制御(第2報)  *遺伝的アルゴリズムを用いた作業経路計画

    野口 伸・石井一暢・寺尾日出男

キーワード:自律走行車両,経路計画,ニューラルネットワーク,遺伝的アルゴリズム,最適化問題

農業に供される車両を自律化させる理論体系を構築することを目標にして,車両運動を非線形プラントのまま取扱い,最適経路を生成させる方法論を考案した。農作業の完全な自動化・自律化を進める上で作業経路の事前スケジューリングは必須である。本報は任意な非線形写像を表現しうるとされるニューラルネットワーク(NNS)を利用した最適経路生成法を確立することを研究の狙いとした。NNSによって記述されたシミュレータを前進・後退について作成し,遺伝的アルゴリズム(GA)により作業経路を計画した。目標地点までの経路を複数のセグメントに分割する方式で,自由度の高い走行パターンについて所要の経路を得ることができた。

 

ブドウ管理・収穫用ロボットの基礎的研究(第3報)  *整房・摘粒ハンドのための物理的特性の測定およびハンドの試作

    門田充司・近藤 直・芝野保徳・毛利建太郎

キーワード:農業用ロボット,摘粒作業,物理的特性,ロボットハンド,ブドウ生産システム

前報までに,CP制御を行った5自由度極座標型マニピュレータ,複数の機能を有する収穫用ハンド,および視覚部における識別,位置検出方法の検討を行ってきた。本報ではロボットによるブドウ生産システムの効率化を計るため,ハンド部の交換によってロボット作業が可能と考えられる整房,摘粒作業に着目した。まず,ブドウの基礎的物理特性を測定した上で,穂軸上部の露出,摘粒,および果房の長さを一定にそろえるという3つの作業を同時に行うハンドを試作した。そのハンドを用いた基礎実験を行った結果,ほぼ良好な整房,摘粒作業が可能であり,本作業のロボット化の可能性を確認できた。  

 

野菜用多機能ロボットの研究(第2報)  *葉菜類移椊・収穫作業への適用

    土肥 誠・藤浦建史・中尾清治・岩尾俊男・竹山光一

キーワード:

本研究では,葉菜類を対象にはん用できる知能ロボットの開発を目的としている。前報では,ロボットの基本構成と株間除草について報告した。本報ではロボットによる作業体系を組み立てるため,移椊・収穫作業への適用について検討した。移椊ではセル成型苗を対象に平行に把持する方式と先端を交差して苗を摘み出す方式の2種髄の椊付爪のハンドを試作し,収穫では2種類の収穫方法について試験した。その結果,キャベツとホウレンソウの苗が交差方式のハンドで移椊できた。収穫では軟弱野菜が往復刃のハンドで株切りできた。また,光ファイバセンサを用いて苗と地上高の検出が行えた。