第56巻第1号論文要旨

研究論文

振動クローラ型上整地走行車両の開発(第1報)

     山本博昭

キーワード:試作機械,上整地走行車両,回転・振動クローラ,差動機構,油圧駆動,機動性,機構・力学解析,接地荷重

上整地走行車両には多様な形態が考えられるが,ハウジング振動型の小型クローラ4基で走行する車両の試作開発を試みた。各クローラは,走行駆動と同時にそれ自体を回転・揺動させて車体地上高を変え,路上の段差・障害を踏破しようとする構想である。また,前後にある左右クローラ揺動軸を差動装置で連結し,互いに逆方向に差動するそれらの揺動運動を利用して,車体左右の地上高の差を修正し,両輪の常時接地と車体の水平化を図った。本報では,試作車両の構造・機能の特徴,作動機構を利用した走行部の構造学的特性及び各クローラ接地反力(接地荷重)の変動に関する解析結果について報告した。

 

荷受けコンテナによる籾の乾燥(第2報)

    村田 敏・宮内樹代史・K.S.P.アマラトゥンガ・堀 喜昭

キーワード:荷重コンテナ,乾燥機,乾燥,加熱乾燥,電気ヒータ,籾

CEやRCに広く普及している荷受けコンテナは,常温通風乾燥装置としても利用することが出来る。しかし,乾燥後期の低水分籾では降雨などの高湿度状態が続くと,材料が吸湿を起こす恐れがある。本研究では,荷受けコンテナの送風口に電気ヒータを装着することでこれに対処した。これにより,荷受けコンテナの乾燥能力がどの程度向上するかを調査した。その結果,電気ヒータの装着は,荷受けコンテナの乾燥能力向上と安全性に多大な効果を与え,経済的にも可能であることが明らかになった。また,通常は常温通風,高湿度時には電気ヒータを用いた加熱通風を行うことで,より効果的で,経済的な乾燥が可能となる。

 

青果物充?層の予冷過程における熱伝達係数の有限要素解析(第2報)  *限界平均熱伝達係数について

    田中俊一郎・石橋貞人・中野和弘・上薗正行

キーワード:限界平均熱伝達係数,限界空塔風速,有限要素法,予冷,青果物,充填層

本研究の目的は,差圧通風冷却方式による予冷操作に最も有効な平均熱伝導係数としての限界平均熱伝達係数または限界空塔風速を求め,冷却操作条件の評価を行うことになる。本報では,モデル球および青果物充填層における係数または風速を,有限要素法と冷却実験によって求めた。その結果,モデル球充填層の限界平均熱伝導係数は46.5W/(M2・K)であった。次に例えば,温州ミカン充填層の限界平均熱伝統係数は23.3/(M2・K)であり,キヌサヤエンドウ充填層の限界空塔風速は0.2m/sであった。これらの青果物の単位冷却エネルギーは,空塔風速が0.2~0.4m/sの間で最小値をもつ放物線になることを示した。

 

振動波形の自己相関関数によるスイカの内部品質の非破壊判定 [英文]

    陳 介余・宮里 満・石黒悦爾

キーワード:判別,内部品質,スイカ,多項式,自己相関関数

本報では,振動波形の自己相関関数を用いて,熟度と煮えおよび亀裂スイカを検出する方法を提案した。振動波形に自己相関関数の包絡線を多項式で近似した。その結果,この多項式により,適熟スイカの質量を高精度で推算することができた。一方,未熟と煮えスイカの推算値は実際の質量に対して大きな誤差を含むことが分かり,これらの誤差により,未熟と煮えスイカを判別する可能性を示した。また,包絡線を回帰した時の標準偏差により亀裂スイカを検出する可能性も示した。

 

画像処理による青果物の搊傷果検出システム(第2報)  *近赤外画像濃度差による傷抽出アルゴリズム

    李 暁明・岩尾俊男・藤浦建史・澁澤 栄

キーワード:画像処理,近赤外画像,画像濃度,領域,エッジ併用法,半別しきい値法,果実,モモ

本研究は,画像処理技術を利用した青果物の自動選別システムの開発を目標にしている。本報では画像処理システムを構築し,モモ搊傷画像の抽出アルゴリズムについて検討した。モモ表面の正常部と搊傷部との近赤外画像の濃度差に基づいて,領域・エッジ併用法と判別しきい値法による傷画像領域を抽出するアルゴリズムを開発した。この手法を,モモの虫害,傷跡,腐り,圧縮,皮はぎなどの近赤外画像に対して適用した結果,傷画像を果実画像から抽出できることが判明した。

 

ブドウ管理・収穫用ロボットの基礎的研究(第2報)  *視覚センサによる識別,位置検出および収穫実験

    近藤 直・芝野保徳・毛利建太郎・門田充司

キーワード:農業用ロボット,果実収穫,視覚センサ,ロボットの目,分光反射特性,光学フィルタ,位置検出

前報では極座標型マニピュレータおよび収穫ハンド部の試作を行い,ブドウ管理・収穫ロボットの要素としての有効性を確認した。本報では当ロボットの最も重要なセンサである視覚センサを開発するため,ブドウ各部位の識別実験,位置検出実験,さらには収穫実験を行った。その結果,各部位の特徴的な吸収帯に透過率を有する干渉フィルタを用いることにより,異なる色を呈する部位同士はもちろんのこと,同系統の色を呈する部位同士の識別も可能であった。また,視点の移動による位置検出法を用いた穂軸,果房の検出精度も,収穫作業に対しては,ほぼ満足できるものであった。

 

キュウリ収穫ロボットの研究(第1報)  *キュウリの栽培様式およびマニピュレータの機構の検討

    有馬誠一・近藤 直・芝野保徳・山下 淳・藤浦建史・秋吉広明

キーワード:

本研究では,わが国の果菜類の中で栽培面積が大きく,また果実の成長速度が大きいキュウリを対象とした収穫ロボットの開発を目的とする。本報では,まずロボットによる果実の検出および接近が容易となるよう,果実と茎葉が分離しやすい栽培様式の検討を行った。その結果,棚の角度が65度程度の傾斜棚栽培がロボット収穫に適当と考えられた。次に,その栽培様式に合わせたマニピュレータの基本機構を検討し,その結果を基にして,直動関節を含む,6自由度を有するマニピュレータの試作を行った。さらに,数種の評価指標を用いて,本収穫システムの検討を行った結果, 栽培様式およびロボットの機構の両面から問題を解決することが適当と考えられた。

 

現代制御理論による農用車両の操向制御(第2報)  *車体屈折式車両のモデルパラメータの推定

    桶  敏・村瀬治比古・中村喜彰・穂波信雄

キーワード:パラメータ推定,モデル規範適応システム,逐次拡張最少二乗法,操向制御,車体屈折式車両,田椊機

本研究は,車体屈折式車両の自動操向システムを実現するために行ったものである。第1報においては,車体屈折式車輪の運動方程式を誘導し車体の操舵系モデルを求め,状態空間法に基づく線形多変数理論の操向制御への適用性を検討した。本報では,車体屈折式車体モデルのパラメータを実機の操向実験より得られる入出力データを基に決定する手法の適用の可能性について適切な推定アルゴリズムの選択などの検討を行った。その結果,本研究で行った操向実験で推定アルゴリズムの持続的励振条件を満足したパラメータ推定に用いる十分なデータを得ることができ,可調節補償要素を含む並列同定器のよる推定アルゴリズムが車体屈折式車両の操舵系のモデルパラメータの推定に有効であることなどが明らかとなった。

 

上耕起栽培による二酸化炭素発生量の低減効果

    坂井直樹・米川智司・木谷 収

キーワード:二酸化炭素,原単位,上耕起栽培,化石エネルギー,栽培体系,機械利用,環境保全,LISA

本研究では,温暖化物質として関心の高い二酸化炭素の問題に機械利用の立場から対処するために,上耕起栽培による低減効果を効果した。まず,農業で発生源となる可能性のある物質の原単位を求めた。次に上耕起栽培がもつ特徴を検討した。農薬からの発生量は燃料由来に比べて10%以下と少なかった。〈燃料+農薬〉からの発生量では,面積と収量当たりともに上耕起栽培による顕著な低減効果が認められた。栽培体系や圃場条件に依存している〈残留物還元+土壌呼吸+堆厩肥〉からの発生量は〈燃料+農薬〉に比べて極端に大きな値であるために,これら両者の総計値でみると上耕起栽培がもつ有利性は見かけ上弱まった。しかし,上耕起栽培が本来もっている化石エネルギーの顕著な低減効果は変わらない。

 

椊物の体内水分状態の計測・制御に関する研究(第3報)

    鳥居 徹・岡本嗣男・木谷 収

キーワード:最適制御,カルマンフィルター,最少2乗同定,灌水制御

果菜類では灌水が多すぎると裂果が生じる可能性があるため,椊物体内の水分制御法としては,水分状態が目標値より行き過ぎないように制御することが好ましいと考えられる。本研究では,その制御法として,最適レギュレータによる最適制御を行った。水分状態の指標として茎径変化を用い,制御入力としては光強度を変化させて,茎径を目標値の収束される制御を行った。伝達関数は,最少2乗同定で求め,カルマンフィルターの共分散関数ならびに最適レギュレータの重み関数は,シミュレーション結果から求めた。実験では,入力側の状態変数に対して出力側の重みを1:10の範囲で変化させるとよい制御結果が得られた。