第55巻第6号論文要旨

研究論文

流体噴出によって生ずる土壌破壊の解析(第2報)  *空気噴出による土壌の破壊

高  鋭・新家 憲・寺尾日出男・常松 哲

キーワード:サブソイラ,流体,空気,有限要素法,土壌破壊,パンブレーカ,インジェクタ

流体を噴出するサプソイラの目的は二つあり,一つはバンブレーカとして使う場合であり,他の一つはインジェクタとして使う場合である。前者は土壌の破壊度合が出来るだけ大きい方が良い。後者は土壌の破壊度合を出来るだけ小さくしたい。本報はこのような流体を噴出するパンブレーカまたはインジェクタによる土壌破壊を有限要素法(FEM)によって理論的に考察した。結果として,空気噴出によって土層内に特別に引張応力が生ずることはなく,空気噴出で引張破壊を生じさせ索引動力を減少させることは出来ない。しかしパンブレーカ,インジェクタとも空気を噴出すると破壊エネルギが増加した。これは空気噴出によって進行方向破壊距離および垂直移動距離が増加し,かつ滑り面な数が増加して,土壌の攪乱が起こるためである。

 

茶葉摘採機の開発に関する研究(第4報)  *摩擦要素に関する理論解析

槐島芳徳・岡田芳一・永田雅輝・石川勝美

キーワード:かみ込み作用,摩擦要素,リード角,たわみ角,摩擦係数,こぎ摘みロールの径

茶芽の切断問題を解消したこぎ摘みロール機構の設計要素について検討するため,本報では切断の原因であるかみ込み作用に関係すると考えられる摩擦要素に注目し,茶芽の誘導姿勢等を考慮した理論解析を行った。また,かみ込みを生じない設計要素を得るためにピン*回転円盤法によ実験装置を製作して実験を行った結果,こぎ摘みロールの材料と茶茎との摩擦係数μ=0.58~0.68を得た。これらの結果,かみ込みを生じないこぎ摘みロールの直径はφ10mm以下と推定された。

 

気流によるわら・穀粒の選別に関する研究(第2報)  *プロトタイプ実験による実用性の検討

牛  雨・端 俊一・南部 悟・高井宗宏・小林忠勝

キーワード: わら,穀粒,気流,スクリーンコンベヤ,穀粒選別

従来の普通コンバインのストローウォーカに代わる新しい選別方法として,吹上気流によるわら・穀粒の選別法を考案した。本報では,第1報の基礎実験の結果に基づいてプロトタイプ実験装置を開発して,その実用性について検討した。開発したプルトタイプ実験装置を開発して,その実用性について検討した。開発したプロトタイプ実験装置はわら・穀粒の混合物をスクリーンコンベヤにのせ,気流で選別しながら,わらを機外に排出するという連続作業が可能な選別装置である。長さ1.3mの選別区間を持つ本装置は,コンベヤ速度0.7m/sで,コンベヤの単位面積当たりわら供給量が2.25㎏/㎡の場合,穀粒選別率が90%に達し,十分な実用性を有した。

 

穀物乾燥施設の経済性分析に関する研究(第1報)  *評価方法と利用料金設定モデル

澤田恭彦・堀部和雄・亀岡孝治

キーワード:穀物乾燥施設,設備投資,経済性評価,回収期間,収益率,利用料金

穀物乾燥施設での設備投資や施設経営に適用できる経済性分析・評価手法を検討するため,いくつかの実際の穀物乾燥設備を例にとって,主に回収期間法,収益率法を適用して設備投資の経済性分析を試みた.さらに,この分析手法に基づきも籾の乾燥料金を計算する利用料金設定モデルを提案し,現在稼動中の43施設の利用料金について若干の考察を行った。その結果,現行の利用料金は施設運営に必要な額の平均61%に過ぎないが,稼動率の高い施設では投下資本の回収も機体できることが明らかになった。

 

振動特性による農産物の内部品質の判定(第2報)  *スイカの内分品質と減衰定数

陳 介余・宮里 満・石黒悦爾

キーワード:非破壊評価,農産物,内部品質,熟度,周波数,スイス,減衰定数,振動特性

簡単なモデルと仮定したスイカの自由振動の減衰波形から得られた減衰定数とスイカの食味試験の各項目の関係を検討するとともに,新たなスイカの内部品質判定方法を提案した。また,貯蔵温度,貯蔵日数および打撃の強さによるスイカの振動波形のパワースペクトルの第1ピーク周波数と減衰定数の変化についても検討し,スイカ内部品質の非破壊判定法の研究についての基礎資料を得た。

 

椊物移椊栽培装置の開発研究(第2報)  *2号機とプラントの試作

堀部和雄・森 邦男・松尾幸蔵・近藤浩市・亀岡孝治

キーワード:移動栽培,栽培装置,椊物工場,株間隔制御,栽培面積

開発した椊物移椊栽培装置により栽培実験を行った結果,ほぼ安定栽培ができたが,若干の問題点も判明した。これらを解決し,さらに栽培装置の製作コストを削減するため,装置の改良を試みた。主要な変更点は,(1)動力・駆動方式(2)キャリヤ形式(3)架台構造(4)栽培水槽の構造(5)栽培間隔である。また,長期運転時における栽培上の問題点を把握し解決するため,栽培環境条件が完全に制御できる実用的なプラントも試作した。

 

視覚センサによる農用シ車両の位置計測法の開発(第1報)  *計測システムの試作

太田克行・寺尾日出男・野口 伸・入交智彦・久保田守

キーワード:自動走行車両,自動操縦車両,無人トラクタ,視覚センサ,位置計測法

本研究の目的は,自律走行する移動体の位置を計測するシステムを開発することである。対象とする移動体は,ほ場内で作業を行う無人トラクタとした。その計測原理は2台の視覚センサをほ場端に設置し,トラクタに装着した明点を認識してセンサから得られる水平方向角度情報により明点位置を決定するものである。視覚センサとしてはCCDカメラを用い,カメラはモータにより回転駆動され,移動する明点を追従する。本報ではカメラ,モータ,ポテンショメータからなる計測モジュールを1台試作し,室内での角度計測実験を行ないその実用可能性を検討した。その結果,静止した明点の角度計測誤差は0.11゜以内であり,シミュレーションによると位置計測誤差は,60m×20mの範囲で0.2m以内であると予測された。また明点追従を試みた結果,室内環境のもとでは,明点追従が可能であった。

 

農用自律走行車両の制御に関する研究(第2報)  *ニューラルネットワークによる外部目標の抽出

金子昌彦・倉田和彦・中野和弘

キーワード:自律走行車両,ニューラルネットワーク,バックプロパケーション学習,画像処理

本研究の目的は,自己位置認知のための特別な標識を必要としないハウス内自律走行車両の制御システムの開発である。本報では車両の自律走行を実現するための重要な課題のひとつである外界の認知を扱った。様々な種類の外界情報の中で,もっとも多くの情報を含むものは画像である。そこで,画像からの自律走行に必要な情報を抽出する手法として,ニューラルネットワークを応用し,汎用的な認知システムの構築の可能性を示すことができた。

 

野菜用多機能ロボットの研究(第1報)  *ロボットの基本構成と株間除草への適用

土肥 誠・藤浦建史・中尾清治・岩尾俊男・小松 実

キーワード:知能ロボット,野菜生産,直角座標マニピュレータ,除草,農作業自動化

本研究は,選択作業が多いため,人力への依存度が高い野菜のうち葉菜類を中心にはん用利用できる知能ロボットの開発を目的としている。ロボットは直角座標マニピュレータとこれを積載する走行部及びコンピュータで構成した。本報ではロボットの基本構成と株間除草への適用について述べる。株間除草は,カラー画像処理によって雑草を検出し,試作した除草装置での物理的に除草するものである。また,三次元センサによる雑草検出も試みた。その結果,雑草の三次元位置を正確に計測して株間除草できることを明らかにした。

 

ブドウ管理・収穫用ロボットの基礎的実験(第1報)  *マニピュレータおよび収穫用ハンド部

近藤 直・芝野保徳・毛利建太郎・門田充司・岡村誠一

キーワード:農業用ロボット,果実収穫,極座標マニピュレータ,柵仕立て,収穫用ハンド,物理的特性

柵栽培されているブドウの管理・収穫用ロボットの開発を目的とし,本報ではまず対象物の3次元位置,摩擦抵抗,切断抵抗等の基礎的物理特性を測定した。その結果を基にして,5自由度極座標型マニピュレータおよび把持,切断,押出の3つの機能を有する収穫用ハンド部を試作した。さらに,その収穫用ハンド部をマニピュレータ先端に装着し,収穫実験を行った。その結果,ブドウの果房はほぼ水平面上に存在するため,5自由度マニピュレータをCP制御することにより,ほぼ良好に接近可能であり,果房でなく穂軸をフィンガにより,把持し,切断する方法で収穫可能であった。

 

フィールドシミュレーションシステムの開発

西崎邦夫・猪之奥康治

キーワード:農用トラクタ,負荷シミュレーション,路面振動シミュレーション,信頼性,耐久性

農業機械の信頼性評価技術の開発の一環として,トラクタのPTO軸負荷と車軸振動を実働データに基づいて室内でシミュレーションできるシステムを試作した。PTO軸負荷シミュレーションは,実働データによるシミュレーションや頻度解析のほか,実働データを自由に編集して各種のふかパターンを作成し加速性の高い運転も可能である。車軸振動については,制御対象点と各加振点との入出力応答を利用することにより,ロードシミュレーションが可能であることが確かめられた。更に,シミュレーション実験から,シミュレーションにおけるトラクタの特性異性やシミュレーションの過程で影響を及ぼす因子についても明らかにした。

 

椊物の体内水分状態の計測・制御に関する研究(第2報)  *自己回帰モデルによるモデル化

鳥居 徹・岡本嗣男・木谷 収

キーワード:自己回帰モデル,シミュレーション,周波数分析,パラメトリックモデル,同定

本報では水ポテンシャルと茎径変化,蒸散速度の変化などとの相関性を議論した。さらに,椊物体内水分量を制御するための応答モデルとして自己回帰モデルを仮定し,光の強度を上規則に変動させたときの応答結果をもとにパラメータ同定を行った。実験データならびにステップ応答のシミュレーションを行い実験値との比較を行った結果,シミュレーション結果は実験値と良く一致した。さらに周波数応答関数の計算を行った結果,FFTよりも精度良く推定できた。これらの結果より,自己回帰モデル同定は,制御モデルの検討や,周波数特性の推定を行うために有用な手法であることが確認された。