第55巻第5号論文要旨

研究論文

農用ゴム履帯車両の振動加速度の6自由度成分計測

井上英二・鹿島 潤・坂井 純・井出 治

キーワード:ゴム履帯走行部,振動,加速度,重心位置の加速度

ゴム履帯走行部を有する農業機械では,路面の凸凹や作業機の他に,転輪配置の良否更には左右履帯の位相などによって振動が生じる。機体の振動特性を把握するには,機体重心位置での並進加速度成分計測法の精度向上のため,12個加速度変換器を用いた計測理論の拡張を行い,この計測法の利点について報告する。さらに,本計測法を用いてゴム履帯車両の振動加速度の6自由度成分計測を行い,転輪配置と左右履帯ラグの位相の影響による履帯車両の並進・回転成分の振動特性を明らかにした。

 

傾斜地における装軌車の操舵特性について

渡辺啓二・北野昌則・池ノ本八郎

キーワード:装軌車,傾斜地,理論解析,運動特性,模型車両,操舵特性

これまでに,旋回中の履帯の接地圧や路面とのすべりを考慮した装軌車の旋回運動方程式を誘導し,模型車両や実車を用いた実験や数値解析を行い,水平平坦路面での定常旋回性能や高速時の過渡応答特性を検討してきた。本報では装軌車の傾斜地での操舵特性を解明するために,履帯幅や荷重分布などを考慮した非定常運動方程式を導出し,模型実験を行い理論解析の信憑性を確かめた。その結果,数値解析結果と実験結果は比較的よく一致し,傾斜地における操舵特性や運動特性などが明らかとなった。

 

流体を噴出するサブソイラの最適形状(第4報)  *土壌の破壊状態に対する噴出水流量の影響

新家 憲・常松 哲

キーワード:サプソイラ,液体,流量,土壌破壊,圧送,バンブレーカ,インジェクタ

前報における土壌槽内の基礎実験で,空気を噴出して,パンプレーカおよびインジェクタの最適モデル形状を決定した。この時土壌の含水比が増加するに従って3種類に破壊特性が変わった。完全破壊,亀裂破壊,塑性流動である。亀裂破壊の時が最も破壊距離が大きかった。本報では噴出流体を水として,破壊状態を調べた。この時,ノズル近傍は飽和し,土層は上均一土層となり,地表に現れる破壊距離が変化すると考えられる。結果として,パンプレーカの場合,噴出水流量が,0~0.45㎏/sに変化すると,亀裂破壊を起こす土壌の時,距離破壊,破壊エネルギーとも約50%減少した。インジェクタの場合は,破壊距離は約50%減少したが,破壊エネルギはほぼ一定であった。

 

流体噴出によって生ずる土壌破壊の解析(第1報)  *シャンクおよびチゼルの形状と土壌の破壊

高 鋭・新家 憲・寺尾日出男・常松 哲

キーワード:土壌破壊,サプソイラ,有機要素法,バンブレーカ,インジェクタ,シャンク,チゼル

流体を噴出するサプソイラの目的は二つあり,一つはパンフレーカとして使う場合であり,他の一つはインジェクタとして使う場合である。前者は土壌の破壊度合が出来るだけ大きい方が良い。後者は土壌破壊度合を出来るだけ小さくしたい。本報ではまず,流体を噴出しないで基本的にシャンク及びチゼルの形状が土壌の破壊状態にどのように影響するかを有限要素(FEM)によって理論的に考察した。結果として,シャンクの傾斜角度θは破壊距離に大きく影響した。すなわちシャンク角が45゜のように小さいと,塑性破壊の範囲が広くなり,引張応力が働く範囲も広くなる。このことは土壌の変位量を大きくし,土壌を大きく乱すことになる。このことから実験においてインジェクタのシャンク角を90゜とし,バンブレーカのシャンク角を45~60゜にすべきであるとした設計原理は理論的にも正しい。

 

茶葉摘採機の関係に関する研究(第3報)  *こぎ摘みロール型摘採機の試作

槐島芳徳・岡田芳一・永田雅輝・石川勝美

キーワード:摘採機,圃場実験,選択的摘採,官能審査

こぎ摘みロール機構を使用した自走型摘採機を試作し,圃場実験を行った。摘採生葉の中で生葉の品質を低下する切れ葉の発生は,選択的摘採を目標とする本機構の構造から生じた問題点である。実験の結果,切れ葉の割合(重量百分率)は,芽長の長い1番茶で約30~50%,芽長の短い3番茶で約50~80%と高かった。この摘採生葉を切れ葉による品質劣化が生じないように即時に製茶し,これを供した官能審査の結果,本摘採茶葉は,鋏摘み,および市販の摘採機摘みと同等かそれ以上の品質を示した。これは,選択的摘採によって木茎や硬化茎の混入が減少したためである。

 

加熱操作が米の脂肪酸度の変化に及ぼす影響

疋田慶夫・安部武美・オフォチェ,C.E.

キーワード:米,脂肪酸度,加熱操作,貯蔵

本報は,加熱により呼吸や発芽障害が生じた籾を玄米または籾の状態で貯蔵したときの脂肪酸度の変化を測定し,加熱操作が貯蔵中における遊離脂肪酸の生成に及ぼす影響を調べたものである。貯蔵中の脂肪酸度は貯蔵日数の経過に伴って増加したが,高温度,長時間の加熱を行ったものほど増加が抑制された。これは,ぬか層における脂質の分解に関与する酵素が加熱操作により一部分失活したためと考えられる。また,貯蔵の形態別では,籾貯蔵の方が玄米貯蔵より脂肪酸度の増加が抑制された。

 

家畜糞を主原料とした有機質資材の有効熱伝導率  *有効熱伝導率推定モデルによる温度および体積含水率依存性の検討

岩淵和則・上出順一・木村俊範

キーワード:有効熱伝導率,堆肥化,有機質資材,体積含水率,温度,推定モデル

品温が常温付近から70~80゚Cまで温度が変化する堆肥化過程の熱解析,生物反応プロセス解析を行う場合,材料の熱物性値を知ることは重要である。この論文では家畜糞を主原料とした有機質資材における有効熱伝導率の体積含水率依存性,温度依存性について述べる。実験結果によると,潜熱輸送が有効熱伝導率に影響を及ぼさない場合,有効熱伝導率は体積含水率に対してほぼ直線的に増加する。有効熱伝導率推定モデルによる計算によると,温度が有効熱伝導率に大きな影響を及ぼすのは材料の気相率が比較的大きい時である。また,従来の有効熱伝導率推定モデルに新たに水蒸気拡散による潜熱輸送を考慮することによって,実験結果と良く適合することが認められた。

 

作業者被曝騒音のアクティブコントロール(第2報)  *評価システムとその性能

吉田智一・石川文武

キーワード:音,騒音,騒音低減,騒音制御,能動制御,信号処理,適応システム,適応制御,ディジタルフィルタ

農業機械作業時に作業者が被曝する騒音を低減するために,音波の干渉をアクティブノイズコントロール(ANC:Active noise control)の適用を試みている。本報では,実際に消音を行うANCの評価システムを作成し,その性能を検討した。作成したシステムは,DSP(Digital signal processor)と2チャンネルのアナログ入出力を持ち,参照入力1,制御出力2,誤差入力1チャンネルの構成とした。また,システムの制御には,実音場特性の補償を行うために,Filtered‐XLMS(Least mean square)アルゴリズムを用いた。このシステムを2台のトラクタ機関騒音に適用した結果,機関定格回転時の誤差入力位置において,音圧レベル(DC~500Hz帯域)にして約10dBの低減を確認した。

 

画像処理による水稲葉色測定に関する研究(第1報)  *葉身の葉緑素量と画像処理結果との相関関係

大角雅晴・中村喜彰

キーワード:画像処理,濃度値,輝度値,葉色,葉緑素計

本研究の目的は,圃場における水稲群落の肥培管理のために,稲の栄養状態を二次元分布として把握するシステムを開発することである。そこで本研究では,コンピュータによる画像処理を応用して,水稲の葉色を測定することを試みた。また,水稲の栽培現場で利用できるように,人間の目の高さから撮影した画像を処理対象とすることにした。本報では,基礎的な実験として水稲の葉身だけを対象にして,含有葉緑素量と画像処理によって得られた葉色との相関関係を調べた。実験の結果,RedとGreenの濃度値が高い相関関係があることがわかった。また,輝度Yについても高い相関関係があった。

 

ニューラルネットワークによる農用車両の最適制御(第1報)  *NNSによる車両運動のモデル化

野口 伸・石井一暢・寺尾日出男

キーワード:ニューラルネットワーク,最適制御,農用車両,経路計画,バックプロバケーション

本研究は農用車両の自律化を目標に,車両の運動を非線形プラントとして扱い,最適制御することを目的としている。任意の非線形な写像を表現しうるニューラルネットワーク(以下,NNSと呼称する。)を利用した経路計画による最適制御法を確立することが研究の狙いとなる。本報は車両の運動をNNSによりダイナミックモデルで記述して,モデル精度を検討した。非線形現象である車両の横すべりがNNS内部に表現されており,物理モデルよりも正確に車両運動を記述することができた。また,汎化性を定常円旋回時のデータを用いて検証するとともに,モデルの有効性を確認するために,車線変更・蛇行走行などの簡単な走行パターンを経路計画してみた。

 

トラクタ作業機のマイクロコンピュータ制御(第4報)  *作業機のインテリジェントコントロール

江  毅・穂波信雄・梅田幹雄

キーワード:インテリジェントコントロール,ファジィ制御,ニューラルネットワーク,適応機構,経験学習,オンライン学習,耕うん反力

第3報で設計した制御系をベースに,オンライン学習適用機構,耕うん反力適応機構および経験学習適応機構を付け加え,トラクタ作業機制御のインテリジェントコントロールシステムを構成した。オンライン学習適応機構は,制御系の過渡特性を評価し,ファジィ制御器の調整を行うもので,耕うん反力適応機構は,作業機制御における下げ動作の応答特性を改善する目的として設計されている。経験学習適応機構では過去における作業の経験を活かして作業環境の変化に対し制御系を素早く適応させるものである。実験を通して,実際の作業条件における各適応機構の応答特性を求め,さまざまな作業環境の変化に対する本システムの適応能力を検証し,その特徴と実用性について考察した。

 

ラン科椊物プロトコーム移椊ロボットに関する研究

岡本嗣男・木谷 収・鳥居 徹

キーワード:ロボット,グリッパ,形状記憶合金,マシンピジョン,組織培養,移椊,プロトコーム

メリクロン培養のなかで,一般的なラン実生繁殖におけるプロトコーム移椊作業をロボット化にすることにより,無菌作業への対応と省力化を行った。培地上に散在する0.5mm大の微小なプロトコームを正確に認識する画像処理アルゴリズムを開発するとともに,形状記憶合金アクチュエータを用いた小型・軽量なグリッパにより対象を確実に把握することができた。マシンピジョンとマイクロハンドリングを組み込んだ知能ロボットシステムを開発することにより,プロトコームのロボット移椊を実現しており,その能率は熟練者による手作業よりも高かった。

 

土壌密度分布とトウモロコシ根系パターンの関係

澁澤 栄・国立卓生・岩尾俊男・藤浦建史

キーワード:土壌密度,水分,パターン形成,根系,べき分布

本研究は,透明なアクリル樹脂製根箱を用いて,多様な土壌密度条件に対するトウモロコシ根系パターン形成の特性を明らかにし,また土壌・椊物複合系という視点から初期の土壌密度分布と根系生長が根箱の水分散逸に与える影響を実験的に明らかにした。上均一土壌密度分布を与えると,低密度土壌と高密度土壌で現れる根系パターンの混合したパターンが現れること,根系の分布状態は共通してべき分布になること,根箱散逸水分は作物成長量と相関は少なく,低密度域の根面積に関連性があること,及び根系の生長は土壌硬度に影響することを明らかにした。