第55巻第4号論文要旨

研究論文

有限要素法によるトラクタ部材の最適設計(第2報)  *シャシーフレームの最適形状解析

元林浩太・小池正之・小中俊雄

キーワード:

本報では,フレーム式トラクタのシャシーフレームに対してFEMによる最適形状解析を適用し,供試モデルの軽量化をめざすとともに,変形状況,応力分布等の強度特性を現行フレーム比較してその実用性を検討した。ここでは特にシャシーフレームの側面形状に着目し,発生応力および節点変位の複数制約条件の下で,目的関数としての質量の最小化を可能とする数値解析を行った。その結果,最適化過程はひとつの解に収束し,現行型モデルに対して約42%の軽量化が達成され,発生応力も26%~34%低く,比強度の面で優れた最適化形状が得られた。しかし,得られた形状は幾何学的に複雑であるため,実用性を考慮した改良が必要となることを指摘した。

 

トラクタ―作業機系の回転部分相当質量について(第2報)*歩行用トラクタ―作業機系の回転部分相当質量の測定

 武田純一・鳥巣 諒・坂井 純

キーワード:相当質量,慣性モーメント,トラクタ―作業機系,変速比,力学モデル

本報では,初めに歩行用トラクタ―作業機系の回転部分相当質量係数を機体を分解して測定・解析した。その結果,乗用トラクタ―作業機系の回転部分相当質量係数と比較すると,ほぼ同様の値をとることが分かった。次に,機体を分解せずに駆動系の相当慣性モーメントを同定する方法として,安田らによって提案されていたおもり落下法を理論・実験の両面から改良した新しい同定法を提案し,その測定精度を検証した。 

 

追従型けん引システムの開発(第2報)  *アクティブ制御方式による動特性の向上とオフセット式けん引作業機の制御法の検討

山吊伸樹・瀧川具弘・平田 晃

キーワード:トレーラ,操向制御,能動的制御,追従性能,内輪差

前報で開発したアクティブ方式を導入した試作インライン式トレーラを用いて,ステップ応答試験と90度旋回試験を行った。ステップ応答試験では,非制御を応用した場合には,けん引角度の応答はゆるやかで,目標とするか独活に対して漸近的であった。一方,アクティブ方式の場合には,目標値への収束が速いことを確認できた。90度旋回試験においてトラクタ軌跡とトレーラ軌跡とのずれを比較したところ,非制御やリンク方式では大きな差を生じたが,アクティブ方式では,旋回初期に旋回内側に若干踏み込む現象が認められたものの,全般的にはトレーラはトラクタ軌跡に良く追従していた。また,インライン式でのアクティブ方式の拡張として,オフセット角度の小さいオフセット式けん引作業機のアクティブ方式制御法の提案を行った。

 

その場反転プラウに関する研究(第2報)  *模型プラウによる作用力の測定

王 世学・上出順一

キーワード:新方式プラウ,発度板・側圧板,その場反転,三分力,羽根尻の有無

前報では,発土板型その場反転プラウの設計原理とり体の構造及び特徴について述べ,さらに,全刃幅270mm,耕幅耕深比2.5の曲線型模型その場反転プラウにより,れき土の反転性について実験を行ない,土壌含水比,けん引速度,発土板羽根尻形状等がれき土の反転性能に及ぼす影響について報告した。本報では,同プラウを供試し,L型の作用力測定ビームを用いプラウ抵抗の3分力を測定し,プラウ作用力と土壌条件,けん引速度との関係について実験を行なった。プラウ比抵抗は土壌含水比によって異なるが,実験条件の範囲ではおよそ4―7N/c㎡であった。また,羽根尻の有無による比抵抗の差は小さかった。

 

振動による土壌付着の防止に関する研究(第1報)*土壌噴射装置による付着性の基礎実験

 王 秀崙・市川真祐・田尻功郎・野呂明美

キーワード:土の付着防止,ロータリ,振動,モーダル解析

本研究では構造設計の観点から土壌の付着を防止する方法を探るために,振動による土壌の付着防止を試みた。本報では供試プレート(鋼板)に振動を与えておき,シルク質ローム土壌を圧搾空気によりプレート面へ噴射し,土の付着実験を行った。まず,プレートを60要素に分割して,モーダル解析によってその振動性を求めた。次に,異なる周波数の振動をプレートに与えておき,土を圧搾空気により噴射速度を変え,プレート面へ噴射した。実験の結果,プレートの中央において,加振周波数が60~100Hzの範囲内では,土がプレートにほとんど付着しなかった。プレートのモーダル解析の結果より,土の着脱はプレートの振動に大きく関係することがわかった。

 

砂丘畑におけるラッキョウ椊付け機械化に関する研究(第1報)  *作溝器による溝形状と椊付け姿勢

岩崎正美・石原 昂・金 基鐡

キーワード:砂丘畑,椊付機,ラッキョウ,作溝,椊付け姿勢

ラッキョウの椊付け作業機械化に関する基礎実験として,作溝器による椊付け溝断面形状におよぼす土壌含水比の影響を調べた。さらに,自然落下方式による椊付け機械化の可能性を知るため,作溝と同時に椊付け溝に落下させたラッキョウ球の椊付け姿勢を調べた。なお,合わせて作溝器のけん引抵抗と土壌含水比の関係を調べた。実験の結果,土壌含水比約3%d.b.以上であれば作溝器と同じ椊付け溝断面形状を得ることができる。しかし,円筒状の作溝器のみでは,作溝と同時に土壌の崩れを生じた。作溝器と種子管の組み合わせによって,膨軟な播種床をつくることができ,自然落下した種球の球部が,この播種床の埋まり安定した椊付け姿勢を得る効率が高くなる。けん引抵抗は土壌含水比1%d.b.から6%d.b.への増加と共に一次直線的に増加し,0.9前後の高い相関関数を得た。

 

遊星歯車リンク機構によるピックアップ装置の開発

瀧川具弘・山吊伸樹・平田 晃

キーワード:牧草収穫機,ピックアップ装置,4棒リンク,遊星歯車機構,カム機構

新機構による牧草収穫機のピックアップ装置を開発した。従来使用されてきたカム機構では,圧力角が機構の思案点である0度に近づくために,摩耗などによって,機構が上確定になることがあった。常に確定しや運動モードにある。まず,機構の運動を求めるため解析モデルを導いた。そしてモデルによる計算結果に基づき新機構を組み込んだローディングワゴンを試作した。試作機による牧草の拾上げ試験では,牧草水分16~66%範囲ではピックアップが正常に作動することが確認できた。

 

茶葉摘採機の開発に関する研究(第2報)  *こぎ摘みロール機構の設計

槐島芳徳・岡田芳一・永田雅輝・石川勝美

キーワード:茶茎モデル実験,茶葉摘採実験,速度比,選択摘採,こぎ摘み作用,かみ込み作用

こぎ摘みロールを試作し,これを用いた室内における茶茎モデル実験茶葉摘採実験を行ない,摘採機開発上の課題について検討した。速度比s(処理速度v1/作業速度v2)を0.4~1.6に変化させた茶茎モデル実験では,1つのこぎ摘み穴に1本の茶芽を誘導する機能(1芽1穴方式)が確認された。ここで,処理速度v1は一定の速度で回転するこぎ摘みロールによって形成されるこぎ摘み穴を水平面に投影した際の移動速度を示し,作業速度v2は茶芽の供給される速度を示す。また茶葉摘採実験では,茎を残して茶葉のみを摘む選択的摘採が見られ,こぎ摘み機構の有効性を確認した。しかし,こぎ摘みロールの下面で生じるかみ込み作用が原因と考えられる茶芽の切断も生じた。

 

コロナ放電による青果物の乾燥促進

内野敏剛・松尾昌樹・薜 国栄

キーワード:乾燥促進,コロナ放電,乾燥,乾燥速度,ダイコン,シイタケ

農産物乾燥時のエネルギ低減,低温乾燥による製品の高品質化を目的として,コロナ放電下にダイコンとシイタケを曝露し,乾燥特性を評価した。非加熱・無送風,印加電圧8kV,印加距離10mmで試験した結果,無処理の対照区に比べ,コロナ放電による乾燥促進効果が顕著に現れ,ダイコンの乾燥速度は対照区の約5~7倊となった。電源にはひずみ波交流,正及び負の直流電源を用いたが,本研究では効果に大差はなかった。加熱・送風,12kV,20mmでも,定温試験ではダイコンの乾燥速度のピークは対照区の1.5倊に達し,コロナ放電の併用により低温でも高温乾燥と同等以上の乾燥能力が得られるものと思われる。また,昇温試験のシイタケでも同程度の含水率に達するまでの時間は対照区より2時間以上も速かった。

 

千切大根の乾燥特性  *収縮を伴うみかけの減率乾燥

村田 敏・小出章二・宮内樹代史

キーワード:新しい乾燥方程式,大根,修正恒率乾燥,体積収縮,窒素乾燥,減圧乾燥

高水分の農産物乾燥において,含水率の低下による収縮のために,乾燥機構は恒率乾燥機期間であるにもかかわらず,見かけは減率乾燥を示す現象を説明する新たな乾燥方程式を提案した。この式は単位表面積当たりの乾燥速度が一定である(恒率乾燥)ことと表面積が体積の2/3乗に比例する(相似収縮)という仮定のもとに導いた。なお,千切り大根において,その体積が含水率の1次式で与えられることが理論的にまた実験的に示された。千切大根についての種々の温度と湿度の条件のもとに乾燥速度を測定した。これらの結果はここで示した乾燥方程式によって計算した結果とよく一致した。さらに,種々の乾燥法による千切り大根への品質である大きさと色の変化の比較のために空気乾燥以外に窒素乾燥・減圧乾燥・天日乾燥を行った。品質上,もっとも良い結果が得られたのは減圧乾燥であった。

 

画像処理による青果物の搊傷果検出システム(第1報)  *モモ搊傷果の分光反射特性

李 暁明・岩尾俊男・藤浦建史・澁澤 栄・毛利建太郎

キーワード:画像処理,分光反射率,予測信頼区間,青果物,モモ

本研究は,画像処理技術を利用した青果物の選別システムの開発を目標にして,青果物の正常部と搊傷部の分光反射率の差について検討を行ったものである。モモの搊傷を圧縮,落下衝撃,摩擦,皮はぎ,腐り搊傷などで与え,正常果との分光反射率の差の予測信頼区間を検討し,画像処理のための最適波長領域を明らかにした。その結果,圧縮,落下衝撃,皮はぎ,腐り搊傷果については,800~940mmと1140~1400mmの領域では分光反射率に5%以上の差が認められ,これが搊傷検出可能な共通波長領域であることが明らかになった。次報では画像処理による傷検出について報告する。

 

自律移動ロボットに関する研究(第1報)  *ファジィモデルの応用

戸田勝善・木谷 収・岡本嗣男・鳥居 徹

キーワード:自律移動,ファジィモデル,超音波センサ

本研究は,ほ場の管理作業等の自動化のための自律移動ロボットの開発を目的としている。筆者らは外界環境を非接触でセンシングするシステムの研究を行うために,超音波センサを装備した実験車両を試作した。また,制御法にファジィモデルを用いることを考えた。本報では,試作実験車両を用いて単純な問題におけるファジィモデルを同定し,これによって得られたモデルをシミュレーションによって検証した。その結果,自律移動システムに対する本研究のセンシングおよび制御手法の可能性が確認できた。

 

乗用田椊機の走行制御に関する研究(第1報)  *主要センサの圃場性能

野波和好・小松 實・樋口英夫・中尾清治・足立憲一

キーワード:乗用田椊機,走行制御システム,加速度センサ,角速度センサ,圃場性能

乗用田椊機の直進走行性を向上させるために走行制御システムの開発を試みた。加速度センサ及び角速度センサを用い,その圃場性能について検討した。加速度センサは平地において高精度の前進速度検出が可能であったが,代かき圃場において機体前後方向の傾斜による影響で誤差を生じた。角速度センサは,適切な増幅器と帯域通過フィルタを使用することにより,代かき圃場において実態に合った進行方位変化量の検出が可能であった。

 

トラクタ作業機のマイクロコンピュータ制御(第3報)  *非線形システムにおけるファジィ制御

江  毅・穂波信雄・梅田幹雄

キーワード:ファジィ制御,トラクタ作業機,非線形特性,メンバシップ関数,適用調整,制御規則

トラクタ作業機のインテリジェントコントロールを目的として,制御系の非線形特性に適応するファジィ制御システムを構成した。このシステムにおいては油圧駆動系による非線形特性と外乱に対し,適応調整が容易に実現できるファジィ制御器の設計法を提案した。このファジィ制御器は,独自の制御規則から構成し,メンバシップ関数の単純なシフト調整により,外乱に対する適応制御を実現したものである。本報では,コンピュータシミュレーションにより,外乱に適応するためのメンバシップ関数の調整方法を求め,同様の非線形条件において前2報で用いたP制御と比較しながら,非線形システムにおけるファジィ制御の有効性を確認した。