第55巻第3号論文要旨

研究論文

人による2輪トレーラ系の操縦性(第2報)  *制御動作モデルの種類と前進運動制御

鳥巣 諒・武田純一・S.W.ムグシア

キーワード:2輪トレーラ系,PIDモデル,認識モデル,前進制御,シミュレーション,適用制御

古典制御理論を援用し,人による2輪系の操縦性を解明するため,制御動作モデル,実車実験とそのシミュレーションについて検討した。1)新しく姿勢角,横変位,折れ曲がり角の3つの現在値と最終値とのそれぞれの偏差を操舵角に戻す認識モデルを提案した。2)このモデルと前報のPIDモデルとの関係を論じ,2つのモデルの等価性を明らかにした。3)前進車線変更時の操縦性について,認識モデルを用いてその閉ループ特性を検討し,実車実験と比較した。その結果,これが車線変更時の人の制御動作を模擬できるシミュレータとなりえることを示した。

 

その場反転プラウに関する研究(第1報)  *プラウの設計及びれき土の反転性能

上出順一・王 世学

キーワード:新方式プラウ,発土板,側圧板,その場反転,模型実験,反転性能

プラウ耕によるback furrowやdead furrowの欠点を解消するため,れき土の横移動のないその場反転プラウを設計した。プラウは発土板型に属し,り体の主用部はきれ土を横に移動させるための側圧板と発土板及び羽根尻から構成される。なお,本プラウには,れき土の回転中心となる接合線の形状の異なる,直線形,曲線形及びS字形の3種類がある。さらに,刃幅270mmの曲線形の模型プラウを試作し,室内実験で土壌含水比,けん引速度,羽根尻の形状がれき土の反転性能に及ぼす影響について検討した。その結果,れき土のその場反転の可能性は十分に認められた。

 

茶葉摘採機の開発に関する研究(第1報)  *こぎ摘みロール機構のこぎ摘み穴設計

岡田芳一・永田雅輝・石川勝美・槐島芳徳

キーワード:茶葉摘採機,こぎ摘みロール機構,こぎ摘みロール,こぎ摘み穴径,摘採生葉の性状,誘導性能,こぎ摘み抵抗力

本研究は,摘採茶葉(生葉)の品質を向上させるため,従来の機構とは異なる手摘みの手法に類似した選択的摘採を可能にするこぎ摘みロール機構を有する新しい摘採機の開発を目的とする。本こぎ摘みロールは,左右対象に半円形ラセン溝を加工した2本1対の円筒から成り,それらが互いに逆回転することにより,円形のこぎ摘み穴が連続的に形成される。これにより,茶芽の下位を誘導したこぎ摘み穴は,芽長方向に移動しながらこぎ摘み作用を生じる。本報では,このこぎ摘み穴設計要素を明らかにするため,特にこぎ摘み穴形状と摘採生葉の性状との関係を実験的に調べた。その結果,良質の生葉を得る上で,こぎ摘みロールには,1個のこぎ摘み穴に1芽を誘導する機能(1芽1穴方式)が有効であり,さらにこぎ摘み穴の大きさは,穴径φ2.5mmが適切である等を明らかにした。

 

ヒートポンプによる生籾の除湿乾燥に関する研究  *熱交換器システムとしての性能評価

張 林紅・戸次英二

キーワード:除湿機,ヒートポンプ除湿,熱交換器システム,近周囲温度乾燥,熱利用係数,性能評価

除湿乾燥は乾燥速度が遅く,仕上がりまでに長時間を要する。その間に品質劣化をきたさないように,的確な温度管理を必要とする。まず,通気過程の各熱交換器における熱収支から,入口温度ののみ入力して出口温度を出力する線形連立方程式を立て,さらにそれらの温度の一部から熱利用係数をパソコンで瞬時に算出する方法を提示した。実験で実測値と計算値を比較した結果,一部を除き両者間の誤差は小さく,その有効性が認められた。この方法は乾燥過程での温度監視として,また熱交換の状況を随時把握して,性能が適切に発揮されているか否かを判断するのに適用しうると考えられる。

 

シリカゲル薄層の吸湿特性と固定層のシミュレーション

村田 敏・榎本敏夫・宮内樹代史

キーワード:除湿器,乾燥器,シリカゲル,吸着,穀物

シリカゲルの吸湿作用を利用した常温通風除湿乾燥装置の設計を目的として,シリカゲル薄層の吸湿特性の測定と解析を行い,次のことが明らかになった。(1)シリカゲル薄層の吸湿過程は,減率第一段にある。(2)平衡含水率と相対湿度の関係は最小自乗法によってChen‐Clayton式に精密にあてはめられた。(3)吸着等温線にChen‐Clayton式を用いClausius‐Clapeyron式によりシリカゲルの蒸発潜熱を直接計算した。(4)吸湿速度定数はArrhenius形の式に当てはめられた。以上の結果をもとに,シリカゲル粒子と通過空気に関する温度・物質量移動の非定常方程式を導いた。次に,これを数値解析することによってシリカゲル固定層を通過する空気の温度と湿度およびシリカゲル粒子の温度と含水率に関するシミュレーションを行いシリカゲルを用いた常温通風除湿乾燥装置の実用性を確認した。

 

穀粒の呼吸特性に関する研究(第1報)  *簡易測定法および穀粒の呼吸特性

後藤清和・三輪精博・山田勝義

キーワード:呼吸,穀粒,酸素濃度計,含水率,穀粒温度

穀粒の呼吸量を簡便に測定する方法を検討した。通常,呼吸量の測定は,二酸化炭素を吸着して行われるため,計測装置は複雑なものになる。本研究では,ガルバニ電池式の酸素濃度計を利用して,穀粒の呼吸による酸素濃度の減少をとらえ,呼吸速度に変換する。したがって,計測系はきわめて単純となり,短時間での測定が可能となる。本報では,得られた呼吸過程から呼吸速度を算出する手順について述べ,数種の穀粒についての呼吸特性をとらえる。次報では,穀粒品質の指標として呼吸量の適用を考察する。 

 

ニューラルネットワークによる農産物の形状判定  *ピーマンの形状と大きさの判定

池田善郎・斉藤義行

キーワード: ニューラルネットワーク,形状,大きさ,ピーマン,バックプロパゲーション

複雑な形状をもつ農産物の形状をニューラルネットワークによって判定し,人間の判定結果と比較し,選別工程への適応性を検討した。本研究では3層構造の階層型ネットワークモデルを構成し,逆伝播学習則により,ピーマンの形状の良否及び大きさの判定を試み,入力信号の種類・特色が学習時間及び判定結果に及ぼす影響について検討した。農産物の原形状を良好に復元する特徴量を入力変数とした場合,学習時間及び入力変数の計算時間を含めた判定時間短縮される傾向にあるが,人間の判定結果との一致度にはあまり影響せず,一致の程度もよくなかった。上一致の原因は,ニューラルネットワークと人間の入力変数の質的・量的な差も原因の一部と考えられる。

 

振動特性による農産物の内部品質の判定  *スイカの内部品質と振動周波数

陳 介余・宮里 満・石黒悦爾

キーワード:非破壊評価,スイカ,内部品質,熟度,周波数,振動特性

スイカを完全弾性球体モデルと仮定し,その質量,周波数,伝播速度とセン断弾性係数の関係を理論的に解析し,内部品質判定の指標を導いた。試料の打撃音および振動波形をFFTアナライザで解析し,これらの結果を判定指標に用いることにより簡便にスイカ内部の空洞や煮え等の内部品質の検出が可能であることを示した。さらにパワースペクトル解析により第1ピークと第2ピークの振幅差と第1ピークの振幅の比と重量の関係を利用する空洞の大きさの推定が可能であった。

 

含水・多孔体を対象とした熱物性値の迅速簡便測定  *コンポスト資材の熱物性測定の試み

岩淵和則・上出順一

キーワード:熱物性,プローブ法,コンポスト資材,迅速測定

コンポスト資材や土壌のような含水・多孔体試料の熱物性値を求めるための簡便法を考案した。この方法はプローブ法を援用しており,構造が簡単で熱伝導率と熱拡散係数を誤差6%以下の精度で迅速,同時に求めることができる。本方法をコンポスト資材(家畜糞とおがくずの混合物)に対して適用した結果,0.0508W・m-1・K-1,0.975×10-7㎡・s-1(0%w.b.,20゚C),0.0956W・m-1・K-1,0.967×10-7㎡・s-1(57.1%w.b.,20゚C)を得た。

 

作業者被曝騒音のアクティブコントロール(第1報)  *シミュレーションによる適用手法の検討

吉田智一・石川文武

キーワード:音,騒音,騒音低減,騒音制御,能動制御,信号処理,適用システム,適用制御,ディジタルフィルタ

本研究では,農業機械作業時に作業者が被曝する騒音の低減を目的としており,そのために従来からの吸音や遮音といった手法に代わる新しい騒音低減手法である,音波の干渉を利用した「アクティブノイズコントロール《の適用を試みる。本報では,適用システムを想定したシミュレーションにより,騒音低減の可能性及び騒音低減量(消音量)の予測手法を検討した。その結果,500Hz以下の低周波騒音に対して,音圧レベルで最大15dB程度の消音が可能であることが分かった。これは音圧が約1/6に下がることを意味している。また,適応システムにより,リアルタイムで消音量を予測できることを確認した。この予測手法は,実際の消音システムにおいてそれを最適化する目的に使用できる。

 

汎用トラクタ作業モニタの開発研究(第1報)  *作業モニタの機能と構造

高井宗宏・端 俊一・松居勝広・村井信仁

キーワード:作業モニタ,情報モニタ,農用トラクタ

実用面でトラクタ作業の高精度化によって土地利用形農業の合理化を図り,研究面ではトラクタの作業実態を記録する装置となる汎用作業モニタ「インプルメイト《を開発した。それは従来得られなかった作業速度や作業機の作動情報を刻々表示して最適な操作を要請し,トラクタ営農の作業精度の改善に大きな効果が期待できる。加えて作業機毎に異なる欧米のモニタを統合したような汎用性を持つばかりか,附属の速度センサには超音波ドップラ速度計測方式を採用して,電波法に規制されず,安全に配慮したものになっている。本報では作業モニタの機能と構造について述べ,第2報でその環境試験・利用法について報告する。なお,本報では情報モニタとして報告するが,作業機の制御出力を持つ制御モニタとして発展させる予定である。

 

バイオマスペレット用燃焼機の燃焼制御特性(第1報)  *立形燃焼機の燃焼特性

林 圭?・岩尾俊男・藤浦建史・澁澤 栄・竹山光一

キーワード:木質ペレット,立形燈焼機,排気ガス成分,空気比,燃焼特性

本研究の目的は,立形ペレットだき燃焼機を用い,燃焼温度と排気ガス中の成分の検出のより,燃料供給量と送風量に関する最適燃焼条件を明らかにし,燃焼制御に関係する基礎的な制御資料を得ることにある。本報では,燃料の供給量に対して最適の燃焼条件を提供する風量が存在すること,排気ガスの主成分は,N2,O2,CO2,COであること,最適燃焼状態の空気比は1.3~1.6であること,燃焼制御ソステム設計に関しては,排気ガス中のO2のみ入力することも可能であることを明らかにした。

 

養液内病原菌のオゾンによる殺菌  *キュウリつる割病菌分性胞子の場合

松尾昌樹

キーワード:オゾン水,殺菌,養液栽培,養液,無農薬防除,病害防除,キュウリ病原菌

養液栽培の無農薬化の一対策として,養液内病原菌に対するオゾンの殺菌効果と,キュウリ椊物のオゾン水耐性につき検討した。キュウリFusarium属菌分生胞子を種々のオゾン水濃度に種々の期間浸漬し殺菌処理した。初期濃度0.25~0.4mg/1では殺菌効果があるが,0.1mg/1ではなかった。処理時間の影響はどの試験区間にも有意差はほとんどなかった。これらのことを電子顕微鏡で観察し検証した。水耕キュウリの根を一時的に0.2~0.3mg/1のオゾン水浸漬すると生育障害を起こすが,0.1mg/1ではほとんど障害は起きない。ゆえに定期的に養液をタンクに一時貯留し,オゾン濃度約0.4mg/1で処理後,濃度の減少を待って還流する方法が実際的である。