第55巻第2号論文要旨

研究論文

スターリング機関の再生器マトリックスと出力特性[英文]

    金 泰漢・岡本嗣男・木谷 収・鳥居 徹

キーワード:Stirling engine, regenerator, matrix element, displacer, aerodynamic friction, P-V diagram, indicated power, net power, gas leakage

スターリング機関においては,再生器がもたらす機関出力特性向上への効果が極めて大きい。機関の効率を高めるためには,この再生器機能の究明と性能向上が重要である。本研究においては,ベローズ式スターリング機関に組み込まれるディスプレーサ一体型再生器のマトリックス要素として利用可能な種々のマトリックス材料を選定し,それぞれを再生器内に充填して運転試験を行い,その蓄熱再生の効果と流動抵抗搊失を測定し,出力特性への影響を調べた。さらに,マトリックス材充填の度合が機関性能に及ぼす影響を明らかにするため,さきに試験した素材の中でマトリックス材として良好な結果が得られたSUS細線を用いて運転試験を行い,充填密度とガス温度および流動抵抗の関係を測定して評価した。

 

燃焼噴射調整装置によるトラクタのPTO全負荷性能(第2報)  *アングライヒ装置

    中司 敬・劉 蛟竜・坂井 純

キーワード:燃料噴射調製装置,アングライヒ装置,ガバナ,エンジン,小型農用トラクタ,PTO性能,全負荷

全報では,11台の15kW級トラクタのPTO出力,弾性特性値,燃費率を測定して全負荷性能の傾向を示すとともに,ガバナ付加されるトルクスプリング装置とPTO性能の関係について明らかにした。本報ではアングライヒ装置について各設計要素がPTO性能,特に全負荷性能にどのように影響するかを実験で求めた。さらに,アングライヒ装置とガバナ本体の力学関係を解析して,アングライヒ装置とトルクスプリング装置の作用の差異を明らかにした。また,アングライヒ装置の作用力と噴射ポンプのコントロールラック変位の関係について検討した。

 

農用自律走行車両の制御に関する研究(第1報)  *超音波センサーを用いたファジィ制御

    倉田和彦・中野和弘・金子昌彦・安達 仁

キーワード:自律走行車両,ファジィ制御,超音波センサー,メンバーシップ関数

本研究の目的は,ハウス内を無人で走行する農用自律走行車両の制御システムの開発である。本報では畝の感知に超音波センサを用いたファジィ制御システムの開発について報告する。モータ駆動の実験走行車両を用い,コンクリート路面上に設定したモデル走行路において試作したファジィ制御による走行実験を行った。畝と車両との距離,車両の傾斜角度などの計測項目及びファジィ制御におけるメンバーシップ関数,さらにはモデル走行路の条件等を変化させた一連の実験によりファジィ制御システムの制御特性,及び問題点を明らかにした。

 

粒剤用土壌消毒機に関する研究(第2報)  *分配機構

    御手洗正文・古池寿夫

キーワード:土壌消毒機,分配機,土壌消毒用粒剤

粒剤用土壌消毒機の研究開発を目的として,多条分配機構の小型化と軽量化ならびに簡素化をはかり,作業精度と作業能率ならびに防除効果を向上させるため,分配用円筒を組み込んだ小型DCブロワタイプの分配機構を考案した。試作した分配機構は,ファン回転速度3500rpmで円筒内風速18~22m/sの環状流が得られ,8個の分配口への分配性能は分配変動率6~8%,繰出し変動率3~4%以下を示し,安定した分配繰出し精度が得られた。また,同分配機構の粒剤粉砕率は0.5~1.0mm粒径に粉砕される重量比率が7%以下,0.5mm粒径以下への粉砕率が約2%と小さく,粒剤への物理的影響も少ないことが明らかになった。

 

イ草の熱風乾燥について(第1報)  *乾燥特性実験

    河崎功三・石橋貞人・伊東 繁・相浦正廣

キーワード:heat drying, rush, coating with mud, water content, rate of vapourization

畳表の原材料であるイ草の乾燥は結束後,泥染めし,乾燥機を利用した熱風乾燥により行われている。しかし,イ草熱風乾燥の研究は十分でなく,結束イ草の乾燥特性や,乾燥における染め土効果等は十分解明されていない。本報では,イ草乾燥機構を解明するための緒として泥染めおよび未泥染めイ草について,それぞれ単体での乾燥実験を行った。実験に採用した乾燥温度は60,70,80,85゚Cであり,それぞれの温度に対して,イ草重量およびイ草直径の時間的変化を測定した。この結果,単位蒸発量と含水率,およびイ草直径と含水率の関係が得られ,イ草乾燥の特性が実験的に明らかになった。これらのことにより,イ草乾燥モデル化し,その乾燥機構を解明するための基礎ができた。

 

青果物充填層の予冷過程における熱伝導係数の有限要素解析(第1報)  *平均熱伝達係数の決定法について

    田中俊一郎・石橋貞人・有薗浩武・守田和夫

キーワード:熱伝導係数,有限要素法,予冷,青果物,充填層

本研究の実用上の目的は,差圧通風冷却方式における最適な熱伝達係数を求めることにある。この目的のために,本報では,青果物充填層の予冷過程における平均熱伝達係数を,有限要素法による試行法のよって求める手法を示した。まず,モデル球の伝熱解について有限要素解と厳密解とを比較した結果,本法によって正確な平均熱伝達係数が得られることを確認した。次に,スダチ充填層について平均熱伝達係数hを求めた結果,たとえば立方格子充填配列法で空塔風速1.62m/sの場合,h=24.4W/(㎡・K)であった。本法は準実用的な予冷装置の場合にもよく適合し,温州ミカン充填層についての平均熱伝導係数hは,たとえばランダム充填配列法で空塔風速0.6m/sの場合,h=23.3W/(㎡・K)であった。

 

キウイフルーツの貯蔵および追熟に関する研究(第3報)

    澤田達也・瀬尾康久・森嶋 博・川越義則

キーワード:キウイフルーツ,貯蔵,追熟,非破壊検査,呼吸,炭酸ガス放出,酸素吸収,エチレン処理

本研究の目的は,キウイフルーツの非破壊的な品質評価および出荷時期に合わせた貯蔵・追熟制御にある。これまでの研究で累積炭酸ガス放出量により,内部品質の非破壊予測が可能であることを明らかにした。本報では,累積炭酸ガス放出量の制御を中心に検討した。その結果,貯蔵雰囲気の温度とガス濃度を変えることにより制御可能であることが分かった。また,官能試験により最適食味は,累積炭酸ガス放出量が14,500mg/㎏程度に達する時期に得られることを明らかにした。さらに,食べ頃に合わせた貯蔵・追熟の制御方法を示唆した。

 

生鮮農産物の呼吸量の測定

    村田 敏・宮内樹代史・王 延耀

キーワード:呼吸,呼吸速度,生鮮農産物,温度依存性

生鮮農産物の呼吸量は,貯蔵に関する研究の基礎資料として大変重要であるが,広い温度範囲に渡って組織的に測定された例は少ない。特にわが国の農産物についての測定例は少ない。そこで本研究では,13種類のわが国の生鮮農産物について,温度と呼吸量の関係を測定した。得られた結果は,温度依存式としてArrhenius式及びGore式を用いて解析し,各農産物の温度係数を計算した。また,測定値から各温度毎の呼吸熱を計算したところ,今回の測定により得られた結果は一般に知られている値よりやや高い結果となった。

 

農林廃棄物の熱分解速度

    繆 冶?・アルビンD.グロバ・吉崎 繁

キーワード:熱分解,反応速度,シミュレーション,バイオマス,熱重量分析

動的熱重量分析法により,もみ殻,ココナッツ・シェルなど16種類の農林廃棄物の熱分解速度を測定し,単一反応モデルおよび多反応モデルで解析を行い,使用した示差熱天秤の操作条件の影響を調べるとともに,試料の熱分解特性を検討した。その結果,熱分解中における反応率の経時変化は単一反応モデルおよび多反応モデルで表示しうること,加熱速度が20゚C/min以下で,N2ガス流量が180ml/min以下の場合,これらの装置操作条件は試料の熱分解速度に影響しないこと,また,灰分が極めて多いもみ殻を除いた試料の熱分解における活性化エネルギーと試料中炭素,水素,窒素および酸素などの元素成分の含有率との間に相関関係が存在することが明らかになった。

 

二相式ファーメンタによる農産食品廃棄物からのバイオガス発生システム(第1報)  *芋焼酎蒸留廃液について

    田原迫昭爾・守田和夫・西 功至・林 純男

キーワード:two-phase fermenter, anaerobic fermentation, organic waste, COD removal rate

本研究は,廃棄物の嫌気性発酵処理に二相式ファーメンタを導入し,発生する高濃度バイオガスの利用性について検討するものである。本報では,有機物濃度が高く,廃棄の難しい芋焼酎蒸留廃液について実験を行い,廃液処理効率,バイオガス発生効率および回収エネルギの有効性について報告する。すなわち,廃液処理では,有機物の分解消化をCOD除去速度,COD除去率,BOD除去率および発酵阻害物質から論じ,その最適な発酵条件を示した。発生するバイオガスについては,ガス発生速度,ガス化率およびメタン濃度からガス発生効率を論じ,二相式ファーメンタの有効性を明らかにした。さらに,発生するバイオガスから回収可能なエネルギを試算し,焼酎廃液処理にバイオガス発生システムを導入することが妥当であることが明らかにした。

 

椊物3次元形状の非接触計測システムに開発

    清水 浩・大下誠一

キーワード:phytotechnology, noncontact measurement, image processing, leaf elongation, leaf area, three dimension

椊物の3次元形状を画像処理技術を応用して,非接触で計測するシステムを構築し,イネなど披針型の椊物葉の伸長生長量,葉面積を計算するための処理アルゴリズムを開発した。モデルを使用した実験の結果,計測値の99[%]信頼区間の幅が画像分解能の約65[%]であり,精度の高い計測が可能であることが確認された。また,本システムによる計測の一例として,環境温度変化に対するイネ第2葉の伸長生長量,葉面積の応答を計測し,非接触にて椊物3次元形状の変化を詳しく計測できる可能性を得た。

 

トウモロコシ根系パターン形成の階層的モデリング

    澁澤 栄・藤浦建史・岩尾俊男・竹山光一

キーワード:生物モデリング,Lシステム,パターン形成,階層性,分枝,根系,トウモロコシ

Lシステムの方法を基礎にして,土壌密度変化を考慮したトウモロコシ根系生長モデリングを実施した。このモデリングは,全体的特徴を記述するメタルール,中間的スケールの比較的規則的な根系分枝ルール,小さなスケールでのランダム性の高い根端生長運動という,断層的なルール群の構成を特徴としている。また大スケールにおける上位階層規則がより小スケールの運動を大局的には支配するという,階層間の相互関係をもたせた。作成した根系生長モデルは,実際に得た根系サンプルの形態をよくシミュレーションできた。

 

カルス増殖に及ぼす静電界の影響

    松尾昌樹・内野敏剛

キーワード:アスパラガス,カルス,静電界,電界暴露,成長促進,増殖

アスパラガスのカルスを100,150,200,250kv/mの均一な電界下に暴露した。実験1では暴露期間を連続,継続,初期の3種,実験2では処理日数を変えた連続処理とし,カルスの増殖に及ぼす電界強度の影響を調べた。実験2では処理区のカルスの増殖は処理日数と電界強度に関係なく対照区より高い値を示し,乾物率は低い値を示した。また,電界強度の増加に伴い増殖率は増大し,また,処理日数の増大につれ乾物率は減少の傾向がみられた。これらの理由はカルスによる水または溶液の吸引力,または培地の理化学的性質が電界に影響されるためと考えられる。