第55巻第1号論文要旨

研究論文

燃料噴射調製装置によるトラクタのPTO全負荷性能(第1報)  *トルクスプリング装置

    劉 蛟竜・中司 敬・坂井 純

キーワード:fuel delivery calibrator,torque spring apparatus,governor,engine,small farm tractor,PTO performance,full load

多くのトラクタでは,PTO性能,特に全負荷性能の改善を狙って,燃料噴射調製装置いわゆるトルクスプリング装置とアングライヒ装置がガバナの付加装置として設けられている。本研究は,これらの装置とPTO性能との関係を検討し,全負荷性能の設定方法を明らかにする。本報では,まず,測定した11台の15kW級トラクタの出力,弾性特性値,燃費率を分析して,全負荷性能の設定思想や設計方法にはメーカによって大きな差異の有ることを示した。ついで,トルクスプリング装置の各設計要素がどのように全負荷性能に影響するかを実験した。さらに,トルクスプリング装置とガバナ本体の力学関係を解析し,各要素の設計方法を検討した。第2報では,アングライヒ装置について述べる。

 

人による2輪トレーラ系の操縦性(第1報)  *前方注意点モデルのトレーラ系への拡張

    鳥巣 諒・武田純一・S.W.ムグシア

キーワード:maneuverability,human operator describing function,predictive model,forward maneuver,tractor-trailer combination

人が連結車両であるトラクタ・トレーラ系をどのように操縦しているかを明らかにするため,2輪トレーラ系を操縦するときの人の操縦の仕方を運動学と制御理論の二つの観点から検討し,連結車両に対する人の制御動作モデルを提案した。このモデルと車両系の線形化方程式を用いて,前進車線変更時のシミュレーションを行い,実車実験の結果を比較し,理論の妥当性を検証した。また,この結果を用い人の操縦性を検討し,特に後続するトレーラ部の運動に余り注意を払わない操縦法が,近藤モデルの自然な拡張になっていることを示し得た。

 

ミニマムティレッジツールに関する研究(第2報)  *タインの圃場試験

    申 順男・木谷 収・岡本嗣男・米川智司・坂井 純・鳥居 徹

キーワード:tine,minimum tillage,tillage blade,soil pulverization,spring-tine

本報では,シングルづめについて低速度で行った土壌槽の実験結果を圃場レベルで検証し,複数タインによるより高い速度で耕うん抵抗特性を調べることを目的としたものである。実験から,弾性によるタインの抵抗特性の変化は,土壌槽実験と同様の傾向を示した。複数タインの場合は,タインの数が増加することによって,比抵抗は小さくなり,耕うん速度の増加による比抵抗の増加分も小さくなることが分った。また,画像処理による砕土状態の計測方法を用いて,タインの砕土性能を調べた結果,剛性タインに比べ,スプリングタインは砕土率を高めることが明らかになった。

 

粒剤用土壌消毒機に関する研究(第1報)  *スクリュフィーダの粉粒剤繰出し精度

    御手洗正文・坂井 純・古池寿夫

キーワード:soil fumigator,screw feeder,granular nematicides

粒剤用土壌消毒機の研究開発を目的として,粉粒剤兼用の小型スクリュフィーダを試作し,その繰出し性能特性を検討した。スクリュフィーダ軸回転周期の1~1.4倊の繰出し変動周期を示したが,繰出し変動率は5%以下を示し,粉粒剤の物理性と繰出し量に応じた適切なスクリュ形状の選択をおこなうことにより,粉粒剤の精密な繰出し機構として十分利用できるものと考えられた。小型スクリュフィーダの形状は粉粒剤繰出し精度ならびに所要動力特性より,スクリュピッチ18.7㎜,スクリュクリアランス2.0㎜が粉粒剤繰出しに適することが明らかになった。

 

穀物の回転式流動層乾燥装置に関する研究(第2報)  *小麦及び大豆の乾燥

    長廣仁蔵・樋口 健・渡辺安司

キーワード:drum-type fluidiyed dryer, drying performance,wheat,optimum drying condition, rift, wrinkle,crack,chaff,ricebran

第1報に引続き,試作した回転式流動層乾燥装置によって,小麦及び大豆の乾燥実験を行った。その結果,(1)小麦の推奨乾燥条件は,乾燥風温度T=40~45゚C,風量比Qr=0.06m3/(S・100㎏),(2)大豆の推奨乾燥条件は,T=25~27゚C,Qr=0.05㎡/(s・100㎏)であることがわかった。特に,(3)大豆乾燥の問題点である裂皮,しわ粒及び砕粒粒の発生は,ほとんど認められなかった。また,(4)試作した乾燥装置の内外筒を塞いで,大豆1に対して体積比で「籾がら《1/2,「ぬか《1/4の混合物を張り込み,攪拌混合させることによって,良好な大豆研磨ができることがわかった。

 

単層大豆の乾燥特性

    村田 敏・河野俊夫・榎本敏夫

キーワード:rewetted soybeans, single-layer drying, cylinder model, drying simulation, Arrhenius type equation

大豆(品種タマホマレ)約100gを35%に調湿し,温度30~60゚Cと相対湿度20~70%(RH)の範囲で乾燥試験を72h行った。サンプル受けは,直径150mmで底に目開き寸法5mmのメッシュを取り付けてあり,流量は10m3/hに設定した。自由含水比を対数目盛のとり時間に対してプロットしたところ,漸近直線の切片は0.69に近いことがわかった。このことから,無限円筒モデルを大豆の乾燥モデルとして適用した結果,測定値とモデルは極めてよく一致した(含水率の実測値と計算値の差の標準偏差S.D.<0.12%d.b.)。これらの測定データに無限円筒モデルの解を最小自乗法で当てはめて算出した乾燥速度係数K2をArrhenius型の式に当てはめた結果,次の式が得られた。K2=482.48・exp(*T/2583.6)(1/h) 標準偏差1.19×10 ̄3(1/h)

 

ソバの乾燥と品質(第2報)  *常温除湿乾燥法によるソバの乾燥

    魏 長楽・守田和夫・田原迫昭繭・林 節男

キーワード:dehumidifying drying, buckwheat, drying rate, dehumidified water, dehumidifying coefficient

コンバインで収穫直後の高水分玄ソバを常温除湿乾燥装置を用いて,実用規模の乾燥実験を行い,除湿性能および乾燥効率について検討した。その結果,外気条件と除湿量の関係から除湿係数Kwを算定し,各期間の除湿効率および乾燥効率を比較した。また,除湿乾燥装置を適切に利用するため,外気条件と着霜危険領域の関係を明らにした。さらに,外気条件と所要電力消費量の関係を調べ,算定法による除湿量予測を可能にした。

 

衝撃荷重による果実の硬さ測定に関する研究

    芋生憲司・森嶋 博・瀬尾康久・澤田達也

キーワード:kiwifruit, nondestructive quality detection, fruit firmness, impact force, maturity

果実の品質を非破壊で迅速に評価する方法の一つとして,果実を平板上に落下させた際に受ける衝撃荷重に関する研究を行った。果実の質量,速度および力学的物性が衝撃荷重に及ぼす影響を理論的に示し,果実硬度を示すパラメータの計算方法を提案した。この値は衝撃荷重と果実の質量から計算され,衝撃速度を特定する必要はない。実験は様々な熟度のキウイフルーツを用いて行い,衝撃荷重を測定,解析すると同時に非破壊果実硬度,糖度および酸度を測定し,衝撃荷重から求めた硬さ指数とこれらの測定値の関係を示した。

 

高周波インピーダンスによる農産物の非破壊鮮度判定(第3報)  *浸漬比較法による青果物の非破壊内部品質判別

    加藤宏郎

キーワード:impedance, immersion method, comparison measuring, nondestructive evaluation, fruit quality

青果物の過熟・老化・腐敗などに伴う細胞組織の変化は,電気特性の変化として明確に現れる。本報では,青果物の品質の差がインピーダンス特性に顕著に現れる低周波領域でも非破壊測定でき,大きさや形状に関係なく簡単に平均的な電気特性が判別できる浸漬比較法を提案した。この方法は青果物を水中に沈めて電気特性を測定し,水のみの電気特性値と比較して品質判定する方法で,モモ・カキ・ナシ等について適用の可能性を追求した。水―果実系のインピーダンス特性を検討した結果,いびつな形状の青果物も大きさに関係なく平均的性質が測定でき,非破壊で鮮度等の品質を判別できることが分った。

 

キウイフルーツの貯蔵および追熱に関する研究(第2報)

    澤田達也・瀬尾康久・森嶋 博・川越義則

キーワード:kiwifruit, storage, ripening, nondestructive teating, respiration, CO2 evolution

キウイフルーツ'ヘイワード'の非破壊的な品質評価および出荷時期に合わせた貯蔵・追熟制御を目的として,貯蔵・追熟実験を行った。その結果,累積炭酸ガス放出量は,貯蔵・追熟日数と温度の関数として表されることが分った。貯蔵温度は,累積炭酸ガス放出量,重量変化および軟腐症発生率に影響を及ぼすが,酸度および糖度の変化には影響がほとんどないことが分かった。累積炭酸ガス放出量を測定することにより,硬さおよび酸度の予測が可能であることが分かった。さらに,貯蔵・追熟中の温度を制御して適食果実を得る手法を示した。

 

小椊物体の培養増殖への電界処理効果

    松尾昌樹・内野敏剛

キーワード:electric field, tissue culture, plant growth enhancement, AC field, DC field, electric field exposure, culture plant

ひずみ波交流電源(ネオントランス),正及び負の直流電源を用い,培養器内のミント小椊物体を電界に連続暴露し,その成育への影響をみた。電源の種類により,小椊物体の生長に差がみられるが,どの電源でも75KV・m‐1程度の電界で大きな生長促進効果を示し,より低位あるいは高位の電界では,ともに大きな制御効果がみられたことから,生長促進に最適な電界強度の存在が推察された。また,電界暴露の影響は,促進,制御とも地上部より根部に大きく現れ,対照区に体する増減比は正の直流では根部乾物重で約2.0,根部生体重で約1.6となった。