第54巻第6号論文要旨

研究論文

トラクタ―作業機系の回転部分相当質量について(第1報)  *乗用トラクタ―作業機系の回転部分相当質量の測定

坂井 純・武田純一・鳥巣 諒

キーワード:equivalent mass, moment of inertia, tractor-implement system, gear ratio, power train

トラクタなどの内部に回転部分をもつ農業機械の動特性,特に過度特性を把握するために機体内部の回転部分の影響も考慮しなければならない。本報では乗用トラクタ―作業機系のクラッチ以降の動力伝達系を分解して,個々の回転軸ごとの慣性モーメントを測定することにより,機関部を含めない機体内部の回転部分相当質量を計測した。その結果,乗用トラクタの場合は自動車の場合と同様に変速比が大きくなるほど回転部分相当質量が大きくなるほど回転部分相当質量が大きくなる傾向を持つが,自動車の値よりも大きくなること。変速比が小さくなるほど後車軸まわりの慣性モーメントの影響が大きくなること。また,農業機械特有の現象として作業機を装着した場合は,作業機側の回転部分相当質量の影響が大きいことなどを定量的に明らかした。第2報以下では歩行用トラクタの回転部分相当質量の測定結果とトラクタ系の加速・減速問題などの過度特性について報告する。

 

タインセンサによる粒状体の状態計測に関する研究  *砂の表面形状変化とかさ密度変化の計測

田島 淳・玉木浩二・小林 正

キーワード:tine-sensor, granular material, rotative soil bin,force acting point,surface profile, bulk density

砂中を移動する鉛直なタインセンサにかかる力の水平分力と作用点位置を計測することにより,粒状体の表面形状,かさ密度などの状態を計測し得る可能性を検討した。また,土壌槽を円筒・回転型とし,実験の省力・迅速化を試みた。回転式土壌槽を用いて攪拌した供試砂においては,作業深さが一定ならば,分力の頻度分布は常に同様の傾向を示し,回転式土壌槽により均一な試験条件の再現が可能であることが示唆された。タインセンサに作用する分力の測定から,均一なかさ密度状態に供試砂においては表面形状の推定が表面形状が一定の供試砂においては,かさ密度の変化の推定が可能であることが示唆された。

 

ミニマムティレッジツールに関する研究(第1報)  *タインの土壌槽実験

申 順男・木谷 収・岡本嗣男・鳥居 徹・米川智司

キーワード:minimum tillage, tine, tillage blade, spring-tine, soil failure, model study

本研究は,ミニマムティレッジ用機械の最もよく使用されている幅のせまいタインの耕うん特性を明らかにし,AI的手法によるミニマムティレッジツールの選定方法を確立するために行ったものである。得られた一連の研究結果を以下のように報告する。本報では,室内土壌槽を用いて,まずスプリングタインとリジッドタインの比較実験を行い,タインによる土壌の破壊過程の観察実験を行って,弾性によるタインの耕うん抵抗特性の変化を調べた。さらに,タインの傾角,耕深と幅の比,弾性,耕うん速度によるタインの耕うん特性と抵抗の動的特性の変化を考察した。

 

自脱コンバイン排わらカッタの改良に関する研究(第2報)  *麦わら縦切断装置の改良

田坂幸平・柴田洋一・天野憲典

キーワード:head feeding combine, straw, straw cutter, splitting

麦わらを縦に切断するための装置を実用化するために,縦切断刃の形状,縦切断装置の構造,性能,負荷特性等について検討を行った。この結果,装置の回転軸に直径50mmの中空丸網を用い,高速軸縦切断刃の突起部分と低速軸縦切断刃の突起部分と低速軸縦切断刃の縦溝を向かい合わせに配置したロール状の縦切断を採用した縦切断装置を試作し,入水後3日間以上の湛水と浅水代かきにより浮きわら率を1%程度に下げることができた。また,この装置は市販の排わらカッタに比べて3~6倊の所要時間を必要としたが,回転軸の回転数を高めることで所要動力の低減が可能であること等を確かめた。

 

模型実験機による稲の脱穀実験

梅田幹雄

キーワード:threshing mechanism, ear-breaking control, ear-breaking sensing, threshing energy, threshing tooth force, strobe-picture, strain gage

本研究は,2種類の脱穀型実験機を用いて,こぎ歯が作用したときの稲の動きの観察とこぎ歯の歪の計測により,穂先供試式の稲の脱穀状態のセンシングの可否を確認したものである。葉を除去した1本の稲という限定した条件下であるが,ストロボ写真撮影と脱穀エネルギの実測値と計算値の比較により脱穀理論を実証した。次に,理論に基づいて設定した条件下で自脱と同精度の脱粒が可能であること,及び,穂切れの発生の制御は,衝突時のこぎ歯と穂の姿勢を変更することにより可能であり,歪ゲージを用いた場合は,穂切れの発生の有無のセンシングは可能であることを明らかにした。

 

ソバの乾燥と品質(第1報)  *玄ソバの乾燥特性

田原迫昭爾・守田和夫・魏 長楽

キーワード:drying constant, buckwheat, drying rate, moisture ratio

コンバインで収穫直後の高水分玄ソバを送風空気温度10から50゚Cの5段階で薄層状態による通気乾燥を行い,その乾燥特性を比較した。その結果,乾燥速度は初期の減率Ⅰ期とそれ以後の減率Ⅱ期に分かれ,減率Ⅰ期は殻皮からの水分,Ⅱ期は種実からの水分が主体の乾燥であった。また,乾燥速度と含水率および自由水分比と乾燥時間の関係から,それぞれの乾燥定数を求め,比較するとともに,送風空気温度との間に実験式を導いた。

 

穀物の回転式流動層乾燥装置に関する研究(第1報)  *籾米の乾燥

長廣仁蔵・樋口 健・渡辺安司

キーワード:grain dryer, circulation-type dryer, damaged grain, taste reduction, drum-type fluidized dryer, rough rice, drying rate, moisture content, drying by dried air

今日,実用されている循環型及び静置型の穀物乾燥装置に比べて,乾燥による穀物の変質,食味低下,発芽率低下,搊傷粒発生などが格段に少なく,低温熱風または除湿低温風による構造簡単で低コストの回転式流動層乾燥装置の開発に着目し,その開発に必要な各種の設計標準値を決定する目的で,研究用小型乾燥装置を試作して籾米,小麦,大豆の乾燥実験を行い,その実用性を確認した。第Ⅰ報では,籾米の乾燥性実験を行い,(1)搊傷粒,胴割粒及び乾燥ムラなどが発生しない良好な乾燥性能,並ぶに(2)循環型乾燥装置による乾燥米に比べて食味値が3~10%高い優れた乾燥結果が得られたので,これらの研究成果を報告する。

 

インペラ式籾すり機の動力学解析(第2報)  *籾すり実験値と理論値の比較

西山喜雄・菊池 豊・志斉琢磨

キーワード:impeller, rice husker, law of proportion, husking ratio, crack ratio, energy consumption, Weibull distribution function

インペラ式も籾すり機の標準脱ぷファンと新規に試作した脱ぷファンを使って,脱ぷファン回転数と脱ぷ率,消費エネルギ,胴割れ率および砕米率の関係を実験的に調べた。これらの実験結果に対して,前報で報告した,籾―羽根系の動力学方程式の数値解と比較検討した。その結果,消費エネルギは,脱ぷファン回転数の2乗に比例しており,前報で導いた「脱ぷファン回転数についての比例則《が実証された。さらに脱ぷ率は脱ぷファン回転数および印加エネルギについてのワイプル分布関数などで表すことができた。

椊物の体内水分状態の計測・制御に関する研究(第1報)  *ノンパラメトリックな同定に付いて

鳥居 徹・岡本嗣男・木谷 収・落合貴之

キーワード:cross correlation function, identification, frequency response method, M sequence, water relations

作物の水管理,とりわけ椊物体内水分を制御することは,ハウス栽培や椊物工場において重要な技術である。これは,最適な水管理によって作物の品質向上が図られるからである。本研究では疑似上規則信号にしたがって強度が変動する光を椊物に与えて,椊物の周波数特性を求めた。光に対する応答として葉温変化,蒸散速度,茎径変化を計測し,それぞれについて相互相関関数,周波数応答関数を求めた。その結果,タイムラグはそれぞれ約1分,4分,8分であることが分かった。また,ステップ入力からも周波数応答を求め,上規則入力による応答と比較検討を行った結果,ほぼ一致することが明らかになった。

 

ひずみ波交流電界が椊物生育におよぼす影響  *培養小椊物体の場合

松尾昌樹・内野敏剛・大村真理子

キーワード:electric field, alternating electric field, plant growth enhancement, tissue culture, field strength, electric field exposure, culture, plantlet

電界が椊物の生育に及ぼす影響をみるため,ミント培養小椊物体を0.5kVのひずみ波交流電界に曝露し20日間培養した。明暗期連続曝露では約9日間の処理で対照区に対する成長の増減比は最大となり,明期のみ曝露では19日間の処理で増減比が最大となり,暗期のみ曝露は約14日間で根部乾物重に有意な増加をみた。3処理方法とも茎葉部に比し根部の生長が顕著であった。3処理法間には生育に大差はないが,電力,保守等から明期か暗期のみ処理が有利である。一般に電界曝露により生体重の増減比は増大し,乾物重も対照区より大きいが,生体重ほどでないため,生育増は主として水分増によると考えられる。