第54巻第5号論文要旨

研究論文

農用トラクタの可動ラグ式走行補助装置に関する研究(第3報) *自動作業システム

小松 実・樋口英夫・野波和好

キーワード:tractor, traction, aid, adjustable lug, automatic operation system

可動ラグ式走行補助装置の作動とその解除を,けん引負荷や走行面の状態などによって生ずる進行低下率の大小を目安にして行うシステムについての報告である。後輪駆動輪の回転数に対する前輪転動論の回転数の比による数値を入力として制御する比率制御と,硬い路面を無負荷走行したときの前輪転動論回転数を基準値として,作業時の前輪転動論回転数を比較し制御する低値制御の双方について実験した。本研究では,15%以上の進行低下率で作動する設定とし,その安定した作業状態や進行低下率の減少並びにけん引力増大などの諸効果を水田や畑地におけるテストで確認した。

 

傾斜地用トラクタの姿勢制御に関する研究(第3報)*加速度入力サーボ弁センサの応答特性

田尻功郎・佐藤邦夫

キーワード:slope tractor, inclination control, sensor, jet pipe servo-valve, automatic control, spring-mass system

傾斜地用トラクタの姿勢制御センサとして加速度入力サーボ弁センサを試作し,その固有の特性を明らかにした。センサは噴射管式サーボ弁,片持ばね,重りで構成され,重りに作用する加速度に応答して噴射管と油圧回路が作動する。試作において,サーボ弁の運動方程式を誘導して伝達係数を求め, 周波数特性を解析した。更にセンサ設定位置を考慮して作動油流量をシミュレートし,性能実験によって運動方程式がほぼ妥当であることを確かめた。ステップ応答の実験においては,固有振動数の影響が少なく,サーボ系は安定することが判明した。

 

上飽和非排水条件下で繰返し荷重を受ける土の動的締固め特性

アデビィ,O.A.・小池正之・小中俊雄・谷  茂

キーワード:compaction, unsaturated soil, cyclic loading, triaxial UU test, cyclic stress ratio

農用地は車両の通過に伴い,上飽和状態でせん断,圧縮作用を受ける。このうち圧縮作用は,土の締固め現象と強い相関を持っているため,ここでは繰返し三軸UU試験により本現象の動的挙動を記述しうるパラメータの探索を行った。まず供試土の工学的強度を解明するため,静的三軸UU試験を実施した。せん断強度に関連したパラメータの特定ができ,併せて飽和度によってせん断強さの変化する様子を定量的に指摘することができた。載荷周波数が大きくなるにつれ,また同一載荷周波数では応力振幅比の増加につれて,軸ひずみ量は増加した。軸方向変位と内部応力のゲイン特性では,軸方向変形量が最大となる載荷周波数の領域が存在することが分かった。

 

土壌の線切削に関する基礎的研究(第1報)  *すべり線発生パターンについて

小池正之・湯沢昭太郎・小中俊雄・棟上俊博

キーワード:soil cutting, slip-line, soil fracture, metal abrasion, share point, cutting edge

切削刃の刃縁部が,土壌切削時のすべり線発生挙動の特定に大きな影響を与える現象について実験的に確認し,すべり線発生パターンについて多面的角度から検討を行った。線径2mmまでの線切削では,土壌硬度が小さければ,初期最大水平方向分力と線径との間に判然とした傾向は現れなかった。上下方向分力と水平方向分力の分布割合が定量的に把握できた。上下方向分力は4.0~12.6N程度であり,水平方向分力の1/3~1/10にすぎなかった。すべり線の生長速度は0.005sを越える速さであり,また立上がり角度は特定の範囲内に落着く傾向となることが分かった。ソイルブロックに発生するすべり線の再現性は高いことも指摘できた。

 

気流によるわら・穀粒の選別に関する研究(第1報)  *シャンクおよびチゼルの形状と土壌の破壊

牛  雨・南部 悟・高井宗宏・端 俊一・酒井憲司

キーワード:straw, air stream, grain, separation

高性能なわら・穀粒選別機構を開発することを目的として,従来と異なるわら・穀粒の選別方法を考案した。この選別方法では,脱穀部からの排わらをスクリーンコンベヤによって機外へ排出しながら,吹上気流を利用してわら層を膨軟にすることにより,ささり粒を分離選別する。本研究では,この選別方法の実用可能性を調べるための基礎実験として,バッチ式選別装置による実験を行い,わら層の挙動と穀粒分離の関係,わらの量,気流の作用回数と作用時間が選別性能に及ぼす影響等を明らかにして,本選別法がわら・穀粒の分離に有効であることを実証した。

 

自脱コンバイン排わらカッタの改良に関する研究(第1報)  *麦わらの縦切断装置の開発

田坂幸平・柴田洋一・後藤美明・井尻 勉

キーワード:head feeding combine, straw, straw cutter, splitting

稲麦二毛作体系における麦わら還元圃場において,代かき後の湛水面上に浮遊する麦わらの沈下を促進するため,縦切断された麦わらの沈下率が高いことに着目し,自脱コンバイン排わらカッタで麦わらを縦切断する方法を検討した。深さ2mm,幅8~10mmの縦溝及び横溝を表面に成形したロール状の縦切断刃を,従来の自脱コンバイン排わらカッタに取り付けて麦わら縦切断装置を試作し,圃場において小麦の収獲とわら処理を行った。その結果,試作機は麦わらを連続的に縦切断することができ,耕転・代かき後の浮きわら率は約0.5%となり,対照区の3.2%に比較して極めて優れていることが実証された。

 

追従型けん引システムの開発(第1報)  *制御方式の開発とインライン式けん引作業機への適用

瀧川具弘・山吊伸樹・平田 晃

キーワード:trailer, tracking performance, steering control, active control, off-tracking, turning

セミトレーラタイプのけん引式農業機械のトラクタへの追従性の向上を図ることを目的として,トレーラ車輪の操向制御方法の研究を行った。制御方法の基本的な考え方は,トラクタとトレーラとの定常円旋回半径を一致させることにある。まず,この幾何学的な関係を表す方程式を導いた。この方程式に基づき,トレーラ車輪の操向角度をトラクタ車輪の操向角度のけん引角度の関数として制御するアクティブ制御方式を提案した。さらに,この制御方式を組み込んだトレーラを試作し,定常円旋回試験を行った。試験の結果,この制御方式によりトレーラの内輪差をほぼ解消できることを確認した。

 

二層構造をもつ青果物の予冷過程における熱伝導問題の有限要素解析

田中俊一郎・石橋貞人・佐藤 浩

キーワード:precooling, heat conduction, problem, thermal property, two-layer structure, shaddock, finite element method

厚い果皮をもつブンタンのような青果物を,二層構造をもつ任意形状軸対象物体と見做し,果肉と果皮の温度伝播率を求める方法を示すことを主な研究目的とした。この目的のために二層モデル球とブンタンを用いた。その結果,まず熱物性の異なる二層構造モデル球のそれぞれの熱伝導率は,冷水冷却実験と有限要素法による試行法とによって決定できることを示した。次に,ブンタンの果肉部と果皮部の温度伝播率は,有限要素法と冷水冷却実験による内部温度の経時変化曲線との比較から,それぞれα1=6.84×10*4,α2=4.44×10*4㎡/hrと決定された。

 

ピーナッツの機械収穫に関する研究(第1報)  *自走ディガスクリュー型ピーナッツハーベスタの試作とその性能試験

スリョブソノ・石原 昂・岩崎正美

キーワード:peanut harvester, self propelled, digger screw, harvesting rate of pod, sandy field

ピーナッツの収獲作業機械化を目的として,一対の掘り起こし用ディガスクリューを装備した自走ピーナッツハーベスタを設計・試作した。現地砂丘畑での性能試験の結果,作業速度0.8―1.2㎞/hおよびディガスクリューの周速度0.82―0.88m/sで,(株)収獲率あるいは切株収獲率100%および莢収獲率90~92%を得た。莢搊失は,試作機によるもの平均4.5%で,収穫前の椊栽状態において,分離莢が約4%であった。

 

牛肉中の大豆蛋白製品の簡易定量法

石橋憲一・弘中和憲

キーワード:beef, soybean protein, chemical composition, mixing ratio, linear programming

肉製品中に添加されている大豆蛋白製品の簡易な適量法を線型計画法を用いて,検討した。S200WとTSOの一般成分の組成は類似しているため,線型計画法で両者を識別することは上可能であった。しかし,大豆蛋白混入牛肉の加熱処理の有無および牛肉の乾燥方法の差異が,大豆蛋白製品の識別,定量にほとんど影響しないことが分かった。信頼度99%で,大豆蛋白混入牛肉中の各混合比を約±3%の精度で推定できるので,肉ならびに添加される椊物蛋白質製品の種類が既知の場合,線型計画法による各混合比の推定精度の高いことが明らかになった。また,それらの種類が未知の場合でも,食品成分表を援用して,種類や混合比の識別,定量の可能性の大きいことが示唆された。