第54巻第3号論文要旨

研究論文

トラクタ作業機のマイクロコンピュータ制御(第1報)  *プログラマブル三点リンク電子*油圧制御システムの構成

江  毅・穂波信雄・梅田幹雄

キーワード:microcomputer control, tractor implement, tilling depth control, load control, attitude angle control, solenoid directional control valve, PWM

耕うん作業機の耕深,姿勢角及び負荷の混合制御機能を有するトラクタマイクロコンピュータ制御システムの開発を行い,その応答特性について検討した。本システムは,電磁方向切換弁のPWM駆動による油圧流量制御とシステム硬性の単純化を試みた。また,フィードバック情報がトラクタ本体のみに依存する自律性の高いシステム構成を行い,システムの柔軟性を高めるため各制御機能をソフトウェアによって構成するプログラムを開発し,その有効性を確かめた。第2報においては,本システムの圃場実験による実用性について報告する。

 

農用連結車両への最適制御理論の応用

張 樹槐・寺尾日出男・上野正博・藤田耕一

キーワード:tractor-trailer combination, optimal control theory, performance index, optimal control mode, relative angle of TTC, trajectory difference

本研究は操縦性・安定性を向上さあせるために,農用連結車両に最適制御理論の応用を試みた。供試路面はアスファルト路面・えん麦収穫跡地の2種類を選び,制御モードは,後退時の相対角を評価関数とする制御モード1(後退直進運動制御),車両の重心軌跡を評価関数とする制御モード2(前進運動内輪差制御)の2つに関して検討した。トラクタの走行速度は,約0.25m/s以下に設定した。その結果,①農用連結車両の後退走行は容易に行えた。②トレーラ車輪の操舵制御によって,両車両重心の軌跡ずれの最大値は制御しない場合の約80%以上低減できた。③構築した制御システムは,アスファルト路面だけでなくえん麦収穫跡地においても有効性が認められた。

 

土の瞬間的締め固めに与えるトラクタの前進速度の効果

アシェナフィT.アベベ・山崎 稔・笈田 昭・中嶋 洋

キーワード:transient soil compaction, travel velocity, penetration resistance, rut profile, compaction index

瞬間的な土の締め固めに対するトラクタの前進速度の効果を調べるために,圃場実験を行った。実験では,けん引負荷を持たない後輪駆動の標準トラクタを用いた。トラクタの入力ファクタに対して土の応答変数がどうなるかといった観点から,この土の締め固めという実際に重要な問題を取り扱った。種々のトラクタ速度に対する土の締め固めの強さと分布を正しく求めるために,わだちの形状,コーン貫入抵抗および土の粗密度の測定結果を用いた。トラクタの速度が0.5m/sから4.5m/sに増加すると,土の締め固め度は15%減少,貫入抵抗は7~10%減少,また地表面の変形量(沈下)は24%減少した。

 

流体を噴出するサプソイラの最適形状(第3報)  *土壌の破壊状態に対する速度の影響

新家 憲・高  鋭・常松 哲

キーワード:subsoiler, speed, fluid, soil failure, injection, pan-breaker, injector

前報における土壌槽内の基礎実験で,流体を噴出するパンデレーカおよびインジェクタの最適モデル形状を決定した。本報ではこれを基本にして,それぞれの実用機を製作した。これらを室内の実験ほ場で水を噴出して牽引試験した。速度を約2×10-2~1.0m/sに変化させたとき,土壌の破壊状態がどのように変化するかを調べた。結果として,供試土壌では,含水比が増加するに従って3種類に破壊特性が変わった。完全崩壊,亀裂破壊,塑性流動である。亀裂破壊の時は,速度が増加すると,土壌の破壊距離は10~15%,破壊エネルギは20~30%増加した。他の破壊特性の時は速度に影響されなかった。速度より含水比が破壊状態に大きく影響し,破壊特性が亀裂破壊に変わることによって,破壊距離は1.3~2.0倊,破壊エネルギは3~5倊に増加した。

 

自動脱穀機の脱粒機構の解析(第3報)  *脱粒過程の解析

梅田幹雄

キーワード:threshing mechanism, head feeding thresher, detaching rate, collision rate, grain distribution test, binomial distribution, Weibull distribution

本研究は,自動脱穀機(以下自脱という)の稲の脱粒機構の解析を行ったものである。第1,2報にて稲の運動及びこぎ歯の必要速度について解析した。本報では,自脱の穀粒過程における脱粒率に信頼性工学の故障率の概念を適用して脱粒過程を解析した。単に脱粒率を算出しただけでなく,2項分布によって表したこぎ歯と茎の衝突率に,こぎ歯の形状,速度と稲の脱粒性の難易によって決まる重み関数を乗じて脱粒率を算出し,理論的根拠を明確にした。次に,自脱の脱粒分布にはWeibull分布が適用でき,Weibull分布の形のパラメーターMにて脱粒分布が評価できることを示した。これらを脱粒分布実験結果に適用して,脱粒分布に与える要因を明らかにした。

 

土壌密度変化のトウモロコシ根系分布への影響

澁澤 栄・藤浦建史・竹山光一・岩尾俊男

キーワード:corn, root system, power distribution, fractal, self-affinity, soil density

土壌密度差を与えた根箱を用いて,トウモロコシの根系分枝パターンと根系分布の特性を調べた。比較のための均一な土壌密度の根箱も供試した。根系の分枝角や分枝根発生間隔などは,ばらつきはあるものの,平均としては根箱間に大差ない。上層と下層で土壌密度差を与えた方が,均一な土壌密度より根系成長が活発となり,特に低密度領域での分枝根伸長が顕著であった。根系分布の全体的特徴は,自己アフィンフランクタル(異方的なフラクタル)である。根系分布の部分的特徴として根密度と分布角に注目し,それらの変化パターンが土壌密度条件によりそれぞれ2種に大別できることを示した。

 

キウイフルーツの貯蔵および追熟に関数研究(第1報)

澤田達也・瀬尾康久・森嶋 博・芋生憲司・川越義則

キーワード:kiwifruit, storage, ripening, CO2evolution, non-destructive testing, hardness

キウイフルーツ'ヘイワード'の貯蔵・追熟加工の自動化のための基礎研究として,最適可食状態を明らかにし,貯蔵試験を行った。その結果,果実硬度と累積炭酸ガス放出量との間に非常に高い相関があることが分かった。キウイフルーツは収穫後1ヶ月ほどの間に急激に糖度を増し,追熟により酸度の低下と果肉の軟化が起こり可食となることが分かった。

 

食パンのレオロジに関する基礎的研究(第3報)  *ローフの保存中における含水率変化及び測定条件が圧縮破壊特性に及ぼす影響

王 益平・森嶋 博・瀬尾康久・相良泰行・芋生憲司

キーワード:white bread, rheology, firmness, breaking energy, moisture content, testing condition

食パンの保存中における含水率の変化と圧縮破壊特性(かたさと破壊エネルギ)との関係を明らかにした。焼成直後,クラム中心部の含水率はほぼ一様で,クラストを含む周辺部より高いが,保存中の水分勾配に起因する水移動により,中心部と周辺部の含水率差が減少する。かたさと同様に,破壊エネルギは焼成後の経過時間や含水率の減少につれ増大する。更に,載荷条件や試料の状態について,標準試験法を確立する観点から検討を行った結果,破壊特性は変形速度とプランジャのサイズ及び形状により影響を受け,適切な変形速度は5mm/s~10mm/s,プランジャの接触面表面積はスライス表面積の8~20%であると考えられた。また,載荷面以外の周辺部を切除いた試料の破壊エナルギは除かないものの約2/3でありクラストを含む周辺部の影響が大きいことを明らかにした。

 

触媒を用いた水熱酸化法による尿素の分解

西岡 守・山崎仲道・佐野健一・青山 勲

キーワード:hydrothermal, oxidation, urea, sepiolite, catalyst

本研究の目的は,し尿中の窒素化合物として最も多く含まれている尿素の水熱酸化分解を行うことであり,水熱酸化法のリサイクルシステムにおける有効性を探ることである。尿素は,180゚Cでほぼ100%アンモニアに分解され,220゚Cで硝酸を生成した。また,触媒として3種類の鉱物を用いると,水熱酸化反応後の硝酸イオンの生成量からすべてに触媒効果が確認された。これらの触媒の中からセピオライトを選択すると,尿素0.1gに対してセピオライト0.015gから触媒効果が認められた。セピオライトへのアンモニアの吸着,セピオライトを使用した場合の反応時間変化による硝酸イオン生成量から,尿素の分解反応は,アンモニアが多孔質構造のセピオライト表面に吸着され次いで酸化され硝酸になると推察された。また,尿素の水熱酸化における最適条件は,尿素の水熱酸化における最適条件は,尿素0.1gに対してセピオライト0.015g,反応温度250゚C,酸素圧5.0Mpa,反応時間30分間であった。

 

インドネシアにおける水稲収穫作業について  *アニアニと鎌の作業能率

鬼頭孝治・Tineke Mandang・林 尚孝

キーワード:INDONESIA, paddy rice, ani-ani, sickle, working efficiency

インドネシアにおける水稲収穫作業は鎌刈が主である。これは国際稲研究所(IRRI)で開発された高収量品種(HYV)の導入を機に普及が加速し,従来在来品種に使用されていたアニアニによる穂刈は減少の一途をたどっている。穂刈は鎌刈に比べて一般に作業能率が低く,これまで聞き取り調査によりその能率が論じられていた。本研究ではアニアニによる収穫方法について調査し,両者の作業能率の差異を明確にすることを主目的に実験を行ったので報告する。