第53巻第3号論文要旨

研究論文

四輪駆動トラクタの前車輪アシスト効果に関する研究(第2報)  *試験用トラクタの製作とけん引性能試験

田野信博・山崎 稔・妻鹿卓司・清水 浩

キーワード:4-WD tractor, front wheel assist, peripheral speed ratio, tractive performance, hydro-static transmission(HST)

前報では,四輪駆動トラクタのけん引高さや前後車輪間の質量配分,速度比がけん引性能に与える影響を調べるために,重量転移式の誘導により車輪反力の推定を行うとともに,前車軸ハウジングに作用する垂直荷重や車軸けん引力を2断面曲げモーメント法によって計測した。特に速度比については後車輪タイヤの寸法を変えることにより前後車輪間の速度差を与えてその影響を調べた。しかし,この方法ではトラクタの重心位置やタイヤ幅も変化するため前車輪のけん引アシスト効果を強調するまでには至らなかった。このため,本報では前車輪系に静油圧駆動装置(HST)を搭載して前後車輪の速度比を自由に変更できる試験用トラクタを製作したので,その概要とこれを用いたけん引性能試験から四輪駆動トラクタの最適周速度比について提示を行う。

 

農用連結車両に関する研究(第4報)*状態方程式の導入及びその動特性

張 樹槐・寺尾日出男・上野正博・藤田耕一

キーワード:state equation, equilibrium state, step and impulse response, controllability, observability, stability, inaccessible state variable, state observer

第3報での非線形連立運動方程式を平衡点付近において線形化し,トラクタ・トレーラ系連結車両の状態方程式を導いた。その状態方程式の妥当性を検証するため,ステップ及びパルスに入力に対する連結車両の応答についてシミュレーションと実機実験の双方から検討を加えた。連結車両制御系の可制御性・可観測性・安定性に関しても検討した。直接計測困難な状態変数を含め全状態変数を推定するため,n次元状態観測器を構成した。その結果,(1)連結車両制御系は完全可制御,完全可観測である。(2)連結車両制御系は,後退・高速走行・旋回の場合上安定である。(3)ステップ及びパルス入力に対する連結車両の応答は,実験値と数値計算値とがよく一致している。(4)n次元観測器を用いて状態変数を推定することができた。

 

農用車輪の設計理論に関する研究(第4報)*ラグ外周面とラグ後方面の作用特性と設計的考察

岸本 正・坂井 純・井上英二・松尾隆明

キーワード:agricultural wheel, locus curve, lug face, lug leading side, traction, flotation

第1報で導いた車輪ラグに関する軌跡方程式を用いてラグ付車輪の運動シミュレーションを行い,土中でのラグの動きから"ラグ外周面"および"ラグ後方面"の作用特性の解明を試みた。第2報と同様に,ラグ外周面,ラグ後方面による作用部分をラグ通過による作用面積として2次元的に示し,この面積と進行低下率,上昇低下率表等で表現される車輪の運動状態やラグ形態との関係を論じた。また,車輪回転に伴い,これらの面に平行および垂直に作用する力の合力方向が異なることを示し,ラグ外周面はころがり抵抗,浮力さらに推進力発生と,ラグ後方面は推進力,浮力発生と関係していることを設計の立場から明らかにした。

 

ロータリ耕うん軸の最適設計理論及びエキスパートCADシステムの研究(第4報)  *選好評価法およびシステムの構築

陳  鵬・坂井 純・野口良造

キーワード:decision making, value function, constellation graph

本報では,多段決定計画法により算出した耕うん刃のパレート最適配列組合せの集合(データベース)の中から,選好解の最適配列を選び出すために行う意思決定の手法を検討する。まず星座グラフ選好評価法を提案し,意思決定問題における価値関数の定式化により「星座グラフ選好評価法《の理論根拠を論じる。次に対話方式による各性能項目の重みつけの数量化の手法を検討する。更に,これまで検討してきたロータリ耕うん軸の最適設計理論およびエキスパートCADシステムの構築法に基づいて,その実用化を図るために構築したロータリ耕うん軸設計の意思決定型エキスパートCADシステムの概要について報告する。

 

かご車輪の設計基準確立に関する研究(第2報)  *かご車輪のラグに作用する土の反力特性について

キティチャイ トゥリラタナシレチャイ・笈田 昭

キーワード:cage wheel, soil-lug interaction, design criteria, terramechanics

本研究は,ダブルリムを持つかご車輪のラグに作用する土の反力特性が圃場でどのようなものであるかについて報告する。ラグ面にはたらくリム半径方向および接線方向力の2軸力と反力モーメントを計測し,解析した結果,種々の要因,たとえば土の種類,滑り率やラグ角度などによってかご車輪への上下方向力(支持力)と水平方向力(推進力)が異なることを見出した。かご車輪の設計から重要なラグ角度についてみると,角度が大きくなると,一本のラグに作用する最大支持力及び最大推進力も大きくなることが判明した。ラグに作用する土の反力から計算されたかご車輪の推進力に基づくかご車輪の抵抗搊失は,水田ではラグ角度45゜の時に,砂土では角度60゜の時に最小となり,第1報で示した最適ラグ角度に一致した。

 

振動耕うんにおける土壌破壊の基礎的研究(第1報)  *異なる含水量での土壌破壊と土壌体積の変化

タニヤ ニヤマパ

キーワード:triaxial compression test, failure energy, soil failure, soil volume change, general shear failure, fragmentation

本報では土の破壊と体積変化に対する含水率と側圧の影響について,非飽和シルト質ロームと砂質ロームを用いて,非排水準静的3軸圧縮試験によって求めた結果を報告する。試験の結果,破壊には塑性破壊とぜい性破壊が見られ,これらの破壊には土壌含水量と側圧が影響し,ぜい性破壊にはせん断破壊が見られ,これらの破壊には土壌含水量と側圧が影響し,ぜい性破壊にはせん断破壊と崩壊が観察された。土壌体積の変化は含水量と側圧の相対的関係に依存することが認められた。土壌標本はせん断破壊よりも,崩壊で破壊される際,より大きな体積増加が起こる。破壊エネルギーは含水量の範囲があることが明らかとなった。

 

空気式精密播種機の研究(第2報)  *種子検出方法と繰出し精度の評価

イノティ,I.カーリア・並河 清

キーワード:Pneumatic precision planting, solenoid controlled metering, seed sensing system, metering performance.

大豆或は大豆大の種子用電子制御繰り出し装置の開発に関する研究である。このシステムは高性能のソレノイドバルブ,データ収集と制御用装置及び種子供給装置からなる。性能は,大豆を用い,条内の種子落下時間間隔によって求めた。制御装置により30~210ミリ秒の種子落下間隔が得られるようにソレノイドバルブを作動させて実験した。室内実験では満足すべき繰り出し性能を得,種々の播種パラメータを容易に得られるようになり,播種機の総合的な効率を高める可能性があることが明らかになった。

 

ナガイモの貯蔵に関する研究(第1報)  *貯蔵温度および包装方法がナガイモの品質におよぼす影響

弘中和憲・石橋憲一

キーワード:Chinese yam, storage temperature, packaging method, sprouting, viscoelasticity

貯蔵温度および包装方法がナガイモの品質におよぼす影響を知るために,貯蔵温度を4種類(10,7,3および1゚C),貯蔵方法を3種類(ポリエチレンフィルム折り込み包装,無包装,およびオガクズ添加)変えて,4ヶ月間の貯蔵試験を行った。貯蔵温度の10および7゚Cでは,萠芽を生じたが,3および1゚Cの貯蔵区では,それらは認められなかった。1゚C区のナガイモは,貯蔵中の粘性および弾性の低下が最も大きかった。すりおろし液の曳糸性に関して,3゚C区の低下が最も少なかった。包装方法については,ポリエチレンフィルム折り込み包装は,目減りの抑制に有効であったが,オガクズ添加は,貯蔵中の粘性および弾性の低下が最も大きかった。上記の結果より,3゚Cのポリエチレンフィルム折り込み包装が,室内貯蔵では最も適した方法と言えた。

 

音波による圃場内位置検出

金沢 仁

キーワード:location, position sensing, sound, sound waves, cross-correlation, least square method

本研究の目的は,音波を利用した位置検出装置の圃場内における実用化可能性の検討である。まず,一次元位置(距離)測定装置を試作し,直線性,安定性,耐雑音性を調査した。さらに24×36cmの大きさの圃場内において2次元位置検出実験を行ったところ,検出誤差は25cm以下であった。音波による位置検出方法は農用車両の自動操向のために有効であると考えられる。

 

衝撃載荷時の拘束上飽和土の動的応答(第1報)  *上飽和土の瞬間的締め固めに及ぼす衝撃荷重の影響

アシェナフイT.・アベベ・山崎 稔・笈田 昭・中嶋 洋

キーワード:transient soil compaction, unsaturated soil, impact stress, rate of compression, stress wave, volumetric strain

農業における土は,けん引あるいは耕うん作業において過度な機械負荷にさらされる。機械的作用により発生する土の締固めは動的挙動であり,その主な要因は車両荷重である。この論文では,土の締固めの動力学機構の特徴である拘束非排水衝撃圧縮に対する上飽和砂質ロームの動的応答に関する実験研究を扱う。直径5×高さ10cmの円柱状の土の試料を50kPaで拘束し,衝突速度1.5~2.8m/s,衝突応力50~150kPaを発生する落下質量により締固めた。応力波の伝播と衝撃圧縮に対する土の抵抗の持続時間は,それぞれ約200μsと2msであった。拘束衝撃圧縮の結果,4~9%の体積ひずみが得られた。