第53巻第1号論文要旨

研究論文

アルコール・軽油二燃料噴射式機関の農用トラクタへの応用に関する研究(第1報)*燃料制御法の考案

野口 伸・寺尾日出男

キーワード:digital control, alcohol fumigation, diesel engine, engine performance, alcohol fuel

本研究はアルコールをディーゼル機関の吸気管から吸入させる手法(以下これを気化ディーゼル法とする)によりトラクタ搭載機関の燃料として使用することを目的としている。本報では運転上必要な基本制御項目を満足させ,機関の乗用負荷範囲においてアルコールを燃料として使用できる軽油・アルコール二燃料の制御方法を考案し,静特性及び動特性実験を行った。静特性実験からは農用機関の重要な性能項目の1つであるトルク特性が任意に設定でき,今回設定された最大軸出力線上おけるエタノールによる軽油による軽油代替率は熱量割合で50%以上に達することが明らかにされた。また,動特性実験では4/4負荷から無負荷に約2秒変化させた場合,瞬時速度変動率が約13.5%であり,制御量は約5秒程度で整定し,考案した機関制御法は実用できる可能性があると判定された。

 

トラクタエンジン性能の最適化制御にかんする研究(第2報)  *最適燃料効率制御のフィールドテスト

劉 蛟竜・坂井 純・中司 敬

キーワード:the optimum fuel efficiency control, power train, field test, transient characteristics, fuel saving

前報では,トラクタ動力伝達系の制御によるエンジン性能の最適化の概念について提示し,制御装置の設計と開発について報告した。本報では,エンジンと変速機の複合的な制御が必要となる最適燃料効率制御について論じ,制御用ソフトウェアを開発して,トラクタ制御システムのフィールドテストを行った。アスファルト路上の牽引負荷作業と水田でのサプソイラ作業を行った結果,システムの過度特性に対する諸パラメータの影響を明らかにし,この制御システム実用可能であることを実証した。さらに,現在普及している市販トラクタの燃費特性と最適制御を行うときの省燃費効果について評価した。

 

自動操向トラクタの開発(第2報)  *トラクタ位置検出の改善

三竿善明

キーワード: farm tractor, image processing unit, computer-eye, micro-computer, automatic steering, improvements for the detection of tractor position

農用トラクタの自走操向を目的として,コンピュータアイによる安価な画像処理装置,マイクロコンピュータ,ラジオコントロール,油圧装置内臓クローラトラクタを用いたシアウテムの開発を試みている。第1報は,トラクタ自動操向システムのハードウェアとソフトウェアならびにトラクタ位置検出法と野外での基本的な自動操向実験について報告した。本報は第1報の結果の検討を踏まえ,トラクタ位置判定精度の向上を目的として,ソフトウェア上での改善策とトラクタパターンボードの改善について報告する。具体的には,上下の孤立点除去法および異輝度画像検出法の改善ならびにイメージボードパターンの改善によるトラクタ位置検出精度の向上について報告する。

 

四輪駆動トラクタの前車輪アシスト効果の関する研究(第1報)  *市販トラクタによるけん引性能並ぶに重量転移量の解析

田野信博・山崎 稔・妻鹿卓司

キーワード:4-WD tractor, front wheel assist, speed ratio, weight transfer, tractive performance

ここ数年,小形高性能化の要求と相まって農用トラクタの四輪駆動化が進み,全生産量に占める割合は90%以上に達している。これは四輪駆動トラクタの前車輪駆動系に我が国独自のベベルギヤ方式を採用することによって旋回半径の短縮化に成功するとともに,水田での走行性や操作性が従来の二輪駆動トラクタよりも格段に向上したことが主な原因である。本研究は,四輪駆動トラクタの主性能指標であるけん引性能をさらに向上させるための方策として前車輪を後車輪よりも速く駆動することを提案し,これによってもたらされる前車輪のアシスト効果と前後車輪間の最適速度比について究明することを主な目的としている。本報では四輪駆動トラクタの重量転移解析と,けん引高さや前後車輪の質量配分,速度比(後車輪タイヤの交換による)がけん引性能に与える影響について述べる。

 

耕うん時の土壌*機械系の力学的挙動計測法に関する研究(第2報)  *直線運動系耕うん時の土壌内応力・変位計測

米川智司・木谷 収・岡本嗣男・坂井直樹

キーワード:measuring system, soil, soil bin, tillage tool, soil stress, soil displacement, deformation pattern, critical state theory

耕うん時の土壌*機械系の力学的挙動の解析に用いるデータを実験的に得るための計測システムの主要部である。土壌槽総合試験装置の試作を行った。本装置により,多種の耕うんのモデル実験が可能になった。そして,直線運動系の耕うん実験を行い,小型土壌内応力/土壌変位センサの動的性能を確認した。30cm四方の土壌内に12個のセンサを用いた実験より,耕うん刃中央部の2次元平面内の応力*ひずみ分析,土壌変形の推移及び,耕うん刃表面の圧力分布を同時に計測できた。これにより,応力*ひずみに時間と位置に関する分布等による,耕うん時の土壌*機械系の力学的挙動の多様な解析が可能になった。 

 

駆動ディスクプラウにかんする基礎的研究(第4報)  *耕うん抵抗3分力及び耕うん軸トルクの実測

権 純球・坂井 純・井上英二・梅田直円

キーワード:disk plow, gang angle, radius of curvature, tillage resistance, three component forces, tillage torque

既報では,駆動ディスクプラウの最適な機能設計を行うために,ディスク外周上の任意点の運動および絶対速度,軌跡突入角,最小ギャング角,?断面の面積および重心位置,慣性モーメントなどについて理論解析を行った。本報では,駆動式および遊転式の単連ディスクプラウについて,トラクタの走行速度,ディスクの回転速度と耕深および耕幅などの設計要素が一定な場合の,耕うん中のディスク1枚に作用する耕うん抵抗3分力および耕うん軸トルクを測定し,ディスク曲率半径およびギャング角が,これらに及ぼす影響を把握するために解析した実験結果を報告する。

 

遠赤外線パネルヒータによるもみ乾燥

戸次英二

キーワード:far-infrared panel heater, infrared absorption spectra, radiated heat, damage, drying rate, energy efficiency

遠赤外線パネルヒータをもみの乾燥に使用してみた。もみ水分の赤外線吸収スペクトルは波長2.9μmにあるが,これに合わさる放射熱の温度は高すぎて熱障害物を与えるおそれがある。本実験では,放射面温度250゚Cで波長3.3~8μmをカバーするパネルヒータを用い,これを循環能力が毎時2tの既製乾燥機に取付けて乾燥実験を行った。1循環31,16,9分で乾燥すると,毎時平均乾減率はそれぞれ0.34,0.57,0.77%/hであった。その際,乾燥中の最高穀温を30゚C以下抑えられたが,循環回数の繰返し後軽胴割れ米の増加傾向が見られた。だが,重胴割れには至らなかった。1kgの水分を軽減するに要した電力消費量は1.535kW・hが最も少なく,通常の循環乾燥機なみであった。

 

椊物移椊栽培装置の開発研究(第1報)  *試作1号機の概要

森 邦男・堀部和雄・堀野喜久・磯村有広・米川嘉英・安藤陽一郎・松尾幸蔵・近藤浩市

キーワード:plant, moving cultivation, cultivating equipment, plant factory, growth curve

椊物の進行方向及びそれに対して直角方向に,椊物の株間隔が拡張できる二次元椊物移動栽培装置を開発した。その間隔は,進行方向へ拡張フッ列を用いたキャリヤ駆動体により,またその直角方向への平行リンクを応用したキャリヤで拡大される。また無駄なスペースを節約し,作業の効率を上げるため,栽培槽を2分し折り返し装置を設けた。サラダナで得られている生長曲線を参考に設計した間隔と実験で測定した間隔と比較した結果,両者はよく一致した。

 

共同農作業計画の最適化に関する研究  *インドネシアにおける耕起から田椊までの計画支援システムの開発

セティオ ペルティウィ・小中俊雄・小池正之

キーワード:Indonesia, linear programming, planning, scheduling, farm work

作物生産の安定化のためには,適切な作業計画を策定する必要があり,その作業計画は対象地域の自然的条件はもとより社会経済的条件によっても,また技術レベルによっても様々な態様になる。本研究では特に発展途上国のインドネシアに適用できるような作業計画の最適化支援システムを作成した。作業計画最適化のシステムは,農業機械データベース,線形計画法,作業日程の決定(スケジューリング:以下,スケジューリングという),機械・労働力の代替案,および作業コスト試算法から成り,諸前提条件を満たしながら作業コストを最低にすることを目的関数として設定した。本システムをインドネシアの西部ジャワ,カラワン県の共同農業作業地区に適用した結果,このような最適化支援システムは農作業の計画化に極めて有効で,最適化の諸手法によって精度の高い予測が可能となった。

 

穀粒の流動特性に関する研究(第3報)  *傾斜とい中を流れる籾と玄米と白米の流動状態

坂口栄一郎・早川千吉郎

キーワード:flow characteristics, grain, inclined open channel, interaction between grains, energy dissipation rate

前報では傾斜とい中の穀粒の流れに,金谷の微視的構造理論が適用できることを示した。本報では籾と玄米と白米,特に籾については水分を4段階に変化させたものを用いて,傾斜とい中を流れる穀粒層の速度分布と密度分布を測定した。そして穀粒の流動状態を巨視的に考察し,さらに金谷の理論によって微視的に考察した。その結果,対象として流動状態は穀粒の回転とせん断を考慮した粒子間相互作用量とエネルギー散逸速度によって特徴づけられた。そしてそれらは平均速度勾配と正の相関関係が認められた。